ビコーズ
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主人公の「ぼく」はデビュー作で賞を取って間もない29歳の作家。だが次回作が書けずに焦燥感を募らせている。水商売についている由紀子と今はつきあっているが、必ずしもその関係はうまくいっていない。そんなとき、19歳のころには仲のよかった寺井に呼び出される。寺井の彼女・映子をきかっけにしたある事件を10年前に起こしたため、ぼくと寺井は疎遠になっていた……。 ------------------- 今や直木賞作家となった佐藤正午の、1986年に出版された比較的初期の長編小説です。 主人公の若き作家はデビュー後の印税で享楽的生活を送った様子を『放蕩記』なる小説にしていますし、執筆途中で行き詰まった次回作の筋書きは『リボルバー』そっくりです。つまり「ぼく」は佐藤正午自身のオルターエゴとおぼしき人物です。 時代背景は、長嶋茂雄の監督就任発表から10年後ですから、1984年(昭和59年)でしょう。携帯電話もSNSもない時代に、10年前に別れたきりの映子を探すという物語のなんと謎めいていることか。 もちろんこれはミステリ小説ではないので、謎解きが主眼ではありません。“あの出来事”から10年経った今の自分の行き詰まった感覚のもどかしさをじっくり300頁かけてじっくり味わう、昭和の青年小説といえるでしょう。 この当時から佐藤正午の文章のリーダビリティは大変高いものです。すいすいと2日間で読み通してしまいました。 「あの頃とはもうちがうんですよ。ぼくは大人です。十年の間に諦めることも耐えることも覚えました」 「あんたなんのために十歳も年をとったの。ただ大人になるためかい。したいことをせずに我慢できる大人になるためかい」 主人公と叔母のこの会話(140頁)が胸を衝きます。 また映子が読んでいた童話の次の一節も胸に沁み入ります。 「もしわたしたちが、いつかおとなになることだけのためにうまれてきたのなら、あたまが大きくなるにつれて、わたしたちのあたまのなかには、ふるいかんがえが、とてもかんたんに住みつきます」(145頁) 大人になることが何を意味するのか。それを考えあぐねている20代の若者たちの足踏みする様子に、思い当たる節が私自身にもあるだけに、ひどく心揺さぶられる気持ちがしました。 . | ||||
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