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本好き! さんのレビュー一覧
本好き!さんのページへレビュー数329件
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確かにテーマとしては地味だが、どこをとっても著者の綿密な表現力がみてとれる。著者ならではの力のこもった作品だし、期待は裏切らなかった。戦後まもなくの時代から、歴史を重ねて現代までの紆余曲折。人生とはなんと波が大きなものだろうか、ここまで人生に翻弄される人もいるのか、また、家族のカタチもさまざまなものがあると再認識させられる。色々な意味でいい作品でした。
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古風な印象さえあるタイトルに対し、さすがは史上最年少の乱歩賞作家だけあり、軽いけどストーリーはしっかり、テーマの選択、絶望的な将来しか見えないのに人物たちがむしろ軽やかに行動して陰鬱にならないところ、それに構成も新人とは思えない程うまい。リアリティこそないものの情景がはっきりイメージできるのは、先行きが楽しみな作家といえる。あとは本作が最高傑作にならないよう、進化していくことを祈るのみ。
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8篇からなる短編集、それぞれにいえることは、読後感の悪さ(いい意味での)。著者の持ち味といえる。
どれも救いようのない絶望感が漂い、それでも次の作品を期待してしまう中毒性。これも著者の持ち味。「九三式」は乱歩賞特集で読んだことがあるが、改めて完成度の高い絶望感をもつに至った。著者のこの世界から抜け出せない。 |
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ノンフィクション小説だけあって、人物や馬名はすべて実名で読みやすい。小説としてみると大きな紆余曲折がなく、あまりにも順風満帆で物足りなさもあり、前田一族のサクセスストーリーをそこまで見せられても…というのはあるが、それでもノースヒルズの馬は今後も気にしていこうとは思う。
今年は出走馬がなかったダービー、来年は?もう3勝もしているからいい?いやいや欲望は果てしなく。 |
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「松方コレクション」を巡る松方、田代、そして日置の思い。その苦労は三者三様だが、行き着く先はひとつ。史実をもとにしたフィクションだけに、説得力十分。近代史の勉強にもなる。「バカヤロー解散」でおなじみの吉田茂がなかなかいい役どころになっているのもいい。そしてラストは感涙必至。
松方さん、なかなか憎めないなぁ。絵画のことはよくわからないのになぜコレクションしようとするのか。むろんどこかの政治家のような考えは決してもっていない。 日置の妻・ジェルメンヌの言葉「戦闘機ではなく、タブローを。戦争ではなく、平和を。」どこかの国に聞かせたい言葉。 史実がもとになっている作品、西洋絵画にも興味があるので、マハさんの中でも特に心に残る感動作でした。 |
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読了後、自暴自棄という言葉が脳裏に残った。好きになった人、友に裏切られ、目指したことが思わぬ方向に行ったことで目標を失い…青春時代に誰もが陥る暗闇をミュージシャン兼作家ならではの物語を披露してくれた。どの作品にもいえると思うが、表現や使われる言葉の数々がわかりやすい中にも胸をうち、さすが独特の歌詞で楽しませてくれる曲の世界が著作にも生きていると感じた。またしても次回作の期待度が増してきた。
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毎度おなじみのストーリーながら、今回も胸を打つ家族の物語が6つ。食べ物にまつわる思い出というのは生きていくうえで欠かせないだけに、心に残るんだな〜と。
「フィッシュアンドチップス」が食べたくて仕方がない今日このごろ。 |
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柚月ファンには答えられないサービス満点の短編集。著者のよさがコンパクトに詰め込まれている。ブラックなものから、時代物、ユーモラスなもの。そして忘れてはならない佐方貞人シリーズのスピンオフでしっかり締めている。
長編でこそ著者のよさが光るという意見もあろうが、こういう短編で少しそのワールドを覗くのもオツなものである。 |
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「同調圧力」をテーマに、表向きは田舎町を安全安心な町にするためと言いながら、裏では自分たちの都合の悪い部分は包み隠していくどこかの悪徳政治家のような町の役員たち。少数の正しい意見が、多数の間違った考えに包み込まれてしまう恐ろしさを本作で感じた。現実にあっても不思議ではない、いやありそうな話。いい意味で読後感のよくない傑作だったと思います。
第三者的に見れば、少数の正しい意見を言う立場に立つだろうけど、実際自分がこんな町に住んだとすれば、上の指示におとなしく従ってしまうんだろうなぁ。 |
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人気馬・ステイゴールドをモデルにした、馬を愛する者たちの感動巨編。競馬用語の解説もさり気なく盛り込まれ、競馬初心者にも優しい小説です。
著者は犬のみならず、馬小説でも感動させてくれることがわかったし、どの場面をとっても情景が今見ているかのようにわかる。競馬に詳しければモデルとなった馬や人がわかって、より楽しめます。 ヤクザとのカラミや濡れ場などがとやかく言われているが、それほど気にはならない。むしろ気分転換、閑話休題的要素。 本作を読んで競馬に、競走馬生産の現状に興味をもってもらえれば最高でしょう。 |
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岬洋介シリーズの中でもトップクラスに面白かった。全盲のピアニストは実在するし、全聾の音楽家のふりをした詐欺師も実際にいたが、それを意識させながら、演奏シーンでは主人公・榊場隆平の超絶ぶりをしっかり描いている。演奏シーンはこのシリーズの最も特徴的で個人的にも好きな場面です。
肝心の岬洋介は後半になってやっと登場してくるところが何とももどかしいけど、彼の個性は健在です。 このシリーズ、まだまだ続くようなので楽しみは限りがない。次はどんな天才ぶりを見せてくれるのかな? |
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由比正雪の乱、慶安の変などは名前は聞いたことがあっても、内容までは知らなかったが、それをあえて取り上げた著者のセンスに拍手!
物語としてはやや盛り上がりに欠けたきらいはあるが、保科正之や祖心尼の描き方、由比正雪の登場のさせ方は著者ならでは。日本史の新たな1ページを勉強できました。 |
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女児誘拐殺害事件がベースになっているが、さすが元記者だけあって、新聞記者と警察との心理戦は読者を引き寄せるには十分な筆力で、グイグイ来るものがある。全編に渡って漂う緊迫感は、記者経験がもたらしてくれるものだろう。
ミステリであると同時に、「新聞記者のお仕事小説」の様相もあった。 わかりやすい文体もその一助となっている。本城氏の野球小説でも言えることだが、現場(ここでは事件現場)より、それを取材する記者の行動が中心に描かれ、他のミステリとは一線を画し、本城作品ならではの特徴を表している。 少々分厚めの本でも、あっという間に読破できるほどのめりこんで読めたのも、この辺にあって本城氏のウマさにあると思う。 でも結局は本城氏の作品は野球小説(もしくは競馬小説)がお気に入りなので、そちらを中心に読んでいくことにしようと思う。 |
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著者の警察ミステリを読んでいれば、その表現力たるや右に出るものなしと言えると思うが、医療ミステリでも遺憾なく発揮されている。その緻密さは一読瞭然。直木賞候補も頷ける。
ただし西條は「孤狼の血」のガミさんや日岡、佐方貞人に比べるとやや魅力に劣るか。西條と航の交流は心温まるものがあったけど。 |
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皆が”神頼み”をしに行くお正月に読了。
タイトルを念頭に読んでいくと、どの短編も「神様は試練は与えるだろうけど、本当に幸せにしてくれるんだろうか?」という感想をもたらしてくれる。 中でも「伊藤が消えた」「朔日晦日」では特に感じる。 「新しい音楽、海賊ラジオ」では音楽好きの私にはさわやかな音楽が聴こえてくる半面、厳しい状況に置かれている彼らの感情が苦しいほどに伝わってきた。彼らは意外に気楽そうに見えるが実はそうでもないんだなぁと... 野分には「戦場のコックたち」「ベルリンは晴れているか」という戦争ミステリの名作があるが、やはり「見張り塔」は読みごたえというか、戦地に置かれた兵士たちの哀しさがよく出ていた。野分さんの戦争ミステリは一級品! |
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最近の乱歩賞受賞作の中では楽しく読めた。初応募で初受賞ということだが、女性作家ならではの丁寧さと、初応募とは思えないほどの巧みさが窺える。産業翻訳家としての技量がモノを言っているか。選評では文章が下手とか読みにくいとか言われていたけど、さほど気にならなかった。次回作以降はテーマしだいでリピーターになるかも。
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なるほど〜!と感嘆詞がもれるほど仕掛けが見事な小説です。禁止シリーズならではの仕掛けに騙された、というか見事にハマリました。ここに出てくる「伝承」が実際にあっても不思議ではない、ある意味実際にあってほしいとまで思ってしまいました。確かに二度読みしたくなるというのもわかります。ここまで来たら次の禁止シリーズはどうなるのか。恐ろしいです。人の命と恨み・哀しみについて考えさせられもしました。
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前半は中国武術や"百合"で、何やらマンガっぽくて読みづらかったが、後半になるにつれてミステリらしくなった。登場人物がとにかくマンガチック。それにかつて中国人はミステリに扱うことなかれ、というのがあったが、最近はそんなこともないのかな。
中国を扱った乱歩賞は過去にもあったと思うが、こういった受賞作も新鮮味がある。 |
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2004年の球界再編問題も記憶に新しい中、その上をいく日米球界合併問題。国内の再編問題も収束したわけではなく、いつ再燃してもおかしくない昨今、実際に起きてもおかしくない騒動を見事に描いてくれました。この小説どおりになって、野球界が人気を吹き返すかはわからないが、着眼点がいいし、登場人物には東都新聞の京極や牛島をはじめ、いけ好かないヤツらが彩を添えて一気に読ませてくれました。(俊太郎はカッコいいし、岩城の人間性はバツグンだし、、、球団や選手だけでなく、審判員も同様に不安を抱えているところを描くなどは抜かりないなと感服)
未だ反対論も多いCSや、メジャー流出など懸案絶えない中、日本球界の今後が明るいものであってほしいとの願いをこめて本作を読み進めると作者のメッセージが色濃く感じ取れるのではないでしょうか。 |
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JR貨物による輸送を題材にするあたり、真保さんらしさがよく出てる。鉄ヲタが喜びそうなテーマと原発問題を絡めたシリアスなサスペンス。確かに映像的には地味だろうが、社会派ミステリとしては、政治家の心の奥をまさぐる読み応えのある作品だった。現実にあってもおかしくないリアリティさを前面に、地味でいいから心にグッと楔を打つような重厚感あふれる作品を今後も期待したい。
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