妃は船を沈める
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初版刊行(参考)
種別
長編
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5,248回
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49回
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あらすじ
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評判
妃は船を沈めるの評価:
5.33/10点 レビュー 3件。 C ランク
妃は船を沈めるの総合評価:
7.59/10点 レビュー 29件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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この作品の中心は妃沙子という女性です。生保レディで稼いだお金を投資して莫大な財産を築き、40代だけれど30代半ばにしか見えず美しく、いつも若い男性たちを取り巻きとして集めている裕福な女性です。このように要約されると、年下男性からも愛されるカリスマ性のある美魔女が思い浮かぶのですが、「ある種の魚類を思わせる大きすぎる口」と言ってみたり、「家具はどれも高そうだが、さほど洗練された趣味でもない」とけなしてみたりで、だんだんと何かしらいびつなものが浮かび上がってきます。なにかにつけて「おお!」とおおげさな感嘆詞を使う不自然な話し方、それに実際、その若い男性たちの中でも特に気に入って養子縁組までした潤一は”ママ”にうんざりしている様子(その本当の理由は後でわかってきますが)。
若い男性たちは、彼女の取り巻きというよりは、言わば若さをお金で釣っているだけで、彼らにとってはただ得だから彼女のそばにいるにすぎないのでは?というように見えてしまいます。結婚せずにそうした生活をしていることについては、彼女自身に「自由でいたい、男女が結婚して縛りあうのは好きではない」と言わせています。
そんな彼女が後半では一転して、年上の夫を愛する貞淑な妻になって再登場します。以前はかわいい猿顔の年下男性を寵愛していた彼女が、一見”猫科の猛獣”のようなお金持ちで大柄な年上男性を熱愛する、このあたりの変化がどうも不自然で・・・どうしてなんだろうと考えてみたら、夫の描写が少なく、人物像があまりよく見えてこないからでは・・と思ってしまいました。夫とラブラブの様子を描写されても、年下男性キラーだったと書かれても、どうしてもちょっとイタイおばさんのようで、魔性の美魔女には見えてこないのです。もしかしたら作者は、意図的にその異様さを浮かび上がらせることで妃沙子のいびつさを表現し、ゆえにこのような事件を2つも引き起こす原因になったと言いたかったのだろうかと思ってしまいました。
前半では、「猿の手」の解釈の仕方をめぐって火村とアリスが論争しますが、これは有栖川氏と北村薫氏の間で実際にあったことだそうです。この怪奇短編小説は既読だったので、こんな解釈の仕方もできるのか、と驚き、楽しめました。
また、後半では事件の背景になったのは大阪府北部の地震です。この本は2008年の作ですが、自分が読んだのが2018年の7月で、偶然6月に大阪北部地震が起きたばかりでした。アリスが大阪市内で揺れを感じるシーンや、「ブロック塀が壊れたりして5人も死者が出ている」「大阪北部で地震が発生するとしたら、有馬ー高槻断層帯や京都西山断層帯が震源になることが予測されていた。しかしこの度の地震はそれらとはまた別の未知なる活断層が動いたために起きたらしい。」と書かれているあたりがまるで予言のようで、大阪北部在住の自分にはとても小説の中の話とは思えず、ぎくりとさせられました。
前半の事件の真相は意外なもので、後半では犯人探しが二転三転しますが、最後には納得のいく説明になり、どちらもよかったと思います。中心になる妃沙子像をどう感じるかで小説の印象が変わってくると思いますが、全体としてはかなり好きな作品でした。相変わらず、火村とアリス、それに大阪府警の鮫山と森下のかけあいもおもしろいです。