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娘を呑んだ道
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娘を呑んだ道の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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スウエーデン発のクライム・ノヴェル「娘を呑んだ道 "The Silver Road"」(スティーナ・ジャクソン 小学館文庫)を読み終えました。 舞台は、ストックホルムから遠く離れたスウエーデン・北部。森と湖。そこで、数学教師・レレの一人娘・リナが行方不明になって三年、レレは未だに姿を消した娘を追って、国道35号線、通称・「シルヴァー・ロード」に沿うようにして報われない捜索を継続しています。妻は彼のもとを去り、たった独りで。 その遅々とした捜索と並行して、メイヤという名の少女のことが語られていきます。彼女は、母親のシリヤと共にレレが住むグリマストレスクにやってきます。母親のシリヤはメイヤと共に、生活のためにインターネットで知り合った男の下へ、その<最果て>とも言っていい場所へと生活の場を移します。レレ、少女・メイヤのそれぞれの視点から、交互に物語が語られて行きますが、犯罪小説としての興味という点では、行方不明のリナが何処へいってしまったのか?、果たして生きているのか?という点に尽きるのかもしれません。しかしながら、物語は特に大きな仕掛けがあるわけではなく、(短いサスペンス描写は随所にあるものの)どちらかと言えば普通小説のように、レレの捜索に纏わる生活描写と少女・メイヤが知り合った少年・カール・ヨハンとの恋、その家族との関わり合いを描き尽くそうとしています。 「専制的なスウェーデンの法律より、自分たちの命や自由を優先」させようとするサヴァイバリストの家族。自由になろうとあがく少女と「共依存」という名の間違った愛に塗れた母親たち。 読者は、美しい自然描写の中、娘を失ったことですべてを失おうとしている男・レレの涙と哀しみの日々と絶望的なまでの「家族」の機能不全に立ち会うことになるわけですが、(「娘を呑んだ道」というその何とも説明的な邦題は、とても感心できるものではありませんが)この無力で、暗澹たる物語をどう受け止められるのか、評価が分かれるところかもしれません。 小さい頃に接した一人の少女の物語は「ブライト・リバー」に沿って導かれる希望の物語でしたが、たとえ「シルヴァー・ロード」が銀色を帯びて輝きながら海へと向かう希望の道ではなかったとしても、いつだって終わりは、はじまりを告げ、昔は今に変わり、雪解け水にかざした手はあったはずの温もりを求めて繰り返し彷徨うことになるのでしょう。これもまた、等身大の人生と言っていいのかどうか?とは言え、過剰なものが過剰ではないものに取って代わろうとするエンディングは、とても好ましいものだと思います。 | ||||
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