白と黒
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
外部リンク
評判
白と黒の評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
白と黒の総合評価:
7.44/10点 レビュー 16件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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わたしが所持している本は、平成9年に<金田一耕助ファイル>シリーズの一冊として新装再販されたもので、当時は付箋を貼ったりマーカーを引いたりしていないから、購入してから読んだのかがどうもはっきりしない。記憶がアテにならないので……。
とは言え、前に読んでいればなにかしら引っ掛かりがあってもよいのだが、それがまるでない。もしかすると買いっぱなしで今回初読かも……w
本作を読んで、なんとも懐かしさに襲われ、ついで淋しく感じた。
本作では、核家族の新しい住居形態として、都会通勤圏で絶賛増殖中だった新興団地が舞台となっている。わたしの幼少時代はもう少し後だが、よく似た団地で暮らした記憶を持っている。
わたしが少年時代に住んでいた団地は、一棟40世帯ほどが住んでいたが、5階建てでもエレベータはなく、各階の横方向を繋ぐ廊下もない。ひとつの階段で繋がる1~5階までの10世帯がお隣さんの感覚だ。こどもたちにとっては、共有の階段がどーのというよりも、同学年で同性のこどもがいるかが重要ポイントだが、母親たちは、――味噌醤油の貸し借りまでは記憶にないものの――作り過ぎた食事や、里に帰った際の土産などは、お向かいさんや上下一階層くらいに差し入れしあうような付き合いが珍しくなかった。
就学年齢以下のこどもや赤子は、必要に応じて、互いに預けあったりしていたようにも思う……。
その中でも、自分たちの向かいの一世帯はTHEお隣さんで、その間にはガスメーターやダストシュートがあった。本作の日の出団地の設定とほぼ同じだw【注1】
日の出団地――特に本作の舞台となる17、18号棟の住人たちは、半年前程度に知り合ったばかりで、そこそこ「ご近所さん」としてつき合いながら、過去の生活や現在の仕事についてはよく知らないといった状況が、著者の意識した設定である。
この設定は、そもそも金田一耕助が住居を構えた緑ヶ丘町に云えることで、彼が長年居候していた「松月」の離れから世田谷に近い緑ヶ丘に転居したのは、作品内の理由はともかく、メタ的には、そんなポッと出の人間関係のもと発生する犯罪事件に彼を絡ませやすくするためだったと考えている。
勝手な憶測に過ぎないが、本作の原型となった「渦の中の女」は昭和32年の作品だという。ビミョーなところだが、日の出団地ではなく緑ヶ丘町を舞台にしていたのではあるまいか?【注2】
だから、本作を手に取った多くの読者は、まず当時新興の団地とあいかわらずよれよれ和服の金田一耕助の組み合わせに違和感を感じたと思うwが、この意味で、団地を舞台にした事件に金田一耕助が絡むのは必然だったのではないだろうか。
ただし、怪文書が横行するプロット上の必要もあるが、本作の住人たちは割に活発な関係性を構築している。上述したように、わたし自身の記憶でも、当時の団地生活にはそれなりの「ご近所さん」つき合いがあった。
残念ながら現代では「隣の人はなにする人ぞ」化がさらに進み、同じマンションに半年どころか十年以上住んでいても、隣人たちとはすれ違う際に軽く挨拶する程度で、履歴・来歴はまったく知らないというのが珍しくなくなった。表札も出さないから、名前すら知らない……。
そんな薄い関係も、悪人が増えた現代社会では、やむなしの面もあるとは思うが、一方で淋しく感じた所以であるw
ちなみに、冒頭・中間・結末で登場するS・Y先生は、明らかに正史・横溝だが、この表記スタイルははじめてであるうえに、「詩人」と記されている。一種の諧謔かと思ったが、このS・Y先生、推理小説における顔のない死体テーマについて、金田一耕助からレクされている。
『黒猫亭事件』での先生のように、自ら熱く語ったりしていないところをみると、「著者」とは別人と考えるべきかw
もしわたしの想像通り、団地が舞台に選ばれたのが、原型作品ではなく新聞連載時の昭和35年だったとしても、「上海氏の蒐集品」の執筆は、中島河太郎が想定したよりも5年ほど遡れるかもしれない。
【注1】エレベータがついていない団地では、わざわざ下まで降りる必要のないダストシュートが便利だった。もちろん細かいゴミ分別などない時代の話でもあるが、わたしの記憶によれば、こどもが落ちる可能性(おそらくどこかの団地では現実に事故があったのだろう)から、いつの頃からか使用禁止になって、金属蓋が開閉できないように溶接されてしまった。そういった思い出を語り合える家族や友人がすでにいないのが悲しい……。
【注2】そこまで手を出すつもりではなかったが、原型作品を集めた『金田一耕助の帰還』を入手して、確認するのも一興か……。