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引き潮の魔女



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引き潮の魔女の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

複雑すぎる真相に二度読み必至

1961年に発表された本書の舞台は1907年のイギリス。しかもHM卿やフェル博士と云ったシリーズ探偵が登場しないノンシリーズのミステリ。

物語の主人公、つまり探偵役はデイヴィッド・ガースと云う最近売り出し中の精神科医。さらに副業で覆面作家「ファントム」を名乗り、ミステリをシリーズで出版している。

そして彼と張り合うように捜査を担当するのはトウィッグ警部。ネチッこい尋問と勿体ぶったやり口が鼻につく嫌な警官だ。

物語の中心となる謎は2つ。1つはセルビー大佐の家政婦であるモンタギュー夫人の首を絞めていた女性は地下室に逃げ込み、いかにしてそこから脱出したのか?

もう1つは砂浜に囲まれた脱衣小屋で起きた殺人、しかし周囲には犯人と思しき足跡がなかったという物。

この2つの謎に関わる女性が本書のヒロインであるベティ・コールダーの姉であり、数ある男と浮名を流しては財産を略奪する悪女グリニス・スチュークリーだ。

まず引き潮の只中で周囲が濡れた砂浜に覆われた家の中で女性を殺した犯人は周囲に足跡を残さずにいかにして犯行を実行したのかという謎は『白い僧院の殺人』の変奏曲のように感じる。

犯人だけを見れば実にシンプルな事件だが、ただこの真相は実に複雑すぎる。

そして本書でなぜHM卿やフェル博士と云ったシリーズ探偵を使わずにデイヴィッド・ガースという精神科医を探偵役にしたのかは真相が明らかになって初めて分る。

しかし未読の方に注意していただきたいのは本書を読むにはある条件を満たしておく必要があることだ。

それはガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』を読んでいること。なぜなら本書ではその真相が詳らかに明かされているからだ。本書では『黄色い部屋~』の謎解きが真相解明に一役買っているように語られるためだが、正直ここまで他の作家の傑作と云われている作品の真相をここまで詳しく書く事はミステリの作法として正しいのかが甚だ疑問だ。

とにかく場面転換が唐突過ぎて戸惑う事しきりだ。行動していたかと思えばいきなり回想シーンに入って昔のことを語り出すし、会話をしていたと思えば、これまた突然の電話や来客で打ち切られ、結局何をしていたのかが分らなくなる。ストーリーを時系列的に追うのにかなり困難だった。

かてて加えて真相の複雑さ。これは二度読みが必要なのかもしれない。

今回なかなかハヤカワ・ミステリ文庫で復刊されないことに業を煮やして図書館に所蔵されていたポケミス版で読んでみたが、訳や仮名遣いが古く感じたので、カーの新訳出版が続く現在、今度はぜひとも新訳で読みたいものだ。


▼以下、ネタバレ感想

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