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仮想儀礼



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仮想儀礼の評価: 4.43/5点 レビュー 102件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.43pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全102件 21~40 2/6ページ
No.82:
(5pt)

新興宗教の創設から終焉まで

本の帯の「信者が三十人いれば、食っていける。五百人いればベンツに乗れる。長引く不況中で、大人は漠然とした不安と閉塞感に捕えられ、若者は退屈し切っている。宗教ほど時代にニーズに合った事業はない。」につられて手にとった。
 でっち上げた宗教に、生きずらい系の若者、家庭の悩みを持つ主婦などの信者が集まり組織が大きくなっていくが、スキャンダルに巻き込まれ「カルト」の烙印を押され、教祖が廃業しようとしても、信者が狂気に蝕まれていく。新興宗教の創設、成長・繁栄、衰退・終焉をこの小説はたっぷりと見せてくれる。
 金もうけのために新興宗教を始めたものの、悪党になりきれず、常識的で良識のある教祖が、この小説を最後まで読ませる。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.81:
(3pt)

ちょっと読了しんどかった

好きな作家の本。テーマが私にはやや身近ではない宗教。でも、都庁職員という、ごくありふれた主人公の、これまた給与生活者が人生後半で陥りそうなありがちな日常から入り込むので、導入で抵抗がなかった。しかも、どんどん事業が拡大するので読んでいてもスカッとした気持ちに感情移入。
そして中盤からは諭すような文言や仏教用語は斜め読みに速読して先へ先へ読み進むうち、下巻に入るとどんどん閉塞感に苛まれ、風評被害というかどうにも制御できないものに振り回され、読みながら思い浮かべる情景にも生々しいものがあり、正直しんどかった。せっかくの寝る前のお楽しみ読書タイムなのに。
それでもあの分厚い上下巻を一気に読ませるのはさすが篠田節子。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.80:
(5pt)

ノンストップ

上巻は何日かかけて読んだが、下巻は一気に読みきった。ページをめくる手が止まらなかった。今の自分はそんなに集中力がある状態じゃないのに……簡潔に言えば、下巻冒頭からラストまで怒濤の展開。息つく暇もない。
上巻での私の感想、正彦と矢口、確かにやってることは宗教を騙った詐欺だ。しかし、この二人、どうも憎めない。というか尊敬したくなる。良心的であり、ストイック。常識もある。そして基本が善人……最後までそのままだった。
秋暝が矢口の顔を見た反応から、どうなるか予想はついた。正彦と5人の女たち、そして森田社長、彼らの前途に幸あれ。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.79:
(5pt)

上巻の感想です、殴り書きです

元東京都庁職員の正彦とどっかの雑誌の編集やってた矢口、この腐れ縁のコンビが思いつきで新興宗教を始め、数年でそこそこの規模の教団になる。が、規模が大きくなった途端、トンビが油揚げをさらうように既存の教団が乗っ取りをかけてくる……とあらすじはこんなところ。
じゃここからは私の率直な感想。正彦と矢口、確かにやってることは宗教を騙った詐欺だ。しかし、この二人、どうも憎めない。というか尊敬したくなる。良心的であり、ストイック。常識もある。そして基本が善人。だからところどころ笑える箇所があるんだと思う。良心も常識もある人間が、馬鹿げてると承知の上でやっているからおかしいんだと思う。
一番笑えたのは(…正彦はそれから二時間足らずで、老社長とその息子との涙の再会を題材に、「親の心、子の心を感じて生きる」を小見出しにした腐臭漂うような「泣ける話」を書き上げた。p472)のところ。
笑いながらふと「ゴサインタン」の冒頭、猫が死ぬ描写で不覚にも涙ぐんだ自分は、篠田節子の意図的な腐臭漂うようなお涙頂戴な描写にしてやられたのか?という疑問が沸いた。
あれはねぇ、猫を飼ってた人間は泣くよ。そりゃ作家だから全て意図的に書くんだろうけどさ、そういうテクニックを弄して書いたとは思いたくないが、多分弄して書いたんだろうな。…話が脱線した。
よくわからないレビューになったけど、これだけは言いたい、面白い!
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.78:
(3pt)

さもありなん

割と容易く想像できる事例ばかりという感じでもあるけれど、その分分かり易くもある。楽しんで読みました
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.77:
(3pt)

少々物足りない

上と合わせてこれだけの文章量で、ラストがこれだとちょっと当てが外れた感じ。「オチ」じゃなくてそこに至るまでの過程が主旨なんだろうけど…。
「さもありなん」だけで上はそれなりに楽しんだけど、「下」に入ってからは読みながらダレた感じがした。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.76:
(5pt)

二度目読破!!

いやー面白かった!この本を読むのは二度目なのですが、否が応でも引き込まれ一気に読み切りたい衝動にかられます。
現実世界なんかに見向きもしなくなり、この世界観にズブズブになりました。「ゴサインタン」の時もそうだったんですよね。
著者の人間の捉え方、なかでも生まれた時代によって違う価値観を持った人間たちの描き方が素晴らしいなと思います。
生きづらい系…私もそうだったな…と思ったり、人間性おばさんは私の知ってる60代のおばさんによく似てて…。
各世代当たり前のことが違う、通らない難しさを感じました。
矢口と正彦の人間性の描き方も…細かく描かれていて物語に入り込めます。
宗教団体のニュースとか聞くと、上の奴らが思いっきし悪い奴なんだろうと思っていましたが、この物語を読むとそうとは限らないかも…と思うようになりました(^^;)
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.75:
(5pt)

ラストまで一気!の下巻

上巻ももちろん、後半からじわじわとハラハラしますが
下巻はその比じゃない…!

手に汗握るというか、もう恐ろしくて
じゃんじゃんページをめくってしまいます。

私は宗教という分野自体あまり得意ではないですが
ラストには涙がにじみました。

正彦と矢口、2人が
悪人でないことが涙の理由かな…。
結局とても優しい主人公たちだった。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.74:
(3pt)

面白い反面あまりに非科学的

確かに面白いが、健全な精神の方が読むと何ともあまりに宗教臭くドロドロしたおはなしで馴染めません。宗教は否定はしませんが、心の弱さを突き暴利をえている輩があまりにも多く感じられ、この作品はうまく宗教世界を燻りだし読ませますが、私個人はあまりにも非科学的過ぎて消化できませんでした。しかし読んで損はありません。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.73:
(3pt)

面白いが、劇画調です。

デッサン力もあり、宗教界を良く調べて丁寧に書かれてはいますが現実を分かっている大人には頭で書いた本だとわかり、こんなに現実は都合よく宗教は作れません。ただ、「悩める人間心理はあらがち的外れではありません」娯楽ものとして読めば確かに面白く、少しだけ得るところもあり無きにしも非ずです。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.72:
(4pt)

巨大マーケットと化した宗教法人で、ニセ教団を立ち上げて金儲けをしようと思ったところ、信者達が暴走して制御不能に。

篠田節子さんは「女たちのジハード」が大変おもしろかったので、評価の高い「仮想儀礼」を読んだのですが、この作品はとにかく600ページの上下巻なので大変な長編です。

ストーリーは、脱サラで作家になりそこねた男、正彦と社会の落伍者的存在の矢口の二人がなんとかうまい金儲けはないかと考えた挙句に宗教団体を立ち上げるという話です。上巻では信者がどんどん集まってきて正彦は教祖「桐生慧海」となり、企業のスポンサーもつき一大教団への道を歩みだします。お約束どおり、うまくいかず、問題が発生して堕ちて行くのが下巻という流れです。

長編なのでいろんな登場人物がでてきます。とくに家庭や社会で「生きずらい」問題をかかえた人たちが信者として教団に入信してくる様子をかなりな現実的なタッチで詳細に描きます。パートナーの矢口はフレンドリーな対応で彼らの話を聴く一方、女癖の悪さが高じて失敗したりもしますが、正彦はあくまで教祖として正統な仏の教えを誠実に説こうとします。

しかしながら、正彦は所詮エセ教祖なので、心の中では仏の救いなど全く信じていません。それにもかかわらず、救いをもとめる信者たちはそんな教祖の言葉にどんどん教団にのめり込んでいってしまうのがこの話のおもしろいところです。

長編のエセ教団のストーリーと言えば、強烈な印象を与える新堂冬樹の「カリスマ」があります。「カリスマ」は新堂の代表作ともいっていい程の完成度を誇り、美しい家族や夫婦愛が、とんでもない教祖のせいでもうこれ以上のないほどのドン底に落ちていくドロドロな小説でしたが、めちゃくちゃ面白かったです。それに対して「仮想儀礼」は「カリスマ」のようなマンガチックさはなく、社会小説といっていいほどのリアリティを追求しています。

乃南アサの「風紋」も上下巻で同じくらいのボリュームで、非常に評価も高く、犯罪の被害者、加害者の家族がいかに辛い思いをするかというテーマを描ききった大作ですが、「風紋」が好きな人にはこの「仮想儀礼」は絶対ハマルのではないかと思います。

私個人の趣味でいえば、起承転結が明確で、ストーリーに直接関係ない部分はあまり要らないので、正直、「風紋」も「仮想儀礼」も長すぎる割りに、盛り上がりに欠け、もう一回読もうなどとは全く思いません。

本のなかに出てきましたが、日本には宗教法人が18万もあり、教祖と呼ばれる人は140万人もいるんですね。文化庁のサイトをみるとそのほとんどが都道府県所轄の神道系と仏教系だということで、ものすごいマーケットだということがわかります。それだけにその実態を描いたこの本は価値があるといっていいのではないかと思います。

最後の正彦の言葉が興味深い。「私は金のために宗教を作り、人の心を操ろうとしました。大して悪いこととは思っていなかったのです。悪事を働くつもりなど毛頭なかったのです...。しかし世間は人の心を操る装置を利用しようとします。操ろうとしたつもりが操られ、操られたはずの女たちが、私を陵辱して支配していきました」。

「カリスマ」とちがって、「仮想儀礼」の正彦は本当に悪事を働くつもりはないのだけれど、問題が発生すると世間はカルト集団でやりたい放題の教祖だと決め付けて攻撃する。こういった冤罪的な要素も描かれているのも面白いところです。実際18万の宗教法人のほとんどが人の心を救いたいという思いで運営されていることだとは思うが、やはりオウム真理教の影響は大きいんでしょうね。

正彦が作り上げた虚像の宗教が実存しはじめて、もはや教祖をやめられなくなってしまうのがすごいです。ただ普通の女が5人いるとはいえ、70キロもある男を暴力で封じ込めるのは無理だとは思いました。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.71:
(5pt)

人間の情けなさと弱さそして馬鹿さが少しだけ許せるようになります

前に一度読んでたんだけど、もう一度読みたくなって。
上下でやたら長くても、一気に読めます。
登場人物がステレオタイプで多少鼻につくというか、
あざといんだけど。
宗教と神秘と女の厭らしさと男の情けなさをミックスして、
発酵させて。
似非パウダー振り掛けてはいできあがりぃって。
まあ、冗談でなくやばいですよ。
多少時間はとられますが読んで損はないと思います。
正直なところ、魅力的な人間は一人も出てこないのですが、
そんな人間の情けなさと弱さそして馬鹿さが少しだけ許せるように
読み進むうちにいつの間にかなってました。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.70:
(5pt)

人間の情けなさと弱さそして馬鹿さが少しだけ許せるように

前に一度読んでたんだけど、もう一度読みたくなって。
上下でやたら長くても、一気に読めます。
登場人物がステレオタイプで多少鼻につくというか、
あざといんだけど。
宗教と神秘と女の厭らしさと男の情けなさをミックスして、
発酵させて。
似非パウダー振り掛けてはいできあがりぃって。
まあ、冗談でなくやばいですよ。
多少時間はとられますが読んで損はないと思います。
正直なところ、魅力的な人間は一人も出てこないのですが、
そんな人間の情けなさと弱さそして馬鹿さが少しだけ許せるように
読み進むうちにいつの間にかなってました。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.69:
(4pt)

人間の業、宗教と人間との関係を映し出した読み応えのある力作

2人の失業者(後に教祖とNo.2となる)がゲーム感覚で始めた非カルト系の新興宗教団体の創設、発展期、一時の隆盛及び破綻の描写を通して、人間の業、宗教と人間との関係を映し出した力作。勿論、オウム事件を意識しているが、9.11が執筆の契機となった様である。教祖は元公務員であり、これが非カルト系という常識的な線に沿っている理由であり、教団は宗教団体というよりは、倫理観や癒し系のサービスを提供する企業という体裁である。実際、上巻はある種の企業小説としても読める。また、作者が宗教団体の経営について丹念に事前取材している様子も良く窺える。

そして、教団に集まって来る人間を、ある事情があって宗教にすがらざるを得ない人間、社会に上手く適合出来ない"生きずらい"人間(主に若者)、倫理観を必要とする社会的地位のある人間(企業経営者等)の3グループに色分けしている点が巧妙。教祖が欲しているのは勿論最後のグループの人間である。前者の2つのグループの人間を登場させている点に、作者の社会・人間観察眼の確かさと物語構成上の手腕が窺える。

上巻が終わった段階で、教団は綻びを見せ始め、下巻の冒頭で、教団はほぼ破綻しているのにも関わらず、この後何を描くのかと不思議に思ったのだが、ここからが幻想・ホラー味を持ち味とする作者の本領発揮である。まさに<カルマ>と呼ぶに相応しい人間の業を浮き彫りにする下巻の中終盤の描写は圧巻であり、恐怖そのものである。ここに到って、作者が登場人物達を用意周到に準備していた事が良く分かる。また、宗教に関してやや通俗的な扱いをしている様に見えたが、実は、宗教と人間との関係を真摯に追及していた事も良く分かる。読み応えのある力作だと思った。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.68:
(5pt)

「下」は、やや新興宗教者らしさが厳しすぎるかも。

新興宗教ものだが、「上」は社会派小説の範疇に収まっていたような気がする。
「下」は、やや新興宗教者らしさが厳しすぎるかも。

参考文献

実践 チベット仏教入門
クンチョック・シタル, 斎藤 保高, ソナム・ギャルツェン・ゴンタ
春秋社

宗教法人ハンドブック―設立・会計・税務のすべて
実藤 秀志
税務経理協会

税務重要計算ハンドブック〈平成24年度版〉
中央経済社

まるごとわかる「法人税」―仕組みを押さえて大きく節税! (基本&実践BOOK)
北村 義郎
かんき出版

宗教法人法はどこが問題か
弘文堂

新宗教事典〈本文篇〉
弘文堂

新宗教事典
弘文堂

性差別する仏教―フェミニズムからの告発
大越 愛子, 山下 明子, 源 淳子
法蔵館

カルト資本主義 (文春文庫)
斎藤 貴男

発行年の記載がないため、最新または当時のもののand/orを掲載した。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171
No.67:
(5pt)

9.11を逆手に取って、世の中に進んでいくという道を小説の中で実現

やられた。9.11を逆手に取って、世の中に進んでいくという道を小説の中で実現してしまう。
篠田節子なら、小説を書くだけでなく、この手の団体を立ち上げられるかもしれない。

役所勤めという経歴といい、
「社会のシステムや精度についての正確な知識を持って折らず、そのために問題が解決できず、相談相手もいない状況に置かれている」「論点がはっきりせず、果てのない愚痴としてしか語られることのない彼女たちの悩みに、家族は本気で耳を傾けてくれない。家庭の中心にいて家族の生活を守っているはずの彼女たちが、その家庭の内で孤独に陥っている。」
という現状分析といい、的確だ。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.66:
(5pt)

上巻だけでやめないで(とお願いするまでもないが)

綿密な取材のあとが随所にうかがわれ、人間のどうしようもない本性を徹底的に描き出した本書は、エンターテインメントとして一級品だ。ただし本書の凄みはそこではない。

「偽教祖がビジネスとして宗教団体を設立したが、だんだんと手に負えなくなる」とあらすじをまとめてしまえば、信者の金を絞り取り、政治家と結託して肥大していく…という展開を想像される方も多いと思う。それはあながち間違いではないが、文庫版(単行本版でも)でいえば上巻にすぎない。下巻では、ゼロから再出発した偽教祖の主人公とその相棒が、熱心な女性信者たち数名に振り回される展開が待っている。物語は確かにスケールダウンする。

しかし、ここからがこの小説の凄いところなのだ。なぜ古今東西、そして21世紀に入っても宗教はなくならないのか。宗教はどうしてひとをひきつけ、それでいて怪しまれる存在なのか。宗教を信じるとは一体どういうことなのか。信仰心とはそもそも何なのか。宗教学に属するこうした根源的な問いかけを、オウム真理教の起こした戦慄する事件を経たあとでも、私たちは何とはなしに遠ざけている。本書は息つく間もないフィクションの体裁を取ることで、宗教の圧倒的な恐ろしさ、それと表裏一体の必要性を有無を言わさず納得させてくれる。「宗教は人民の阿片である」というマルクスの有名な言葉はこの意味で解されるべきではないかもしれないが、それでもやはり思い出さずにはいられない。

長いからと読むのを躊躇されている方がおられれば、勿体ないと思う。宗教、そして人間に対する先入観をゆさぶられる体験が待っているのだから。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.65:
(5pt)

イワシのあたまって本当なんだ...

一気に読んだ。出だしの911あたりはなんか無理やり感というかこじつけ感もあったが、その後はどんどんと引き込まれるほど自然な展開。主人公の意思を飛び越えて教団が主人公以上に大きくなって手がつけられなくなってと、最近のご時世もあり、なんだか新興宗教の怖さと共に内側のダイナミクスを垣間見た感じ。イワシの頭も信心ですな、と納得。こんなに教団側の心理とか、よくもまぁ書ききれてるなぁと素直に感動。
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.64:
(4pt)

失業中の男二人がほどほどの金儲けを目的に似非教団を作る

『聖域』『ゴサインタン』『弥勒』の宗教三部作に続く第四弾!

ゴサイ〜が僻村に嫁入りしたネパール人妻が神懸り状態になり自然発生的に教団が形成される過程を描いたのに対し、
本作では失業中の男二人がほどほどの金儲けを目的に似非教団を作る。
ところが思惑を越え信者の数は増え続け、やがて二人は現代日本の宗教を取り巻く大きなうねりの中に呑み込まれて行く。
教祖役は元都庁職員であり、詐欺師にも拘わらず社会常識に長けた堅実な人物として描かれており、物語の目撃者の役割を果たしている。
終盤、宗教を食い物にする怪人物登場。読み応え有。

荻原 浩の『砂の王国』が似たような設定らしい。φ(.. )
仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)より
4101484163
No.63:
(4pt)

マイナス札を全て集めるとプラスに転ずる札遊びの様に真の教祖誕生を思わせる後日談にて了

(上巻)

『聖域』『ゴサインタン』『弥勒』の宗教三部作に続く第四弾!
ゴサイ〜が僻村に嫁入りしたネパール人妻が神懸り状態になり自然発生的に教団が形成される過程を描いたのに対し、
本作では失業中の男二人がほどほどの金儲けを目的に似非教団を作る。
ところが思惑を越え信者の数は増え続け、やがて二人は現代日本の宗教を取り巻く大きなうねりの中に呑み込まれて行く。
教祖役は元都庁職員であり、詐欺師にも拘わらず社会常識に長けた堅実な人物として描かれており、物語の目撃者の役割を果たしている。
終盤、宗教を食い物にする怪人物登場。読み応え有。

(下巻)

起承転結、転の巻き。但、転機ではなく転落。

上巻末で登場した怪人物はその悪業を暴かれあっさりと舞台から姿を消すが聖泉真法会への世間の疑惑を招く契機となる。
社会的異端者を排除しようとする世間、言論、公権力からの波状攻撃を受け教団は一気に崩壊の縁へと追いやられる。
迫害に耐える哀れな信徒と思いきや似非教祖の統制を離れ信仰を深化、激化、狂化させて行く。行きつく先に一人の男の死。
そして関係者の逮捕・審判・懲役。最後に結としての転生。

マイナス札を全て集めるとプラスに転ずる札遊びの様に真の教祖誕生を思わせる後日談にて了。
仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:仮想儀礼〈下〉 (新潮文庫)より
4101484171

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