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氷菓
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氷菓の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.57pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全110件 81~100 5/6ページ
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アニメの第一話見て「だいぶ変わっているのだろうな」という印象を受けたので買って読んでみました。 …アニメを見ている人は、是非読んだ方が良いと思う。当然22分に脚本を置き換えないといけないので、全く同じ話と言うわけもなく、しかし話のトーンとアニメの絵のトーンがすごくボクの中では一致している。 悪い言い方をすると暗い。良い言い方をするならばシックだ。とても落ち着いている。 中身は少ない。個々人はどこかフェアリーテールのキャラクターめいている。キャラクターがステレオタイプという意見は受け入れがたい。なぜならばこうした学園ものでステレオタイプに準じたキャラクターがそこにいないと、かえって居心地が悪くなるからである。つまり、それは褒め言葉であっても貶す要因とはならない。(もっとも限度を過ぎると鼻につきますが。主人公の親友はややもすると「ちょっとあまりにも作者の心の中のささやきっぽくね?」という感じは受ける) 一応探偵もの、ミステリーのジャンルに入る。(アナザーはミステリーではない。なぜなら謎の原因が解明されないから。あれはホラーに区分けされるべき)しかし最大の魅力はそこではない。 と言うかミステリーとしてはかなりアンフェアである。以下ちょっとだけネタバレ。 最初の方の用務員が何かをしているのが聞こえる、というのは、そもそもそこに出てくるまで用務員の影すら見えず、そこを「想像する」事は読者には不可能。これだけにしておこう。アニメを見た人はここが逆に「簡単すぎ」と思ったに違いない。あれはボクもすぐに答えを出せた。 この作品の良さは、主人公といっしょに謎を解いたような気分を、読んでいる本人が味わえる、そこに尽きると思う。実際、ほとんどのトリックは読んでいるうちに「大体こんな感じ?」という所が頭に浮かび、しかしラストで読んでいる方の予想をほんの少しだけ裏切る。 その言葉が短い。これが心に突き刺さるように入ってくればしめたものである(作者のね)。その人はきっとボクのように続刊を買うことになる。 これが1作目だが、本作の結論は、本の3分の1ぐらいで大体分かった。分からなかったのはタイトルの引っかけぐらいだ。しかしそれでも3分の1まで読めばグイグイ引っ張ってくる感じはある。当然だが、タイトルがキーミステリーであり、しかし「これ分かる奴いねえよ!」と、読み終えた人のほとんどが思われたのではないか。言われてみれば「ああ」なあたりが、非常に「古典的」。 オチを見て下らないと言う無かれ。あれは全てのアメリカの子どもが気がついて、親にねだるときに実際に使うゴロである。つまり、とても愛着の強い表現なんですよ。誰でもあの言葉に何らかの思い入れがあって、そしてあれはなんといっても作者が思いついたものでは決して無い(ここ重要。下らないと思った人はあのゴロが適当な思いつきと思っているのだろう。大きな間違いである。あれが発明されたときからあのゴロはある。オチもきちんと「古典的」なんですよ。) 作者にとって「時間」はとても大事なものだと感じる。時間が経ったとき、誰かの人生から主観的意見が抜け落ち、そこに客観的な物語が生まれる。僕らの書いている言葉も、いつか誰かの古典になる。 …実際に古典になるのはごく一部だ。そこに作者の祈りを感じ取れれば、きっとあなたはこの作者を好きになるだろう。 ボクが言う「あれ」が気になる人は是非お読みください。 多分これだけばらしてても、読み終えるまでボクの言う「あれ」の正体は、あなたは分からない。分かったらスゲエ。寧ろ主人公が他の人間が分からなくてイライラしているのが一番分からなかったわ(爆)。これ以上は言わない。今、どうして彼が分かったか理由が分かってしまったけれど、それを言うと読む楽しみがゼロになる。そのような犯罪行為は敢えてここでは犯さない(笑) そう言うあらが見えるため、本当の評価は4つですが、アニメを面白くしてくれると言う意味で5つ。読んでも、「アニメでどう表現されるのだろう」というドキドキ感を、京都アニメーションは充分に与えてくれますね。伊達にCLANNADのようなファンなら誰でも知っている結末の話を最後まで見させた会社ではないな、と今回改めて思いました。 | ||||
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連続した短編三つのあとに中編一つで構成される200ページちょい、とすぐに読み終わってしまう短めの作品です。 短編は退屈で仕方がなかったです。謎もキャラクターも陳腐の一言。しかし、千反田えるによって謎が提示されて以降の物語は徐々に輝きを増していきました。そこにいたるまでの短編中に小道具が用意されていた点、冒頭の悪友から灰色野郎呼ばわりされるシーンなどが、表題の『氷菓』という耳慣れない言葉に迫り、紐解くための一要素になっていたのだと気がついたときには目から鱗の思いでした。退屈なんて感情はどこへやら。一気に最後まで読める魅力のある作品に変化していました。いい感じに青春小説してますね。 薔薇色の高校生活が送れる方はごく少数でしょう。願わくば、この物語を通して古典部の面々にはそうした人生を歩んでほしい(特にホータローとえる)。読了後にそう思える程度にはキャラクターたちに感情移入している自分がいました。できれば、私自信もこの物語に高校生のころ出会いたかったです。 | ||||
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古典部シリーズ第一弾であり、米澤氏のデビュー作です。正直な印象として軽いミステリーですね。あとは、すごく地味ですね。古典部シリーズはシリーズが進むにつれて面白くなるからね。 古典部のメンバー達は、文化祭(カンヤ祭)のために、文集を書くことになった。文集を書くために、文集のバックナンバーを探すことになる。文集の内容は、33年前に古典部に起きた事件についてまとめることだ。 | ||||
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この作家は、”すべて承知した上で書いて”ますね。まあ作家たるものそれくらいでなくては困りますが。 悪い言い方をすれば、賢しいっつうか、しゃらくせえっつうか。 たまにはっちゃけるけど、決してはしゃぎ過ぎず、たまにシリアスぶるけど、決して重くなり過ぎず。 そこら辺りのバランス感覚こそが、天才の所以でありましょう。 若い世代の作家がまともな日本語を書けるというだけでも喜ばしいことです。 ほんと多いですからね最近、残念な日本語が。 で、この書ですが、面白いです。ミステリとしても、青春小説としても、一読にあたいする作品だと思います。 もっと若い時代に読みたかった… | ||||
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ミステリーって誰かが死んで、それを解明する探偵または探偵役がかならずいるんですよ。でも米澤穂信さんの一連の『氷菓』から始まる三部作は、誰一人として殺されることはありません。探偵的な役まわりをする折木奉太郎があざやかに推理を展開するこのシリーズに、気づいたらはまってしまいました。わたしは、いきなり『遠まわりする雛』を読んで折木奉太郎を知ってしまうのですが、それでも『氷菓』への感動はハンパではありませんでした。最初は、ふざけたタイトルだなと思ったんです。ちゃらちゃらした学園もの?と思っていました。でも、いい意味で裏切られました。なぜ『氷菓』なのか・・・これってあるもののタイトルなんですが、ふかーい意味があるんです。ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、その意味をわかったときに、推論を積み重ねることのおもしろさと言葉の暗示する深さみたいなものを知った気がしました。そう、殺人事件の謎解きだけが、ミステリーではない。普段の生活の中にもミステリーは潜んでいる。 | ||||
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一応古典部シリーズなので、日常の謎だけでなく、33年前の古典部文集をヒントに過去の謎も追う展開になっている。このシリーズは初体験だったので、最初に出てきた謎にはちょっと首をひねってしまったが、大小さまざまな謎が出てくるにつれ面白くなっていった。 省エネをモットーとする主人公は、高校生らしからず、やらなくて済むことはやらないという”灰色”の高校生生活を送ろうとしているところに、海外放浪中の姉から手紙が来る。古典部に入るべし。部員がおらず廃部寸前の古典部に入ってどうするのか疑問に思いながらも、入部届けを出し部室に向かう・・・。 青春ミステリーというほどの華々しさはないのだけれど、33年前の謎を追う過程は面白く、限られた資料だけで頭をフル回転させてあれこれ議論する4人はなかなかいいキャラクターだ。そして最後に明らかになる文集「氷菓」の意味。これには途中で気がついたけれど、なかなかひねりのある作品で面白かったな。次も読んでみたい。 | ||||
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米澤穂信氏のデビュー作にして、「古典部」シリーズ第1弾。省エネをポリシーとする折木奉太郎が、アグレッシブな姉に脅されて入部した「古典部」。何をするのか全くわからない部活でであった千反田えるの「私は気になります」に引きずられて日常の謎を解決してゆく。本作では千反田の叔父、関谷の謎を解明してゆく訳だが、最終的には関係者から事の顛末が明かされること、氷菓の意味がだじゃれなことなどミステリとしては貧弱だ。ただ、「小市民」シリーズにしてもそうだが、キャラ設定と文章がまさにライトノベルであり、読んでいて楽しい。角川スニーカーから出されているのだから、もっとラノベらしいタイトル、装丁で出版すればうれたのにと思う。 | ||||
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古典部シリーズ第一弾。 主人公ホータローの古典部入部から文集作成までが描かれています。 省エネ主義者の主人公のモットーは、 「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは、手短に」 ですが、古典部に入部して出会ったヒロインの好奇心の爆発に巻き込まれていくなかで、主人公の心にも変化が現われていきます。 そんな青春活劇がこの古典部シリーズです。 殺人事件の起こらないかるーいミステリーなので、気楽に読めます。 トリックとかアリバイとかそういうのはいっさいありません。 ミステリーというよりかは、学園モノです。ライトノベル的です。 ―――――――――――――――――――――――― 「ホータローは、薔薇色が羨ましかったのかい?」 「かもな」 | ||||
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感情移入できました。 学園の中での「謎」を解きますが、わたしにもその昔、学生時分に似たような経験があります。 謎は解かねばならないし、解けないものは謎ではない。 そうも思います。 この作品を推薦いたします。 | ||||
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語り口調が昭和な感じなのがダメな人は入り込めないかも知れないが、古き良き学園ミステリーを彷彿とさせて僕は好きだった。このレビューを読んでくれた方が知っているか知らないが、ファミコンのディスクシステムの『ファミコン探偵倶楽部』的な雰囲気が僕をワクワクさせた。本当にありそうな話だなと読みすすめたが、あとがきを読んで4割は実話だと知ってなるほどと思った。気がつけば十数年前に戻って高校生の気分で楽しく読めた。今から続編を注文します! | ||||
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値段からわかるようにそんなに太い文庫本ではないので電車の中で暇をつぶすのにはもってこいの小説。ほかの方のレビューにもあるようにこの本には殺人事件も命の危険に晒されるような危険なことは一切起きません。日常の中に起きた軽い事件、軽い疑問を主人公が推理していくというもの、子供の夏休みの読書感想文にもお勧めな本かもしれません。物語は無駄な浪費をしたがらない、物事に消極力姿勢の省エネ少年の主人公と、好奇心旺盛なお嬢様と、雑学豊富な主人公の悪友(好敵手)とその好敵手の事が好きな、毒舌家図書委員、この4人を中心に進められます。この氷菓の作品の中で起こった事件は3つ、私は初めの二つは30分最後の1つが1時間くらいで読みました(私の読書スピードは遅いです)まさに電車での暇つぶしーという感じです。本の内容は、ものすごく面白い訳でもなく、事件の内容からし、手に汗握る展開もないですが日常に起きうる事件ということもあり、難しい表現はあんまりないです。だからあまり頭を使わずスラスラーと読めます。ちょっと残念だったのが登場人物たちの心情というか内面のような物の描写が少ないためかあんまり登場人物に感情移入ができない所ですね。数年経ったら小説の内容を忘れそうなくらい印象派薄いかも。続編も出ているので、これから読み進めていく上で変わっていくかもしませんが。でもこういう人が死なない推理物というのは読みやすくて私は好きです。続きもぜひ読みたいと思います。 | ||||
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高校を舞台にした学園ミステリー. 何とか少年みたいに学校内で殺伐とした殺人事件が起きたりするわけではなく 日常の謎を積み重ねて,学校の過去の事件に迫っていくというストーリー. キャラ設定もストーリーもコミカルな雰囲気で 終始一貫してほのぼのとしたムードである. 最後の謎に到達するために 小さな謎を1つ1つクリアしていくプロセスが どことなくRPG的にも見える. ヒリヒリするような緊張感とは無縁だが 肩肘張らずリラックスして読める佳作. | ||||
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「不必要にニヒルな態度を取る主人公にどうも感情移入できない」 「他のキャラクターもいまいちリアリティがない」 「謎解きが、どうも肩透かし」 「最後のオチ、どうなの?」 ・・・と、欠点をあげつらえばきりがない。 でも私が本書を、寝る間も惜しんで一晩で一気に読んでしまったことは事実。 そのストーリーテリングと舞台設定の妙には、素直に脱帽です。 さすがに「今が旬」という作家さんの作品だけあって、勢いのいい一冊でした。 | ||||
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駅の本屋でちょっと立ち読みして興味を惹かれました。 ミステリー小説というより学園もののライトノベルといった軽い気持ちで読める作品です 難しい用語も、その本独自の設定も無く、”普通”という世界観 ですが、登場キャラクターも各々個性があり、ストーリーも無駄な展開が無くスムーズに読んでいける 「持っている本も読み飽きたし何か新しいものを読んでみようかな?」 というひとにお勧めしたいものです。 | ||||
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最近すごく気に入っている米澤作品。三作目にして初・噂の「古典部シリーズ」を読みました。 これがデビュー作とのことですが、登場人物の造形、周囲の人物像、この世界観はやはり米澤作品の原点と言えるのでしょうか。謎解きはもちろん、この高校生活の雰囲気も。(「さよなら妖精」もこんな世界でしたね…) 「省エネ少年」ホータローくんの信条そのままに、無理なく無駄なく破綻なく(?)話が進み、謎解きも突飛ではなく、少しばかりの苦さもある。この氷菓、いい味出てます。 | ||||
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いわゆる日常の謎系統のミステリとしても良い出来ですが、青春小説としても好感が持てます。 多少ミステリとしては地味な部分もありますが、青春、学校といった誰もが知る日常との調和という点では好いバランスだと思います。 主人公と仲間とのやりとりは各々の個性が活きていて楽しく、なんとも高校生してる感じです。 ミステリとしては破綻がなく、作者のミステリへの造詣の深さが随所で垣間見れます。 続編が気になります。 | ||||
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高校生が主人公のお話ですので、軽いタッチの作品を想像していたのですが。 これが大間違い。 かなりの読み応えでした。 設定としては現代で、特に進学校でもない普通の高校が舞台とのことでしたが、 それはちょっと信憑性がなかったです。 言葉遣いは昭和ひとケタの感じで、イマドキこんな高校生はいないです。 ただ、やる気のない主人公が、ちいさな謎を次々と鮮やかに解いていく様は、 実に痛快でした。 北村薫さんの「空飛ぶ馬」を読んだ時の感覚と似ているなと思ったのですが、 著者がやはり北村さんの「六の宮の姫君」に触発されて本作を書いたと知り、 納得でした。 現高校生というよりは、昔高校生だった人たちにお勧めしたい作品です。 | ||||
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物語の主題の33年前のメッセージを探るというのは面白かった。 (その前の2つの事件はちょっと苦しいというか 展開の必要条件とはなりえなかったと思うが) 後々の解決の糸口になりそうなところをマーキングしたのですが、 (中にはp57大手尚人死亡なんてのも…全く関係ないけど・・) 解決のヒントとなる文も特にひねくれてなく、 心に引っかかったところはマーキングしてみるのがオススメ ヒントの素材を自分で用意できれば、主人公達よりも少しだけ速く謎が解ける。 祭りの名前の由来・執筆者の正体も過度な飛躍なく、 国語の問題を解いているような感じだった。 だからこの作品に限ってはじっくり読んでほしい。 解決そのものにならなくても過程は十分楽しめるはずだから。 日常範囲内の話・文中の中で解決の根拠の飛躍が無い。 ある種自分が理想とする作品であった。 欲を言えば、祭りの由来と氷菓の意味は説明しなくても良かったきがするけど(説明してほしくなかった)、まぁそれはやりすぎか。 面白かった。 | ||||
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あらすじは省きますがいわゆる「日常ミステリ」の良作。つまり密室トリックとか無人島が舞台とかでなく、そもそも殺す殺されるとかいうものではありません。作風も明るくテンポよく読めます。面白味のあるキャラ設定も違和感なく受け入れられますし、ミステリー&ライトノベルといった感じで万人受けするでしょう。あえて不満をのべるならば短いということでしょうか。スラスラ読めてしまう故に、もの足りない、もっと彼らの日常が知りたいと感じてしまう。知らない人はとりあえず読んでみて欲しい、おすすめの一冊です。 | ||||
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〈古典部〉シリーズの1作目にして、米澤穂信氏の処女作。 米澤氏は、かつて笠井潔氏と対談した際、 本シリーズと〈小市民〉シリーズが目指す 方向性について、以下のような発言をしています。 (ビルドゥングス・ロマンとまではいかず)全能感と裏返しの無能感、 これを試練にかけることで自分を客観視することのできる視点を獲得 する(過程を描きたい) このことを念頭に置くと、本作の第一章が「ベナレスからの手紙」 と名づけられているのは、非常に示唆的だといえます。 ここで「ベナレス」という地名が選ばれたのは、決して故なきことではありません。 あきらかにT・S・ストリブリング『カリブ諸島の手がかり』の一編、 「ベナレスへの道」が踏まえられているのです。 異文化のなかで挫折し、敗北していく探偵役・ポジオリ教授の姿は、 奉太郎がいずれ迎えるだろう未来図を暗示しているといえます。 と同時に、〈古典部〉シリーズにおいては、神のごとき全能の名探偵は存在せず、 あくまでひとつのコマとして作品に奉仕する等身大の探偵役しかいない、 という宣言でもあるのでしょう。 作者が用意した試練とそれに伴う挫折によって、 奉太郎は最終的にどこに至るのか――。 最後まで見守っていきたいです。 | ||||
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