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残虐記
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残虐記の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.44pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全59件 1~20 1/3ページ
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誘拐事件をきっかけとした「想像された現実」の記録。被害者は監禁されているときには想像で時間を潰し、解放されてからは周辺の好奇の視線に晒され、そして多様な想像の焦点となった。想像はきっかけとなる「種」があれば際限なく膨張するからには、当局に対して「本当は何が起こっていたのか」について口を噤むことはすなわちそのような想像の「種」を渡さない賢明な行為だったと言える。だが一方で、「種」を保持したままでいることにより、自分自身の内部で想像の膨張が始まるのだ。その想像とは「欲望とは他者の欲望である」というラカンの言葉を地で行くような内容と化してゆく。「他者の欲望」とは言葉のことである。『残虐記』そのものが言葉によって、言葉でしか織り上げられていないのだから、本書は二重の意味で「他者の欲望」が充満しているのだ。 | ||||
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ケンジと誘拐された景子、そしてみっちゃんの真実とは? ヤタベさんの怖さ まぁこの小説の構成そのものが景子による"毒の夢"を綴ったもの 誘拐された景子が救出(解放?)されて後に想像した事柄 しかし監禁していたケンジとの短い「交換日記」を隠蔽の為と装いつつも大切に持っている事やケンジからの拙い手紙が本当だとしたら‥ ケンジくんとみっちゃんの痛々しいラブストーリーとも 凄くいい意味で、桐野夏生氏の真骨頂かと☆ | ||||
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一筋縄ではないこの作家の凄さ、一気に読む! | ||||
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異様で、不可解な欲動に晒された少女 彼は、なぜ私を抱かなかったのか それだけは、誰にもいえなかった 女は強姦の屈辱を恐れない。強姦の栄誉を恐れているのだ 不可解なのは男の欲望だけではなく、自分の心なのだから 彼の欲望を希求した性的な妄想は同性愛に行き着く 妄想は結局、自分の頭の中だけのことで、少女の心性の内部に留まることは間違いがない 結局、景子は妄執の中に入ったのではなく、彼女の妄執の中に出たのだった。 それが、現実を失う、ということである。自分が自分を瞞すというトリックである。これ程セキュリティの高いシステムもない 他者に、自身に、呼吸をするように欺瞞を続ける女にとって、何が夢で何が現実かという境界は非常に難しい 小説は不可解を、もう一つ大きな不可解のシールド覆うことで結末する。それは、強かで、軽蔑されるべきこの女にふさわしいラストといえる | ||||
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私は桐野夏生さんの本を初めて読んだのが残虐記だったのですが、今まで読んだ小説の中でダントツに面白い!と思っていたんです。でも他の方のレビューを見てみるとまだまだこの方の素晴らしい作品があることを知り生きる楽しみが増えたと同時に誰かにこの思いを伝えたい、もっと読んでもらいたいと思いました。拙い文章失礼しました、とってもこの本が好きです。 | ||||
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本書は、主人公の景子がまだ10歳・小4の時、工員のケンジに拉致・監禁されたところから始まる。景子はケンジの住む部屋に監禁され、監禁生活は1年余りに及ぶ。ケンジの隣室にはヤタベというケンジと同じ鉄工所に勤める男が住んでおり、景子はヤタベに助けを求めようとするが…という物語である。 この小説は2000年に報道された新潟県に少女監禁事件に触発されて執筆されたらしいが、監禁された期間も犯人の年齢・境遇もまるで違うので、実際の少女監禁事件とは全く別個の小説と考えた方が良いと思う。 ケンジの部屋とヤタベの部屋という隣り合った二部屋という狭い空間で、主人公の少女と監禁したケンジと隣人ヤタベの三つ巴(あるいは宮坂検事を含む四つ巴)の性的関係、どこまでが事実でどこまでが想像だかわからない性的関係は、非常にアブノーマルでディープでグロテスクでアグリーだ。異常なまでに異常だ。 解説(筆=精神科医 斎藤環)では、谷崎潤一郎『鍵』との類似に言及されているが、評者に言わせると谷崎『鍵』の方がよほど健全で理解可能だ。 本書は桐野さんの多くの作品の中ではあまり目立たないと思うが、隠れた名作というべき存在と言える。 | ||||
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実在の事件をモチーフにしており、被害者がいることで、取り扱うこと自体に批判が多いようだけれど、 作者が読者に娯楽を提供するためにこの題材を選んでいるのではないことは、読めば分かります。 たとえば、被害者と加害者の間に起きたことを興味本位で知りたいだけの人がこれを読んでも、なんも面白くないと思う。 路上のXについても、女子高生が落ちていくのを見て楽しみたい性的嗜好?の人には、期待外れだと思うし。 桐野夏生さんはきっと、そういう目線の人を楽しませないように書いているし、 また、「かわいそうな話」で終わらせないように書いている。 この人凄い。めちゃくちゃかっこいい。 事件について、被害者の周囲の人が「そっとしといてやれ」って言うのは分かる。 でも社会的に見ると、被害者が無事だったり、犯人が捕まることが解決ではない。 解決するためには、そもそも理解しなければ何も始まらないと思うんだ。 桐野さんは、どこまでも理解しようとしているのが分かる。当事者自身でも気づかないようなところまで。 桐野さんは、理解するために書く人なんじゃないかなって思った。 | ||||
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あとがきで精神科医の斎藤環氏が書いているように、「異様で面白い小説」という評がしっくりきました。 一口に女子監禁の顛末とは言えない内容で、読み進めるにつれて登場人物どおしの関係性が徐々に見えてきますが、果たしてそれが真実かと問われれば、それはそれぞれに認識は異なるのだと思いました。 ぼくはこの小説が一つの小説として完結するのですら違和感があり、確かに、いくつかの謎は残ったままですが、それを意図して書かれたのであるとすれば、桐野夏生の独創的なリアリズムの奥深さははかり知れず少し怖いものを感じました。 | ||||
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もう何年も前に徹夜で読みました、もちろんいやらしいやじうま根性もあったけど、そこは肩透かしで、本質は主人公の心の変遷だった あとレビューで実際の事件を元にしてる、と拒否している人がいますが、実際共通してるのって最初の監禁される所だけで後の経過はぜんぜんちがうんですよね それにもう最近では若い女性や少女を誘拐、監禁する事件が多すぎて、悪い意味で一々怒ることに皆んな飽きてきている気もしますね それに実際にあったような事件を元に小説を書くのは本当に悪いことなんでしょうか? 遺族を傷つけるからとかとよく言うけど、それだと例えばオウム真理教のような宗教組織をとり扱った小説はずっと書けないですよね、 本当にその事件と向き合うつもりなら、私は書いてもいいと思うんですが 何となくアメリカとか海外のほうが実際の事件とそれを題材にした映画や小説に視聴者がちゃんと線を引いていて、日本は感傷的で痛いものには触らない、という態度が強い気がします | ||||
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※内容に触れます タイトルでもある『残虐記』とは、主人公(35歳の女流作家)が幼いころケンジという男に一年間監禁されていたことを振りかえりながら書いた架空小説のことです。当作品のほとんどはこの架空小説に占められているのですが、その内容自体も虚構が織りまぜて書かれているという仕掛けなので最後まで監禁事件の真相は分かりません。何よりも監禁された本人である主人公自身が事件の全貌を把握できていないのです。しかし、そのことが主人公だけでなく周囲の人々を惹きつけ想像させるのです(もちろん、読者も例外ではありません)。 また、主人公が犯人であるケンジや隣人のヤタベについて「毒の夢」と呼ばれている想像を膨らませたのちに結実したのが彼女の処女作(もうひとつの架空小説)である『泥のごとく』です。当作品はこのような入れ子状の構造をしているのですが、内容はやはり監禁事件の真相に触れることなくそこから育まれた想像の域をでません。更に注目するべきはこの作品が現実の事件(新潟少女監禁事件)に触発された部分を孕んでいるということです。要するに、このマトリョーシカのような当作品の中心には新潟少女監禁事件があることは伺えるのですが書かれていることはその外側である「毒の夢」でしかないのです。 「毒の夢」を見るのはこの主人公だけではなくもちろん桐野夏生だけでもありません。不可解な事件が起これば大衆はテレビに釘付けになります。新潟少女監禁事件は視聴者の好奇心に応えるように新聞・週刊誌・テレビなどあらゆるマスメディアが取りあげて騒ぎたて、人々は好奇心と想像力を掻きたてられました。私達はだれもが「毒の夢」を見るのです。そして主人公は自身の「毒の夢」について次のように告白します「私の毒の夢が行き着いた先は、男たちの性だということにようやく思い至った〈中略〉私の夢の世界の涯は、成人の男たちの性的な妄想の沼であることが衝撃だった」と。私は当作品を読んで私自身もまた(作中の言葉を借りるなら)毒の夢を見る性的人間であることに気付かされました。 | ||||
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ラストには少し驚きました。 作品としてはまぁまぁ。もう少しタイトルから残虐なものをイメージしていましたが、そこまで。 一応ラストまですべて読み終えることができたのでおもしろかったかな?と。 最近こういう誘拐事件なども多いので、興味深い題材でした。 | ||||
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実際の事件がありありと瞼に浮かぶ作品。ドキュメンタリーのようなタッチでハラハラしながら一気に読みました。 いつもながらすごい。 | ||||
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「桐野作品はグロくて読めない(もしくは嫌い)」という人が時々いる。 それはそうかもなぁと思うが私は全く平気というか むしろそれでこそ桐野夏生と思う。 この作品だって、扱ってる題材とか 主人公の「作品」という形を借りたモノローグとか とんでもないけど全然平気。 だって彼女の本当に描きたいのはそこじゃないんだもん。 性的描写や異端者の異常性なんのその。 ほんとに怖いのはこの世そのものと普通の人じゃね? ということがこの本を読むと克明にわかる。 弱者の立場にとことん立っているという点では 「グロテスク」よりこちらが好きだ。 きれいごとじゃないという点で 「柔らかな頬」よりはもっと好きだ。 もちろん両作品より本作は随分粗削り感がありますが。 でもそこがまた魅力なのかな。 実際の事件、しかもよりによってこの事件を題材にすることへの 不快感を感じる方がいらっしゃるのは理解できますし、 私のレビューそのものがもしかしたら不謹慎なのかもしれません。 でもこの作品を読むことで救われてる人間もいる。 それはわかっていただけるとありがたいです。 | ||||
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本書は、『週刊アスキー』の2002年2月5日号〜6月25日号の連載を 加筆し、新潮社から2004年に刊行された単行本を文庫化したもので、 柴田錬三郎賞を受賞した作品である。 現在35歳になる作家・小海鳴海が25年前にケンジという男に誘拐され、 男の部屋に1年間監禁された。男の部屋は、男自身が働く工場の2階 にあり、下には工場を営む夫婦、隣には壁一枚を挟んで「ヤタベさん」 という耳の不自由な工場の労働者が暮らしていた。しかし、工場から 聞こえる大きな音と、鳴海がいつか助けてくれるだろうと期待してい たヤタベさんの不自由な耳では、なかなかこの事態が明るみに出るこ とはなかった。 ケンジは、鳴海のことを何故か「みっちゃん」と呼び、昼間は鳴海を 性の対象としておぞましく扱い、夜は鳴海と同じ10歳児のような幼児 性を見せた。そして、文字も碌に書けないケンジは、頭の弱い、精神 疾患のある異常者だという印象を与える。そして、ヤタベさんは、こ の誘拐監禁事件とは全く無関係であるように思える。 しかし、本書の特徴は、「鳴海が10歳の時に1年間誘拐監禁された」 以外の事実が判然としないことである。ケンジとは実は狡猾な頭の良 い男だったのかもしれない。実はヤタベさんがケンジを飼い慣らして いたのかもしれない。そして、鳴海自身がもしかしたらケンジに…。 鳴海の夫からの手紙、逮捕されたケンジから数十年の時を経て鳴海に 送られた手紙、小説家・鳴海の手記、そして再び夫からの手紙、と流 れる本書の構成に加え、当の鳴海が35歳になりケンジから手紙を受け とった後に失踪したという事実が、私たち読者に、様々な視点や推察、 様々な読了感を与えてくれる。さすがはプロ作家と感じ入ってしまう 本であった。 | ||||
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少女を監禁する知恵遅れの男 それに関連する大人たち 成長するにつれてその闇に悩む被害者 男の欲望などをドロドロに描くところは 作者が本当は男性なのかと思ってしまう。 | ||||
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拉致監禁された少女の残酷な手記。 まったく救いようの無い世界なので、鬱な気分になった。 それでも、必ず最後には救いがあると信じて最後まで読んだ。 最初から最後までゾクゾクする作品。 | ||||
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人の想像は果てしないと感じる一冊です。 少女誘拐監禁事件をベースに、より重厚な人間模様を描いております。 面白い小説を読みたい人におすすめの一冊です。 | ||||
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こういうドロドロ感を書かせたら桐野サンは格別ですね。 人間、耐えられない境遇に遭ってしまうと、人格が壊れる前に 別の世界を見出してしまいます。自分の世界を構築してしまう わけで、過酷な状況に陥られなくとも 秘密のノートを作ってみたり 秘密基地を作ったり…ままあることです。 誘拐され監禁された彼女は「性的人間」になった。 大人でも 女性でもなく「性的な人間」 桐野さん表現力が豊かですね。 | ||||
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桐野夏生の小説は読み出すととまらない。 残虐記もまさにそんな小説。 失踪したとある作家の原稿とその夫の手紙だけで、 物語は進む。 まさに「薮の中」。 語られている物語は、 徐々にストーリーの輪郭を失っていき、 読者に謎を残したまま終了する。 人間の業がテーマであろう。 家族、孤独、性、愛情。 とても日本的なテーマ設定をしていると思う。 この「残虐記」に見いだせるテーマは多様で、 どれも重い。 かつ本書にはそれらの問題について、 救済や希望を提示している訳ではない。 決して爽やかな読後感ではないが、 ずしりと腹に響くような手応えのある作品。 | ||||
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比較的薄い本なのに、何故か読み終わるのに時間がかかった。 恐らく、終始一貫して重苦しい雰囲気で話が続くせいだろう。 それが、著者らしいといえばそれまでだが、相変わらず 人間の泥臭さというか深層心理を見透かすかのごとく 読んでいて、嫌な共感を覚える。 作品の世界観に没入は出来なかった。 しかし、監禁された少女が逃げられない状況で自分の内面と 嫌でも向き合いながら、折り合いをみつけるというよりも 人間がもっている陰湿な部分を強調して、生き抜いていく 様子が、監禁されている悲惨さよりも少女の怖さを 増幅していくので、ここでも桐野ワールドがしっかり展開される。 面白いとか、そういう感想ではなく、著者の世界観に またしてもやられてしまった。そして、またしても 読了後に少し気分が悪くなる。 なのに、幾日か過ぎて本屋に行けば桐野夏生と書かれた本を 手にしている自分が想像できてしまうのが、良くも悪くも 自分がこの作家の作品が好きな証拠なのだろう。 | ||||
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