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夏の名残りの薔薇
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夏の名残りの薔薇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.17pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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これもまたいかにも恩田さんらしさ満載の作品です。一見ミステリ仕立てでいてミステリではなく。難解で知られるアラン・レネ監督映画「去年マリエンバードで」からの引用が、随時、間にはさまれ、複数の人物が自分の内面を語り、それぞれの視点から状況を見ている、その視点は当然ひとりだけのものに限られるため、全体的な真実がたち現れてくるまでにはかなり時間がかかります。 まず導入部分に心奪われます。山裾に広がる見事な紅葉の森。その色彩の鮮やかさ。そこから一転、夜中に降り積もった雪で一面真っ白になった山頂のクラシックホテルはまさに”雪に閉ざされた山荘”となり、強風にあおられる窓がじわじわと不穏な恐怖感をかきたてます。 資産家の沢渡家が貸切にしたそのホテルで、どこか常軌を逸したような変わった3姉妹が毎年開く豪華なパーティ。 彼女たちが毎晩ディナーの席で披露する奇怪な話はどこか残酷童話を思わせ、そこだけでまるで怪奇小説のように鬼気迫ります。 招待客は誰もが一癖ありそうな人物ばかりで、親族の御曹司に嫁いだ美貌の桜子と近親相姦の関係にあるその弟。一見おっとりした桜子の夫や、もう1人の桜子の愛人、情緒不安定な女優とそのマネージャー、なぜ招待されているのかよくわからない大学教授などなど、そしてすでに故人ながらいまだ強い影響力を感じさせる沢渡家の祖父の影・・。彼らが交わす当たり障りのない上品な会話が、余計にこれから起きる惨劇を予感させぞくぞくします。 映画化されたらなかなか密度の高い作品になると思うのですが、読みながらどの俳優さんが役にふさわしいかあれこれ考えてしまいました。 1章目で殺された人物が第2章では当たり前のように生きていて、事件はなかったことになっているということが何度も繰り返されます。本当に殺人事件は起きたのか、それとも・・?真相は最後まで明らかにならないため、とりあえずすべてを頭において保留の状態で読み続けなければなりません。 この間を雰囲気に酔いしれて楽しめるか、それともただ忍耐だけでいらいらするか、このあたりで好き嫌いが分かれると思います。はっきりした現実的な話が好きな人や、本格ミステリつまり”犯罪がおき犯人がいてそれがちゃんとあばかれる”話を期待する人は好きになれないかもしれません。 映画化されて有名になった「夜のピクニック」や「蜜蜂と遠雷」など健全で”まとも”な作品でファンになった方は、その延長でこのようなお話を読むとびっくりするかも。が、恩田さん本来の個性はむしろこちらの方でしょう。 ネタばれするのであまり書けませんが、最後のシーンであの人物とあの人物がなぜ一緒に旅立っていくのかが理解できませんでした。過去、記憶、妄想、願望などが渾然一体となって描かれ、ここは映画になぞらえてあるのだと思いますが・・。ここを省けば星5つです。恩田さん作品の中でもベスト5に入るものすごく好きな雰囲気でした。 杉江松恋氏による恩田陸作品についての解説がとても的を得ていると思います。また、そのあとの恩田さん本人へのインタビューも、子供の時からの読書歴や作品のバックグラウンドを知る上でとても参考になります。 | ||||
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パラレルワールド的なノリが好きではありませんでした | ||||
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恩田版「匣の中〜」かなって感じだ。 とにかく、読んでいて何が起こっているのか、という点に興味がわく。 リーダビリティは満点だし、なにより相変わらずの恩田節だ。 つまり、登場する女性陣が、みんな強い、強すぎる。 ネットでの評判は、あまり芳しくないようだな。 でも、私は面白かったよ。 それなりの収束はするしね。 まあ、この着地点だと確かに文句も言いたくなるとは思うけど。 でも、第一変奏と第二変奏とを読めば、気づくことがある。 それが本作のテーマだと理解できれば、本作はとても楽しめる。 途中に挿入される「去年マリエンバート〜」は、雰囲気作りには良いのかもしれないが、少々リーダビリティを下げている。 これは要所だけの挿入でもよかったんじゃないかな。 相変わらず登場人物のイメージが曖昧だが、それもまた恩田節であるし。 本格読みは怒るかもしれないが、作中でも言及されている「ドグラ・マグラ」を許容できる人には評価されてもいいと思うね。 | ||||
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クラシックな趣のホテルに年に1度集まる男女。 その年は、いつもの年とはなにかが違っていた。 不吉な前兆と発生する事件。これは現実? 1961年にヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞を受賞した映画「去年マリエンバートで」をモチーフにした恩田陸さんらしいミステリ。 三人称多視点で、ある日の出来事を語るという試みは恩田陸さんがお得意とするところですが、この作品では第1章で語られた変死事件が、次の章では「無い」状態で話が進んでいきます。 どこまでが現実で、どこまでが登場人物の妄想なのか曖昧な境界のまま、ストーリーが進んでいき、いつの間にかその曖昧な境界線がぼやけてくるような錯覚に陥ります。 恩田陸さんの作品は「結末を開く」ものが多く、モヤモヤ感を残しすぎるのがある意味難点ですが、これは比較的閉じて頂いた作品だと思います。 でも、読んでいてちょっと疲れた……酔ったかな。 | ||||
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山深い古いホテルで殺人事件が起こる。 が、次の章に入ると前の章の殺人が打ち消され物語が続き、次の殺人が起こる。ってな具合に話が進む。 最初の章を読み終わって次に進むと、殺人が起こる少し前の場面から物語が始り、前章で殺されてた人が普通に現れたので戸惑った。3章からは馴れたけど。 あと章毎に語り手が変わるのも特徴的。 次は誰が語るのかが毎回楽しみだった。 恩田さんの本はわりとピュアというか…学園モノとか時空を超えた愛とか…あまり男女の関わりが強調(強調って程でもないか…?)されたものって今まで無かったけど、夏の名残の薔薇はそう思うとだいぶ踏み込んでいる気がして新鮮だった。 登場人物が交代で語っていくので、色々な人のモノの考え方や登場人物の印象が違っているのも面白い。 私が特に好きなのは、核となっている女性の実業家の旦那さん。 見た目や周りの印象は、『人の良い3代目』。私も他の人たちが見るこの人の印象はぼんやりした腑抜けっぽい感じだった。 だけどこの人の視点で物が語られている時、印象は逆転。 頭の回転が速い、裏を読む、ビジネスマン。そして、所有欲の強い男。 まぁ…この人の心の声…怖いわ(笑) でも好き。恩田さんの本にはこの裏表あるタイプの男性、男子がよく登場するように思う。 それぞれの登場人物も人間的欲や感情に溢れる裏が垣間見えて殺人事件を通して見える感情劇がミステリよりも見ものかも。 あと、この本も恩田さんおなじみの閉じない物語になっている。 | ||||
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各章ごとに、登場人物の一人の視線で展開する緊張感のあるストーリーがとてもいい。しかし、ちょいちょい出てくる映画かなんかの引用文はかなりうざったく感じられた。そして、各章で展開しているストーリーは矛盾している。これら各章で矛盾したストーリーたちをどのように収束させていくのか?各章のストーリーが魅力的なだけに、最終章への期待が大きかったのだが・・・。 映画の話とリンクさせているのだろうが、到底納得できない終わり方だ。何も収束していない、散らかしっぱなしの印象。混乱したままで終わるのもいいかなと思われる方にはいいかも知れません。 | ||||
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人は嘘をつく。 このことを前提にしないと成り立たない作品なのかもしれない。 それぞれの言い分のどこまでが真実なのかということなのかもしれないけれども、自分はこういう作品が苦手だ。 きちんとした終末を迎えたいと思ってしまうのだ。 | ||||
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恩田陸には珍しいミステリ小説。 物語の舞台は年季の入ったホテル。 そこでは毎年沢渡の三姉妹によるパーティが開催されていた。姉妹の招待された客たちはそれぞれ嫌なウワサがあり、張りつめた関係だった。だがパーティの最中に殺人が行われる。これは本当に現実なのだろうか・・・?読んでみて、思わず「うっ」と軽い抵抗を感じました。 しょっぱなに登場する美貌の姉弟は禁断の仲であるという設定からヘビィだなと思いました。そして全部読み終わるとまるで秘密の花園(笑)を見てしまったような気分になります。 また、本作は第1変奏から第6変奏の6つに構成されており、変奏ごとに人物の視点が変わって相関も変わるという構成は良くできている。 とにかく全編に渡ってただようディープな雰囲気が印象的な小説だ。 『夜のピクニック』や『ネバーランド』で恩田陸に惹かれてこの本を読もうとすると、面を食らうかもしれない。童話的な語り口と演出が特徴で、そこからシビアな人間関係が浮き彫りとなってストーリーの濃さがにじみ出ている。 清々しい恩田陸を望むのだったら心して読んだ方がイイ。 でも私はこの読後の不思議な虚脱感は嫌いじゃない。 | ||||
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恩田陸は非常にオマージュが好きな作家だが、今作ほど強烈に、大胆に取り入れた作品は無い。ふんだんに「元」が引用されている。 アラン・レネ監督映画『去年マリエンバートで』が今作のオマージュ元で、引用文が繰り返し繰り返し本文に登場する。 さて、この小説は「人の記憶、妄想と現実」がテーマであると思われる。各章毎に殺人事件が起こるのだが、次の章では記憶がキャンセルされ前章で死んだ人物は蘇っている、というような表現がなされる。 しかし…これは記憶が違っているのか、忘れているのか、現実なのか、妄想なのか。そういう境が曖昧になって… ところで、この小説は各章を「第〜変奏」としているが、上手いなぁと何章か進んで思った。変奏曲とは主題といくつかの変奏からなる楽曲の事で、今作では基盤となる主題を用意し、各変奏で内容を変えていく、という風に表現している。 これを見ると最新作「中庭の出来事」(06年12月)にも近いものがあり、あちらの方がより込み入っていて年月を感じた。まあ、今作は「登場人物の記憶〜」がテーマで、あちらは「読者の記憶」にテーマが置かれているのだろうから、作風を含めて受け取り方は全く違うのだが。 「自分の幸運を享受しつつも、心のどこかでそのことに物足りなさを感じることがある。そう感じること自体、傲慢で贅沢なことだと承知しつつも、人間とはそういう生き物なのだから仕方がない。」 本文128ページより | ||||
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映画をモチーフに用いた作品はこれまでも数作みられました。本来この手法は半端に映画のイメージに引きずられるので不得手なのですが、今回あまりに大胆な挿入でかえって目につきませんでした。出版当時はタイトルと装丁が印象的ではあるものの特別引っ掛かるものはありませんでしたが、今回改めて振り返ると意外なことに数ある恩田作品のなかでも興奮してしまう部類に入ってきてしまいました。秋のホテル、サロンでの読めない会話、二転三転する事実。目の眩むような秋に読む美しい小説です。 | ||||
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恩田陸の本格ミステリ(少ないが)の中では、一番の出来ではないだろうか。 題名と話もちゃんと繋がってる。 いかにも恩田陸が好きそうな設定で、絢爛豪華。 何回も何回も前のページへ行ってしまったが、最後はすっきりした。 | ||||
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まず、表題と内容の不一致。 内容も、引用の仕方が難解だった。 モラルも含めて、後味の悪い作品。 構成は面白かったが・・・。 これまで読んだ恩田作品の中では一番がっかりしてしまった。 | ||||
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ここに書かれているのは真実か?見極めながら読み進もうとするが、いつの間にか「この作品の中に迷い込んでしまった!」という気持ちにさせられていた。人の記憶のあいまいさ。起こったことと起こらなかったことの区別は、どうつけたらいいのだろうか?出口を見つけようとすればするほど、出口からは遠ざかる。人の心の中にも、迷路は存在するのだ。 | ||||
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この作者の作品は初めて読みましたが、私には難解すぎました。読みにくいというわけではないのですが、いろいろな事件が事実なのか、幻想なのか混乱して、最後まで意図がわからず、もやもやしたものが残りました。結末もどうしてそういうことになるのか、いまだに謎です。随所にあった「去年マリエンバートで」の引用文は途中から読むのをやめました。理解がますますしにくくなったからです。最後まで読めば何かがわかるのかと思って期待したのですが、結局理解できませんでした。もっと修行を積んで、文学がわかるようになったら理解もできるのかもしれません。題名と表紙は美しいと思います。 | ||||
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本の構成に変奏が用いられるように、章が変わる毎に同じテーマが繰り返されつつも変化してゆくそれは、各章で死人が出るが、次章ではその人が生きて別の人が亡くなるからしかし、その構成に読んでいると違和感は生じない人間の心の内に潜む建前と本音が、山頂のホテルという閉じた空間で交差することが、逆も又真なりと思わせるからだ。繰り返される殺人と、上流階級である登場人物達の心の内が、章を重ねることで絶妙な揺れ方を示す殺人は心の内で行ったのか殺人は本当にあったのか読後も見えないページが潜むように感じる、閉じないミステリーだ | ||||
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雪の中、孤立したホテルで次々と起こる事件・・・? なかなか難解だ。人称の使い方が筋立ての柱の一つだが、これが結構しんどい。 読み進めば、なにかクライマックスめいたものがあるのかと期待したが、それもない(著者の意図による--閉じない結末) 何か、昼寝しながら夢を見ていたような読後感。 チョット毛色の変わった本でした。 | ||||
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恩田陸さんの作品は本当に好きなんです。この作品は解説でも触れられているように興味深い意図があったのでしょう。しかし、長すぎる引用がストーリーと必ずしもマッチせず空回りしているような気がする。記憶が改竄されやすいという事実は脳の働きを理解していれば不思議ではないだろう。しかし、事件が本当に起こったのか起こらなかったのかという作品の根幹部分で齟齬をきたしているような気がする。いってみれば夜のピクニックの全内容が単なる記憶の揺らぎといわれるような思いがする。巻末のインタビューが興味深くそれで何とか星三つか。 | ||||
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山奥のクラシックなホテルで、大富豪の三老姉妹が招いた人間だけがやってくる贅沢な数日。図書室で放映される『去年、マリエンバートで』という実在の映画の場面場面を印象的に作品に取り込みながら、語り手が1人ずつリレーして6章で終わる物語。…のはずですが、ここで1つ構成に奇妙な仕掛けがあって、各章の最後で必ず事件が起こります。ストーリーは次の章に受け継ぎながら、事件そのものは、何を言ってもネタバレになりそうなので巧いこといえないのですが、読者が戸惑うような形でどこかに潜みます。腰巻に『この殺人事件は真実か幻か』とありますが、終章まで読むと、こうくるとは思わなかった方向に物語が決着して、びっくりしました。こういう煽りのある作品の場合、読者が徒らに作者に翻弄されるだけの話になりがちだと思いますが、見合うものはあったと思います。恩田さんの作品全部のなかで敢えて星をつけるなら、ということで☆3つにしました。 | ||||
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