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ローズ・コードの評価:
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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本書を注文したとき、バーバラ・W・タックマンの『決定的瞬間 ー 暗号が世界を変えた』(ちくま学芸文庫、2008)が念頭にあり、類書を期待した。期待はみごとにはずれ、戦時にこと寄せたハーレクイン・ロマンスとも呼びたいヤングアダルト向けの小説が来た。 実在の人物や史実に取材しているとはいえ、手堅いノンフィクションとはほど遠く、3Dプリンターで作った精巧な造花のような作品である。(ガールズノベル、シスターフッド、ローマの休日が好きな人には迷わずお奨めします) 重なり合う薔薇の花弁の如く多層的な人間ドラマにしてミステリ、と言われればまあそうなんだが、謎解きと犯人探しのスリルはほぼない。暗号の解読作業をめぐって、楽器の調弦のようにジワジワと良い感じで張り詰めてゆくBP(ブレッチリー・パーク)の空気。それを一気にたるませてサスペンスを台なしにするメロドラマ。その繰り返しで物語が進行する。メロドラマが入るわりにはラブシーンが陳腐で退屈である。(個人の感想です) 故フィリップ王配殿下の独身時代の描き方も、あまりにハーレクインすぎて赤面した。元ガールフレンドのオスラ・ベニング(作中ではオスラ・ケンドル)との交際の模様が虚実ないまぜて語られているが、実際のフィリップの性格を思えば相当なギャップを感じざるを得ない。 若き日のギリシャ王子フィリップは、確かにスーパー・イケメンではあったが、夢見がちな女性読者の過剰な期待に応えられるほどロマンティックな恋人適性は持ち合わせていなかった。後年の素晴らしい失言語録からも察せられるように、如才なさとは無縁のざっくばらんなお人柄であり、遅かれ早かれひどく無神経なことをひどく無邪気に口に出して女性を苛立たせたり幻滅させたりするタイプなのだ。 こういう人は、時々(もののはずみで)誰彼と浮名を流すことはあっても、本質が散文的すぎてラブロマンス小説の王子様には向かない。色恋にダラダラと時間を費やすよりは、もっと確実に心の隙間を埋めてくれる安定した価値観の象徴を尊ぶ傾向がある。例えば友愛、チームスピリット、家内安全、履き慣れた靴などを。 『著者あとがき』によると、オスラとフィリップの「ロマンス」は、著者が「大切に心を込めて」書いた創作(p752)だという。 二人が愛をささやく代わりに、丁々発止の失言の応酬や礼儀正しいビンタの交換で、ユーモアを維持しつつ骨太の同志愛を育み、月並みな愁嘆場を当たり前のように回避して「恋愛より友情」というwin-winの選択に大満足で着地するような展開だったら、この小説にはもっと英国らしいドライな旨味が加わったのにと惜しまれる。 『あとがき』は作品本体よりおもしろい。著者には申し訳ないが、人物も出来事も、創作前の未加工のナマ素材の方がずっと美味しそうだ。 著者ケイト・クインは史実に題材を採ったロマンティック・フィクションを多作するアメリカ人で、時代考証を怠けない点は好感が持てる。英欧の歴史・文化・習俗のリサーチにも熱意が感じられる。 だが、第一英語がBrE(イギリス英語)だった読者の中には、アメリカ人作家の 「文化的なりすまし」 を好まない偏屈者が必ずいるものだ。 本作がそうだとは言わないが、彼らの顰蹙を買うのは、英国が舞台のはずなのに歩道が “sidewalk” だったり、ロンドンの王立病院で外科医が “elevator” に乗って移動して “operation room” で手術をしたりするような小説である。当の英国人たちはまず気にしてないような些細なアメリカニズムにも、いちいち眉を上げて反応し、“pavement” でなきゃイヤだ、“lift” でなきゃイヤだ、“(operation) theatre” でなきゃダメなんだと駄々をこねた挙句、しまいには「こんなのイギリスじゃない!」と一方的に慨嘆する。 自分は不幸にしてそういう狭量なマイノリティに属するのではないかと懸念しつつ、本書を読み終えた。明日からもっと寛容になることを誓おう。だから、今日はまだ重箱の隅をつついて言いたい放題言っておこう。(ただし若者向けのフィクションであることに鑑み、エニグマ関連の荒唐無稽な創作にはこのさい目をつぶる) 1. クラリッジズはクラリッジズ:翻訳でも英国らしさを強調したいのであれば、“Claridge’s” を「クラリッジ・ホテル」と和訳表記してはいけない。(宿泊施設だと知らない)読者への気配りからであってもNG。不親切でもそのまんま、「クラリッジズ」で通したい。 2. キンならぬギン:花嫁のブーケに使われる “myrtle” は「キンバイカ」でなくギンバイカ。2度続けて「キン」になっている(p635)ので第二版で修正求む。ちなみにキンバイカなる花は存在しない。 3. 「揺蕩う」のルビにまさかの誤植(p684): 【誤】たくさんの言葉が彼の唇の上でたこたっている。 【正】 〃 たゆたっている。 かつての恋人同士の切ない再会場面なので、彼の唇の上で言葉がたこたったりして読者を無駄に笑わせないでほしい。 あと一つ。誤訳や誤植ではないが、「脳みそ」という単語への偏愛が気になった。(他書と比較して、幻臭を伴うほどの頻度で「脳みそ」が出てくるような気がする) 私が知らないうちに “brain” の訳語の最優先候補は「脳みそ」と決まったのかもしれないが、他にも「頭脳」「知能」「知力」「脳細胞」「脳髄」「脳漿」「あたま」「おつむ」「ブレイン」等々、場所や状況に応じて適度に意訳も混ぜながらヴァリエーションをつくることは可能だと思うので、「脳みそ」一強状態は勘弁してほしい。 出版翻訳データベースによれば、訳者の加藤洋子氏は2010年9月のインタビューでも「脳みそをフル稼働して」という表現をさらりと口にしている。よほどミソが好きな方なのかな? 私は脳内フル回転で泡立つ miso shake を想像しただけで胃がでんぐり返っているけれど。 | ||||
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