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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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ヴァン・ダインのデビュー作
期待していたのですが正直いまいちでした。 主人公である探偵役のヴァンス、検事、警察、そして語り手であるヴァン・ダイン。 ヴァンス以外の人物が、事件の解決に向けて何かひとつでも有意義な発言や行動をしただろうか。 語り手であるヴァン・ダインが本来ワトソン役であるべきと思うのだが、この作品における彼の存在感のなさは半端ない。 ワトソン役を演じているのがどう見ても検事マーカムなのだから、当然警察はそれ以下の無能集団として描かれざるをえない。 哀れなりヒース。 まさにヴァンスの無双状態であり、しかも事件当日現場を見た時点で犯人が分かっていたというのだからなんともはや・・・ 拳銃の弾の入射角から犯人の身長を特定する事すらできない警察。何とバカにされたことか。 探偵役の常人離れした推理力を表現するのによくあるパターンとはいえここまできたらやり過ぎだろう。 しかもヴァンスの芸術に関する知識のひけらかしが相当に鬱陶しいのだ。 しかも推理と全く関係のない内容まで相当に含まれている。 おかげでリーダビリティまでが最悪なのである。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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カー三作目。
これまで「皇帝の~」「緑の~」とカーらしくないといわれる作品を選択していましたので、「らしい作品」は初めてになります。 前知識としては「密室」「オカルト」があり、二階堂黎人の「人狼城の恐怖」っぽいのを想像していましたが・・・ 正直想像していたものとはかなり異なりました。 しかしカーの魅力が存分に味わえる作品とのレビューが多く、以後カーの作品を読む時は「これがカーの魅力」と言う事を前提に読んでみたいと思います。 「連続殺人事件」というタイトルは作品の内容に合っていないように思え、正直このようなありきたりなタイトルである事が勿体無い気がしています。 英語タイトルには「自殺」と明記されているわけですから・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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交通事故をテーマにした短編集。
信号無視、車道横断、路上駐車、煽り運転、ポイ捨て、無免許運転。 無免許運転やポイ捨ては論外かと思いますが、他は結構やっていたりしませんか? 違反だとは知っているんですよね。でもそれ程悪質だと感じていなかったりしますね。 「みんなやってんじゃん」「大したことない」「誰も見てない」みたいな。 しかし当然というか、この作品ではそれがきっかけで事故が起こってしまいます。 間が悪けりゃとんでもない大惨事を招くんです、みんな交通ルールは守りましょう。 ・・・っていう話かと思いきや、それだけでは終わらせてないんですよねこの作者。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ガリレオシリーズの長編2作目。
「献身」の次は「救済」 両作共に、犯人のキャラがかなり突出している倒叙型で、ハウダニットを楽しむ作品。 「献身」も「救済」も意味的には「相手のために~」というどこか似た意味合いを持っています。そして主語は何れも犯人。 この作品の場合、ラストにタイトルの意味が分かる凝った作りになっていますが、これを「救済」と言っていいのか若干腑に落ちない感じはします。 また「聖女」とは「神聖な事績を成し遂げた女性」または「慈愛に満ちた女性」という意味があるようですが、これは犯人のイメージとはかなり違いますね。 でもやはり長編がいいですね。 内海、草薙が異なる方向から事件を追いますが、何れも事件解決に大活躍。 湯川以上に存在感がありました。この作品の見所の一つでもあります。この展開はやはり長編でしか読めないですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ショートショート含め8本の作品が収録されていますが、軽めのミステリが多いっていうか軽すぎっていうか緩すぎですね。
ショートショートの4作品は携帯サイト向けに書かれたものらしく、なる程そりゃ字数制限やら何やらの制約もあったのかなと思わせる内容。 特に「殺風景な部屋」には脱力で、小学校低学年向けの推理クイズ並の真相には逆に意表をつかれてしまいました。 正直タイトルに惹かれたというか、かなり期待していた表題作。 相棒が盗作疑惑に巻き込まれ、右腕(?)を失い窮地に陥った火村に最後有栖が・・・てな内容を期待しながら読んでいたのですが・・・ 「パロディじゃねぇか(笑)」 面白かったですけど、この作品にこのタイトルは勿体なさ過ぎでしょう。 後は、こういう大掛かりなトリックがこの作者さんには珍しい気がして「あるいは四風荘殺人事件」が印象に残りましたかね。 それとミステリ云々とは全然関係ないんですけど「雷雨の庭で」の中で、某人物が有栖の作品を3作所有しているという記述がありまして、想像するに持ってないのは「女王国の城」だろうなぁとか思ってみたり。 実際「双頭の悪魔」から15年も開いた訳ですが小説の中ではどういう設定なんだろうか? この作品が発表された時には既に「女王国の城」は出てたはず。 |
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不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた既婚男性が(あっさり)不倫に至り、それを正当化しようとする無理矢理な思考、言い訳、嘘、嫉妬、そして女性に振り回され最終的に主導権を握られる姿などなど・・・
実際一線を超えるまではいかなかったにせよ「あれっ?もしかして?ドキッ!!」なんて経験した人は意外と多いと思いますね? リアリティありすぎて正直笑えなかったのでは? 「俺たちは男じゃなくなった。亭主とか父親とかおっさんとか、そういうものに変わったんだ」 世の女性から相手にされなくなった哀れな自分を正当化するための言い訳にすぎないのですが、実際のところは内心まだまだやれると思っていたりします。 お母ちゃんは子育てに忙しくかまってくれないし、職場では責任の重い立場に追いやられます。 そういう弱ったところに付け込まれるのはお前が未熟なだけと(女性には)言われそうですが、男性ならこの主人公の気持ち分かるのではないかと。 かと言って不倫を肯定する気は勿論ないですけどね。 この主人公の男性が特別優柔不断、軟弱、小心者であったが故の物語ではないですよと言いたいですね。 「これが男の正体ですよ」と世の奥様連中に是非言いたい。かまってあげて。 不倫関係の板挟みのドロドロなんて読みたくないなぁと読み進めていましたが、ドロドロとはなりませんでした。 これは主人公の男性を取り巻く女性(奥さんと不倫相手)が一枚も二枚も上手だからでしょうね。特に奥さん。 普通はこういう収束はしないですね。地獄です。 この作品の嫁には何の落ち度もありませんので、男性側のバカさ加減が余計に浮き彫りにされていますが、満点嫁でも被害者になり得るって事ですね。 不倫男の行動パターンがヒントとして多く描かれています。 ある意味対策本として機能できるかも知れませんね。 ミステリっぽいイベントも描かれてはいましたが完全におまけレベルです。 |
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レーン四部作の最終章。
XYZそして最後の事件とこの順序で読み進めなければいけないのは当然だとは思う。 このシリーズには(シリーズ全体を通した)様々な伏線が張り巡らされており、この最終章に集約されるためである。 そもそもこの作品においてレーンは名探偵ぶりを発揮するに至っていない。この作品における探偵役はペイシェンスなのである。 レーンがいかに名探偵であるかはXYを先に読んでいなければわからないし、最終章におけるこのラストを成り立たせるためには、レーンに変わる探偵役(ペイシェンス)が登場するZも既読である必要があるのだ。 しかしその一方で、このシリーズを正しい順序で読み進めてきて、このシリーズに愛着を感じていた読者にとってはかなり首を傾げるラストではなかったかとも思う。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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レーン4部作の3作目。
Yの悲劇から10年後という設定になっています。 主要メンバもその立場を変え、そして年齢的にも老いたなぁという印象です。 得意の変装もなしです。変装しても変装した対象と同じ動きができない程、肉体的衰えが見えると言う事でしょうか。 こういう現実に則した設定は評価していいのではないかと思いますが、若干読んでる方は歯がゆくなったりします。 そんな中この作品には、サム元警視の娘ペイシェンスが新たに探偵(もどき)として登場します。 最後はやはり主役交代して美味しいところはレーンが持っていくのですが、序盤戦はレーンが手助けをする形。 (レーンと比較して)彼女の推理のまだまだ未熟な点や青さがよく描けていると感じたのですが、ただそんな彼女の一人称で終始したのはどうなのか。 おかげでこれまでの2作品とは大きく雰囲気が異なってしまっていますが・・・どことなく軽い。 この作品がこれまでの2作品と印象が違うなと感じるのは視点だけではありません。 死刑執行過程の描写が含まれているのですが、この箇所だけ異様に浮いているように感じました。 死刑が執行された日時は推理上で非常に大きな意味があるのですが、執行される人物は事件に全く関係のない人物ですし、不必要と思えるくらいの詳細な描写がなされています。 作者は死刑制度の現状というかその是非まで含めて世に問いたかったのでしょうね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ガリレオシリーズといえば、探偵役の物理学者湯川学が一見不可能犯罪をその知識を活用して解き明かすといったものですが、この作品の場合若干趣きが異なる感じがしました。
予知夢というタイトルからも想像できるように少々オカルトっぽい題材が多く、いつものあの湯川の読み手にある意味強要するような(理解するのも大変な)解説も薄まっています。 最初の2作品など、物理学の知識に殆ど関連していませんし・・・ そして最後の作品のラスト。 短編集ってどうしても軽く、後々まで印象に残るものが少ないのですが、ガリレオシリーズでのこのラストはインパクトがありましたね。 作品の前提そのものを覆してしまいましたけど・・・(苦笑) その一言が全てを持ってったって感じですね。 |
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「皇帝のかぎ煙草入れ」に続いてカー2作目。しかしまた異端作を手にとったらしい。
「心理学的推理小説」と銘打たれた作品。 元々曖昧な人間の観察力に心理操作が加わると真実とは全く異なるものが見えてしまう。 この作品は、それを利用した犯罪という事になるのですが、正直心理トリックものの難しさを痛感した次第です。 登場人物達と同じように、我々読み手に対して同様の心理的効果を与えられるのか。 読み手を納得させるのは大変でしょうし、実際全ての読み手を納得させるのは無理でしょう。 読み手は所詮はその場にいなかった部外者ですし、読む時のコンディションや気合の入れ方も様々でしょうから、全てにおいて「そんな上手い具合にいくかよ」と思わせないようにするのは無理というものです。 だったらどこまで納得できたかが評価の基準になるはずだけど・・・一様に評価高いんですよね、この作品。 もっと評価が別れてもいいような作品に思えたのですが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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「王手飛車取り」の続編となるこの作品。
その前作と合わせ技の趣向が凝らしてあって、「いつ気付くか」がこの作品のひとつのテーマになっているように思います。 個人的に好きです。こういう趣向。 単体で読んでも楽しめなくはないですが、はっきりこの作品は「王手飛車取り」を読んでから、しかも直ぐではなく少~し時間を空けて読むべき作品ですね。 これがこの作品を100%楽しめる一番の読み方かと。 ヒントが小出しになっているのがまた憎たらしいですね。 しかもはっきりネタばらしするわけでもありませんし。 まぁ余り早く気付いたらそれはそれで面白味が減ってしまうのかもしれませんが・・・ 私は「王手飛車取り」を好みでなかったため高評価しませんでした。なもんで積読期間2年。2年はちょっと空き過ぎでしたね。 気付くのが遅かったもんで、気付いた時にはそれはもう関心しましたよ。 前作の評価を上げようかと今検討中です。 前作「なんでこんなラストにしたの?」って思っていたりしたのですが、ここまで考えられてのものだとしたら納得ですし素直に凄いなと思います。 前作を読んで間が空いてしまっている方は、この作品を読む前にネタバレサイトなどで前作のラストを確認してから読んだ方がいいかもしれませんね。 特に前半の数章を読んでどこか「違和感」を感じなかった方、まだ遅くありません。(前作の)レビューサイトへGO!! 作者の意図に気付かずに読み終えてしまうことのないように(笑) なんか内容とはかけ離れたレビューになってしまいましたが、ミステリとしても質が高いですよ。 前作のような非人道的なえげつなさは若干薄れてはいますが・・・ |
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前の章に登場した人物が次の章のメインキャラとなる6編の短編連作集です。
最後の6章が再び1章に繋がっているという円状の構成になっています。 これだけ聞くと、どこか伊坂作品を思い浮かべてしまいそうですが、伊坂さんには決して描けない道尾さんらしい作品になっているように思います。 興味深いのは、前半の3章までが、如何にもこの作者らしい重く、何とも後味の悪い結末なのですが、後半の3章はどこか明るい出口を感じることのできる結末になっています。 前半が闇、後半が光。そして最初の闇に戻るという感じでしょうか。 「虫媒花」、「風媒花」という表現は作中に出てきただけでなく実際にある言葉ですが、作品タイトルである「光媒花」という言葉はないので作者の造語なのでしょう。 光により花粉が運ばれて生を繋げていく花という意味でしょうか。 人間の人生を表している気がしました。 闇ばかりじゃ続いていけない。そこに光が当たることにより続いていく。 というより、暗い影も光があるからできる、闇があるからこそ光は明るい。 難しいですが、このタイトルにはそんな深い意味が込められているように思いました。 一つ一つの章は淡々としていてヤマはないです。勿論ミステリでもない。 構成の妙と、作者が深い箇所に込めた意味を汲み取る事を楽しむ作品かと。 日本語だからこそ描ける最早芸術と評してもいいような作品。 ただ好きかどうかは別問題。 |
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何の前置きもなくいきなり雀蜂との格闘が始まったので、回想シーンか何かだと思っていたら、続く続くよどこまでも。
ついに最後まで続きやがった(笑) 本来リアリティに欠けるオチはレビューの採点の際には減点材料と成るのですが、この作品では、そのオチがあるからまだ助かっているという印象。 とんでもオチのおかげで何とかミステリとしての体裁を守れたって感じです。 読中のネタバレを恐れるがために、参考文献を一切掲載しなかった「天使の囀り」でしたが、記載しなくとも、そのディテールの緻密さから徹底的に調べあげたなという事が容易に伺えました。 だからこそ読み手は、◯◯◯(ネタバレになりそうなので伏せ字)に関する知識などまるで有していなくてもそこにリアリティを感じることができたのです。 雀蜂やアナフィラキシーショックに関しては皆知っていると思ってサボっちゃいました? 雀蜂に追い回されるとそりゃ怖いですよ。 でもこの作品読んでいて怖いなんてこれっぽっちも思いませんでしたよ。 どこかのレビューに「悪の教典の下巻」と同じという事を書かれている方がいました。 まさしくその通りだと思いました。 このような投げやりな作品を書けてしまう下地が元々あったんですね。 |
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リーダビリティの高さはデビュー作からして健在です。
しかも「競馬(生産)界」という、興味のない人間には全く縁遠い世界を舞台としながらも、(恐らく)無知な読み手を置いてけぼりにはしていない。 主人公の女性がズブの競馬素人という設定がうまく機能しているように思います。 その一方で、競馬好きとされる人達に対しても、くどくて鬱陶しい記述にはなっていないです。 私はオグリキャップの時代からの競馬ファンでその方面には相当明るいですが全くその辺りのストレスを感じること無く読めました。 真相の方も競馬ファンなら容易に想像がつくといったモノでもありませんし、最後の二転三転も読み応えがありました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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島田御大の作品はこれまで数多く読んできましたが、その中で最低の評価をしたのが「眩暈」
この作品はその「眩暈」と同じプロット。 汚染障害者の書いた妄想レベルの手記が、記憶障害者の書いたファンタジーな童話に置き換わっただけである。 要するに、冒頭で(どう回収するつもりなのかと思わせる)大風呂敷を広げ、それを論理的に推理していくという流れ。 確かに論理的といえるのだろうが、そのやり方は強引にねじ伏せるという表現がぴったり。 どう考えても御手洗の推理が「唯一無二」なものとはとても思えないのだ。 しかしそれを「当然」というように断言してしまう。 普通の読み手には追従を許さないようなある意味特殊な分野に対するスーパー薀蓄披露により、推理に対して「正当性」という鎧を被せているだけな気がする。 御手洗補正がかかっているだけで、よくよく考えれば説得力がないと言えないだろうか。 その割にその推理は、無理矢理辻褄を合わせているだけでこじんまりしているのだ。 御大の本来の持ち味といえば大技物理トリックではなかったのか。 これも島田荘司らしい作品といえばそうなのかもしれないが、私が作者に期待する作品ではないなぁ。 それにしてもこの作者のページ数の多い分厚い作品は冗長な部分が多過ぎないか。 |
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