第二次大戦下のドイツ。

降りしきる薔薇のはなびらで窒息することを夢見て、縊死した劇団員を描いた「薔薇忌」、水を汲んだ桶を覗きこむと、その人のために祈ってくれているなにものかが水に映るという「祷鬼」、現実のセックスでは不感症であるが、眠りの中で濃密な性の悦びを得られるという女を描い

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。

異界と現し世を自在に行き交い、読者を迷宮へ誘う極上の語り。「結ぶ」―問答無用で縫われ、丸められていくからだ。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。

第一次世界大戦に敗れたドイツ。極端なインフレと共産主義との闘いで混迷するなか、退廃的な文化も爛熟を深めてゆく。

18世紀英国。

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。

結合双生児として生まれたゲオルクとユリアンの波瀾に満ちた数奇な人生。

1965年、イスラエルのマサダ砦で発掘作業に携わっていた日本人青年・高村隼雄が、仲間のフランス人を殺して自殺した。

私の中に巣喰う狂気が、さまざまな夢を見させる―さらなる広がりと魅力を増した皆川博子の恐怖世界。

時は16世紀。スコットランドに生まれたアランは、17歳で戦士集団に加わり、アイルランドに渡る。

遊女屋の愛娘ゆうと旅役者の福之助が結ばれて十年の歳月が流れ、関西を巡業して廻る一座に様々な苦難がふりかかる。

一葉の写真、一枚の絵が呼びおこすひそやかな官能、秘密のかおり。言葉と映像―甘美で危険な交歓が紡ぐ作品集。

東海の強国駿河は、守護今川氏親の手で着々と覇道を進んでいた。

ミステリと綺想の女王が紡ぎだす、禁忌と官能に満ちた世界 愛する男を慕って、女の黒髪が蠢きだす「文月の使者」、挿絵画家と若い人妻の戯れを濃密に映し出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女の記憶を描く表題作他、密やかに紡がれる8編。

オートバイに憑かれた、イギリス人の父親と異母弟たちに、突然呼び寄せられ、マン島の死のロード・レースに挑む安城はるな。

1934年、ドイツ。

江戸芝居町、中村座。八代目中村勘三郎には二人の娘があった。

湖から屍蝋が上がった―。小さなバーのママと常連客は、そのニュースに激しく動揺する(「水底の祭り」)。

1789年7月14日、民衆がバスティーユ監獄を襲撃。パリで起きた争乱は、瞬く間にフランス全土へ広がった。

作家M・Mが常連の喫茶店の密やかな性戯を描いた「影を買う店」他、皆川博子、最大の「偏愛幻想/奇想」小説集、ついに刊行!

魔性の炎が袖ひろげ、八百八町を焼きはらう。紅蓮の鏡が映し出す、心の裡の闇模様…歪つな想いが牙を剥き、炎の津波に酔い狂う。

遺書さえものこさずに自殺してしまった姉が、いたずらに鉛筆で紙に書き散らしていた“クライン・キャット”という謎めいた文字。

刊行後多くの賞賛を受け、第76回直木賞の候補にも選出された表題作ほか9篇。収録作全て文庫未収録至高の精華集、第2弾。

13世紀、フランス。“天啓”を受けた羊飼いの少年・エティエンヌの下へ集った数多の少年少女。

19世紀末、大英帝国の首都ロンドン。謎の殺人者「切り裂きジャック」による連続殺人事件が街中を恐怖に陥れていた。

寛政の改革による春画・春本の取締りを経て、歌麿の没後、豊国を筆頭とする歌川派は依然隆盛を極めていたが、お咎めを恐れて枕絵にだけは手を出せずにいた。

江戸川乱歩の造語である“奇妙な味”は、ミステリにもSFにも怪奇小説にも分類不能の、異様な読後感を残す小説を指す。

ウサギママの経営するコーヒー屋。10年ぶりに訪れたマユ。

赤松満祐が足利義教を暗殺した夜、満祐の側室野分御前は、もうひとりの妾で臨月の玉琴を惨殺する。

皆川博子が紡ぐ、妖艶かつ幻惑的な短編集 夫に執拗につきまとう女には驚くべき秘密 があった……(「恋人形」)ほか、福田隆義氏のイラスト、中川多理氏の人形と小説とのコラボレー ションも収録。

――八時三〇分。

風が吹き荒さぶ中、闇を裂いてトラックがやってきた。運転する商人は葡萄酒を運んでいると主張する。

厳寒のオホーツク海で、映画づくりに精魂をかたむけるグループを襲った無惨な死。

室町時代に真宗王国を築き、権勢を振るった本願寺の法主、蓮如は5人の妻に、27人の子を産ませた。

室町時代に真宗王国を築き、権勢を振るった本願寺の法主、蓮如は5人の妻に、27人の子を産ませた。

長崎のおくんち祭を見物中のツアー客が突然起こった石段上の人なだれで転落死した。

「庭は、寝がえりをうって、背をむけた。…庭にまで馬鹿にされるのは、いい気分ではない」(「風」)。

6つの詩篇が、絵師の筆を走らせ、異界の幻影が、作家の目を惑わす。この虚構に迷い込むのは、あなた。

村人たちはそれぞれに凶器を握り締めた。「屍鬼」を屠る方法は分かっていた。

遊女屋の愛娘ゆうと旅役者の福之助が結ばれて十年の歳月が流れ、関西を巡業して廻る一座に様々な苦難がふりかかる。

毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。

その島は風車と風鈴に溢れ、余所者には誰も本当のことを話さなかった―作家葛木志保が自宅の鍵を預け失踪した。

文化文政の芝居町、江戸に悪の華を咲かせたふたりの鬼才がいた。『東海道四谷怪談』、『桜姫東文章』で名高い四世鶴屋南北。

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。

―この物音は、何か可怪(おか)しい。 何かが畳を擦る音、いるはずのない赤ん坊の泣き声。

18世紀、独立戦争中のアメリカ。記者ロディは投獄された英国兵エドワード・ターナーを訪ねた。

叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても開いている(「奥庭より)」。

1915年、ドイツ。第一次世界大戦―。

帝都・東亰、その誕生から二十九年。夜が人のものであった時代は終わった。

わらべ唄をモチーフに8つの幻想的世界を描いた表題作。

学校の旧校舎には取り壊そうとすると祟りがあるという怪奇な噂が絶えない。

江戸の町に忽然と現れた謎の浮世絵師・写楽。