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彼女がその名を知らない鳥たち



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彼女がその名を知らない鳥たちの評価: 3.88/5点 レビュー 134件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.88pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全94件 81~94 5/5ページ
No.14:
(4pt)

デビュー作に比べて格段の進歩 !

デビュー作「九月が永遠に続けば」に次いで本作を読んだ。登場人物の特異なキャラクター設定のみに頼ったデビュー作には失望したが、本作で作者は化けたようだ。平凡な人間が抱える不満・鬱屈の掘り下げ方、男女間の機微の切り取り方、簡潔な文体でありながら濃密で狂気めいた世界を構築する描写力。いずれも格段の進歩を遂げている。

ヒロインは8年前に捨てられた元愛人の黒崎を忘れられないまま典型的な俗物中年男の陣治と同棲している33才の無職の女性。生計を依存して置きながら、陣治の卑俗さや無能ぶりを心から唾棄して暴言を度々吐く。ヒロインの言動が日常の範囲内なのか狂気の世界に入っているのか判然としない不穏な空気の中で読者を引っ張る筆力には凄味を感じた。「八日目の蝉」の前半を思わせる。また、舞台を大阪に設定している関係で、大阪弁で発せられる上述の罵詈雑言の嵐がある種の滑稽味を伴い、陣治への同情を引き出している辺り巧い。実際、陣治はヒロインに対して限りなく優しいのだ。反面、黒崎の魅力の源泉が伝わって来ない恨みがあるが、それが不条理感を増しているとも言える。

そして、ヒロインの前に同世代の妻子持ちの水島が現われ...。水島の造形には作者の僧侶体験が反映されている様に映ったが、水島の登場後、物語が却って凡庸化した感が否めない。繰り返される不倫、黒崎に捨てられた経緯、ヒロインと対照的だった筈の姉夫婦の実態、そして黒崎の失踪等が次々と描かれるが、要素を散りばめる事によって物語を複雑化される狙いが単なる昼メロ的パターン化に堕している印象を受けた。ヒロインと陣治と黒崎の幻影だけに焦点を絞った方が物語の濃密度を増したと思う。勿論、水島の登場はあるキッカケに過ぎないのだが...。

後半は小説としての体裁を整えたいとの意図からか既視感のある展開になってしまったが、前半の迫力と重圧感だけでも読む価値があると思う。今後も期待出来る作家ではないか。

彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.13:
(5pt)

久しぶりに痺れた名作

ここ最近、色々ジャンルを広げようと、これまで読んだことのない作家の作品を読んでいるのですが、久々に痺れる本、他の作品も読んでみたいと思わせる作家に出会えた感じです。他の方も書かれていますが、前半は、読んでいてかなりしんどい。寝る前なんかは読まない方がいいんじゃないかと思いますが、忘れられない男=黒崎を彷彿とさせる水島という優男が登場して以降は、過去と現実を行き来しながらストーリーがどんどん展開していき、読むのをやめられなくなりました。そして、最後、ラスト1ページ、涙がこぼれてしまいました。泣き本にはこれまでも何冊か出会っていますが、ラスト1ページだけで涙が出て止まらない本は初めてでした。苦しく切ない、本当に言葉では表現できない感情が湧きあがり、何とも言えない読後感が長い間後を引きます。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.12:
(5pt)

心地よい作品ではないけれど感動します!

8年前に別れた黒崎を忘れられない33歳の十和子は、寂しさから15歳年上のダメ男・陣冶(じんじ)と同棲している。
この陣冶の下品で貧相な様子の描写は容赦ない。
ストーカーまがいの執拗な電話攻撃、音をたてて食べ物を咀嚼し食事の途中で差し歯を調節、
あまりにもだらしなくて読んでいて虫唾が走るが、読み進むにつれて段々この陣冶の愛情の深さに感動すら覚えて来る。
そしてどんどん話にのめり込んで行き途中で本を閉じる事が出来なくなる。
心地よいと思える文章では決してないのだが、文章の奥底に人間の悲しみや切なさ、暖かさが感じられ段々心地良くなって来る。
あんなに嫌な男だった陣冶がラストに至るまでには愛おしくて堪らなくなる。ラストシーンには胸が苦しくなってしまった。
悲しさと愛しさで何とも言えない気持ちに…
すごいとしか言いようがない。
こんな深い愛情を与えられた十和子に嫉妬さえ感じてしまう。
沼田さんの本は止められない。今一番面白い作家だと思う。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.11:
(5pt)

読後、しばらく放心しました。いろんな意味で後引く面白さ!

こんなに下品で、いやらくて、怠惰で、気味が悪くて、なのに、こんなに深くて、心をかき乱される”純愛”を私は他に知りません。
読後は、かなり後を引きます。。。。
 
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.10:
(5pt)

最高に不愉快な、でも本当に最高傑作。

一言で言えば、99%不愉快で、生理的に不快な、けれど間違いなく最高傑作。
働くこともせず、ただ手ひどくだまされた男の影を引きずりながら、
自分が蔑むしみったれた醜悪な年上の男の世話になって一日一日、
ただ惰性で生を浪費する主人公の十和子。
15歳年上の同居人陣治は、かつて一流企業に勤めた栄光の残滓にすがりながらも、
今は肉体労働をしながらその日暮らしで十和子を食わせている。
十和子の独白で綴られる前半は正直、かなりつらい。
基本的に現在形で吐露される十和子の、陣治への嫌悪感に満ちた呪詛はおぞましい。
陣治を傷つけたい。この男から逃れたい。
だらだらと心の中で呪い、怒鳴る十和子は醜い女の感情のわだかまりそのものだ。
うるさい、黙れ、お前が死ね。
そう心の中で思いながらも、この救いようのない女の独白から読者は逃れられない。
昔の男・黒崎のような優男の水島にだまされ、また身体と金をむしり取られながら、
十和子はいつしか、陣治が黒崎を殺し、そうして今度は嫉妬から、
水島を狙っているのではないかという妄想にとらわれる。
しだいに壊れてゆく十和子。
陣治を殺すしかない、自分の幸せのために。
そう決意してその前にもう一度水島に会う十和子。
しかし実際に水島に会った十和子のとった行動とは・・
最後のページを閉じて、本当に手がふるえた。
解説を読み、またもう一度、ページをめくる手が止まらない。
苦しい。気持ち悪い。息が出来ない。
本にもし温度があるのならこの本は、間違いなく灼熱だ。
喉からぐいぐい、熱い棒を押し込まれて涙が止まらなくなって、
ようやく解放されたような脱力感。
気持ちよい読後感とはほど遠い。
初めてだ。本で悪酔できるなんて。
読み終わって自分がちゃんと現実に帰ってこられた、それに感謝した。
覚悟を持って読むべし。
そして読んだら絶対に、最後まで読め。
最後の最後に来る衝撃は、超・ド級の切なさだ。
彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)より
4344413784
No.9:
(5pt)

埋もれさせたくない小説

十和子は同居人の陣冶が虫唾が走るほど嫌いだ。黒い顔も中途半端な天然パーマもだらしのない食べ方も小さい陰嚢も白髪交じりの陰毛も全てが気色悪い男、その上他人から蔑まれていることに気付かず小心者のくせにデカいことばかり吠える、それが陣治だ。十和子はそんな陣治にあらん限りの悪態と罵声を浴びせる。陣治は卑屈な笑みを浮かべ十和子の世話をする。十和子はなにもしない。レンタルしてきた映画を部屋で転がって観ているだけの日々。こちらも壊れかけの駄目人間だ。ヘドが出そうなほどどうしようもない中年カップルの話が延々と続く。
この先、この陰々滅々な物語のラストが、あんなにも苦しいような純情と愛情とを鮮やかに描ききることになるなんてとても想像できなかった。まったく脱帽です。
共感を覚えるのは、十和子は駄目な方を自ら選んで生きていること。なげやりのようだったり運がなかったように見えても実はやじろべえのように不安定ながら自分自身で負のバランスを保っているのだと思う。
この小説は2006年に出版されたものですが、すでに絶版になってました。文庫本も出てません。出版社も書店もこういう良書に力をいれて多くの人に読まれるようにしてもらいたいものです。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.8:
(5pt)

ラストシーンで泣きました

カスタマーレビューを読み、図書館で予約して、期待しながら読み始めた。
最初の方は、心が弱く我儘な十和子と、同居人の醜悪な感じの繰り返しだったが、
だんだんサスペンス調を帯びてきて、最後の最後に悲しいドンデン返し。
ラストシーンでは、不覚にも涙がこぼれてしまった。
まさに「純愛サスペンス」です。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.7:
(5pt)

なにかもが、リアルで、共感できる。

話の大半は、十和子の、愚痴のオンパレード。
黒崎はステキだったな。とか
それに引き換え陣司は、汚いし、下品だし・・・みたいな。
うつうつと、文句が書かれているのに
全然、読む気を失わない。
しかも、「この女、壊れてるなぁ」って感じたのは、なんと物語の最後の方だった。
主人公の女にも若干、嫌悪は覚えるものの、
やっぱり、主人公と一緒に、陣司をうがった目で見てしまう。
水島が、嫌がらせを受けるようになり、陣司の仕業じゃないのかと、十和子に聞くものの
認めれば、それを理由に捨てられると焦る気持ちとか、
出会うきっかけとなった、クレーム対応で、用意された35000円の時計が
実は、3000円で売られていたと知ったときの粟立つ気持ちとか
しばらく会えなくて、やっと会える時に、水島にネクタイを選んで妻の振りをする浮かれた気持ちとか
なにかもが、リアルで、共感できる。
で、十和子側から物語りは書かれているので、陣司の件の鵜呑みにしてしまってたかも。
けれど、こんなでも、離れない理由が、きちんとあったのです。
1冊の本に、永遠、愚痴っても別れない理由が。
それは、読んでのお楽しみです。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
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No.6:
(5pt)

けがれの象徴だったのか

 気味の悪い恋人同士が描かれる。その、互いに傷つけあい依存しあう寄り添い方が醜悪である。終盤まで、その生々しい傷つけあい方、相互不信が生々しい。でもなぜか別れられない踏ん切りの悪さも、論理以前の説得力がある。
 陣治への生理的な嫌悪は、一人称で語られるだけにわかりやすい。それは理屈ではないからだ。理屈では、十和子の接し方一つで、陣治の献身が好転するだろうとわかるのだが…。読者としては十和子の徐々に明らかになるトラウマに共感してしまい、破滅的な十和子の行動を追認してしまう。仕方ないよね…嫌いなものは嫌いなんだ…と。
 だが、十和子が陣治を嫌うのは、論理的な心理メカニズムであると、終盤知らされる。陣治は、けがれの象徴だったのだ。そしてそれを最後まで引き受ける陣治のラストシーンは、鮮やかだ。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.5:
(5pt)

心配するって心をくばること

十和子は八百屋お七のように8年前に別れた(というか捨てられた)黒崎という男を思います。
あいたいあいたいあいたいあいたい。
十和子はうつろにDVDレンタル映画を見ること以外なにもしません。
十和子には同居人が居ます。
周囲からは別姓の夫婦であると考えられているような男が。
女の生理的嫌悪感を具象化したような男,十和子から決して離れない男です。
それが陣治です。
十和子は男を苛めて責めます。肺腑をえぐるかのように,存在を否定するかのように。
陣治はただひたすら打ちひしがれ,許しを請います。
そんな救い様の無いかのような状況から,十和子は更に立ち入り禁止の柵をなぎ倒して進みます。
見え隠れする男達の不誠実を,十和子は自己の虚無の中に隠しこみます。
欺瞞の多幸感を消さないために。
スモッグがはれる時,十和子はなにを見るのでしょうか。
抜群の小道具,いやになるほど冷淡な視線,完全にノックアウトされました。
大芸術!!
ところで著者のプロフィールにある,主婦→僧侶→会社経営って何者でしょう。凄すぎです。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
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No.4:
(5pt)

傑作

まず前作(デビュー作)に比べて筆力が格段に上がっている。比喩や日常の描写が秀逸で、そのデリケートな描出が物語に並々ならぬ緊迫感を付与している。タクラマカンのエピソードも全体を覆う閉塞感とリンクしていて良かった。これ以上は望めないだろうと思っていた前作の質を、あらゆる面で上回る出来だと思う。こうなると次回作が楽しみで仕方ない。
ただ、物語の核心とも言える「何故ピアスが陣治の部屋にあったか」という謎の真相が個人的には少し残念だった。もっともそれはミステリ的な読み方をすると残念という意味で、この作品の色からすれば気にするべきところではないのかもしれない。
最後に、作品自体の質とは違う話になってしまうが、表紙がすばらしかった。記憶していないか、或いは単に読み方が拙かっただけだと思うけど、自分はこの物語のいずれの場面でも「青空」を思い描くことができなかった。壊れそうな緊張感に終始するこの物語には、降雨寸前の曇天、あるいは星の浮かない夜空がよく似合う。あのエンディング、胸の締め付けられるような思いで読了したとき、本を閉じてそこに青い空があると、本当に救われた気分になる。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.3:
(5pt)

[彼女がその名を知らない鳥たち]を道徳で裁けるか

お花畑さんのコメントを読み、意見交換したいのですが、方法がわかりません。お花畑さんはこの作品の愛の形について、後味が悪い、と書かれています。その理由を、追記のなかで「こうした愛が成立するならストーカーだって愛があるといえるのではないか」といった趣旨の意見をのべられています。相手への思いやりが愛の根源的な問題、本質であるとも。
たしかに、私たちがいきていく上ではそうした規範も必要かと思います。しかし、規範や道徳を問題にするなら、絵や小説や詩歌などは、私たちにとって、必要のないものとなるのではないでしょうか。谷崎潤一郎などまったく不要で、島崎藤村も(晩年の)椎名燐三も田山花袋も存在するに足りないものとなるのではないでしょうか。日常を離れたところに存在するある何か、自由と呼んでもいい、開放と呼んでもいい、そうしたものを求めて私は読書します。読書のなかにおいては、「ストーカー」だって立派な愛、ねじれていようが、裏返っていようが愛であり、人間の本質に迫っているならば何だってアリ、と私は思います。ワイドショーなどで道徳の権化のような話を我が物顔でする司会者もいます。小説家もずいぶんコメンテーターとして出席していますが、ある事件をとらえて、人間の本質に迫る発言を耳にしたことは、いまだありません。ボキャブラリーにとぼしく、うまくいえませんが、嘆かわしいことと私にはうつります。お花畑さんが既成の概念を排除して作品を読めば、世界がもっと広がるように思いますが、少し言いすぎかもしれません。お前はどうなのかと問われると、読解力にはあまり自信がありませんから。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.2:
(5pt)

不器用な愛の交差

もし実写化になったらどんな風になるだろうと思うくらい内容に厚味があって面白かったです。
ほのかに緊張感が漂って、結末はどうなるのだろうかとハラハラされられながら一気に読みました。
主人公を含め登場人物たちが順々にほつれていく様が見ものです。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399
No.1:
(5pt)

ミステリーとして読んでよいか。

この作品は人間の内面を突きつめていく中で、愛なるものを屹立させ、一切の妥協を排除して愛を結晶化させています。前作「九月が永遠に続けば」同様、この作者の作品はどうにも純文学的ですね。しかし、エンタメとして読んでも人間のダメさかげんのなかから、ドラマが展開されていき、十分に面白いと僕はおもうのですが・・・。十和子も陣治も僕にとっては愛すべき人間です。変な人間が好きで、人間のくだらなさが好きで、しかし、それをつまびらかにすれば身辺が息苦しくなるので、僕は本を読みます。キレイゴト、道徳、そんなものに堕した物語など、噴飯ものだと思いますが、いかがですか。
彼女がその名を知らない鳥たちAmazon書評・レビュー:彼女がその名を知らない鳥たちより
4344012399

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