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智天使(ケルビム)の不思議



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【この小説が収録されている参考書籍】
智天使(ケルビム)の不思議

智天使(ケルビム)の不思議の評価: 2.88/5点 レビュー 8件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点2.88pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(5pt)

容疑者Xの献身騒動に対する著者の回答作品

東野圭吾の容疑者Xの献身についての本格ミステリ論議で物議をかもした二階堂黎人氏が、ならば自身の思う本格ミステリはこれだ!とばかりに出した回答的作品である。
倒述推理と叙述トリックが組み合わさり、過去と現在が交差する意欲作である。
しかし何よりも物語の登場人物とその関係性が容疑者Xの献身の構造をそのまま奪還して、再構築されている。まさに容疑者Xの献身への対抗心があからさまに出ていて興味深いものがある。
倒述推理と叙述トリックが組み合わされているので、冷静に考えると無理のある完全犯罪な感もあるが、現実的には変でも小説内で論理が通っていたがそれでいいだろう。
近年の二階堂氏の作品としては完成度の高い力作である。
智天使(ケルビム)の不思議Amazon書評・レビュー:智天使(ケルビム)の不思議より
4334926622
No.2:
(5pt)

妙な熱を帯びた異色作であり、まちがいなく傑作である

解説でも指摘されているように、本作は東野圭吾の某作に対する実作での回答といった体のものだ。
したがって、主役はサトルではなく天馬ルリ子である。
そしてこの天馬ルリ子の造形は、これも解説で指摘されているように、まさしくダークサイド蘭子だ。
そういう意味ではこのラストは当然の流れだといえるだろう。
ただし、人によって評価が極端に分かれる原因のひとつもまた、このラストと、さらには作品全体の何ともいえない熱にある。
そう、本作は妙な熱を帯びているのだ。

さて、私は本作を某作を読む以前と某作を読んだ後の都合二回読んだ。
そして気づいたことは、あの論争で二階堂氏が主張したかった「無償の愛」に対する考えである。
確かに本作のような設定なら、自然な流れであり、理解するのも無理ではない。
ただし無理ではないため、逆に少々安易な設定だと感じられてしまうことが、評価が低い原因のひとつかもしれない。

私は、某作を読む以前に本作を読んだときには、著者にしては情が入りすぎたミステリだと感じた。
しかし、その「情」こそが、著者が実作で主張したかったことだ、というのが、今回改めて読み直して分かった。
だからこその本作の設定であり、それを可能にするための主人公の造形なのだ。
確かに、ダークサイド蘭子でなければいけないし、そしてこの主人公は実に魅力的でもある。
本作が妙な熱を帯びている理由も、おそらくはそこにある。

今後、著者が本作のような熱を帯びたミステリを書くことは、おそらくはないだろう。
そういう意味では、本作は著者としては異色作といって良いのかもしれない。
しかし、こういうミステリを書けるということを実証して見せたことは、著者の今後の創作に何らかの良い影響を及ぼすかもしれない。
それは期待したい。
分からないひとの評価は低くても良い。
本作は熱い作品であり、分かる者にとっては、まちがいなく傑作である。
智天使(ケルビム)の不思議Amazon書評・レビュー:智天使(ケルビム)の不思議より
4334926622
No.1:
(5pt)

技巧に満ちた傑作です

 大傑作です。
 冒頭に「倒叙もの」の定義が掲げられていて、前半は犯人(従犯)の克明な犯行告白と警察の捜査が交互に描かれています。しかし、この作者がただの「倒叙もの」を書くはずがなく、その前半部に大きな欺瞞と仕掛けが施されていました。
 後半は、名探偵水乃サトルと犯人(主犯)の対決となるわけで、構成も凝っており、謎解きの興味とスリルが同時に味わえます。壮大かつ鉄壁なアリバイ・トリックは、犯人たちの半生によって完成されるという凄まじい内容であり、心底驚かされました。なにしろ、犯人がトリックを構築していく過程がすっかり書かれているにもかかわらず、警察にも読者にも、それを解き明かすことができないという(絶対ありえないような)趣向になっているのですから。
 結末で証される事件の真相は衝撃的で、その奥深い秘密はたった一言で暴かれます。再読すると、そのための証拠や伏線があちこちに鏤められていて、しかも、読者を誤導するための多くのダブル・ミーニングが、巧妙に用いられていることが発見できます。そういう意味では、作者の腕前を二重に楽しめる作品なのです。
 悪魔的な犯罪者はこの作者の作品によく登場しますが、本作の主人公たる悪女ほど狡智に長けた人物はいなかったように思います。
智天使(ケルビム)の不思議Amazon書評・レビュー:智天使(ケルビム)の不思議より
4334926622

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