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生首に聞いてみろ



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【この小説が収録されている参考書籍】
生首に聞いてみろ
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

生首に聞いてみろの評価: 3.20/5点 レビュー 82件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全82件 1~20 1/5ページ
No.82:
(2pt)

底が見えてしまった気がする

先の展開が気にならず、ページをめくる手が重かった。
筆者は本当に親子関係、生殖関係にトラウマか思い入れがあるんだなとは思ったが、
これがこの人の底なのかなと思い、今まで集めていた作品も手放すことにした。
そのくらい受け入れがたかった。つまらなくて。

大切な人が殺されたはずなのに、焦りや悲壮感がない。
モチーフは魅力的なはずなのに、真相が気にならない。首がどうなろうと、どうでもいいじゃないかと思ってしまう。
肝心のトリックの部分も無理があるとしか思えなかった。
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)Amazon書評・レビュー:生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)より
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No.81:
(3pt)

「策士策に溺れる」と言えば言い過ぎか?

練りに練られたプロットとトリック、怒涛のロジックで物語は二転三転し、意外な真相に迫っていきますが、論理の積み重ねですっきりとエレガントに収束するかと言えば、凝りすぎていてかえってそれが足枷になっているというかなんというか。一気に読ませる勢いはさすがですが、本格ミステリとしてはいまひとつカタルシスが得られず、作者自身ロジックにこだわりすぎてややこしくなってしまっているのでは?と思わずにはいられませんでした。あとこれに限らずですが、個人的には法月親子(もちろん劇中のキャラクターであって作者のことじゃないです)はどうも好きになれません。
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No.80:
(5pt)

やりたいことがよくわかるのが美点でも欠点でもあり

タイトルは明らかに都筑道夫の「なめくじに聞いてみろ」のパロディだろうが、あまり作品内容に合っていないというか、もっと詩的で芸術の匂いのするタイトルにした方がよかったのではないか。

内容的には法月綸太郎お得意の「芸術家の狂気」を題材にしたもので、この分野では「カット・アウト」という大傑作短編があるのだが同系譜の長編である。法月ファンならば「石膏像は必ず目を閉じている」という作中の記述が出てきた時に、なんとなく異様な熱気を感じ取り、作品の出発点となるアイデアは多分ここだろうと察せられるはずだ。だから真相は薄々わかるのだが、明かされた時にはがっかりするというより「待ってました!」という感じである。
もちろん核になるアイデア一発の作品ではないのでパズラーとして周到に組み上げられてはいるのだが、作者の書きたかったことがあまりにも明確すぎていて、その外側が張りぼてに見えてしまうところがやや難点。短編でやるべき話だったかもしれない。コンパクトにまとめれば「カット・アウト」に並ぶ傑作になったのでは。
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No.79:
(3pt)

雰囲気はあるがこの作者の中では凡作より

出来不出来の差が激しいように感じられる法月綸太郎作品としては堅実だけれど凡作より。
このミスで一位をとったのでハードルが跳ね上がってしまった感があるが、
リアリズムの事件に現代的な要素と新本格的なケレン味を組み込んだ作風は既に確立されていて、作品の世界観は感じられる。
過去作なら「誰彼」に類する作品と言えると思うが、意外な真相、意外な犯人とその推理のロジックの濃いめを望むなら、
同じく探偵法月綸太郎シリーズの傑作短編集「探偵ホロスコープⅡ 一人の女王の問題」が良い。
飛び道具強めなら「法月綸太郎の冒険」がおすすめ。
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No.78:
(3pt)

理想化しすぎたかな?

構成は流石ですし、話は勿論面白いのですが、冒頭部分で作中の法月綸太郎がただのスケベおやじに感じてしまい、気持ち悪く感じました。
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No.77:
(5pt)

エラリー・クイーンリスペクトな理知的本格ミステリの力作

法月綸太郎は「ノックスマシン」が面白かったのでこの作品に手を出したが、本格ミステリは初読。作者と同名の名探偵と警察関係の父と言うのはエラリー・クイーンそっくりの設定で、首無し死体を扱った「エジプト十字架の謎」を彷彿とさせた。キャラの性格付けも含めて、クイーンのリスペクトぶりがミステリファンの心理をくすぐる。
 それはともかく、なかなか殺人(と言うか生首)が出て来ない異色の構成で、伏線を張るためなのだろうけど、多少読むのに難渋する。その替わりに彫刻に関するペダンチックな知識が語られ、嫌味とも取られ兼ねないが、本格ミステリにありがちな稚気として好意的に解釈した。法月探偵は行動派だが、誤算と失敗を重ねてしまうのが、ハードボイルドみたいで面白かった。反対に犯人側も同様にドタバタして、妙にリアルと感じたが、作品として整合性を持たせるのは大変だったろうと推察する。
 生首が出て来る中盤以降は実にスリリングで読み応えがあり、一気に読書スピードが上がった。「生首」と言うインパクトのあるモチーフを終始描き切った力作と評価する。
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No.76:
(1pt)

法月って、バカなんやろうねー

伊坂、法月、この類は、自分が売れてると勘違いしていて、こまる。
この、生首も、出だしの設定があまりにも不自然。兄弟の縁を切ったような奴の娘(つまり姪)と、理由はともあれ銀座のギャラリーで待ち合わせをするシーンから、物語が始まるとか、

ダセー

比喩も滑ってるし、こんな作家をちやほやする我々日本の読者がいるから、出版不況になると思う。

何がリストウォッチだ、腕時計と言え、腕時計と。日本人の小説は、リストときたら、カットじゃ、ボケ

などと言いたくなるぐらい、この作家何様?と感じる。
出だしを読んで、この後の展開がいかに面白かろうと、文学のテイをなしていないと、日本推理小説文壇を恥じ、吐き気がしてやぶりすてた。
(こんなこともあろうかと、アマゾンで中古で買って、正解)
この国のミステリーは、これぐらいのレベルでいいんだろうなー。
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No.75:
(1pt)

著者はほぼ社会経験の無い若いときにデビューされましたが、それゆえか子供っぽい冗長な小説でした。途中から退屈過ぎて流し読みしました。

著者はほぼ社会経験の無い若いときにデビューされましたが、それゆえか子供っぽい冗長な小説でした。途中から退屈過ぎて流し読みしました。特に会話は日本人がこんなに長ったらしいかちこちの会話をしないだろうとうんざりしました。エラリー・クイーンとかの欧米の探偵小説に影響されているのはよく伝わってきましたが、妙にくどくどと丁寧に執拗に書かれている割に展開が少なく、この著者の作品はこんなにつまらなかったかと思いました。昔の新本格とかが出始めのころから書かれているので、評価も甘めになっていたのでしょうね。巻末に貴志先生との対談が載っていましたがずいぶんと差がつけられましたね。私は推理小説に作者の自画自賛的な面白さは求めていません。ただし読み終えるのが苦痛なほど面白くないのは要らないです。いつ面白くなるかと読みましたが完全な期待はずれでした。
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No.74:
(5pt)

圧倒的な構成力

かなりの長編ながら無駄のないストーリー、後半に行くにつれ驚かされる仕掛けがいくつもあるので読みごたえもすごいです。
頼子のためにが面白かったので強烈なタイトルに惹かれ本作も手に取りましたが買って正解でした。このミス1位を獲得していた作品だということは他の方のレビューを拝見して初めて知りましたが、それも納得の出来です。
メインの殺人事件が起こるのは中盤とかなりゆっくりめの事件発生ですが、その前に小さな事件をいくつも挟んだりして飽きさせない構成になっています。そのため物語の密度がすごい。そして伏線が上手いなぁ。回収も鮮やか。さりげない伏線ながらその伏線を印象付けるのが上手いのでそんな描写あった?なんてことにはならないはず。
頼子のためにもそうでしたが、事件自体は解決しても物悲しい、やりきれない雰囲気が漂うラストが印象的。犯人にさほどの意外性はありませんが幾重にも仕掛けられたトリックはお見事なので文句なしにおすすめの一冊。
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No.73:
(3pt)

かなり致命的な欠陥(重大なネタバレ有り)

2005年度本格ミステリ大賞受賞作。
ではあるが、本作受賞前からいろいろ問題点も指摘されていた。
当時最も指摘が多かったのが、書評家豊崎由美氏らによる「そんな簡単に妊娠するかよ」という批評だが、初出からほぼ10年となることからもう1点、本作で根本的におかしいと思える点を指摘しておく。

具体的には「伊作が各務順一に騙されて、(ありもしない)妻の不義を確信するに至る過程がありえない」という点である。
本作では伊作が律子に対して「義理の弟の子供を身ごもってしまったというのは本当か」といって問いただし、それに対して律子も明確な否定が出来ぬまま「取り返しのつかない誤解」により、伊作が妻の殺害に加担したことになっている。(文庫版534ページ)

この部分はもともとミステリのトリックとしても「義理の弟」が表す人物を誤解させる、という、うまく使えばなかなか良いトリックと推察されるが、こんな使い方ではせっかくのトリックも台無しであろう。

なぜなら、伊作から見れば重要なのは「律子は(自分の弟である)川島敦志と不義の関係にあり、一時は妊娠までした」という点であり、こんな(各務にとって)都合よく「義理の弟の子供を身ごもった」などと律子を問いただしてくれる保証はまったくないからである。むしろ「敦志とよろしくやって、妊娠までしたそうだな」などと責め立てる方がよっぽどありそうである。
もしそうなったら「各務にレイプされて妊娠した」律子としては同じような態度が取れるであろうか?むしろそこまでの誤解に対しては徹底的に否定して事実をぶちまける可能性が高いのではないだろうか。答えないにしても何らかの否定的なニュアンスは伊作としても感じるに違いない。そうなったら各務にとって目も当てられない。犯罪計画どころか、その時点で社会的生命は終わる。
つまるところ、どのように伊作が律子を問いただすかが予測できない以上、各務からすれば「伊作本人が律子を問いただすこと自体が絶対にあってはならない」ことであり、そうならないようにするところ(言い換えれば別の手段により伊作を納得させる手段を準備すること)までが犯罪計画に含まれている必要があるが、そういう点が全く考慮されていないことはかなり致命的な欠陥と言えると思う。

なお、作者の立場で考えれば、やり方はいくらでもあっただろうと思われる。
・伊作の目の前で律子あての書簡を作成し、その中で「お前が義理の弟の子を身ごもったことをばらされたくなければ指定する場所に来い」と脅迫する内容を記載して投函する。あとから指定場所に律子がやってくるのを二人で離れた場所から確認し、脅迫内容が事実であると遺作に誤認させる
・伊作同席の上、声を変えた電話で上記と同じ内容を一方的に通告する 等々。

ついでに言っておくと、冒頭にあげたもうひとつの欠陥、妊娠確率を高めるようなやり方もないではない。これは簡単で、「結子に生理周期を聞いてもらう」だけでよい。姉妹間で生理についての話題は特に珍しいことではないだろうし「最近生理不順で困っちゃって」などともちかければ、相手の生理周期やら、どのくらいの狂いがあるかなどもあらかじめ確認できるであろう。それだけで(もちろん確実ではないが)妊娠確率は10倍くらい(または否定的な批評をなんとか封じ込められる程度には)高まるはずである。

冒頭に述べたとおり、本格ミステリ大賞受賞作かつこのミス等各種ベストの1位獲得作品でもあるが、現状で必ずしも法月綸太郎の代表作とは目されていないところを見るに、やはりこういった細部がなんとなく雑な点が原因ではないかと考えるのは穿ち過ぎであろうか?
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)Amazon書評・レビュー:生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)より
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No.72:
(3pt)

探偵役の男に魅力を感じることができません

毎回感じることですが、この作者の作品は文が硬いですね。
一番読みやすかったのがデビュー作の 「 密閉教室 」 で、2作目以降は読みづらいと常々感じています。
それでも宗教が絡んだ 「 誰彼 」 は先が気になるものでしたが、本作はうーん …… 。
真相そのものは割合とよくあるパターン ( 小説では ) なのに、無駄にややこしくしているというか …… 。
展開が 「 起承転結 」 ではなく、 「 起承承結 」 という気がします。

また、最後の方で過去の事件について 「 リスクの大きい計画だったことは否めない 」 とあり、
ちょっと無理矢理感を覚え、いまひとつリアリティを感じません。
2時間サスペンスドラマなら許容範囲という気もしますが、536ページは長すぎます。
美術を題材にすることで説明が多くなったとしても、もう少し何とかならなかったものでしょうか。

探偵役の男が事件のあらましを語る最後の40ページは苦痛でした。
〔 この男に魅力をあまり感じられない 〕 ところが弱いです。
彫刻家の行動にも納得ができませんし、現実のできごとなら、そのようにはしないのではないかという気がしてなりません。
〔 夫婦間で取り返しのつかない誤解が生じたまま 〕 って、そんなアホな。

推理小説というよりも、事件をもとにして探偵が推理を楽しむだけのゲームというか。
探偵役の男に人間味を感じることができず ( それがこの作者のスタイルなのかもしれませんが ) 、残念でした。
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)Amazon書評・レビュー:生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)より
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No.71:
(1pt)

ノックス・マシンが

最新刊ノックス・マシンがまるで筒井のように人を食ったように学術用語が溢れ出していて爽快だったので、最寄りのツタヤで平積みされていた本書を衝動買い。一気読みしたのですが……読後、ひどく落ち込んだ。ヒロイン?とおぼしき少女があまりに無残で、その母親の過去の事件も目を覆いたくなり、まあ展開的にそれはミステリーの常道なのでしょうが、犯人になにがしかの罰を与えようという勧善懲悪的な描写が欠落している。カタルシスがないのですよ。前半、とても魅力的に描かれているヒロイン?への共感、そして事件の悔しさのやり場をどこへもっていけばいいのか。ミステリーは種明かしだけすればいいってもんじゃない。読者の気持ちに踏み込んで、ちゃんと回収してくれなきゃ。ラストの1ページに脱力し、不快になって本を投げつけた(ほんと)。こんなのに付き合った日曜の午後を返してほしい。エラリー・クイーンと同様に著者名と探偵名が同じで、迷探偵・法月綸太郎シリーズということのようですが、ほかのもこんな具合なのでしょうか?
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No.70:
(4pt)

伏線回収は見事でした

読了したあとにamazonでのレビューを眺めていくうち
自分がこの作品に感じた違和感が浮かんできたように思う
というのもこの作品を読んでいて思ったのが
探偵が動かされている ということである。
探偵が動く先々で何かが起こり、それを探偵はとめることができず
すべてが終わったあとで探偵が推理する。
大体の探偵ものはそうなんですが、どうにもこのシリーズは
探偵が著者のいいように動かされ手いる間がぬぐえない。
他の多くの探偵ものとは異なり、探偵が深くそしてリアルタイムに
作品にかかわっています。(探偵が被害者を救える可能性があったことからも
わかるように)
そこでの探偵の行動 思考がどうにも動かされている感が
多分に感じられそこが私がこの作品に感じた違和感なのかもしれません。

とまあなんかこの作品を批判しているようですが、伏線回収はミステリーのなかでも
随一なのでそういった作品が好きな方にはいいと思います。
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)Amazon書評・レビュー:生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)より
4043803028
No.69:
(2pt)

楽しめない

探偵小説は第一義的にエンターテイメントであるはず。この小説は確かにロジックに破綻はなく、張り巡らされた伏線はきちんと回収されている。でも私は読み終わって、「それで?」と言いたくなりました。ストーリーに全く起伏がなく、他のレビュアーの方も書いておられるように読後に期待されるカタルシスが得られませんでした。「このミス」1位ということですが、娯楽小説としては残念ながら及第点とは言いかねます。
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4043803028
No.68:
(4pt)

ロジカルミステリ

この作品はとにかく凝った作りの作品で、その中心にあるのは首を切られた石膏像にあるのだが、
その謎は十重二十重に包み隠されており、さらに登場人物たちの勘違いやミスリードも重なり
中々解けないものになっているが、解決してみるとなるほどと納得できる形に収まるのが素晴らしい
作者の代表作といっても過言ではないだろう
ただとにかく作者らしい作品なので、まどろっこしい筋書きや論理展開が苦手な人には
あまりお勧めできない作品でもあるかもしれない
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No.67:
(5pt)

前半は地味だが最後まで読むとやはり傑作

生首に聞いてみろというタイトルと本格ミステリー大賞受賞というイメージから読む前は、猟奇的な大がかりなトリックの島田荘司系の推理ものかなと勝手に思い込んでしまったが、センセーショナルなタイトルとは裏腹にじっくりと読ませる人間ドラマ中心の彫刻をモチーフとした悲劇的なミステリーの良作である。半分ほぼ読み進んでも殺人事件が起こらないため、最初の方は正直カッタるいと思う人も多いかと思われるが、そこを我慢して最後まで読むと前半の伏線も全てピタリと符合し、被害者家族の過去の因縁に端を発する悲劇的な人間模様が浮かび上がる。読後の感想は久しぶりに大人の推理小説を読んだという充実感がある。やや地味ではあるが、よく練られた推理作品と評価できる。
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No.66:
(3pt)

探偵という存在の難しさ

著名な彫刻家が病死し、その遺作である彫刻の首が切り落とされる事件が起ります。彫刻家の弟であり翻訳家であり、さらに法月 綸太郎の友人でも川島から捜査を依頼されたことから、その彫刻家の娘であり、しかも遺作のモデルでもある江知佳の身辺を気をつける法月ですが・・・というのが冒頭です。

まず、普通は事件が起り、探偵や警察を必要とする状況になるのですが、この作品ではそうではありません。その過程が面白く、また様々な伏線が貼られていて、そのどれもが非常に丁寧なため、伏線とわかり難い部分さえ多々見受けられました。が、実際にその伏線が回収されていくカタルシスはちょっと無いくらいのレベルの高さと多さであり、この本のボリュームにも頷けてしまいます。ですが、このボリュームや伏線の多さについて躊躇われる読者もいるのではないか?とは想像しました。

そして、探偵という存在に必要な「事件」を起こしどう関わらせるか?という部分の繊細さが法月さんの真骨頂だと個人的には感じていますので、法月さんらしかったとも言える作品だと思います。

とてもロジカルであることに突き抜けた作品に興味のある方にオススメ致します。

しかし、個人的には、ロジカルな部分は良いのですが、いくらなんでも、という部分も多いと感じましたし、整い過ぎていて余計な感じがしてしまいました。細部に拘って伏線にすることでのカタルシスは十分理解できますけれど、やりすぎると興ざめしてしまいかねないと思うのです。
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4043803028
No.65:
(3pt)

小説におけるヴィジュアル面の弱さ

ミステリ小説としては読みやすく内容も悪くありません。
 ただ、読んでる途中「ああそうだったのか!」と思える場所はなかったのですが、読了後思い返すと、「この部分が肝だったのか」と感じた部分があります。普通ほその場所で膝を叩くことになるのですが、スルーしてしまった原因は文字に現れるヴィジュアル描写ではなくそこに暗に含まれるヴィジュアル描写だったわけで、どうしても想像だけでは確実にできない部分にあります。
 結局最後まで読むことによりヴィジュアル面での補完が可能になり、色々と納得できるのですが、読んでる最中は必要な情報が足りないため展開は想像の範囲を超えなくともどう転ぶのかわからずに読み進めてました。
 ヴィジュアル面でも作者の読者に対する意図的なミスリードがあるとも考えられるのですが、釈然としないものを感じたのも事実です。
 どちらかというと、小説より実写で見てみたいと感じる作品ですが、実写にしても並大抵の美術さんやキャスティングでは再現できないとも感じます。

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No.64:
(4pt)

現代日本で本格ミステリーを読める幸せ

作者作品は正直あまり好きではない。読後感は後味の悪いものが大半で、本格派という割には謎解きのロジックや驚愕度はそれほどでもないという作品が多く(作者長編作品で本当に本格派作品と言えるのは、法月親子デビューの「雪密室」だけだと思う)、これが良かったという作品がないからである。(唯一、ユーミンの「卒業写真」をモチーフにした「二の悲劇」だけは印象深かったが)

それで、本書は「このミス」1位受賞作品として知られてはいたが、前述のごとき理由と別の「このミス」1位作品で期待はずれの作品に当たったことに懲りてなかなか読む気がしなかった。それがようやくこのたび読むことになったが、正直大して期待はしていなかったのだが、読了しての感想は「うん、良かった、面白い」。

本書では、伏線をこれまでかというぐらいに張り巡らしまくり、これらを余すところなくぴたりと当て嵌めるその構成の緻密さが実にすばらしい。残念ながらラストの驚愕度がイマイチなのと、相も変わらず読後感が悪い(読後感ワースト1の「頼子のために」に次ぐ後味の悪さ)ことから星5つまでは進呈できなかったが。

しかし、先日読んだ有栖川有栖の「女王国の城」といい本書といい、一時絶え果てたかと思われた優れた本格ミステリー作品が、今もこうして日本で読めるというのは実に幸せなことだと思う。
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No.63:
(1pt)

これが1位とは

正直のところ、批判の書評は書きたくないのだが、「このミス」で1位なので、無視するわけにもいかず、思うことを述べたい。

本格推理小説に夢中になったのは遥か昔だ。中学・高校まで遡る。外国ものではクイーンで、国内は横溝あたりを追いかけていた。それから一旦退却し、島田荘司が登場してから、またのめり込んだ。ただ、追っかけは此処までで、いわゆる新本格といわれる連中の作品にはついて行けなかった。

法月もこの新本格作家の範疇に入るので、危惧感はあった。「このミス」1位の金看板はどうだったろうか? 外れだった。

先ず、ストーリーに起伏が無く地味なこと。彫刻の石膏がどうだとか、直取りがどうだとかの内容が興味深く伝わってこない。それから、犯行やそれに至る前の事象が場当たり的であること。

従って巧緻に長けた犯人のトリックを一つ一つ解いていくカタルシスが無い。練られたプロットは認めるとしても、それが致命的な欠陥でもあること。

数学の公式を解いていくのは数字と記号を用いるが、犯罪を解き明かすには、相手が人間だけに感情も思考も持っている。本格モノの難点はこれら感情を持った人間の行動を、作者の頭の中で、さも手駒を配剤するように動かせているので、ゲーム感覚に堕してしまう。

極めつけは、読後感の悪さ。これが1位とは、「このミス」は本格モノに甘すぎる。
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