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身の上話
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身の上話の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.06pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全105件 81~100 5/6ページ
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辞書によると左記のように出ます。まさしく平凡な田舎の書店の販売員が、気まぐれで不倫男と頼まれた宝くじと供に東京についていったことにより始まる平凡でない境遇についての身の上話です。ちょっとマイペースな女の子の気まぐれな逃避行の物語かなと思っていたらなんとなんと殺人事件まで出てきてこれはまさしくミステリーじゃないですか。こういう時って一番無難なやつが一番あやしいんです。そのセオリーは生きてます。でも、まさか語り手の主人公の夫までもぶっちゃけるとは思いませんでした。 彼女について知ることのすべて (光文社文庫) | ||||
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辞書によると左記のように出ます。まさしく平凡な田舎の書店の販売員が、気まぐれで不倫男と頼まれた宝くじと供に東京についていったことにより始まる平凡でない境遇についての身の上話です。ちょっとマイペースな女の子の気まぐれな逃避行の物語かなと思っていたらなんとなんと殺人事件まで出てきてこれはまさしくミステリーじゃないですか。こういう時って一番無難なやつが一番あやしいんです。そのセオリーは生きてます。でも、まさか語り手の主人公の夫までもぶっちゃけるとは思いませんでした。 彼女について知ることのすべて (光文社文庫) | ||||
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主人公の女性の旦那が、妻の身の上話をある人物に話しているという形式で物語は展開していきます。 主人公のミチルが不倫相手と一緒に東京へ衝動的にいってしまいその直前に職場の同僚に頼まれて購入した宝くじが、後に2億円の当選券に代わったことからその後の人生が大きく変わってしまうといった話です。 2億円の宝くじの存在のせいで、人生が大きく変わっていく様子がこの作品の肝で、先の展開が読めないところはとても面白く読めました。 良くできたエンターテインメント小説であると思いましたが、ミステリ小説として読むと終盤の展開が割と地味でそれほど衝撃の落ちがあるわけでもなかったのでラストの驚きを期待しているミステリファンには物足りないと思います。主人公の旦那についても職業やどのような過去を持った人物なのかは終盤明らかになりますが、あまり驚くようなことはありませんでした。 また、この小説は簡単な漢字がなぜか平仮名表記になっていることが多く、その部分については文章がけっこう読みにくかったです。(いちばん、むかし、おなじ、はんぶん、あとで、ほかのもの、におい、いっぽう等、例をあげればかなりあります。一と晩、一と月、一と息、等の表記も「と」が余計で読みにくかったです。) ストーリー自体は面白かったのですが、終盤も含め、全体的に淡々とした描写で地味な印象を受けた小説でした。 | ||||
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柳に風な人の身の上話には、引き込まれます。エッーなんでそこでそーなるのって地道に生きてる者はツッコミますよ。横道にはそれるけどもっと聞いてみたい部分もありました。商店街のドロドロ具合とか!でもそれは語り手が一人なので仕方ないですね。最後はもっと衝撃的かと思ってましたが手堅くキッチリ正しくでした。 | ||||
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柳に風な人の身の上話には、引き込まれます。エッーなんでそこでそーなるのって地道に生きてる者はツッコミますよ。横道にはそれるけどもっと聞いてみたい部分もありました。商店街のドロドロ具合とか!でもそれは語り手が一人なので仕方ないですね。最後はもっと衝撃的かと思ってましたが手堅くキッチリ正しくでした。 | ||||
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私の妻のミチルがたぶん、こう思いながらこれをやった、というような記述が最初から、ほぼ最後まで続くので、文章はかなり淡々とした印象です。 140ページぐらいまでは、ミステリらしい事件も起きないのですが、語り口の面白さで、つい読み進めてしまいます。そして、その先はじわじわと底から上がってくるような恐怖を感じはじめ、どうなることかとページをめくる手が止まらなくなりました。 ただ、贅沢を言わせていただければ、ラスト近くになって驚かされるものの、そのあとも記述が続いて、最後にどんでん返しのようなものはないので、ちょっと物足りない気がします。驚かせたあとはさっと終わるか、もうひとつひっくり返して満足させるか、どちらかにしてほしかった。なにか用意されているのではないかと期待してしまったので、あ、なんだ、淡々と終わるのね、と思ってしまいました。だれに身の上話をしていたのか、最後にわかって納得ではあるのですが。 | ||||
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私の妻のミチルがたぶん、こう思いながらこれをやった、というような記述が最初から、ほぼ最後まで続くので、文章はかなり淡々とした印象です。140ページぐらいまでは、ミステリらしい事件も起きないのですが、語り口の面白さ出つい読み進めてしまいます。そして、ここからはじわじわと底から上がってくるような恐怖を感じて、どうなることかと、ページをめくる手が止まらなくなりました。ただ、贅沢を言わせていただければ、ラスト近くになって驚かされるものの、そのあとも記述が続いて、最後にどんでん返しのようなものはないので、ちょっと物足りない気がします。驚かせたあとはさっと終わるか、もうひとつひっくり返して満足させるか、どちらかにしてほしかった。なにか用意されているのではないかと期待してしまったので、あ、なんだ、淡々と終わるのね、と思ってしまいました。だれに身の上話をしていたのか、最後にわかって納得ではあるのですが。 | ||||
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久々に読みごたえのある小説でした。 前半はどちらかと言うとコメディーっぽい展開。仕事中に近くの歯医者へ外出したはずの主人公が、同僚に頼まれた宝くじを買ったままフラリと不倫相手と一緒に東京行きの飛行機に同乗し“失踪”。この主人公が郷里の友人と電話で会話するシーンでの、必死に説得する同僚に対して能天気な受答えを繰り返す主人公のやり取りなどは情景が目に浮かぶようで笑えます。 ところがある事件が起こったところから、この小説はそれまでとは全く別の表情を見せ始めます。 その展開の素早さと乱気流に乗ったような激しさに、読む側はグイグイ引っ張られてしまいます。 この話のもって行き方は見事。 「この物語は最終的にどういう着陸の仕方をするんだろうか?」と誰もが思うはずです。大多数の読者は似たような結末を予想しながらこの物語を読み進めるものと思いますが、最後にさらに予想を覆す展開が待っています。 この小説は根無し草のように流され易い今どきの若者の空気を描きつつも実は核心はそこではなく、虚空さや人間の怖さを表現したものであり、その中で数回登場する“祈り”というシーンに象徴される「希望」のようなものを見事にブレンドさせた奥深い作品だと思います。含蓄があります。 後半になればなるほど重たくなって行きますが、読後はいろんな事を考えさせられる小説です。 “超大作”でなくてもこの余韻を残せる作品は稀中の稀。 | ||||
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久々に読みごたえのある小説でした。 前半はどちらかと言うとコメディーっぽい展開。仕事中に近くの歯医者へ外出したはずの主人公が、同僚に頼まれた宝くじを買ったままフラリと不倫相手と一緒に東京行きの飛行機に同乗し“失踪”。この主人公が郷里の友人と電話で会話するシーンでの、必死に説得する同僚に対して能天気な受答えを繰り返す主人公のやり取りなどは情景が目に浮かぶようで笑えます。 ところがある事件が起こったところから、この小説はそれまでとは全く別の表情を見せ始めます。 その展開の素早さと乱気流に乗ったような激しさに、読む側はグイグイ引っ張られてしまいます。 この話のもって行き方は見事。 「この物語は最終的にどういう着陸の仕方をするんだろうか?」と誰もが思うはずです。大多数の読者は似たような結末を予想しながらこの物語を読み進めるものと思いますが、最後にさらに予想を覆す展開が待っています。 この小説は根無し草のように流され易い今どきの若者の空気を描きつつも実は核心はそこではなく、虚空さや人間の怖さを表現したものであり、その中で数回登場する“祈り”というシーンに象徴される「希望」のようなものを見事にブレンドさせた奥深い作品だと思います。含蓄があります。 後半になればなるほど重たくなって行きますが、読後はいろんな事を考えさせられる小説です。 “超大作”でなくてもこの余韻を残せる作品は稀中の稀。 | ||||
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佐藤正午の新作。世評高く当レビュー上でも好意を以て迎えられています。7年振りの前々作「5」は凄く面白かったものの、前作「アンダーリポート」は今ひとつの出来。果たして今作はどうだったのか? 全く予備知識を入れぬまま購入、読み始めましたが、これがかなり人を食ったピカレスクな内容、しかし実に面白いのです。 どちらかと言えば目立たない地味な女性の、うちに秘めた感情の高まりが衝動的なアバンチュールを呼び、甚だ身勝手と思える行動の果てに、濡れ手に泡的な奇跡を掴むが、、、。 代表作「ジャンプ」が、ある女性の失踪の動機、謎をミステリー仕立てで追う展開なら、こちらは、数奇な運命を辿った女性の後日談から過去に遡って何が起こったのか解明していく。言わば、もうひとつの「ジャンプ」的物語。ただし、読了感はまるで違います。 底知れぬ人間の欲、瞬時に顔を出すエゴ、気紛れな衝動の代償、窮余の事態での自己中的防衛心、そして、人間の持つ根源的な負の、それ故に剥きだす人間的な本性を、ブラックな恐怖と笑いを内在させながら進みます。 その精緻な文章力とサイコ・スリラーの如き心理描写の妙。やや唐突な決着の付け方ですが、主人公の夫の講談調な告白による語り口に隠された意味が、「身の上話」などと言う凡庸なタイトル名と見事に連環するラストまで刺激的な魅力を放つ傑作。 「Y」、「永遠の1/2」、「ジャンプ」、「5」に加え、またひとつ著者の代表作が生まれた事を実感します。文句なしにお薦め。 | ||||
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佐藤正午の新作。世評高く当レビュー上でも好意を以て迎えられています。7年振りの前々作「5」は凄く面白かったものの、前作「アンダーリポート」は今ひとつの出来。果たして今作はどうだったのか? 全く予備知識を入れぬまま購入、読み始めましたが、これがかなり人を食ったピカレスクな内容、しかし実に面白いのです。 どちらかと言えば目立たない地味な女性の、うちに秘めた感情の高まりが衝動的なアバンチュールを呼び、甚だ身勝手と思える行動の果てに、濡れ手に泡的な奇跡を掴むが、、、。 代表作「ジャンプ」が、ある女性の失踪の動機、謎をミステリー仕立てで追う展開なら、こちらは、数奇な運命を辿った女性の後日談から過去に遡って何が起こったのか解明していく。言わば、もうひとつの「ジャンプ」的物語。ただし、読了感はまるで違います。 底知れぬ人間の欲、瞬時に顔を出すエゴ、気紛れな衝動の代償、窮余の事態での自己中的防衛心、そして、人間の持つ根源的な負の、それ故に剥きだす人間的な本性を、ブラックな恐怖と笑いを内在させながら進みます。 その精緻な文章力とサイコ・スリラーの如き心理描写の妙。やや唐突な決着の付け方ですが、主人公の夫の講談調な告白による語り口に隠された意味が、「身の上話」などと言う凡庸なタイトル名と見事に連環するラストまで刺激的な魅力を放つ傑作。 「Y」、「永遠の1/2」、「ジャンプ」、「5」に加え、またひとつ著者の代表作が生まれた事を実感します。文句なしにお薦め。 | ||||
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とある地方の町に住む古川ミチルは、地元商店街で書店員としてバイトをしていた23歳。同じ商店街の久太郎とつきあっているが、書店に時々、東京の出版社から出張してくる豊増ともつきあっていた。ある日、勤務中に歯医者に行こうと出かけ、ついでに途中、同僚から頼まれた宝くじ(全員でちょっとずつお金を出して何枚か)購入して、豊増を見送るうちに、そのまま彼について、羽田まで飛行機に乗ってしまい、1泊のつもりが、何日も東京にいることになる。吉祥寺には幼馴染の竹井という男子大学生もおり、書店を当然クビになり、家族から勘当され、父親に銀行口座のお金を抜かれても、当面は暮らしていけることになった。しかしそこから運命の歯車が急速に回り出す・・・。 当初は、どこにでもありそうな話の書きだしで、ちょっと読もうか、というつもりだったが、急展開していく内容にハラハラし、最後まで読み終えないと落ち着かない気分にさせられた。いったん動き出した運命は、まるで運動している物体が、急に止まれないのと同じように、急には方向も変えられず、もどかしかった。しかも、それだけでなく、最後にさらに驚かされることが登場し、さながら、お化け屋敷に入ってしまうと、もう出口に辿りつくまでは気が休まらないのと似ていた。何もなさそうに語っているのに、結構すごいことを打ち明けられた、そんな感じの本。 | ||||
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とある地方の町に住む古川ミチルは、地元商店街で書店員としてバイトをしていた23歳。同じ商店街の久太郎とつきあっているが、書店に時々、東京の出版社から出張してくる豊増ともつきあっていた。ある日、勤務中に歯医者に行こうと出かけ、ついでに途中、同僚から頼まれた宝くじ(全員でちょっとずつお金を出して何枚か)購入して、豊増を見送るうちに、そのまま彼について、羽田まで飛行機に乗ってしまい、1泊のつもりが、何日も東京にいることになる。吉祥寺には幼馴染の竹井という男子大学生もおり、書店を当然クビになり、家族から勘当され、父親に銀行口座のお金を抜かれても、当面は暮らしていけることになった。しかしそこから運命の歯車が急速に回り出す・・・。 当初は、どこにでもありそうな話の書きだしで、ちょっと読もうか、というつもりだったが、急展開していく内容にハラハラし、最後まで読み終えないと落ち着かない気分にさせられた。いったん動き出した運命は、まるで運動している物体が、急に止まれないのと同じように、急には方向も変えられず、もどかしかった。しかも、それだけでなく、最後にさらに驚かされることが登場し、さながら、お化け屋敷に入ってしまうと、もう出口に辿りつくまでは気が休まらないのと似ていた。何もなさそうに語っているのに、結構すごいことを打ち明けられた、そんな感じの本。 | ||||
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古川ミチルは地方都市の書店で働く20代の女。月に一度東京から出張してくる既婚者の豊増と不倫関係にある。ある時同僚に宝くじを買ってくるように頼まれたミチルは、くじを買った後、帰京する豊増と一緒に飛行機に乗ってしまう。その瞬間から、彼女の人生は思わぬ方向へと転換していく…。 佐藤正午の最新作、というだけで迷わず手にしましたが、すこぶるつきの面白さです。 かつて『ジャンプ』を手にした時に味わったと同様の興奮を覚えて、頁を繰る手を休めることができませんでした。 まず何といってもミチルを妻と呼ぶこの物語の一人称の語り手が一体何者なのか、その謎に引っ張られて先を急ぐ気持ちを抑えられません。物語の途上にミチルが何らかの形で正式な婚姻関係を結ぶ相手が現れる様子もなかなか見えてこないため、この「語り手」が何らかの「騙(かた)り手」ではないのかという疑念を振り払うことができません。そのもどかしさが私をとらえて離さないのです。 また、思わぬ形で転がり落ちていくミチルの人生が、決して荒唐無稽とは言い切れない奇妙な現実味を帯びていて、読み手であるこの私の隣の家でもひょっとしたらこうしたまがまがしい出来事が密やかに進んでいるかもしれないという、底冷えする気持ちにとらわれて仕方がないのです。 そしてなんといってもエンディングの見事なこと。 物語のたどりつく先をあらかじめ見定めることなく、その途上をたゆたうことのみを読者に求める小説が時にある中で、この物語の終幕は、確固たるメッセージを内に含んで読者の前に差し出されるのです。 どこかで人は踏ん張ることを学ぶべきである。それが生きるということの要諦である。 そのことをこの語り手は奥歯をかみしめながら訴えていると思うのです。 最後の頁を閉じた時、至福の読書を味わえたと心の底から思うことができる。 なんともお見事な一冊です。 | ||||
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古川ミチルは地方都市の書店で働く20代の女。月に一度東京から出張してくる既婚者の豊増と不倫関係にある。ある時同僚に宝くじを買ってくるように頼まれたミチルは、くじを買った後、帰京する豊増と一緒に飛行機に乗ってしまう。その瞬間から、彼女の人生は思わぬ方向へと転換していく…。 佐藤正午の最新作、というだけで迷わず手にしましたが、すこぶるつきの面白さです。 かつて『ジャンプ』を手にした時に味わったと同様の興奮を覚えて、頁を繰る手を休めることができませんでした。 まず何といってもミチルを妻と呼ぶこの物語の一人称の語り手が一体何者なのか、その謎に引っ張られて先を急ぐ気持ちを抑えられません。物語の途上にミチルが何らかの形で正式な婚姻関係を結ぶ相手が現れる様子もなかなか見えてこないため、この「語り手」が何らかの「騙(かた)り手」ではないのかという疑念を振り払うことができません。そのもどかしさが私をとらえて離さないのです。 また、思わぬ形で転がり落ちていくミチルの人生が、決して荒唐無稽とは言い切れない奇妙な現実味を帯びていて、読み手であるこの私の隣の家でもひょっとしたらこうしたまがまがしい出来事が密やかに進んでいるかもしれないという、底冷えする気持ちにとらわれて仕方がないのです。 そしてなんといってもエンディングの見事なこと。 物語のたどりつく先をあらかじめ見定めることなく、その途上をたゆたうことのみを読者に求める小説が時にある中で、この物語の終幕は、確固たるメッセージを内に含んで読者の前に差し出されるのです。 どこかで人は踏ん張ることを学ぶべきである。それが生きるということの要諦である。 そのことをこの語り手は奥歯をかみしめながら訴えていると思うのです。 最後の頁を閉じた時、至福の読書を味わえたと心の底から思うことができる。 なんともお見事な一冊です。 | ||||
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主人公は「柳に風〜」と評される書店員、ミチル、23歳。 昼休み「歯医者に行く」と言い置いて 不倫相手の出版社営業が帰京するのを見送り そのまま(サンダル履きのまま)男とふらふらと東京まで行ってしまう。 頼まれた『お使いの宝くじ』とともに。 その後も成り行き任せ行き当たりばったりの日々をおくる彼女を同居させる これまたバカみたいに気のいい郷里の後輩、その彼女らしき女。 語り手の独白でつづられる物語の始まりはお楽しみを後で後で...というふうに語られます。 このあたり、ちょっとしんどいですが 我慢して読み進めるだけの価値は十分ありますから、ここは辛抱して下さい。 加速しだしたらもう止まらず 次々起きる「異常な事件」に慣れたころ 用意された予測もつかない急展開。 ついついはまり込んだ事態に翻弄される人間の弱さと愚かさの狭間で ミチルを通して語られる教会でひたすら祈る母の話は印象的。 物語を照らす細い光のように一貫して現れ、そして微かな希望のうちに終結する。 緻密な構成と作者の精神性を見せつける見事なラスト。 | ||||
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主人公は「柳に風〜」と評される書店員、ミチル、23歳。 昼休み「歯医者に行く」と言い置いて 不倫相手の出版社営業が帰京するのを見送り そのまま(サンダル履きのまま)男とふらふらと東京まで行ってしまう。 頼まれた『お使いの宝くじ』とともに。 その後も成り行き任せ行き当たりばったりの日々をおくる彼女を同居させる これまたバカみたいに気のいい郷里の後輩、その彼女らしき女。 語り手の独白でつづられる物語の始まりはお楽しみを後で後で...というふうに語られます。 このあたり、ちょっとしんどいですが 我慢して読み進めるだけの価値は十分ありますから、ここは辛抱して下さい。 加速しだしたらもう止まらず 次々起きる「異常な事件」に慣れたころ 用意された予測もつかない急展開。 ついついはまり込んだ事態に翻弄される人間の弱さと愚かさの狭間で ミチルを通して語られる教会でひたすら祈る母の話は印象的。 物語を照らす細い光のように一貫して現れ、そして微かな希望のうちに終結する。 緻密な構成と作者の精神性を見せつける見事なラスト。 | ||||
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空いている時間は全て本書を読むことに充てて一気に読了しました。 お金にまつわる或る企みがきっかけで次第にとんでもない状況に追い込まれていく主人公にはS.スミスの名作「シンプル・プラン」を想起させるものがありましたが、こちらの方がずっと練られた構成で、痛いほどの緊張感が最後まで途切れることなく続きます。 素晴らしい作品を今まで数多く発表してきた著者ですが、これはもう代表作になること間違いありません。大傑作です。 あまり余計な情報を入れず、是非手にとって下さい。緻密な文章の持つ力を十分に堪能していただきたいと思います。 余談ですが、ぜひ適切な脚色のもとに映像化していただきたい。主人公のミチルを誰が演じることになるか、想像するだけでもワクワクします。 | ||||
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空いている時間は全て本書を読むことに充てて一気に読了しました。 お金にまつわる或る企みがきっかけで次第にとんでもない状況に追い込まれていく主人公にはS.スミスの名作「シンプル・プラン」を想起させるものがありましたが、こちらの方がずっと練られた構成で、痛いほどの緊張感が最後まで途切れることなく続きます。 素晴らしい作品を今まで数多く発表してきた著者ですが、これはもう代表作になること間違いありません。大傑作です。 あまり余計な情報を入れず、是非手にとって下さい。緻密な文章の持つ力を十分に堪能していただきたいと思います。 余談ですが、ぜひ適切な脚色のもとに映像化していただきたい。主人公のミチルを誰が演じることになるか、想像するだけでもワクワクします。 | ||||
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「ジャンプ」で作者の語りの上手さに舌を巻いたけれど、本作はそれを上回る出来で、もう形容する言葉が見つからない。少しずつ引きずり込まれ、気がつくと夢中になり、読み終えて放心状態に陥った。情景描写がきめ細かく、セリフがリアル、読みながらまるで映画を観ているようだと感じた。 ミチルという書店員が仕事中に失踪する物語なのだが、途中で殺人ミステリーかなと思わせて、最後に恋愛小説であったことに気づくという仕掛けがある。それぞれのシーンの描写は緻密で、主人公の心理もていねいに書き込まれているが、読み進むうちに何かが隠されているとの感覚が募ってくる。最後の数ページで種明かしがあるが、それを読者が受け入れるには少々の時間が必要かもしれない。私はもう一度じっくり読み返したいと思った。 ミステリーとみればプロットに無理があるが、作者の意図はそこには無いのだろう。狂おしいまでの愛を巧みな構成とさめた文体で描き出した傑作である。 | ||||
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