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INの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.51pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全37件 21~37 2/2ページ
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「恋愛の抹殺」という言葉にひかれて手にとった。男女間の執心も愛憎も死によって消えもしなければ浄化もされない、ということを教えてくれた本。 『OUT』という作品に対しての『IN』なのだろうけれど、内容が対になっているわけではなく著者自身にとってのINとOUTなのだと思う。私はむしろINのほうにより心を揺さぶられたかも。個人的には非常に感銘を受けて様々なことを考えさせられたが、かなり好き嫌いの分かれる本だろうと思う。年齢層によっても好き嫌いが分かれること間違いなし。もともと好き嫌いが分かれる作家だと思うが、ファンの中でも賛否両論の作品、つまりOUT、ダーク、グロテスク、あたりの桐野作品が好きで同じものを期待して読んだ読者にとっては肩透かしを食わされた気分になるものだろうと感じた(私自身は上記3作品も好きだけれど)。 一読すると「○子」探しが特に興味深いわけでもドラマティックでもなく、○子が判明したからと言って意外でもなければわくわくするような展開があるわけでもなく平行するタマキのストーリーは私小説風味だし...なのにどうして読むものの心をここまで深く揺さぶるのだろう? 劇中作品『無垢人』において、そしてそれと平行して語られるタマキと青司のいきさつにおける現実と虚構の織り交ぜ方の巧みさ、「書くこと」に対する著者の真摯な姿勢、覚悟、気迫、けれん味の無さ、そういうものを全て力強い筆致で昇華した作品だから、と思う。 タマキに完璧に共感できなくても、主人公「タマキ」の恋人だった青司に魅力を感じなくても作者が様々な覚悟を持って書いた作品であるその真摯さに惹きつけられる。ストーリーではなくその深さ、そして、作者の筆によって揺り動かされる感情や考えにひたる作品と感じた。 『OUT』で放たれたパワーは力強く美しいけれど『IN』においてここまで自分の中に入り込みさらけ出すことは相当な苦痛を伴ったはず。それをやりとげた作者に頭が下がる思いがする。 本作を読んで今後の桐野さんの著作活動がますます楽しみになった。 | ||||
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「OUT」に対して「IN」とは何ぞや?に構造力で答えた作品。読書量の少ない方には余りおすすめしない。通常の世界が「OUT」「IN」の二項で成立するなら、この作品には主に「IN」「IN」「IN」という三つの世界のリンク具合が描かれている。センターの「IN」に向かう著者の意欲作。構造が複雑なので娯楽というよりは、入り方や解り方に関するテーゼ。 | ||||
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桐野夏生の小説には、読むとすぐにそれとわかるモデル事件が存在する。 『OUT』の井の頭公園バラバラ死体遺棄事件、『グロテスク』の東電OL殺人事件、『東京島』のアナタハン事件。 そして本作は、島尾敏雄夫妻と敏雄の作品『死の棘』、業界では誰もが知っていた作者自身のダブル不倫事件がモデルとなっている。 現実に題材を取る作家ではあるものの、しかし桐野は現実に取材する作家ではない。 本作の感想に、作家の取材方法がわかって面白かったと表現しているものを散見するが、桐野自身はこの手のインタビュー取材を行ってはいないのだ。島尾敏雄とミホ夫妻に対する子供側からの冷ややかな視線は、島尾伸三本人が、すでに赤裸々に綴っているところであり、桐野はそれを読んだだけであることは明らかである。 つまり、物語の後半、劇的に真相が明かされていく過程は、娯楽小説としてのスタイルであり、桐野の創作なのだ。もちろん、彼女の不倫相手も死んではいない。 娯楽としてのサービスが充分であり、巧いとも言えるが、甘いともいえる。 良くも悪くも、本作は『OUT』の裏面、対になる作品であり、『OUT』が最終局面で甘く緩い方角に流れたように、また作者のデビュー作の特徴である、「主人公だけに、とっておきの秘密をべらべらと喋る初対面の相手」という女性ミステリ作家にありがちな大きな欠点も抱えており、その欠点の分量込みで、桐野の出世作『OUT』の完全な再現となっている。 (事情を知らない方が本作を『OUT』と無関係と断じているが、桐野は不倫相手と『OUT』を作ったのであり、その創作に至る道筋が本作には書かれている。) 小説家が小説家を主人公にした小説は非常に多く、その大部分が作者の狭い世界の狭さを見せられているようで興ざめなものだが、本作は、その狭さをすさまじい深さで補い、充分に必然性のある激しい作品を作出している。 本作は、桐野の最高傑作には絶対にならないが、次へのステップとして大きな意味がある重要な作品であることははっきりしており、読むべき一冊であることは明らかだ。 | ||||
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主人公のタマキの小説とは何か、作家とは何かという真摯な自問自答の叫びは、 そのまま著者である桐野夏生のものとして響いてきた。また、島尾敏雄の『死の棘』 から着想を得たであろう私小説『無垢人』や、リアリティある作家と編集者の不倫の 恋の細部など、読者に敢えてタマキの物語は虚実ない交ぜの私小説ではないかと思わ せるところからは、桐野夏生の覚悟が垣間見えた。 タマキの名前そのままに、現実を自分というフィルターを通して虚構との間で<循 環>させ、小説をものする作家という生き方に対する覚悟だ。本作は「小説は悪魔で すか。それとも、作家が悪魔ですか?」との作中の問いかけにイエスと答えてでも、 <たった一人で言葉の世界に取り残され>てでも、小説に命を懸けていくのだという 桐野夏生の決意表明であり、その意味では彼女のターニングポイントになる小説に間 違いない。 | ||||
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桐野夏生ファンである。 追っかけて、追い続けてここまで来た。 「OUT」は外側に拡散していくような 広がりを持つ話だったように思う。 本作「IN」は初期の代表作「OUT」のアンサー作品なのかと、 軽い気持ちで手に取った。 うかつだった。 「IN」は小説そのものの構造もそうだが、 ひたすら、奥へと「分け入っていく」。 丹念に一点を見つめながら足元をひたすら掘っていくような、 一途な怖さがある。 掘れば掘るほど、自らが不安定になる、ような。 「恋愛を抹殺する」とはどういうことか。 小説家は悪魔なのか。 「小説を書く」ということの呪術的な側面と、 感情や生き方を削って「物を書くヒト」を 業深く、現代的に描きながら、 登場する様々な女たちの凄み。 この行間から立ち上ってくる禍々しい女たちの香気にもやられた。 読んでいて身震いがして、 思わずあたりを何度か見渡した。 記念碑的な作品であり、 「OUT」から今日までの彼女のある到達地点を示す作品だと思う。 俺はほんと十分楽しめた。 「○子」は本当は俺たちの中にいる。 | ||||
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主人公のタマキが、「OUT」を誤魔化したものとしか思えないような作品を過去に書いていたり、別れた不倫相手の担当編集者について、妙に生々しい貶すような描写ばかりだったり、タマキの経歴で、おや、と思うところが多々あったりで、どうしても、タマキ=桐野夏生? と思ってしまいます。しかし、そのタマキが書いているのは、過去の小説家、緑川未来男が書いた「無垢人」という作品についてで、この作品に出てくる不倫、そして不倫相手についても、どこまでが現実か、虚構かわからない。つまり、タマキ=桐野夏生も、どこまでが現実か、虚構かわからないということ。自分をどこまで書くのか、どこまで平然と嘘をつくのか。作家のサガに恐怖さえ抱いてしまう面白さでした。 | ||||
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桐野 夏生作品は、ほぼ読んでいてOUTもかなり面白かったので期待していました。 OUTに関連づいた作品でもなく、あまりにも期待しすぎたせいか正直面白くなかったです。 上手いと言えば上手い作品なのでしょうが、面白かったか?と問われると・・・ 次回の作品に期待します | ||||
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第二章の『茂斗子』の話が面白い。 この本を読み始めた当初は『○子とは誰か』が 物語の最大の焦点であると思っていたが、 そうではなかった。○子の謎は最後には明らかになるが。 もしも『無垢人』が死にゆく者の事であるならば、 忘れられない恋愛を抱えて死にゆく者と、 愛する者を一生許すことが出来ないままに生き続けている者と、 どちちらが不幸なのだろうか。 例えば、死んでもタマキを許さない青司と、 緑川が死んでも尚、生き続けて自ら心の血を流し続ける千代子と。 同じ葛藤を抱えていても『無垢な人』になれるだけでも、 死んでゆく人の方が幸せなのかもしれない。 小説に書かれてあることが『創作』なのか『真実』であるかは、 その物語の当事者にしか分からない。 作者が生きていれば作者に怒りをぶつける事も出来るが、 死んでしまっていてはそれも出来ない。 恋愛は、そして更にそれを文章にしたためる事は、 なんと多くの喜びと犠牲を生み出すことだろうか。 | ||||
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「OUT」に対して「IN」とは何ぞや?と期待して読んだものの、がっかりでした。 「東京島」のがっかりとまた違いますが、何がいいたいのかさっぱりわかりません。 「OUT」は気持ち悪くなりながらも先へ先へと読み進め、桐野夏生はすごいと感動しましたが、これはどう評価していいのか・・・??? 好きな作家なので期待も大きい分がっかりも大きいです。 評価の高い方は読み取る力がある方なのでしょう。 何度も読めばわかってくるかも知れませんが、何度も読みたい作品ではありません。 | ||||
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『OUT』があってのINというと、どういう話なんだろうとOUTを逆回しした殺人事件かと思っていたら、自分の内部に入り込むIN、作家の小説作法と恋愛について書かれたものだった。しかもこのINは韻を踏んでいる。鈴木タマキという作家の取り組んでいる作品、『淫』や隠、因、陰、姻が、タマキの恋愛、緑川未来男の『無垢人』という作品がリンクする。 『無垢人』という作品に出てくる、未来男の愛人、○子は、作品中で酷い扱いを受ける。そんな○子に気持ちが入って、『淫』でその存在を昇華させてやろうともする。そもそも○子がどういう存在で、誰だったのか探るうち、タマキ自身の不倫は「涯て」まで行き、彼女と阿部青司は「大河」を渡ってしまう。お互いの関係を変えようと必死になるうち、その価値が反転してしまった。「荒涼とした世界」から逃げたくなるタマキだが、最後まで○子については二転三転し、ラストは意外なつながりをタマキにもたらす・・・。 本書を読むうち、著者の『白蛇教異端審問』を思い出した。本書では、作家の内面を描くことで、著者の覚悟を見たような気がした。ミステリの桐野夏生という印象が自分にとっては強いのだが、またここから、作風が変わっていきそうな気がする。 | ||||
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「IN」は「淫」なのかと読み終わって深く納得する。どこまでも伏線があり、読者は読み解くことの面白さも同時に味わいつつ、小説の荒波を共有し、難破せずに最後まで行き着ける読後感も醍醐味。桐野ワールド炸裂で、その冴え渡る筆圧に、同年代で同時代を生きられる幸福感もひとしお。今後にさらに期待。新刊必読の作家なり。 | ||||
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「OUT」「グロテスク」で楽しませてくれた作家だけに、「東京島」に続いて本作もとっちらかったまま終わってるのが残念でならない。本来、とっちらかった物語は結末に向けて収斂していくところが醍醐味なのだが、今回もそれはなかった。 「OUT」「グロテスク」を読む限り、通常の男女の恋愛感情には距離を置いている作家と見たが、いくつかの男女関係が描かれているうちの最初に出てくる女性との関係だけが際立ったのは、それが唯一、この作家の本領を発揮した異形な部分だったからだ。主人公を含むその他の関係にはまったく感情移入できなかった。 それから使われている固有名詞や状況説明が何かの伏線かと疑う細かい描写が随所にあったが、結局何でもなかったものが多かった。ということは、無駄な描写が多いということではなかろうか。これは異形でもなんでもない、通常の恋人、夫婦、不倫の物語であり、男女の感情の機微が浅くしか捉えられてない、なんだか路線が間違っていると感じた。 好きな作家だからこそ、あえて言わせて頂いた。 | ||||
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確かに島尾敏雄の「死の刺」って不思議な小説だ。夫の不倫がもとで妻が狂気の世界に入っていくのだが、不倫相手の女はほとんど出てこない。いや、出てはくるけれど、もはや主人公夫婦の敵でしかない。諸般の事情を考慮しても、もとは夫が婚外恋愛してたわけで……相手の女性との恋愛はどうして、こうもあとかたもなく消えてしまったのか…… という疑問が「IN」の主人公の女性作家タマキの出発点だ。作中の緑川未来男作「無垢人」は「死の刺」が下敷となっているが(その換骨奪胎ぶりもすばらしい)、タマキはその中で、全く存在をかき消されてしまう不倫相手「○子」を探しつつ、小説「淫」を書いている。次々に現れる緑川ゆかりの老女たちの不気味さと、タマキの過去の婚外恋愛の苦い思い出と、その相手の死が複雑に絡み合って小説が進行する。 タマキ自身、ふいに関係が終わった(終わってもずるずるひきずった)青司(という元担当編集者)が、なぜ自分を棄てたのか、なぜあんなに理解しあえていたのに、会社の人事異動という外的な要因で、小説そのものに興味を失ったのか、理解できずにいる。その思いが、「無垢人」という小説への疑問と濃密に重なる。 別れた男の醜い嫉妬心、執着心、安っぽいエゴイズムや、自分と別れたあとで、どことなく精彩を欠いていく様子が冷徹なまなざしで描写されるあたり、女は怖い、と背筋が凍る。 一方で、この青司という男は実に魅力的でもある。タマキと青司が突然、新幹線で大阪に行き、蒸し暑い夜の道頓堀を、コンビニで買った一本のビニール傘に入って歩き、青司が子供の頃、川に猫を流した話をする場面は圧巻だ。ねばつくような、ひりつくような雨の夜の、男の暗い表情。突然の死によって、ふいに浄化されるその存在。男も、怖い。 そして何より怖いのは「小説」だ。薄汚れ、忘れ去られ、抹殺された恋愛が、夜の闇に妖しく浮かび上がり、永遠の輝きを見せるのだから。 | ||||
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私はこの作品、どうもよく分かりませんでした。 なので他の方の評価が高くて驚いています。 主人公タマキの実生活と、 緑川未来男の自伝的小説「無垢人」の世界が、 うまく上手く交わってはいたと思います。 謎の「○子」とは誰なのかという、 謎解きの点でもラストまで興味を抱かせてくれました。 ただ読み終えてみると、 前半の○子候補の回想は何だったんだろうと思ってしまいました。 エピソードとしては面白かったですが、 あの長さは必要なかったです。 そのせいでダークな世界が少し明るくなってしまったような気がします。 結論として、 作家と編集者という独特の世界が分からない私がのめり込むには、 少し厳しかったということです。 この世界に詳しい方には、もっとおもしろさを見いだせるのかもしれません。 | ||||
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桐野夏生さんの本は全て買っていますし、OUTは何十回と読んだ作品だったのですぐさまINを本屋に飛んで買いに行きました! 読んでみて、OUTとは全く違う作品ですが私は大好きな作品になりました。INもきっとまた何十回も読み返すでしょう。桐野夏生さんはとても美人なので不倫経験者ですよね?きっと結婚後何回も素敵な恋愛をされてるんだと思いました。桐野夏生さん最高です! | ||||
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「淫」という小説を書こうとしている小説家タマキと、既に発表された『無垢人』という小説が、作家の本性である冷たい視線と、破滅と分かっていても突き進まずにはいられない激しい恋愛を交差しながら物語が進む。 果たせなかった恋愛は、魂の死骸を作ったに違いないと考えるタマキ。 そのタマキが調査するのは、現実を切り崩すほどの虚構である『無垢人』のモデルとなった人であり、タマキの抹殺している過去の恋愛もが蘇っていく。 恥ずかしいなど思いもしない、他人の存在自体が意識に入ってこない恋愛。 時間の経過とともに腐敗していく恋愛。 消えて無くなる恋愛が、小説家の手にかかることで残されてしまう。 魂を奪う恋愛と小説が交差しながら、内面を深くえぐってゆくこの作品。 一度だけでなく、何度も読み噛み砕きたい読み応えがある。 | ||||
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小説家鈴木タマキは『淫』という小説を書こうとしている。そのテーマは、恋愛における「抹殺」である。ここうでいう抹殺とは、死を意味するのではない。自分の都合で相手と関係を断ち相手の心を殺すことである。その小説の主人公は、緑川未来男が書いた『無垢人』の中に登場して著者の愛人と噂されている◯子である。タマキは、◯子に関する情報を集める中で以前付き合っていた阿部青司との関係を鑑みる。 ☆なんとも言えずにダークな世界。桐野さんらしいドロドロした毒がある。☆戸籍上の正式な夫婦と不倫関係のカップルが、対比するかのように描かれている。☆でも…、それは正式に認められているかいないかにすぎない…。男女の関係は、そんな物では割切れない。愛し合う事に表も裏の関係もない。愛していた人が居なくなっても愛していた事や悲しかったことそして憎しみが消えることはまずないのだと思った。 | ||||
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