山本周五郎賞

あの強固な呪縛から、いつか解き放たれたかった。

もう、駄目だと思った。

言えたはずの言葉が胸の中に積もっている。聞けたはずの言葉をいつも虚空に探している。

美貌の産婦人科医・曾根崎理恵、人呼んで冷徹な魔女。彼女は母に問う。

「バブル入社組」世代の苦悩と闘いを鮮やかに描く。

たとえば、苔むして古びた水路の先、住宅街にひしめく路地のつきあたり。

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。

お子さん、まだ?焦りと戸惑い、嫉妬、胸の中からあふれだす願望。結婚しても、競争は終わらない。

長男の不祥事により所轄へ左遷された竜崎伸也警視長は、着任早々、立てこもり事件に直面する。容疑者は拳銃を所持。

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。

一九八八年、世はバブル景気の頂点。

老中水野による天保の改革で、無届けの抱屋敷は厳しく取り締まられ百姓地になる一方、大名・旗本の拝領屋敷交換という相対替がさかんに行われた。

結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。

瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。

雷の季節に起こることは、誰にもわかりはしない―。

最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。

米国フロリダに住む日本人少年、研一。隣人の少女パメラは、養父からレイプされていることを彼に打ち明ける。

ひとつの言葉、ひとつの命、ひとつの希望を共有したふたりの少年。宿命に分かたれたふたりの対決が、臨海副都心を灼熱させる-。

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。

広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。

「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める村上真介の仕事はクビ切り面接官。

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。

私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘―それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。

壊れるまでに張りつめた気持ち。ごまかすことも、そらすこともできない―二十歳の恋。

秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。

何なんだこれは!天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集が「1」、「2」に分かれて、ついに文庫化。

85年、御巣鷹山の日航機事故で運命を翻弄された地元新聞記者たちの悲喜こもごも。上司と部下、親子など人間関係を鋭く描く。

昭和二十年四月、アメリカ軍が沖縄本島に上陸したとき、安次嶺弥一は十一歳だった。

庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。

押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。

終戦間近のフィリピン戦線。

高3の夏、復讐は突然はじまった。中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく…。

殺人事件の時効成立目前。

都内の2LDKに暮らす男女四人の若者達。本音を明かさず、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。

一九九七年、カナダ西海岸・ヴァンクーヴァー。中国への返還目前の香港から押し寄せる移民たち。

いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。

家業の牧場を騙し取られ、非業の死を遂げた父。