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真珠湾の冬



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【この小説が収録されている参考書籍】
真珠湾の冬 (ハヤカワ・ミステリ)

真珠湾の冬の評価: 4.60/5点 レビュー 20件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全20件 1~20 1/1ページ
No.20:
(4pt)

編集される以前の完全版を読んでみたいものです。

暴力を否定か肯定か、愛と正義は結びつくのか?
のように悶々とするハードボイルドミステリーとして読み切りました。
戦前戦後の歴史観はともかく日本が背景として広く描かれているため、
日本の読者は共感できるのではないでしょうか。
真珠湾の冬 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:真珠湾の冬 (ハヤカワ・ミステリ)より
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No.19:
(5pt)

感情移入

エドガー賞にほぼ外れなしですね。
この作品も私はストライクです。
感情移入しすぎて読み進めているとハッピーエンド願い読む自分がいました。
いい意味の裏切り満載でお勧めです。
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No.18:
(4pt)

中間部分が良かった。

導入部の殺人事件から空路で香港に到着する迄が退屈かも知れない。
真珠湾攻撃は、米国側の防諜システムにより事前察知されていた筈だがなぁ?
と思いつつ作者のストリーに入り込む迄が退屈の原因か。
言語で読んだ方が作者の意図が感じられるかも知れない。
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No.17:
(5pt)

近頃の本屋さんの在庫

倉庫のスペースが少ないのはわかります。
ですが初版から1〜2年で注文も出来ない⁈
そんなにマニアックな本じゃないですよ!
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No.16:
(5pt)

傑作

2023ひでミスで紹介された中で気になった作品として2冊読んでみたうちの1冊。
読んでよかった。かなり面白かったとおもう。
アメリカ人の主人公が事件の謎を追求していく中で、出会う様々な人物、アジアを含めた当時の時代背景などが
当時を経験していないにも関わらず、映像として頭の中で思い描くことができて
どんどんページが進んでいきました。
暴力的でありながら、切なくもあり、感情移入もできて
良い作品だったとおもう。次回作も楽しみですな。
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No.15:
(5pt)

無事に到着しました

思っていたより、早く商品が到着しました。商品も綺麗に届いたので良かったです。ありがとうございました。
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No.14:
(4pt)

(2023-155冊目)時代が生んだ殺人事件であることの沈鬱さを思う

.
 1941年ハワイのホノルル警察に勤める刑事のジョー・マグレディは、ある惨殺事件の捜査を任される。被害者は白人男性と日本人女性。容疑者と思しき男を銃撃戦の末に射殺するが、どうみても共犯者がいると思われる。そんな中、同様の手口の事件がウェーク島で発生し、容疑者がマニラから香港へと逃亡している形跡が判明する。マグレディは容疑者を追って香港へと向かうが、折しもアジア・太平洋戦争が勃発し、マグレディは香港に進軍した日本軍によってとらわれの身となってしまう……。
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『 このミステリーがすごい! 2024』 』海外部門10位、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門14位に選出されたアメリカのミステリー小説です。

 主人公マグレディは事件を追い、同時に時代に振り回されるされるようにして、ハワイから香港、そして東京へと大きく場所を替えていきます。香港の描写はさておき、戦時下東京の様子、東京大空襲など、緻密な取材の跡がうかがえるほど真に迫った描写がされています。

 事件の真相が見えてくると同時に浮かび上がってくるのは、この小説の中で殺人に手を染める人々、あるいは命を落とす人々は、国家への信頼と自国の安寧を希求する心に翻弄されていることです。各人の言い分に基づく忠や義、あるは仁や愛が、事件の背後に常に見え隠れしています。自分だけの個人的利益や私的快楽のために罪を犯す人はいません。それはそもそもの捜査劇の元となった惨殺事件も、そうです。 
 欧米連合国側にしてみれば血も涙もない日本人将校すら、その靖国刀の鍔の下に結んだ布に書かれた日本文を読むと、虚を衝かれます。彼もまた平時であれば、良き家庭人に過ぎなかったことがわかります。
 そう、すべてが国家間で不幸にして発生した有事によって惹起した事件であることが見えてきて、あの時代が生んだ禍事(まがごと)である事実の沈鬱さを思わずにはいられません。

 だからこそ、事件がすべて解決した後、マグレディが東京へ還るエピローグ的展開が、平時ゆえの幸せを強く噛み締めさせてくれます。

 なかなかの小説でした。

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*107頁:タイプライターを打っているボールが「目をすがめ」ているとあります。
*189頁:マグレディが「ランタンの光がまぶしく、目をすがめた」とあります。
 どちらも原文はsquintです。つまり、上述の場面でボールもマグレディも両目を細くして凝視しているということです。
 一方、日本語の「すがめる」は「片目を細くする。片目を細くして見る」という意味(小学館『大辞泉』)です。ですが、両場面とも登場人物が片方の目だけ細くしているというのは不自然な気がします。

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No.13:
(5pt)

淡々と静かに、、深い余韻

粗筋を読むと、派手なストーリーとの印象を持ちますが、実はその逆。
その分余韻を長く長く感じられる傑作だと思います。
ジャンルとしては、。皆さん書かれていますようにハードボイルドの系譜かな。

ハワイ在住のアメリカ人作家が、あの日あの戦争をどう描くのか、、
想像を超え実にフラットな描写。だからこその余韻なのでしょう。
中でも東京大空襲のシーンが印象的でした。
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No.12:
(5pt)

太平洋大戦を背景にハワイとアジア、日本で生きる人々を描き、さらに当時の日本人や東京大空襲をも誠実に表現した良質なミステリー

まず、太平洋大戦を背景にハワイとアジア、日本で生きる人々を描き、さらに当時の日本人や東京大空襲をも誠実に表現した作品であることに、感謝と敬意を称したい。

作家本人の記述では
ご自身の祖父や大叔父が大戦に行き帰ってきてからなお戦前と同様の農夫として静かな人生を続けていることに感銘を受けたとある。
これがこの時代を選択し主人公マクレディの人物形成に影響を与えたのだと。

作品はハワイでの凄惨な殺人事件、香港と開戦、日本での生活と無差別に焼夷弾を落とした東京大空襲、粘り強く事件を追い続けその後の時間とその多層的な物語の広がりに呑み込まれる。
ミステリーとしての魅力はもちろん、主人公の思いに共感し、事件の解決を諦めない強さに驚きと感銘を感じる。

人々は戦争の中でのそれぞれの傷が心の中に、そしてそれをそれぞれが受け止め乗り越えている。

いつまでも印象に残るミステリーです。
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No.11:
(5pt)

このミス2024年度版ベスト10には入るでしょう

エドガー賞最優秀長編賞の名に相応しい傑作です。太平洋戦争下におけるアメリカ人刑事の真実を追い求める過酷な旅と言うと陳腐になるが、作者の歴史感、筆力、構成力、どれをとっても素晴らしい。多くの日本人にも読んでもらいたい。教科書には書かれていない歴史に触れることができます。ミステリーとしても第3部から驚きの展開の連続で、クラクラします。次作もあるとのことで楽しみにしてます。
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No.10:
(4pt)

ハードボイルド探偵小説というより歴史小説

原題は Five Decembers 直訳すれば5度の12月。物語は運命の1941年12月から始まって終戦の年で幕を閉じる。
主人公マグレディはホノルル警察の刑事で、先の大戦で優秀な陸軍士官だったという経歴からも真珠湾奇襲から太平洋の戦いをベースに展開するのかと思ったが、予想に反して直接的な「戦場」は全く描かれない。
テーマになっているのは戦争は銃後の「普通の人々」にいかなる爪痕を残したのか、だ。

本書は3部構成になっている。第一部はホノルルで発生した猟奇殺人、しかも真珠湾艦隊司令の甥と日本人の娘が同時に惨殺されるというスキャンダラスな事件の捜査を行う主人公が描かれる。
第2部では香港で犯人を追い詰めた主人公が逆に罠にはまり、敵国日本へ送られるも思わぬ救いの手が現れ、奇妙だが穏やかな潜伏の日々が訪れる。
そして第3部では終戦が訪れ、再び世間に復帰した主人公と犯人の最後の対決。

こう書くといかにも波乱万丈なのだが、描写は淡々としている。
主人公マグレディは登場した瞬間から「故郷喪失者」の印象を与える、およそ激することのない男だ。
知的で有能だがなにかに帰属するという意識が乏しい彼は、国家レベルでの「敵・味方」という感覚で人間を見ることがない。
潜伏先で米軍の東京大空襲にあっても、「なんでオレが味方の空爆に怯えなければならないんだ」という憤りを感じることもなく、黙々と庭に防空壕を掘る男なのだ。
だから第3部でもう誰も顧みることのない殺人事件の捜査を再開するのも、執念や不屈の敵愾心という感じではない。
もはや捜査する意味がなくとも、その事件で大切ななにかを「失った」人々はいる。せめてほかならぬ自分が「決着」をつけたことを伝えねばならない。
わずかに消え残った残り火のような思いが、全てを失った彼が虚無に陥ることを拒ませるのだ。

外国人作家が日本を描く際につきものの違和感も、あまりないと思う。
唯一気になったのは日本の軍人の描写。満州の辺境地帯でもない「天皇陛下のお膝元」東京で士官が高額のワイロでスパイの疑いのある外国人を釈放するとか、新聞記者やカメラマンの目のあるところで遠慮なく捕虜虐待とかは「相変わらずだな」というところだが、そこは歴史書ではなくエンタテインメントということで大目に見ましょう。
日本人でも正規の軍人教育を受けた軍人(特に士官)と軍閥上がりの中国兵の区別がつかない人はいるのだから(笑)。少なくとも「日本の軍人だから悪」「戦争中の日本人だからファシスト」のステレオタイプに陥っていないことは確かです。

大河ドラマのような展開に反して派手さはないが、読了後に静かな感動が味わえる良質の作品です。
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No.9:
(5pt)

極上のエンターテイメント小説!日本、日本人をここまで描いてくれた著者に感謝したい!

時代設定(真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争前後)、舞台設定(ホノルル、太平洋の島々、フィリピン、香港そして日本)とも日本人には馴染みやすく、物語の内容も決して重苦しいものではなく、ミステリー、ラブロマン、ハードボイルドをブレンドした正に極上のエンターテイメント小説!最初は外国本の翻訳に共通した若干の読みづらさを感じたものの、すぐにそんなもんは関係なく、どんどん物語に惹き込まれ、ほとんど一気読みし、清々しい読了感で終えた!日本、日本人をここまで描いてくれた著者に感謝したい!
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No.8:
(5pt)

興味深い要素ばかり(一部ネタバレ)

時代背景が第二次世界大戦下、凄惨な殺人事件、やり手刑事による執念の捜査、アメリカ人から見た日本の住居と日本人、ロマンス……等々。
私の個人的好みのネタがふんだんに盛り込まれているうえ、テンポのいい退屈しない展開でたいへんおもしろかった。
終盤は緊迫シーンから「目には目を」の、ある意味爽快感を覚える。 エンディングもいい。

ひとつわからなかったのは、精神科病院のようなところで治療薬としてインシュリン(インスリン)が使われているところ。その患者は糖尿病というわけではないようだし、他に効果と言っても…??? 
まあ、黙認しよう。
とにかく、一言、とてもいい作品だった。独自性が強く、記憶に残りそうな一作だ。
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No.7:
(5pt)

Gripping suspense, romance and history

This is an international romance novel. In the beginning, violence caught my eyes. I was staggering in continue reading it. However, gradually the story was evolved to cross borders, from Hawaii to Hong Kong and Japan (Tokyo and Nozawa Hot Spring) in the history of WWII. I could not stop reading it. I remember the same taste of the novels written by Soseki Natsume. The author has a talent in fiction.
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No.6:
(4pt)

憲兵の少年は?

時代考証もしっかりされている壮大な物語。
サスペンスの要素、スパイものの要素を含んだ戦争もので、上下二段で500ページ足らずと長編でもある。

惜しむらくは、日本人からしてみれば、憲兵の少年を最終的に(再度、長野に訪れた際に)どう弔ったか気がかりで、留飲が下げずらいことかな。
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No.5:
(4pt)

太平洋戦争をはさむハードボイルドなスパイ小説

「真珠湾」と表題にあるので、真珠湾攻撃をアメリカ側から描いた歴史小説かと思ったが、真珠湾攻撃や日米開戦の推移自体は背景的に描かれているだけで、物語は日米開戦をめぐる情報戦に巻き込まれて起きた殺人事件とその捜査、犯人追跡が中心となっている。
ただし、ミステリーというよりもハードボイルドなスパイ小説に近く、007やミッション・インポッシブルを連想させる。

小説の見どころは、主人公が時代の激動に巻き込まれて、時間的にも空間的にもスケールの大きな物語に展開されているところである。
時間的には、事件が真珠湾攻撃の直前に起き、戦争による中断をはさんで戦後まで事件の捜査が続く。
空間的には、ハワイで起きた殺人事件を追って、太平洋の島々から香港へと主人公の犯人追跡がなされるが、日米開戦により香港で捕虜となった主人公が日本へ送られ、戦後にハワイへと帰還する。当時の太平洋の移動手段は「クリッパー」と呼ばれる水上飛行機で、ホノルルからミッドウェー、ウェイク、グアム、マニラと島々を中継して何日もかけて香港へ行くのだが、ジェット機で行く今日とは隔日の感がある。

このように主人公の数奇な運命がダイナミックなドラマとして描かれ、読者の興味を惹きつける仕掛けとなっている。
なお、主人公はハワイはもとより行く先々で女性と出会い、ジェームズボンドのようにモテモテのロマンスとなるが、これもハードボイルドのお約束であろうか。
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No.4:
(5pt)

太平洋戦争の開戦直前から戦後までの従来のサスペンスものには無いスケールで描かれた物語です。

サスペンスと近代歴史とスパイ小説を合わせたスケール感が新境地です。
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No.3:
(4pt)

映画館に座って白黒映画を観る感覚

「個人と国家」「抗いようのない歴史の荒波」「正義と恩義」といった『大河ドラマ』的要素と「純愛」「明朗」「信頼」という『朝ドラ』的な部分。さらに「復讐」「すれ違い」「ガンアクション」といった『韓流ドラマ』のエッセンスが見事にブレンドされた大作です。

真珠湾奇襲攻撃直前に起こった惨殺事件を捜査するホノルル署の刑事は単身でアイランドホッピングをして香港にたどり着きますが罠に陥り警察に身柄を拘束されたうえに日本軍の侵攻をうけます。ここで「冒険小説あるある」の「初対面なのに都合よく助けてくれるひと」が登場して東京は谷中に身を隠します。それから太平洋戦争が激化するなかでひたすら軟禁状態におかれて東京大空襲。終戦後ようやくハワイにもどれたものの警察は解雇になる。けれどもたったひとりで捜査を続けて真相に迫っていく、というあらすじです。

ハリウッドというよりは配信系で映画化されるような気がしています。もちろん日本人役は渡辺謙と杏であると勝手に想像しています。
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No.2:
(5pt)

警察小説が世界をこの国を裏面から描く歴史小説の「ひとかけら」として変貌を遂げる

「真珠湾の冬 "Five Decembers"」(ジェイムズ・ケストレル 早川書房)を読み終えました。特異な読書体験として記憶されます。
 本書は三部構成。第一部はあの戦争が始まる11月末から12月はじめのハワイが舞台。のっけから二人の惨殺死体が見つかり、担当する陸軍あがりの警察官ジョー・マグレディが緊張感を伴う現場に向かいます。犯人はいったい誰なのか?当時のホノルルを描く状況描写ですらスリリングでした。
 そして第二部。誰もが知るあの戦争のあの時期、彼は愛するハワイを離れ、犯人を追いかけ、パンナム・クリッパーに乗り、グアムを経由し太平洋を越えて、「慕情」を誘うペニンシュラの彼の地へと降り立ちます。そして彼は私たちがよく知る場所へと多くの艱難辛苦を乗り越えながら誘われ、ハワイを舞台にした警察小説が世界をそしてこの国を裏面から描く歴史小説の「ひとかけら」として変貌を遂げることになります。
 スリラーですからいつものようにあまり多くのことを書くことができませんが、「神は細部に宿る」そのディティールに作者の並々ならぬ思いと意気込みが伝わってくるようです。
 原題は「五つの12月」。1941年から太平洋戦争が終戦を迎える1945年までの五つの12月が(パッカード・クーペ)、真珠湾攻撃、ファシズムの台頭、東京大空襲という歴史的背景を背負いながら描写される中(佐々木譲が描く"IF小説(オルタネート・ヒストリー)"で描かれる東京のようにと言えばいいのか?、異国人が描く描かれたことのない"東京"と言えばいいのか?)、物語はそうであってほしい最後の場所へ向かって収斂していきます。私はその壮絶なジョー・マグレディの執念と思いを愛してやみません。
 いくつかの安らぎが訪れますが、安らぎはまた次の場所へと向かうための準備期間でしかありません。
 「ひと晩中、歩くんですの?」
 「初めてではありませんから」(p.546)
 類まれな一冊だと思います。
真珠湾の冬 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:真珠湾の冬 (ハヤカワ・ミステリ)より
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No.1:
(4pt)

戦前から戦後までの壮大なミステリー(Five Decembers)

原題は、5回の12月。戦前から戦後までの時間軸の中で、壮大なミステリーを紡いだ本作。

時には日米開戦の迫る時代。ある凄惨な多重殺人事件が起こる。
真面目で情熱のある刑事マグレディが捜査に当たる。
被害者に大物の関係者がいたこともあり、海を跨いだ捜査を開始するが、そのさなか、遂に戦争の火ぶたが切って落とされる。
戦争の大波に翻弄されながら、愛と信念を胸に生を繋ぐマグレディ。
戦後、とある成り行きから日本で捜査を開始するが、果たして、殺人犯を追い詰めることができるのか、というストーリー。

とにかく、時代背景がしっかり描かれている。大変な取材をしたとこは容易に想像できる。
最も驚いたのは戦中・戦後の日本本土の描写。
最早忘れ去られようという日本の風景を、そこにいるかのように描きあげている点に驚いた。

ミステリーとしても秀逸だし、ボリュームも十分です。
お勧めの一作です。
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