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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数745件
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堂シリーズ6作目。残り1冊で完結の最終巻前。
単体のミステリを楽しむ作品という感覚ではなく、シリーズとしての物語を楽しむ作品でした。 本書はシリーズを順番に読んでいる人向けの作品となります。 本作は過去編。 シリーズ内の重要人物として挙がる沼四郎や藤衛などが会し2名の被害者が出たとされた過去の事件。 鏡で覆われた堂での事件となります。最終回に向けて風呂敷を畳んでいくような印象でした。 ミステリ単体で見ると事件内容は大味なのですが、シリーズ作品として見れば、本シリーズ特有の館ものとしてのお約束や、理系要素を用いた仕掛けが楽しめました。 トリックも物理的や現実的にどうかとか、このシリーズに関してはもう気にしなくなりました。なんか凄い事をしているという雰囲気で押し通しちゃう感じですね。ここまでくればこれはこれでアリかな。 次回最終回。残りの登場人物達がどう動くのか楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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児童書ミステリのデスゲームもの。
著者は角川ホラーにてデスゲーム作品を出している人です。同角川からの児童書レーベルでどのようなデスゲームを描くのか期待していた次第。ですが正直な感想としては期待し過ぎだった気持ちでした。 物語は賞金1億円を求めて、それぞれの事情がある者達がデスゲームに参加するというもの。 デスゲームの定番要素となる、集められた男女10名、ゲームのルール、報酬とペナルティのお約束は守らています。が、肝心のゲーム内容が面白くない。理由は行きあたりバッタリで敗者が決まり、知的な感じが全くない為です。結末から考えればルールの存在意義も感じませんでした。 端的に言うと、本書はゲームの駆け引きが描かれていない作品。 プレイヤー同士の頭脳戦がない。不注意で死んだり、相手の影響がなく勝ったりと、ゲームにおけるキャラ同士の接点が弱く戦っている感じがしませんでした。この場合、小学生の読み物として類似ジャンルを例えると、妖怪ものや学校の怪談の部類の本であると感じます。本書はデスゲームの舞台を扱っただけで、キャーキャー怖さを描くだけの本という印象でした。とすると小学生低学年向けなのですが、中身にははっきり死が描かれているので低学年には読ませ辛い。内容とターゲットが少しミスマッチな印象を受けました。 まぁでも版数を重ねて売れているので子供には刺さっている内容なんだなと、気持ちの差を感じる一面を得た次第でした。 |
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土砂崩れで避難した洋館を舞台に行われる人狼・デスゲームもの。☆7(+1好み)
毎夜、仲間に化けている人狼を見極め投票をする。見事狼を当てられれば助かるが外せば喰われるという人狼をモチーフにした作品。 児童書ミステリなので子供が読んでも平気。誰が狼なのか疑心暗鬼や謎解きの様子をシンプルに楽しめた作品でした。 ある程度デスゲーム作品や人狼もの作品に触れている場合、捻った考え方を持つと思われるので想像の範囲で真相が見えてしまうかもしれません。ただ本書のレーベルの小中学生をターゲットに考えると巧いバランスで仕掛けてきていると感じます。子供思考での誰が狼なんだと仲間を疑い悩む展開が良かったです。 個人的にデスゲーム作品は好きで、本書は読み易くちゃんと仕掛けがある内容だったのでシリーズを追っかけようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ストーカーが主人公のホラー作品でありますが、ラブストーリーとも思える不思議な体験が得られた作品。
学生時代に出合った女性をふと思い出した主人公。彼女の現在を興信所を使って調べ、家に侵入しつつ盗聴・盗撮などストーカー行為をする日々。ただそこで見知った現在の女性の暮らしはDV夫によって奴隷となっている姿だったという流れ。 最初の数ページは主人公のストーカー行為に気持ち悪さを感じましたが、それ以上にDV夫の異常な暴力の姿に嫌悪感を抱きました。著者の作品の持ち味として凌辱シーンとなる暴力と性描写が描かれますが、本作は単なる小説の娯楽要素ではなく、DV夫の狂人を描き、圧倒的な悪の表現と手が出せない恐怖を植え付ける効果として描かれ読ませます。 よくあるストーカー作品はストーカーをする者が敵位置にいるのですが、本作はどちらかというと応援したくなるようなヒーロー側の立ち位置。不幸なヒロインの女性、それを盗聴・盗撮して見る事しかできない主人公。陰の者の思考や行動がよく表されており、それぞれの登場人物がどうなっていくのか中盤からは先が気になる一気読みでした。 現実的には好む内容ではないのですが、1つの作品として異常者の恋愛作品として楽しめました。 著者作品の傾向で暴力と性描写が多いのでこれらが苦手な人にはオススメできませんが、 その点を踏まえた上で異常な恋愛作品を求める方にはオススメです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから感じる印象と読後は違うものでしたが、犯罪小説の1つとして巧く整ったと感じる作品で楽しめました。
物語は平凡な家庭が凶悪犯罪に巻き込まれる内容で、生き残った男性被害者の視点と犯罪を行なった加害者の視点が交互に描かれます。著者作品は凶悪犯罪者の視点で暴力やエロの描写が持ち味ですが、本書はさらに被害者の視点を取り入れて復讐という憎悪の立ち上がりを加えました。 ジャンルはホラーやサイコもの。謎解きやミステリを求める人には不向き。ただ毒を食らうと言いますか、犯罪者視点の少し刺激が強いものが読みたくなる時は著者の作品を手に取る次第。 犯罪に巻き込まれる理不尽さ。犯罪を行なう異常心理。世の中どういう繋がりで巻き込まれるか分かりません。些細な1つの切っ掛けが描かれた本作。現実的に起こり得そうなバランスと結末の虚無感は見事でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『初読はミステリ、二度目はホラー』のキャッチフレーズの本書。
2度読みを謳う作品は警戒しつつも手に取ってしまう性分であります。 さて、結果としては宣伝に偽りなく2度読みしたくなる要素を兼ね備えた作品でした。とある意味でミステリからホラーへ変容するのはとても面白い。終盤は見事です。 ただ正直な所、読書中は面白くありませんでした。 率直な理由として非常に読みづらい。文章から情景が浮かばず読んでいて混乱でした。 著者のデビュー作『ぼぎわんが、来る』は読書済み。ホラーとミステリの融合の面白さ、そして雰囲気も然ることながら読み易さが印象的でした。が、本書は同じ作者なのかと疑う程に文章が分らない。今この場に誰がいて何処で何をしているのか混乱が多い読書でした。その為、物語を楽しむ事ができませんでした。 霊能者や番組の参考として宜保愛子や上岡龍太郎など、芸能人の名前を挙げますが知らない人は余計な登場人物名ですし、ファミコンのゲームソフトの「くにおくん」など挙げる必要があるのかわからないノイズが多かったのも気になりました。横溝、京極、三津田…と、作家の名前を挙げて現実感を出す表現も違和感でした。 本書の評価は最後のネタをどう楽しむかに集中するのではないでしょうか。 初読はミステリと言えど、途中の被害者などの事件模様の印象は残らなかったです。 とはいえ最後のネタは面白かったですし、2度読みしたくなるのは間違いないので好みの問題でこの点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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AI探偵シリーズだからこそ可能となる奇想の仕掛けに驚きました。
本格ミステリが大好きな気持ちが伝わる要素やセリフが多く散りばめられており読んでいて楽しい作品でした。☆7+1(好み補正)。 注意点として本作は単体では楽しめないです。 シリーズを順番に読んで作品の性質を把握した上で、著者が仕掛ける普通とは違ったミステリが味わえる作品となります。 シリーズの好みとしては、1作目は好みで2作目が思ったのと違う方向性で敬遠していたのですが、3作目の本書は前作の苦手意識が杞憂に終わり、ミステリのお約束をお約束としてそのまま扱う面白さや、AI探偵&主人公の掛け合いなど読んでいて楽しい作品となりました。 "四元館"という"館もの"作品の中で斬新さを打ち出す仕掛け。AI探偵シリーズという特性だからこそ納得できるバランスが見事でした。どんなにぶっとんでいても、そこに辿り着くまでの事前説明や要素がちゃんと小出しで盛り込んでいる丁寧さを感じます。 真相解明の終盤の展開と演出はかなり巧かったです。 犯罪AIがコーディネートする事件という設定もよく、今後の事件に期待が持てます。 主人公&相以と以相の物語としても今回は面白く楽しめました。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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あの世の喫茶店が舞台のライトミステリ。
死んだ魂が生まれ変わる前に訪れる来世喫茶店。大事な思い出、最後に会いたい人、生まれ変わる前のちょっとした相談、イケメン店主のマスターがいれる珈琲を飲みながら当時を振り返るという流れ。お客様の話を聞いていると、ふとした疑問や勘違いが発覚し、実はこういう事だったんじゃないかと謎が解き明かされる構成。バー/喫茶店もののミステリです。 大きな驚きや仕掛けは無いですが、出版レーベルのターゲットを考えると適した雰囲気や内容ですし、話も読みやすいので楽しめました。最後の章に至ってはそれまでのエピソードの繋がりを感じ、丁寧に役割や小道具を考えられている作りだったと感じます。女子小中高生でライトミステリをお探しの方にはオススメ。 一応の気になる読後感として、結末はハッピーエンド模様で終わってますが、主人公と家族の今後を考えると素直に喜べないのが本音でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイムリープ。人生やり直しもの。
17歳の男子高校生の主人公が爆発事件に巻き込まれてしまう。死の直前の世界で、7年前に戻りそれから7年間で全ての"奇跡の欠片"を集める事が出来たら生き残れるというゲームが提示される流れ。 記憶を保ったまま10歳の小学生からやり直す作品ではありますが、俺つえぇ系の知識をひけらかす内容ではなく、子供心として、あの時ああしていれば良かった、勇気が足りなかった、という後悔を改善して行動に移す姿を表現した作品に感じました。 読後に感じた事なのですが、この本は著者の後悔や願望なのでは?と思いました。 外国からきた金髪の女の子、趣味が通じる女の子、近所の年上のお姉さん、その時々に正しい選択をした事で仲良くなっていくのですが、何となく心境というか結果の盛り上がりの雰囲気から著者の昔の後悔や願望を感じた次第です。タイムループや死の回避の話の影は薄く、女の子との日常の楽しさの方がよく描かれており、恋愛ものゲームのフラグ回収のような感覚も受けた次第です。著者あとがきにソフィアのモデルがいましたとあったので、子供の頃の気になった人を投影したのかなと感じます。 悪い印象などの不快感はないのでサラッと読めますが、物語よりも著者の願望を強く感じた印象で、好みとしてはこの点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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うあー。久々にやられました。
最後の1ページの高揚感が凄まじかったです。 実はこの系統の作品は個人的に大好物なのです。ただしこの系統と呼ばれる要素はミステリにおいてネタバレ扱いな為、世の中調べる事ができません。なので中々出会えない部類の作品なのです。そういう意味で出会えた事に興奮しました。☆8+1(好み補正)。 手に取った切っ掛けは、最後の1文が凄いという評判からです。著者の作品は個人的に苦手なイヤミスで敬遠していました。読んでみるとやはりその印象に近く、明るく華やかという印象はなく、どこか淡々と不安になるような足運びで物語が展開します。ただ、結末はどうなるのだろう。この物語の終着点は何になるのだろう?と先に進み辛い不安と早く知りたい気持ちの複雑な心境の中での一気読みでした。そして最後そうきたかと。。これは最後の1文が優れているのではなく、この結末を最初に決めてあり、そうなる為の事前の物語の構築が巧いのだと感じました。 本書の作り方で巧いと思うのはミステリの事件模様でのドキドキ感は全くなく、登場人物達の内面から発する不安というか後ろめたさというか、そういう心理的なドキドキ感を読者に与えている事。読者への刺激の与え方が巧く、魅せたい所と隠したい所の表現がかなり優れており、分かりやすい言葉ではミスリード・伏線が凄い・そういう事に気づかされた読後感でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから感じるミステリ系の探偵ものではなく、個人的にイメージするザ・ラノベを感じる作品でした。
既に死んでしまっている探偵、能力者たち、モンスターのような化け物とのバトル、といった具合に、ラノベ・アニメ系のテイストを混ぜ込んだ作品であり、根底となる本筋は、探偵の女の子と過去に関わりがあると思われる主人公の男の子の青春もの。多ジャンルを混ぜ込んだ作品です。 作品自体は良く出来ており、読み辛さもなかったのですが、個人的な好みの問題でこの点数で。 序盤は惹き込まれましたが、その後はあまり好みではありませんでした。主人公とヒロインとの関係についても、死んでしまっているシエスタに思い続ける主人公の様子に共感が得られずです。ヒロインと感じる夏凪渚がサブに追いやられて可哀そうな感想でした。ちゃんと夏凪渚とシエスタとの意思を描いているので、夏凪渚本人は可哀そうではないのは分かっているのですが、ただのイタコのようにも感じてしまい、ここの所が好みに合わないきっかけになったかもしれません。 多ジャンルを混ぜた作品として整っていますが、他にはないこの作品ならではの尖った要素が1つあればもっと良かったと思いました。 |
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スパイ小説×ライトノベル。キャッチフレーズとなったキーワードは『騙し合い』。
『このライトノベルがすごい2021』の上位に掲載されており、内容が気になったので手に取りました。 読書前に期待していた『騙し』の要素はきちんとあり、ミステリを読みなれていない層には巧くいくと思われる……。歯切れが悪いのは、それをする為に物語を楽しむ要素が犠牲になっている点が多いと感じられた事です。詳しくはネタバレ側で。 ライトノベルとしてのキャラクター性はどうかというと、本書の表紙のリリィと先生の2キャラぐらいしか魅力がないと思いました。2巻、3巻と巻数を重ねる毎に一人一人にスポットが当てられていく構成だと思われます。なので本書単体で見ると各人の能力も未知数のままですし、主人公の能力が何かキーになるかというとそうでもない為、特定のキャラに魅力を持つという事が難しい状況でした。印象に残ったのは、最強な先生との駆け引きと、ドタバタのスパイ教室ぐらいな次第。 スパイ小説とはいえ、ライトノベルの雰囲気の明るさ・軽さで読みやすいのは好感。 ただ本格的なスパイ小説を読む方には非常に物足りなく感じるので、仕掛けにしても濃い一発が何か欲しいと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者初読み。物凄く惹き込まれた作品でした。
作品単体が凄いのか、著者の他の作品もこのクオリティなのか未知ですが、場や人物の情景が頭に浮かぶ素晴らしい地の文でした。あらすじから感じる内容は、苦手意識を感じる古めかしく難しそうな内容だったのですが、読んでみたらスルスル頭に入り、先が気になる一気読みの面白さでした。 物語は孤児の主人公が古くからの伝統風習を重んじる名家の養子になる所から始まります。読みやすいと感じるのが、主人公と読者の状況不明の感覚がシンクロした構成である事。名家に入り、そこで出会う人物、風習、仕来り、役目、といった情報と理解が、主人公を通して徐々に把握していく為、複雑な背景でも楽しむ事ができました。 ミステリというよりオリジナルの物語を楽しむ事に趣があります。ただ、あの時何が起きたのか、町で何が起きているのかが見えてくる終盤はミステリの解決編の様で楽しめました。一同が集まり一風変わった展開での解決編だったなという印象も得られました。 少し余談ですが、島田荘司・御手洗シリーズの龍臥亭事件ぐらいまでの初期の頃のワクワク感を思い出しました。ミステリより物語に夢中になっていたら最後何かが明かされる感覚。毛色は違うのですが、個人的にそんな感覚を思い出すほど惹き込まれた次第です。 扱う内容の雰囲気は地道で重苦しいものなのですが、読書中はそうは感じさせず綺麗に描かれている物語。素晴らしい作品でした。他の作品も手に取ってみようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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人工知能による死者の再現を軸に、何故彼女は自殺したのか?という謎を追いかける物語。
横溝正史ミステリ大賞受賞を受賞した本書。作品雰囲気は"横溝正史"から連想する古くアナログ的なミステリとは違い、人工知能を始めとしたプログラム要素となる機械学習や音声合成のワードもでる近未来風な作品。過去の受賞作品群と比べても少し毛色が違う為、受賞作品の審査時では新しく感じたのではないかと思う内容でした。 本書の主人公はかなりクセがあり読者に嫌悪感を与えやすい為、その感覚が本書の物語自体の評価に繋がりそうな危険を孕んでいると感じました。冒頭から主人公の特性付けとして紹介される内容は、勉強もスポーツも恋愛も何でも予想通りで人生が退屈であり自分の真の性格を表に出さないように仮面を被って生きている。みたいな流れでとても痛々しい。ただその痛々しさも最後まで貫いていけば一本筋で通る気がしますが、死者の水科晴に酔狂していく辺りから心境の変化と前向きに感じる良さもあれば、弱弱しくぶれていくと感じる面もある為に魅力を感じずでした。1番がっかりした所は頭の良い人工知能のエンジニアという設定で尖がっていたのに、写真のExif情報を知らないエピソードが出た時。をい!と思わずツッコミたくなってしまいました。一般人も知られてますし、エンジニアでは基礎知識であり人工知能学習ならそもそもExifも学習パラメータで使うでしょ。という感じでして所々設定が浅く感じてしまうのが残念に思いました。 主人公の癖が強いだけで物語の展開は面白く読めました。 水科晴の自殺の謎、それを調査していく流れ、人工知能開発の現場、調査していく内に不穏な流れとなる緊迫感、、、etc. 物語の起伏要素が多く飽きずに最後まで読めました。文章も読みやすかったです。 結末や真相についてはあまり納得できるものでなく、なんとなく当事者達で収束してしまった感が強くて好みに合わなかったです。横溝正史ミステリ大賞作品というのも違う気がしますが1つの作品としては面白く読めたので、あまりミステリを気にせず"人工知能で死者を再現する者達の物語"として捉えると、とてもよいドラマかと思いました。 |
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多くの方のレビューにある通り、上巻で辞めずに下巻まで読んでの意味が分かりました。
上巻は正直な気持ちとしては退屈でした。 最近『かがみの孤城』を読んで惹き込まれたので、著者のボリュームがあって敬遠していた過去作の本書を手に取った次第ですが、この頃の作品の構成は合いませんでした。 前半は登場人物の紹介と創作に関わる作家の卵達の物語。 何か刺激的な事が起きるわけでもなく日常ベースの展開。刺激的な要素として一応冒頭にて作品の影響による大事件が起きた事が描かれますが、この内容後に400ページ近く緩やかな物語を読むほど求心力を受けなかったのが正直な気持ちです。登場人物達の描き方も視点を変えて読む為、誰かに感情移入して深く読むこともありませんでした。一人気持ちがわかると思ったのは編集者の黒木でした。作家の卵達とは違い編集という版元に近い位置にいる彼。発言やドライな感覚がその立場としてよく伝わりました。 上巻はまったく合わずでしたが下巻の後半は確かに面白い流れでした。 波が立っていないスロウハイツに波紋が広がっていく展開は、やっときたかと思いながら楽しみました。終盤と読後感は良いものですが、それに至るまでが好みに合わず。 誰かに感情移入できなかったり展開が遅かったりという不満は『かがみの孤城』では全くない為、著者の成長前を感じる作品という印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ドラマと連動した企画もの作品。ネメシスシリーズとして担当話ごとに作家が変わるという試みの作品。
1作目は『屍人荘の殺人』の今村昌弘。最初にこの著者を持ってくるあたりは流石の采配だと思う。私自身、ドラマは見ていないのですが著者の作品という事で手に取った次第。 作品雰囲気はユーモア傾向。殺伐さはなし。 探偵事務所に所属する探偵と、その探偵以上に推理力がある女性のコンビによる事件簿。 ミステリとしての事件や謎解きの面白さはありますが、本格志向ではなく、あっさり小ネタ集の印象でした。 "ドラマ化と連動している"という前知識に引っ張られた感想かもしれませんが、正にドラマの脚本を意識した中身であると感じます。事件や推理の展開を描写するというより、パーティー会場や遊園地といった事件現場の施設の情景が印象に残りました。登場人物については特徴があまり感じられず、"探偵っぽい男性"や"実は天才の少女"みたいな設定で、現代作品では特徴がないというか華がないと感じました。 もし作者名を隠して読んでいたら今村昌弘作品とは気づかないと思います。ただ、本書の目的がドラマ化の為に映像や主演者に華を持たせる為の脚本物語として書かれたと捉えると、オーダー通りのものを作り上げたという印象になります。そして連作企画で複数作家によるリレー小説である事を考えると、著者の個性を主張しない塩梅で描いたとも思う為、そういう点では著者の技量が優れていると前向きにも感じました。文章もすんなりサクッと気軽に読める作品です。ただ、物語の内容評価としてはあまり印象に残らないのが正直な気持ちでした。 |
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素晴らしい作品でした。所々で心に響き、惹き込まれた読書でした。
デビュー作の『冷たい校舎の時は止まる』を彷彿させる青春ミステリを感じました。比べると、デビュー作はミステリ色や死の雰囲気が強かったですが、本書は青春物語にミステリの技法が盛り込まれているような作り。 まず、あえて少し違った視点で感想を挙げますが、ミステリ的な舞台設定はデスゲームもの。詳細はボカシますが、突然集められた男女。舞台のルール説明。1人だけ得られる報酬。この展開から起きる一般的な小説は疑心暗鬼で殺伐とした物語が多いのですが、本書は優しく温まり、心が揺れ動く話として描かれていた事が読書人生の中で新鮮に映りました。デスゲーム設定でこんな作品が作れるのかと驚いた次第です。 さて本書はミステリを期待して読む本ではないです。 そこに比重がおかれると少し物足りなく感じてしまうでしょう。 著者の描くファンタジー&青春物語の1作を読んでみる。程度の気持ちで読むのが丁度よい心構えとなります。 物語は、学校で悲痛な思いをし不登校になってしまった中学生の"こころ"(名前)。彼女の部屋の大きな鏡が輝き、吸い込まれるように中に入ると同じ年代の男女と城の中で出くわします。主人公含む7人の男女。それぞれ何か闇を抱え、最初はギクシャクしながらも、徐々に心を通わせていく――。という流れ。 主人公の名前"こころ"とある通り、本書は中学生の心模様をものすごく丁寧に描かれている作品だと感じました。学校に行けなくなった理由を単純に"いじめ"や"不登校"という短い単語でグループ化してしまうのではなく、人それぞれ、一言では語れない関わる人や場やタイミング、その時誰かが言ったセリフなど、1つ1つが丁寧に描かれ、その状況を読んでこそ悲痛な気持ちがより浸透していくような、感情が揺さぶられる読書体験でした。 終盤の展開はこうなるのだろうと想定の範疇でしたが、文章や展開に惹き込まれて感動しました。 10代の小中高生にはとてもオススメな作品です。素晴らしい作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者作品はSF寄りの記憶をテーマにした作品がいくつかありますが本書はその1つ。
・前向性健忘により記憶が保てない主人公 ・触れた相手の記憶を操作できる殺人鬼 この2人の衝突の物語。 まず殺人鬼の行動や言動が胸糞過ぎて気分が悪くなりました。暴力から殺し、洗脳、日常の人々に対しての強烈な悪です。白昼堂々犯罪を行っても周りにいる目撃者の記憶を改ざんし自由に活動する倫理破壊。気分が悪くなりますが、ホラー文学として気持ち悪くなる文章や物語が巧いなという感想も得ました。苦手な人は苦手な話が多いです。 対して、記憶が保てない主人公。目覚めた所から物語は始まり、枕元に置かれたノートには自分の記憶障害と、"殺人鬼と戦っている"というメモが残されている。状況の混乱や疑心暗鬼、一方、慎重な言動や推測など頭を働かせる様が面白く読めました。 殺人鬼にどう挑むのか。悪との遭遇のサスペンスとして、不安な気持ちを抱えたまま最後まで一気に読めた面白い作品でした。 同じ主人公・田村二吉が登場する未読の別作品がある為、いつか追って読もうと思いました。 |
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個人的にかなり惹き込まれた作品でした。とても面白かったです。
物語は特殊設定もの。 世の中に『天使』という存在が突如現れた世界。人間の罪を監視し、2人以上殺したものは地獄に引き摺り込まれる。 連続殺人という行為があり得ない世界の中、孤島の館にて事件が発生していく。 特殊なルールによるミステリとして期待されがちですが、個人的にはミステリとして楽しむというより世界観の方が楽しめました。天使自体の存在、天使が降臨した事により変わった世の中、犯罪が減り探偵の存在意義の変化。世界観がとても丁寧に描かれていたのでSFやファンタジーものとして惹き込まれた次第です。 現実的な要素で代弁すると世界が変わる"災害もの"としても捉えられます。震災・隕石での崩壊と違い、天使という切り口で世界の変容の新しい物語を作り、そこにしっかりと本格ミステリを絡めているのが見事でした。 登場人物達も分かりやすく特徴があり読んでいて面白い。キャラの雰囲気は明るく魅力的なのに対して世界は悲壮感に包まれている対比を感じました。主人公の探偵としての悩み、過去の仲間達との良い思い出と苦悩。色々な感情も心に響きました。 タイトルから感じますが、ミステリや事件要素ではなく、探偵とは何かに趣がある内容。 物語としてとても面白い作品でした。 |
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