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(短編集)
遠まわりする雛
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遠まわりする雛の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.19pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全46件 21~40 2/3ページ
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前三作が長編であるのに対し、本作は前三作の間に起きたエピソードを まとめた短編集となっており、頭の隅に、どの時期の話かを置いて おきながら読むと分かりやすいかと。 全般的に、各エピソードを定点観測のように見れば、奉太郎の心境の変化と、 (奉太郎から見た)える、里志、摩耶花の言動や行動原理の変化が よく分かるようにできています。 ここからは、各章ごとにレビューをしたいと思います。 『やるべきことなら手短に』 折木奉太郎と千反田えるの出会いから間もない、 「氷菓」事件の調査の前日譚。 省エネ主義という自分の信条が揺らいでいることを里志に指摘され、 それを認め、現状に対する保留であると答えた奉太郎。 帰り道の二人のやり取りを通じて、えるとの出逢いによって奉太郎が 微妙に変化し始めたことを示唆する描写が巧い。 『大罪を犯す』 直接関係のない隣のクラスで起きたトラブルの原因を探るという、 小説における「一人称を描く場合、他者の視点を放棄しなければならない」 という大原則を逆手に使ったエピソード。こんなことが起きた時、 出した刀を引っ込めるのって、まぁバツが悪いですよね。 『正体見たり』 夏休みに摩耶花の親戚の民宿を訪れた古典部の四人。 使われていない七号室に現れた幽霊は枯れ尾花かそれとも……というおはなし。 一人っ子(える)が憧れていたきょうだいという存在の『現実』を 突き付けられるという、彼女にとって少し切ない展開にはなりますが、 もっともその現実は、きょうだいを持つ者は意外とあっさり 受け入れているものなんですけどね。 アニメーションではちゃんと救いが入っているので、 原作では直接的な描写は無いものの、アニメーションが原作にかなり 忠実にできているため、もしかしたら文章による描写の無い部分に ちゃんと救いはあったのかもしれません。 『心あたりのある者は』 奉太郎を買い被るえるに対し、今まで自分がやって来たことは偶然である。 理屈と膏薬はどこへでもつく。と言い放ち、それを証明するために、 偶然校内に流れた呼び出し放送と、現在の状況から、放送の意図と 何が起きたかの推論を組み立ててみるも、推論はきな臭い展開に……というおはなし。 本作は放送から結論にたどり着くまでの描写に目が行きがちですが、 奉太郎が自分の『無能さ』を証明しようとしたり、 結論に到達したところで当初の目的を忘れてしまうという、 ちょっと間抜けな部分を垣間見ることができます。 『あきましておめでとう』 父親の名代として荒楠神社の十文字かほへの新年の挨拶をしたり、 納屋に奉太郎とともに閉じ込められても、あらぬ誤解を避けるために 大声で助けを求めることを拒むなど、名家の娘であるえるが、 未だに日本の社会、特に田舎に強く残っている『家』という存在に ある意味において縛られている様子が巧く、そして少し切なく描かれています。 後半からは『クドリャフカの順番』以来である里志の視線が入り、 奉太郎とえるが如何にして脱出を試み、里志と摩耶花が如何にして 意図を汲み取るかを交互に描いています。 このおはなしを成立させるには視点を移動させるしかなかったかと。 『手作りチョコレート事件』 摩耶花が里志にあげるはずだったチョコレートが盗まれた出来事を通じ、 『クドリャフカの順番』でも少しだけ見せていた、 里志の影の部分がクローズアップされるおはなし。アニメーション版では 他の三人の視点を加えることによって、ある意味においてハッピーエンドに なっていますが、里志は答えを見つけ出すことができるのでしょうか。 ふと、脳裏にBUMP OF CHICKENの『才悩人応援歌』の歌詞が頭をよぎりました。 里志が抱いていたのは、あの歌詞のような感覚に近いのかも知れません。 それにしても他のエピソードでも、里志への想いを隠すことなく、 何度里志にはくらかされても果敢にアタックを仕掛ける摩耶花は強い子です。 自分だったら『もうダメ……』と膝を落としていることでしょう。 『遠まわりする雛』 表向きは、千反田家の地元で開催される『生き雛祭り』での顛末を描いた話ですが、 高校に進学し、一年経った奉太郎とえるの、色々な意味において 大きな変化があったことを示唆する話になっています。 子供から大人になるに従い、自分の思いだけではなく、 自分の置かれた立場や状況を考慮して動かなければならない 年齢に差し掛かっている少年と少女は、今後それを乗り越え、 オプティマイズド・ソリューションにたどり着けるのか……わたし、気になります! | ||||
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朴念仁ぎみのホータローの意識が徐々に変質していく過程が実に自然で心地良い。今回はそんな登場人物たちの内面を見るための巻ですね。一応、どの短編にも推理要素はありますが、そちらはメインではなさそうです。どれも雰囲気にマッチしている「日常小話」という感じで面白いと思いましたけどね。長編の合間を埋めつつ、キャラクター同士の関係を進展させている、古典部シリーズファンなら必読の一冊かと思います。 | ||||
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表題作の遠回りの鄙が秀逸。えるの十二単のシーン、そしてその後のえるとほうたろうの会話、空気が最高。 アニメ化に期待。 | ||||
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古典部シリーズは、主人公を中心とするキャラクターたちの時間軸が明確に進んでいくという意味で、シリーズのミステリー物としては明確な特徴を持っている。 本著は7編の短編集であり、各短編のミステリー要素が飛びぬけて素晴らしいという訳ではない。 しかし、一短編ごとに時間軸が進んでいることを明確に示唆するストーリーの描き方は見事なものである。 7つの短編で約1年話が進むのだが、各短編で示されるキャラクター間の位置関係の変化や心理的な変化が明確に出ている。 時間軸を明確に進めるということは、出てくるキャラクターも当然、時間に沿って成長していく。 それぞれの短編間には直接的な関連が無いにも関わらず、読み通していくとメインのキャラクター達の関係や心情の変化が透けて見えるようになっている。 本格的なミステリーとは違うだろうが、好きな人にはお勧めだと思う。 | ||||
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まず挙げるのは、「手作りチョコレート事件」。 重ねて言いますが、ネタバレを含みますので、未読の方はお控え下さい。 まずチョコレートが盗まれ、えると里志が奉太郎のもとへと訪れます。 この時点で僕は「多分彼だろうな」と心中でほくそ笑み、確定したところでふっと笑いました。 「やっぱりか、彼らしいや」 と。 しかし、犯人に関しては割と多くの方が早期の段階で気付いていたかと思います。 おそらく、奉太郎と同じように。 しかしその理由を知ったとき、笑い捨てることの出来ない何かを感じました。 客観的にひどく深刻なことや、不幸漂わせる悲歎という大層なものではありません。 しかし彼という人間が他人を多少なりとも傷付けて、遠回りして尚答えが出せないことでした。 そして表題作 「遠まわりする雛」 ここで奉太郎は予期せずして、前述した彼の心境を体験することになります。 少し読み取るのは難しいかもしれませんが、そこには確かに、今までの奉太郎には無かった新たな想いの芽生えが見えたかと思います。そしてそれは、千反田えるにも。 変わり始めた彼らの距離の概算、これからも見届けて行きたい所存です。 総じて、素晴らしい一冊でありました。 読みにくい長文、失礼致しました | ||||
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「やるべきことは手短に」「大罪を犯す」「正体見たり」「心当たりのあるものは」「あきましておめでとう」「手作りチョコレート事件」「遠まわりする雛」と、複数の短編が合わさったものですが、基本的な登場人物は古典部のメンバーでして、内容によってあと数人登場人物が増える程度といったものです。ですから、謎解きと行ってもそんなに複雑なものではなく、読後「ああ、そうか」とクスリとするといったものです。 逆に、あんまりこれまでの古典部シリーズのように前提となることをきっちり読み込まないと分かりづらいところはなく、それぞれの短編1つだけを読むだけで、話がしっかり完結して楽しむことが出来ます。たぶん、こういう話の方が映像化(アニメ化など)するとき作りやすいんだろうなぁ…とも思いました。 あと、この短編はきっちり時系列で並んでいるので、主人公である古典部メンバーが(気づきにくいのですが)成長しているように仕掛けられているのも、興味深く読める別の側面かなぁ…とも思いましたね。 | ||||
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これまで三冊を読んで来た感想として、この「古典部シリーズ」はミステリー部分より、ドラマ部分に読み味があると私的には感じている。なので、以下に記す各話の短評は基本的にドラマ部分の精彩に重きを置き、ミステリーは副次的なものとしてレビューした。わかり易くするため○×形式を採用したが、これは個人によっていかようにも変化するとは思う。たとえばミステリー部分を重要視する人は、真逆の評価になる事もあるだろう。つまり、あくまでも一個人の感想ってやつです。 「やるべきことなら手短に」△ 主人公でありメインの語り手である奉太郎の人物像を掘り下げる話としてはまあまあ。 後の話でも述懐されるので、けっこう重要かもしれない。 しかし、これだけ読んだら奉太郎のとった行動に全く感情移入出来ない。共感するように書かれてはいない。どちらかというと「女郎蜘蛛の会」を持ち出すというプロット成立のための話に見えてしまう。 ミステリー部分は、「女郎蜘蛛の会」という秘密クラブの設定はけっこうワクワクするが、それが活かされる事は無く、謎解きも普通。もう一つのピアノ部は論外の出来(これはあえてなんだろうけど、それにしてもヒド過ぎる)。 「大罪を犯す」× ドラマ部分はけっこう良い。 キリスト教の七つの大罪を副次的なテーマに、それがオチに活かされている。 事件の解決後、千反田の気持ちがわかるというのも良い。 しかし、ミステリー部分の解決がヒド過ぎる。 ドラマ部分を重要視すると言った手前、評価を上げたいが、流石にこれはヒドい。 「あー、そうですか」という感慨もおきないほどに。 「正体見たり」△ ドラマ部分は学校を出るという点において、珍しい。温泉という事でエロを期待してしまったが、当然ないのであった。 ミステリーは普通。 「心あたりのある者は」◎ これは面白い。 『九マイルは遠すぎる』のオマージュだが、例外的にミステリー部分が面白い。 奉太郎と千反田との議論部分もキャラ立ちしているアドバンテージに加え、情報の出し方が巧みだ。 「古典部シリーズ」のミステリー部分としては最高傑作だと思う。 「あきましておめでとう」△ こちらは『十三号独房の問題』のオマージュ。 未読だったので元ネタも併せて読んだが、『十三号』の不可能性への挑戦に比べ、わりかしどうでも良い。 ドラマ部分も同様だ。 「手作りチョコレート事件」○ ぶっちゃけると、伊原は里志にではなく奉太郎に惚れている方がドラマ的に面白いと常々思っていたのだが(要するに三角関係ね)、ここまでやられると納得してしまう。里志にはまったく共感出来んが。 そんな里志と伊原の恋のお話。ミステリー部分はまあ普通。 「遠まわりする雛」○ 今度は奉太郎と千反田のお話。 奉太郎の本心がはっきりとわかる。ツンデレぶりがわかると言い換えても良い。 ここに来てようやく一話目の「やるべきことなら手短に」の奉太郎が理解出来る気がする。 里志の回りくどい恋愛観に比べ、案外ストレートな奉太郎であった。 ミステリーはわりとどうでも良い。 短編集という事もあり、一つ一つは短い。時系列にも沿っている。 だから「古典部シリーズ」の入門として薦める事が出来そうだが、キャラクターを予習してからの方がより楽しめるだろう。だから、始めの『氷菓』から読むのがやっぱり良いのかと感じた。 | ||||
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『古典部シリーズ』の4作目.07年10月の単行本の文庫化でシリーズ初の短編集となっています. 全部で七編が収められた本巻は,前巻から一気に時間が巻き戻って入学式直後の春からスタート. この『巻き戻り』について,作中でのフォローがないため,はじめのうちはいささか戸惑うものの, 過去作でのできごとが出てくるなど,徐々にこれまでの合間合間を繋ぐものであることに気づきます. また,各編ごとに趣向を凝らしたミステリ要素が織り込まれており,こちらも楽しみどころのひとつ. ただ,本作では青春模様の方が強く出ており,男子と女子,視点により大きく反応がわかれそうですが, 二組のペアについて,その『距離』のはかり加減,近づき加減が,甘く,そして時には残酷に描かれます. 中でも,何かにつけて周りとの関わりを避けたがる主人公に,明らかな変化が見て取れるのが面白く, 彼とはまるで反対,好奇心旺盛なお嬢様に翻弄されつつ,気がつくと彼女のことを意識している様子は, 1年間,さまざまな季節と場面が描かれたことがうまく作用し,強く惹かれるとともに印象にも残ります. 男子二人の達観しすぎた言動だったり,主人公のモットーが何度も出てくるのは少し気になりましたが, 前巻からさらに踏み込まれた4人の気持ちや関係,進級後になるであろう次巻以降が楽しみなところです. | ||||
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いわゆる「青春小説」を集中的に読んでいるが、このシリーズも面白い。 学園の平凡な「事件」を推理していく脱力系主人公は魅力的だ。やや定型化されたヒロイン像を補っていると思う。 「屈折した青春群像」になりそうでならない点がよい。 | ||||
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古典部シリーズの短編集。一年を通した時系列順に作品が並んでいるのでバラエティー豊かな内容になっている。個人的に好きなのは心あたりのあるものは。ハリイ・ケメルマンの九マイルは遠すぎるへのオマージュで千反田と奉太郎のやりとりが一番ミステリー色が濃いと感じた。 後は手作りチョコレート事件と遠回りする雛。特にチョコレートは読んでいて切なくなった。 このシリーズがこの先どうなるか楽しみである。 | ||||
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古典部シリーズ第四作 短編集ほかの方がレビューされてますが「一年目の古典部の歩み」が凝縮され、しかも人間関係が大きく動き始める、多分シリーズのターニングポイントになるのではないかなと思います また「遠回りする雛」「あきましておめでとう」には今後ホータローが越えなければならない壁が暗示されてるのではないかと勝手ながら推察でき、今後の展開が気になります。 早く最新作の「二人の距離の概算」が文庫になららないかなぁ | ||||
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それぞれの謎解きや、細やかな心情の描写も素晴らしいです。 ぼくが中でも重要だと思ったのは、やはり「雛」えるの思い。 が、伏線もすごい。「大罪」のシーンとか。シリーズ完結後の評価が楽しみ。 ラストシーンの余韻はたまりません。える本当に罪な子。 ストレスなく読むことができる。単体でももちろん、素晴らしい短編集ですよ。 ボトルネックなども好きですが、やっぱり「古典部シリーズ」は特別です。 ストレートに楽しめる、近い将来間違いなく再読するであろう傑作です。 | ||||
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「古典部」シリーズの短編物。 各話の時系列はバラバラに展開され、3作目の続編ではない。(3作目あとの話もあるが) 「古典部」をミステリーと分類するなら、短編1つ1つの「謎」や「解決編」は物足りないように感じる。 ただし、心情描写に関しては各人物にスポットが当てられ、人物に対する愛着がある人にとっては非常におもしろいのでは? | ||||
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古典部シリーズ第4弾。 前回の『クドリャフカの順番』では文化祭が舞台でしたが、今回は高校生活の時間の流れを一部遡りつつ、古典部メンバーの1年間の出来事を青春真っ盛りで描写しています。 入学間もない4月、夏休みの温泉合宿、お正月、バレンタイン、そして2年生になる直前の春休みなどなど。 今までの作品中一番青春小説の色が濃くなっているため、物語は登場人物の人間ドラマに重きがおかれ、ミステリー要素はだいぶ落ちていますが、古典部シリーズのファンだったら間違いなく楽しめます。 逆に当たり前のことですが、米澤穂信さんの本をまったく読んだことがないという人は、いきなりこれに手を出さず『氷菓』から読みましょう。順番に読んでいけば、いかにこの短編集がぜいたくな1冊かわかるでしょう。 | ||||
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そのことにつきあえるほどに、既に発表された連作で登場人物4名の性格設定が熟してきました。 そうなると、たとえばポワロの短編集ではそこまでは楽しめない、作品世界の中での内輪ネタで小話が成り立ちます。 ですから、発表順に読んできてください。 | ||||
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米澤穂信氏の著作を読むのは、これが二冊目だ。一冊目は、『ボトルネック』。『ボトルネック』は、SF的な要素が濃かった印象だったが、本書では、その要素はだいぶ薄かった。 『ボトルネック』から受けた印象と重なった部分もある。米澤氏は兄弟・姉妹に対して、否定的なイメージを抱いているのではないか、という印象だ(「正体みたり」参照のこと)。 「あとがき」によれば、〈シリーズ四作目〉である、という。そんなこととはつゆしらず、私は本書を手に取ったわけだが、本書収録の「正体見たり」に本書未収録の〈『氷菓』事件〉なるものが、ちらと顔のぞかせている。そして、この件は千反田とかかわりが深かった。解決後、千反田は俺たちに感謝し、その労をねぎらうため、温泉合宿を計画したのだ。 とある。いったい、〈『氷菓』事件〉て何? これこそが、〈古典部〉シリーズ第一作なのだそうで、さりげなく自作を宣伝するとは、いやはや、米澤氏もしたたかだ。千反田じゃないけれども、それって、なんですか? 私、気になります! 気になる、と言えば、気になることはまだある。冒頭に置かれた一篇「やるべきことなら手短に」に、しかし、一通の手紙で目論見が狂った。インドはベナレスから届いた手紙。「古典部に入りなさい」。そしてほんのわずかな不運と読み違いのため、俺はいま、その指示通りに古典部に籍を置いている。 とある。インド? ベナレス? 「ほんのわずかな不運と読み違い」? いったい、なにがなにやら……。あるいは、シリーズはじめから読めば、疑問は氷解するのだろうか? 最後に収録された「遠まわりする雛」の終盤で、折木奉太郎はある一つの、心裡における謎、その真相に思い当たる。私はこの時点では、真相にたどりつけなかったのだが、「あとがき」を読み、あるいは、そういうことだったのかもしれない、と推定することはできた。「あとがき」に米澤氏は書いている。「物語においても、一度固定された時間が動き出し、構築された関係性が変化することは苦手でした」、と。私のなかで、どのような論理の飛躍が行われたのか、どうも、うまく、説明できないのであるが、私はこの米澤氏の一文から、あるいは、と思いついたのだ。思いついたのではあるが、その一言は、あえて言わない。 | ||||
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米澤の「古典部」シリーズ短編集。7編を収録。 これまで出ている古典部シリーズのエピソードの(時期的な)間をうめるような話でもって構成されていて、全体的に提示される謎はゆるめである。導き出される答え(というか解釈か)もゆるい感じ。 トリックとか、そういうのを狙った著作ではないのは明白なので、そういう話を読みたい人には向かない。一方で、古典部シリーズをこれまで読んできて、その雰囲気に浸りたい人にはうってつけ。そういう位置づけでしょうかね。少なくとも古典部シリーズを発表順に読んでから読んだ方が良いことは確か。 個人的には、まあ楽しく読めたので良しとしましょう。 | ||||
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古典部員の一年を描いた短編集. 文化祭をクライマックスとしていた前作までとは異なり, 古典部員4人の季節ごとのイベントが描かれている. ミステリー色は薄く,前作での青春の苦悩を掘り下げるでもなく, 古典部員4人の2組のカップルの進展がテーマをになっている. 気持ちのゆらぎや感情の再確認がいつもの「日常の謎」に交えて ちょっとした風景の中に描かれている. 内容的にはまあまあではあるが,大の大人が読むにはちと青臭いかw | ||||
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「古典部シリーズ」第四弾!!! エントロピーは増大する なにもせず留まるには、踏ん張る力が必要ではないのか 主人公は努力して省エネに徹している 信念など持たず、だらだら生きる方が楽だろう 主人公は好きな子ができたが、省エネの信条に反するので告白できない 信条について悩むのは全然省エネではない また、別の主要キャラは執着しないことを信念にしている その為、相思相愛の子と付き合うことをしない 今回は信条に反して恋愛をするかがテーマか シリーズのターニングポイントとなる作品かも 今回は信念に反して、恋愛をするかどうかがテーマか | ||||
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古典部シリーズ第四弾。 短編集です。最初はこれは前作以下かと心配しつつ読み始めましたが、読み進めるうちに目を開かされました。謎解きを通して四人の心情が明かされ、変化し、気づいていく。遠回りしながらもこうしてお互いを理解していくこの過程こそ、普遍的な青春小説そのものだと。 『遠回りする雛』、よかったです。その光景が目に浮かんでくるようです。 ごくありきたりの学園ものにはしてほしくない。他の作家さんの高校を舞台にした小説とは趣を異にしている古典部シリーズだから、少し変化しつつある彼らの心情が今後どうなるのか、気になります。 | ||||
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