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梁山泊 さんのレビュー一覧

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レビュー数271

全271件 61~80 4/14ページ

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No.211: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ドクター・デスの遺産の感想

刑事犬養シリーズで終末医療をテーマにした作品。
終末医療をテーマにした作品は多く、私も最近何冊か読んでいますが、医療現場を舞台にした久坂部羊「悪意」、南杏子「サイレントブレス」辺りと比較するとやはり分が悪く、同じ社会派ミステリの葉真中顕「ロスト・ケア」と比較すると遥かにスケールで劣る気がしますね。

延命措置が高額となる以上、医師から安楽死を薦められる事は多くないのでしょうね。
前述の3作品同様、こういう現状を問題提起する作品だと解釈していますが、だとすればラストが不満ですね。
更に、捜査していく上での、犬養の取る立場もどっちつかずですよね。
誰の口からメッセージを発信させるかって、それはやはり犬養であるべきだと思いますから、そのせいで結果的にメッセージ性が薄れてしまってませんかね。
う~ん、それにこのテーマで、どんでん返しとか要らんし。

ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 (角川文庫)
中山七里ドクター・デスの遺産 についてのレビュー
No.210: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官の感想

シリーズ最新作を先に読んでしまったが面白かったので1作目を早速読んでみた。やっぱ面白い。
やはり、主人公・赤堀涼子がいいですね。
1作目という事もあり、より変人ぶりが際立って描かれてます。
周りから認められていない変人法医昆虫学者がその活躍によって偏見を覆していく。
日本人はこういうの好きなんでしょうね。
蛆ボールのグロさに耐えて読み進めると・・・意外と読後感はいいんですよ。
ただ表紙の赤堀涼子、これはない。
私は、小柄なゆりあんレトリィバァをイメージしてるのですが・・・

それにしても賞受賞後の2作目に、こんな作品を描くなんて凄いと思います。
Wikiで調べると、女性でしかもデザイナー。
生物学者だった父親の影響のようですね。
また楽しみなシリーズを見つけてしまった。

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
No.209:
(8pt)

潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官の感想

シリーズもののなんと5作目だったようだ。
ありそうでなかった・・・そんな印象ですね。
人為的に隠そうとしている事実をいとも簡単に暴き出す虫たち。最初の数ページで「これは面白いぞ」ってなりました。
元々外部からの介入を好まず排他的な捜査陣、そんな中、主人公である法医昆虫学者が少し変わった物怖じもしない若い女性である事、そして彼女の風変わりな捜査法を認めるベテラン刑事。
この二人の主人公の関係性がいいですね。
映像化を意識してヌルい作品を描く作家が増えている中、映像化したらTV局の電話が鳴り止まないだろうこのシリーズを描き続ける作者はスゴイ。
アリや蛆虫が苦手な人でも大丈夫ですよ。

潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
川瀬七緒潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 についてのレビュー
No.208:
(8pt)

スリープの感想

それにしても、この作者さんは、登場人物を変態まみれにするのが好きなんですかね。

この作品については、一人称の表記が変わったり、とか、分かりやすいというか、露骨過ぎですので、読み手に「何かあるよ」って警戒させるようになってますよね。
その他にも、あの某言葉遊びにも気付いたんですけどね。
なる程、そうまとめましたか、って感じです。
「イニラブ」より分かりやすいと思いますし、全然面白いですよ。

スリープ (ハルキ文庫)
乾くるみスリープ についてのレビュー
No.207:
(8pt)

届け物はまだ手の中にの感想

恩師を殺害された公務員がその復讐を終えた後、親友の豪邸に、殺害犯の生首を届け物としてアポなしで訪れるのですが、豪邸の中で「何か」が起こっているためか、肝心の家主になかなか会えない。それを、殺人犯が探偵となり、主の妹、妻、秘書を相手に推理していくという物語です。
「碓井由佳シリーズ」が大好きな私。
この作品も同系統で、この作者さんの描く、こういった閉鎖空間の中での心理戦、駆け引き合戦は本当に面白いですね。
殺人犯がいけしゃあしゃあと探偵役を演じる作品は何作か読んだ事がありますが、この作品の場合、全く別の事件を全く別の場所で推理するという。
この舞台設定がまず異質っていうかすぐれものな気がします。
この作品の場合、探偵役の公務員は、碓井由佳のような圧倒的な存在感がない、「弱い」かなぁ、と読中感じていたのですが、物語の幕引きを見ると、展開を支配していたのは女性陣だったんだなと。
この作者さんは、女性に対して何か苦い思い出をお持ちなのだろうか。

1つ難点を上げるとしたら、表紙のデザインで、屋敷内で何が起こっているか予想できてしまった事でしょうか。

届け物はまだ手の中に
石持浅海届け物はまだ手の中に についてのレビュー
No.206: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

神様の裏の顔の感想

お通夜の参列者達による群像劇で、神様のように慕われていた元教師が実は凶悪犯では? という話です。
参列者たちの何気ない一言が、パズルのピースになっていて、それが1つずつハマっていって1つの人物像を形成していくという流れになっています。
同じ事を感じられたレビュアーの方も多いようで恐縮ですが、その何気ない一言から読み取れる伏線ってのが、あからさまだったり、余りに唐突だったりで非常に簡単なんですね。
分からないように工夫していたりって箇所もあるんですが(後出しとか)、ここに何かある、ってのは、大部分の人が気付くかなと思います。
だって無駄な遊びがないんだもの。
予想できちゃって、それが当たっていて、「これでいいのか」って、少し失笑してしまいました。
兎に角、余りにも露骨というかわかり易すぎるので、私は読中、最後にもうひと返しあるものと思っていました。
正直、1つでも意外な伏線でも含まれていたなら、評価も大きく変わったかもしれませんね。
まぁ、それがなくても面白かったですけどね。
作者は元芸人さんらしいです。
それを知って思い返してみると、コントの台本って感じでしたね。


▼以下、ネタバレ感想
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神様の裏の顔 (角川文庫)
藤崎翔神様の裏の顔 についてのレビュー
No.205:
(8pt)

風の墓碑銘の感想

音道シリーズは「凍える牙」「鎖」に次いで3作目の読了なんですが、正直この主人公に魅力を感じないのです。
「男社会で差別的な扱いを受けながらも頑張る女性」を描いたシリーズという印象ですが、この主人公は好きになれないですねぇ。
安易に「パワハラだ、セクハラだ」と吠えるアホさはないものの、思考が今風の女性って感じもしないですし。
音道の魅力ってなんなんでしょう。勘が鋭いところ? だけ?
音道を認める周りの男刑事たちの方が寧ろ格好良く思えるのですが・・・
これが作者の狙いなのかな。
これで3回目のコンビとなる滝沢なのに、一向に距離が縮まらずで、滝沢の音道の扱いづらさにイラついたり気を使ったりの「心の声」が面白いのですが、普通の男だったら同じこと思うよなぁ。
過去2作よりは好きですね。

風の墓碑銘(エピタフ)〈上〉―女刑事 音道貴子 (新潮文庫)
乃南アサ風の墓碑銘 についてのレビュー
No.204:
(7pt)

ヘブンメイカー: スタープレイヤー2の感想

死んだ後、「死者の街」で蘇らされて、スタープレイヤーに選ばれた者は、10個までどんな願いでもかなえられるという、要は「神様ごっこ」な設定。
2つの視点で物語が進み、最後その2つの物語が1つに繋がるという構成もありがちだし、読み始めて好きなジャンルではないなとは思ったものの、その独特な世界観に魅了され結構楽しめました。
まるでまっさらな状態から、「町づくり」から始まり、グループが出来て、長が出来て、宗教のようなものが登場して、そしてやはり争いが起こる。
人類の歴史の縮図のようなものがそこには表現されていて、現代人としての知識や知恵を持っていても、同じ歴史を繰り返すものなんだろうか、と妙に納得できてしまった。
力を持つものは良識を持ち、力を持たないものこそがズルい事を考えるっていうのが面白いですね。
続編から読んでしまいましたが、十分楽しめました。

ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)
No.203:
(7pt)

ナオミとカナコの感想

女性が共謀して人間的にクズな男性を殺害、その隠蔽を図るという物語で、桐野夏生「OUT」からグロテスクさを取り除き軽さを足したような作品です。
そして何故か加害者側に肩入れしたくなるという最早エンターテインメントな仕上がり。
その分読みやすい訳ですが、そもそも穴と綻びだらけの犯行手口でハラハラドキドキ感は少ないかな。

ナオミとカナコ
奥田英朗ナオミとカナコ についてのレビュー
No.202: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

金雀枝荘の殺人の感想

館ミステリと言えば、綾辻の館シリーズでしょうが、この作品はちょっとした掘り出し物ですよ。
密室、見立て殺人と本格要素満載、雰囲気もあります。
で、トリックはというと、凄くシンプルで盲点をつかれた感じですね。
登場人物が多いのですが、主要人物以外の描き込みが浅く、何となく犯人が分かってしまうのが難点ですかね。
探偵役の中里が「島田潔」と重なって仕方なかったです。

金雀枝荘の殺人 (中公文庫)
今邑彩金雀枝荘の殺人 についてのレビュー
No.201:
(7pt)

消滅世界の感想

面白いか面白くないかとか好きか嫌いかなんてのは置いといて、着眼点とか世界観とか発想は凄いと思いました。
性行為を行うことはタブー視、夫婦であっても性行為をすれば近親相姦、子供は人工受精で授かり、男でも子供を産むことが出来、産んだ子供は皆で共有するという世界。
そういう世界において、本来の人間としての生き方を娘に教えんとする主人公の母親。
実際まともな人間は彼女だけなのだが、読んでいるとそんな母親が狂っているように思えてしまう。
私もその特殊な世界観にどっぷり誘われてしまっていた、という事だろう。
ただ、描写が生々しく「プチグロ」で読み進めるのが若干辛かった事、そして何より大風呂敷な設定の割に着地点がアレで結局何を言いたかったのかよく分かりませんでしたね。

消滅世界
村田沙耶香消滅世界 についてのレビュー
No.200: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

満願の感想

タイトル作である「満願」を含む6作品の短編集です。
米穂さんの短編集は「追想五断章」といい「儚い羊たちの祝宴」といい、強烈なインパクトがありました。
この作品も、この2作同様に凄いです。この作者さんの短編集は凄い、ホントに凄い。
タイトルからも想像がつくと思いますが、人間の「願い」をテーマにしているおり、これが何れも第三者を巻き込む「願い」なんですね。
こうなってくると、人間ってやっぱり利己的なんだと思いました。
で、騙される側というか、勘違いしている側というか、知らぬは◯◯ばかりなり、の◯◯にあたる人物の一人称描写なんですよね。
◯◯さんと一緒に騙されて、最後に相手の本性が見えてラストでビックリ、っていうパターンです。
「後味の悪さ」ってやつは健在で、後からジワジワくる系ですね。
で、大技じゃないんですよね。
ちょとした「誤認」を大きなインパクトにして読者に叩きつける感じです。
「古典部シリーズ」と同じ作者の作品とは思えない、なんて思ってたんですけど、普通なら見逃してしまいそうな小事に着目して、そこからひっくり返すっていう点では、つながってるっていうか同じなのかな、って考えを改めさせられました。

満願 (新潮文庫)
米澤穂信満願 についてのレビュー
No.199: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

龍臥亭事件の感想

島田荘司版「八つ墓村」といったところでしょうか。モチーフとした事件が同じですからね。
ノンフィクションタッチに描かれているものの、壮大なトリックあり、失笑しそうなトリックもあり、御大らしさ満開といったところですかね。
御大の作品で、かなりの長編というと、事件に直接関係ない、いつもの「冗長の二文字」が頭を過ったのですが、この作品にはそういう点はありませんでした。
これ高評価ポイントです。

で、御手洗シリーズなんですが、御手洗は登場せず主役は石岡です。
登場せずというより「直接は」登場せず、と言った方がいいかも知れません。何れにせよ殆ど登場しません。
その割に、事件の真相は複雑この上なく、本来こんなもの石岡くんに解けるわけないじゃないか、というレベルである。
過去の事件をモチーフとした単なる連続猟奇殺人事件に見せかけておいて真相は相当に込み入ってます。
なので面白いです。御手洗シリーズではかなり上位にランクされる作品になると思います。

ただやっぱ「密室」って、読み手を引きつける1つの要素なんですよね。ワクワクしますから。
そこをどれだけ上手く処理するかが、その作品の評価に大きく影響すると思うんですけどね。そこを蔑ろにはしてほしくないですね。
この作品に限らず、最近、ほぼほぼ諦めながら読んでること多いんですけどね。
それと、事件の真相に大きく関わっている人物をラスト近くまで隠しているのもどうかと。
「誰?」ってなるじゃん、普通。

まぁ色々不平不満言いましたが、面白かったのは間違いなしです。

龍臥亭事件〈上〉 (光文社文庫)
島田荘司龍臥亭事件 についてのレビュー
No.198:
(7pt)

パレートの誤算の感想

タイトルは、経済学でよく言うところのパレートの法則、いわゆる「働き蜂の法則」そしてその亜種である「2:8の法則」からきています。
働いているのは全体の8割、その中でも2割の優秀な人が,全体の8割へ貢献をしている、そして残りの2割の人は全く働かない、ってやつです。

テーマは「生活保護」
法則に当てはめ、「働かないやつは必ずいるわけで、生活保護なんて無駄だ」と誤解している人がいる、即ち「社会に(殆ど、または全く)貢献できていない8割の人も怠けているわけではない」という事を言いたかったのかなと勝手に思っています。私の意見とは違うのですが・・・
ただ、このタイトルと物語の内容が合っていないように思えて仕方がないのです。
正規という言い方はおかしいですが、正規の不正受給者というより、弱者を利用するヤクザに付け込まれての不正。
結局、ヤクザVS公務員(警察含む)になっている。
実際そういうのもあるとは思うのですが、今年小田原の方で色々あった事ですし、その辺りの話が色々勉強できればと思っていました。
少しがっかりでしたかね。まぁ面白いですが。

パレートの誤算 (祥伝社文庫)
柚月裕子パレートの誤算 についてのレビュー
No.197:
(8pt)

ハケンアニメ!の感想

アニメ制作現場の裏話的なお仕事モノです。
監督、プロデューサー、アニメーターである女性が主役の連作集ですが、時間軸は同じ、同クールのアニメ業界の裏側では何が起こっているのか、を3つの方向から描いた話になります。
アニメに興味がない人でも十分に楽しめると思います。
実際私は、興味が無いというよりどちらかというと、作る側の人間に対しても、それを前のめりで見ている人間に対しても、好意を持っていませんが、楽しく読めましたので。
特に3作目のアニメータの話が好きでした。
自分達を「非リア」と称して「リア充」な連中に対する斜め下からの歪な心理描写などは、この作者得意とするところでしょう。
「非リア」というより「社会不適合者」だと思って読んでましたが・・・
変人がノーマルに変わっていく過程がよかったです。

チヨダコーキも登場します。
「スロウハイツの神様」って、辻村作品の色んな起点になってるんだな、って思えてきますね。

ハケンアニメ!
辻村深月ハケンアニメ! についてのレビュー

No.196:

流

東山彰良

No.196:
(8pt)

流の感想

祖父を殺された青年の犯人探しの物語ですが、謎解きというより主人公の成長の物語と言ってよさそうです。
そういうと、青春モノ、人情モノなのかっていう話になりますが、寧ろ歴史モノやドキュメンタリーと言った方がしっくり来るような気がします。
ミステリ要素もありますしね。
でも、ごった煮って感じではないです。
時代の激「流」に翻弄されながら、転がる石のように「流」されていく主人公の人生。
ビシっと一本筋の通ったしまりのある作品だと思います

舞台は70年代の台湾で、我々には余り馴染みのない設定になりますが、当時の台湾の文化や情勢が庶民目線で語られています。
国民性ってこうやって作られていくんだな、なんて感じながら読んでいました。
台湾産まれの作者だからこそ描けた作品のように思いますね。
まぁおかげで登場人物の名前を覚えるのに一苦労しますけどね。

読後感もいい作品なんですが、この状況が長く続かない事を知っている読み手には、また独特の読後感を生んでますよね。

流
東山彰良 についてのレビュー
No.195: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

合理的にあり得ない 上水流涼子の解明の感想

これまで読んだこの作者の骨太作品とはかなり趣が異なっていて、この作品はかなりライトで気楽に読める感じです。
主人公の元女弁護士とその助手が依頼を受けてトラブルを解決するといったもの。
一見勧善懲悪モノのようにも感じますが、実は主人公の元女弁護士も「白」って感じではないですね。
というのも、主人公より、実際謎を解決しているのは殆どが助手の貴山。
どことなく麻耶雄嵩の貴族探偵っぽいかな。
その助手も決して「白」じゃないのですが・・・
短編なので、頭脳戦が展開されている割には浅く感じてしまうんですけどね。
主人公の二人のキャラが濃いし、シリーズ化するんでしょうね。

合理的にあり得ない 上水流涼子の解明 (講談社文庫)
No.194:
(7pt)

ヴィラ・マグノリアの殺人の感想

二人ほど人が死ぬんですが、体裁としてはコージーミステリそのもの。
軽いですが、軽く読みには登場人物が多すぎますかね。
とはいえ、クセの強い住人たちで覚えやすいと言えます。
コージーミステリですので、探偵や警察が介入する事はなく、住人たちの噂話を元に読み手に推理させるって感じですが、中盤辺りまではどいつもこいつも怪しいって感じで容疑者が絞れるどころか発散していきました。
どう収束させるのか少し心配になりましたが、奇人変人の住人達が少しずつ絡まりあい、ピースを埋めていき完成という辺りは流石ですね。
奇抜ではないし、若干突飛すぎる気もしますが・・・
で、やはり主眼は人間の醜さとか悪意とかで、この作者さんらしい作品といえるのではないでしょうか。

ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)
若竹七海ヴィラ・マグノリアの殺人 についてのレビュー
No.193:
(8pt)

鸚鵡楼の惨劇の感想

この作家さんは、あの「フジコ」以来の2作品目。
それにしても、この作者さんって他もこんな感じなんですかねぇ。イヤミスの女王と呼ばれているみたいですが・・・
エログロ全開って感じですね。
「惨劇」って言うほどの事件は起こらず、歪んだ人間達によるちょっと気持ち悪くなるような物語が続きます。
ただ、イヤミスを我慢して読み切った者しかその面白さまで到達できませんよ。

「フジコ」ほどのインパクトはないですけど、仕掛けまみれで面白いのは確かです。
まぁ、仕掛けというよりも「小細工」って感じもしないでもないですが・・・
しかも「鉄則」と言ってもよい仕掛けとも思うんですが、毎回騙されてしまうんですよね。
ただ、この作品に限っては、読み進めるうちに途中で「あれっ!?」ってなりました。
どこかでミスリードされてるって気付いちゃうんじゃないかな。
私の場合は、当たらずといえども遠からず、って感じでしたが。
そこが少し減点材料になりますかね。

某所で作者ご本人さんにリツイートされたんで1点おまけ。
鸚鵡楼の惨劇
真梨幸子鸚鵡楼の惨劇 についてのレビュー
No.192: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

島はぼくらとの感想

白辻村か黒辻村かって事になると、この作品は明らかに白辻村で、っていうか「真っ白」な作品。
これまで読んだ辻村作品では「異質」かも。悪い意味ではなくて良い意味で。
「こんな作品も描くんですね」って少し意外でした。

舞台は瀬戸内海に浮かぶ島。
島の生活ってのが、どこでもこんな感じなのかは分からないですが、元々住んでいた住民たち以外にも、Iターンで渡ってきた人達や、諸事情あって内地から逃げるように移住してきたシングルマザーが多く生活をしているという設定。
そしてそこには、島というある意味閉鎖された空間ならではの、大人たちにしか分からない複雑な事情が絡み合っています。
テーマは島に過ごす人間たちの繋がりの強さと別れでしょうか。
主人公はこの島に住む男子2名、女子2名の高校生なのですが、本来大人たちで何とかクリアしていくはずのそれら事情も、狭い世界の中では子供たちにも筒抜けで、巻き込まれたり、或いは、自ら巻き込まれに行ったりします。
将来、島から出るというのが基本路線の彼らの中には、島に残る事を宿命付けられた網元の娘もおり、繋がりが強いが故により別れが辛いものになるといった設定には、わざとらしさも感じざるを得ないんですけどね。
4人の高校生たちは価値観等、それぞれにタイプが異なっており、同じ島に暮らしていなければ友達にすらなれたかどうか。
そんな事を色々考えながら読んでいると、最後に涙腺崩壊するかも。
色々な諸事情がウルトラC的に上手く収束してラストはハッピーエンド、っていうのは、この作者さんらしく無い終わり方な気もしないでもないです。
なので後々印象に残らない作品なのかも知れませんが、読後相当「ほっこり」したのは間違いありません。

作品間での登場人物の往来が珍しくない作者さんですが、この作品には辻村作品では5指に入るであろうキャラである「あの人」が登場します。
チラッとの登場ではなくかなりの活躍と存在感を出してます。
地域活性デザイナーのあの人とタッグを組んでの続編がありそうな気がしますね。(まだ出てないよね)

島はぼくらと
辻村深月島はぼくらと についてのレビュー