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あの本は読まれているか



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あの本は読まれているかの評価: 3.96/5点 レビュー 23件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.96pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全23件 1~20 1/2ページ
12>>
No.23:
(3pt)

CIAのスパイ小説というより愛に振り回された女たち小説

「冷戦下、超大国ソ連と戦うCIAの女性たちを描く」と言う割に、主人公イリーナにとって「ドクトル・ジバゴ作戦」は二の次でそれ以外のことに気を取られ過ぎてるような印象を受けた。

主人公が東と西だけでなく様々移り変わる上に登場人物も多かったので少し分かりにくく、それでも最後まで読み進められたのはスカッとするラストを求め続けたからだと思う。
視点や着目ポイントがたくさん散らばっていて盛り込みすぎ、客観的な視点が少なく感情に振り回されるエモーショナルな主人公たち、そりゃあこれだけ長文になるな、と納得。

だけど当時のソ連の様子もよく分かり、勉強になる点が多々あったので星3。
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4488011020
No.22:
(3pt)

冗長すぎる

かなり期待して読み始めたのに、理解しづらい心理描写などが多めで退屈でページが進まない。
グイグイと惹きつける要素が薄い。
現在、中間部分を過ぎたあたりで後半に期待します。
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4488011020
No.21:
(2pt)

???

いやー。面白くなかったです。スパイ小説でもないし、恋愛小説とも言い難い。ページ裏の紹介文を読んでスパイ小説と思って購入しましたが、そんな奇想天外さや、ドンデン返しや緊張感はないし、文学作品というほど格調高いわけでもない。好意的に言えば、冷戦時代に人生を翻弄された人達の群像小説かな。それにしても最後まで心躍ることはなかったです。くどい比喩表現に、よく判らん和訳、、私には合いませんでした。すみません。
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No.20:
(4pt)

ドクトルジバゴからあの本へ

10代40代そして70代でジバゴを見て感動したところに、タイミングよく「あの本はよまれているか」を紹介され、手に取る。スリリングな展開と流れるような運びに、満足しました。
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No.19:
(5pt)

小説『ドクトル・ジバゴ』を武器に、ソ連の政治体制を揺さぶろうという作戦

『あの本は読まれているか』(ラーラ・プレスコット著、吉澤康子訳、創元推理文庫)は、スパイ小説、政治小説であり、恋愛小説、不倫小説、同性愛小説でもあります。それも、一級品の。

1950年代後半の冷戦時代、米国のCIA(中央情報局)にタイピストとして雇われた若き女性イリーナは、ある特殊作戦のメンバーに抜擢されます。その作戦とは、反ソ的だとしてソ連で出版禁止となっている小説をソ連国民の手に届け、ソ連政府がどれほど酷い言論統制や検閲を行っているかを知らせ、自国の政治体制に対する批判の芽を植え付けようというものです。その特殊作戦の武器とされたのは、ソ連の有名な作家であるボリス・パステルナークが渾身の力を込めて書き上げた小説『ドクトル・ジバゴ』でした。

その後、ノーベル賞を受賞するこの作品では、ロシア革命の混乱に翻弄されつつ生きるジバゴと、恋人ラーラの愛が描かれています。「ドクトル・ジバゴ作戦」はCIAが実際に行った謀略行動だが、文学の力を利用しようという戦略に基づいていました。

本書が一級品である理由は、3つあります。

第1は、歴史的事実と著者の想像力が見事に融合して、臨場感豊かな小説に仕上がっていること。

第2は、文学が大きな影響力を持つことを再認識させてくれたこと。

第3は、当然のことながら、有名な作家パステルナークにも、その愛人オリガにも、スパイの女性イリーナにも、その仲間たちにも、それぞれの人生があり、それは一筋縄ではいかないものだと思い知らされたこと。

最終章には、オリガの言葉がこう綴られています。「彼が初めてわたしの手を取ろうとしたときのことを思い浮かべた。我ながら、体があれほど震えるとは思ってもいなかった。初めのころ、『ドクトル・ジバゴ』を読んで聞かせてくれて、わたしの反応を見ようと段落が終わるたびにひと呼吸おいていた彼の姿を思い浮かべた。モスクワの大通りをふたりで歩いた午後、彼がわたしのほうを見るたびに世界が広がるような気がしたことを思い出した。彼と愛し合ったたくさんの午後や、彼がわたしのベッドから出たくないと言ったたくさんの夜を思い出した。行かないでと懇願するわたしを置いてベッドを出る彼の姿も思い浮かべた。(パステルナークの愛人ということで)ポチマ(の矯正収容所)で3年間すごしたあとで駅へ入っていったとき、彼がそこに来ていないのを知って、くるりと向きを変えて来た道を引き返したくなったことを思い出した。彼から幾度となく別れようと告げられ、幾度となくひどい言葉を返したことを思い出した。全盛期の彼の肥大したエゴや、『ドクトル・ジバゴ』を書いたあとの弱々しくなってしまった彼のことを考えた」。

「(彼の)棺が土のなかへ下ろされるのに合わせて、『パステルナークに栄光を!』というシュプレヒコールが人々から起こり、全体に広がった。わたしはずっと前に朗読している彼を初めて見たときのことを思い出していた。彼よりも先に、ファンたちが詩の最後の言葉を口にせずにはいられなかったことを。バルコニーに座ったわたしが、まばゆい光を浴びた自分を彼に見てもらいたいとどれほど願っていたかを。そして実際、彼がわたしを見て、そのためにわたしの世界がどれほど変わったかを」。

この作品に出会えた幸せを噛み締めています。
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4488011020
No.18:
(5pt)

単純なスパイものではなかった

恋や夢、家族など割とテーマがてんこ盛り
禁断の本を出版するというスリルも良かった
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4488011020
No.17:
(1pt)

小説としては破綻している

パステルナークは未読の上でのレビューです。

本書は主に3つのラインが同時並行する小説です。
ひとつはソビエトサイド
ひとつはCIAサイド
ひとつはLGBTの問題提起を目的としたライン
となっています

しかし、それらが特に密接に絡み合うこともなく、ただ単に並行して描かれるだけであるのでこの時点でそうした構成の小説としては破綻しています。

ロシアサイドの描写はどこかテンプレ的で、冷戦時代の西欧から見たロシアのイメージみたいな描写になっていますが、これは意図したものなのでしょうか。著者にもう少し筆力があればここは確定できるのですが、他の部分を読み込む限り著者の力量不足からそのようになってしまった疑惑が拭いきれません。

CIAサイドは本書最大の問題と言っていいです。まず、主人公がタイピストである意味が全く無いです。タイピストだが実はスパイとしての才能があったという二面性が本書では全く機能していません。正直、主人公には最初から最後までただのタイピストのままで居て欲しかったです。
どのような史実があったのかまでは把握していませんが、仲間のタイピストの存在が物語的に何の機能も果たしていないこともあって、主人公にデュアリティを持たせる描写は完全に失敗しています。単にスパイ小説を書きたいならもっと別な方面から描写しないと作品として成立しません。構造の組み方や物語の設計がおかしいです。

更にとってつけたようなLGBT描写にも辟易でした。こういう要素を入れれば売れるんだろ? 的な商業主義の影しか見えません。

本書の3つのラインが直行したままだというのは、例えばCIAがソ連に本を持ち込むことには成功してもその後ソ連の社会にどうその影響があったのかが描写がないこと、思想を持ち込むという危険な作戦が何のトラブルもなく成功してしまうことなどから指摘できます。
また、これは誤解を招きそうな表現ですが主人公が同性愛者である物語的な必然性や意図が最後まで私には読み取れませんでした。繰り返しになりますがそういう要素を入れれば人気が出るという商業主義しか見いだせませんでした。

エンタメとしてはそこそこ楽しめるでしょうが、真面目に小説として分析すると2流以下の本です。
もうちょっと読ませる作品かと思っていました。
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No.16:
(3pt)

スパイ工作に利用された本は本望なのか

史実を元にしたフィクションとのこと。CIAが一冊の本をソ連に送り届けて、文学の力でソ連の体制を崩そうとする工作の物語。CIAのタイピストの女性がスパイの素質を見込まれたり、受付嬢が立派なスパイだったりと、西側諸国の物語はスパイものそのものである。一方で東側のソ連では、CIAが送り込もうとした書籍「ドクトル・ジバゴ」の著者ボリス・パステルナークと愛人の物語である。ソ連の厳しい内情を描きつつ、死ぬまで人を愛し続けるラブストーリーである。むしろ愛の物語として読後は切なくも人間の存在をきっちりと感じられる。
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No.15:
(5pt)

「文学の力で人生の意義や世界を変えられる」事と逞しい女性賛歌とをエスピオナージュ風のエンターテインメントとして力強く謳った傑作

舞台は冷戦下。ロシア系移民でCIAのタイピストのイリーナ(スパイにさせられる)をヒロインとして、「文学の力で人生の意義や世界を変えられる」事と逞しい女性賛歌とをエスピオナージュ風のエンターテインメントとして力強く謳った傑作。焦点の書籍は「ドクトル・ジバゴ」(のヒロインの名前が作者の本名ラーラと同一)。また、本作には巧妙なフェミニズム小説の趣きもあり、逞しい女性賛歌の源泉となっている。なお、本作の章構成は「東→西→東→西...」となっているが、必ずしも時系列順ではない。

旧ソ連側の中心人物は高名な詩人・作家のボリスとその愛人(不倫の上に妊娠してしまう)のオルガ(もう1人のヒロインと言って良く、ラーラのモデルだろう)。ボリスが検閲・発禁となるであろう「ドクトル・ジバゴ」の執筆を進めていたため、オルガはその証人として収容所(その劣悪な環境も描き込まれている)行きとなってしまうが、ボリスの意向に関して決して口を割らない反骨心とボリスへの愛情。一方、CIA(前身のOSSの職員含む)の様々な女性達の矜持・享楽・同性愛・連帯感・嫉妬・上昇志向・受けるハラスメント、イリーナの経歴、そして、イリーナが如何にスパイ向きであるかの説明さえも、男性への揶揄を織り込みながら硬軟交えて自在に描き分ける作者の筆力には感心すると共に哄笑した。一転、出所したオルガが挫折しかけた高齢のボリスを励まして執筆続行を決意させる辺りの描写は情に厚く木目細かくて、これまた感心した(ボリスを看取る際の哀切感も印象に残る)。結局、"スパイとしての"イリーナの役割は「ドクトル・ジバゴ」の"運び屋"なのだが次第に自身の才能を開花させ、ラスト四行の仄めかしに繋げる構想が洒脱かつ秀逸。

レズを含む幾つかの恋愛模様、実在の人物・実際のエピソード、ラーラの三重奏、フェミニズム風味、諧謔味、二重スパイ等の夥しいガジェットを作中に縦横に散りばめながら、冷戦当時の米ソの状況を色濃く映した上で、テーマへと堅実に着地させる作者の手腕が際立つ傑作だと思った。
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4488011020
No.14:
(5pt)

良品でした

本日届きました。説明通りの良品でした。フィルムのカバーもついており安心して読めます。読後は図書館に寄附しようと思います。
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4488011020
No.13:
(5pt)

本で歴史を動かす。

映画『ドクトル・ジバゴ』ファンの女性が娘にラーラと名を付けたのが著者。2014年にCIA『ドクトル・ジバゴ』作戦の公文書が公開され、それを読んだ著者が小説学校に3年間通ってまでして、その黒塗りの部分をフィクションで補ったのが本書です。

 CIAが、「文学で社会を変える」という長期戦略を採っていたこと、『ドクトル・ジバゴ』の原稿がイタリアの出版社から世界に広まり、その内容から「ソ連の人々に読ませよう」とCIAが作戦実行したこと、初めて知りました。そして、『ドクトル・ジバゴ』著者のボリス・パステルナークには、ラーラのモデルになった愛人: オルガ・イヴィンスカヤがいて、彼女がこの本の執筆・出版によって強制収容所に入れられたことも。

 『ドクトル・ジバゴ』は、十月革命やボリシェヴィキが出てはきても、大筋は「叶わぬ憧れ」が主題だと思うのですが、ソ連は禁書に。その原稿・配布にまつわるスパイ術にも触れられる本書、独・露小説で見たことのある登場人物による独白型の文体で、読み出すと惹き込まれます。「本で歴史を動かす」というのは、非暴力の正統な活動なのではないでしょうか?
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4488011020
No.12:
(4pt)

(2020年―第107冊)スパイ小説というよりは女性の愛の物語として楽しんだ

1950年代、冷戦下のソ連で一冊の小説が書かれた。『ドクトル・ジバゴ』。スターリニズム圧政下の悲恋を描いたこの小説は国内で出版が禁じられたため、原稿はひそかにイタリアに持ち出され、異国で翻訳出版された。アメリカのCIAは共産主義国家の非情を訴えるためにこの小説をロシア語原文のまま本にしてソ連に持ち込む秘密作戦を開始する……。
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 21世紀になってその一部が明らかになったCIAの秘密工作を基に、アメリカ人作家ラーラ・プレスコットが想像を膨らませて書いたデビュー作です。
 このフィクションの中で『ドクトル・ジバゴ』の物語そのものについての詳細が記されることはありません。そのため、共産主義者たちがこの発禁小説のどこにどのような害毒をもつと恐れたのかが、『ドクトル・ジバゴ』に触れたことのない読者には伝わらない恨みがあります。その点がこの小説の弱点になっていると思います。
 またCIA秘密工作に想を得たフィクションといいつつも、スパイ小説ばりのサスペンスはあまりありません。冷戦期を舞台にした米ソ諜報合戦を期待した向きには、手に汗握るような展開がない点は肩透かしと思うことでしょう。

 その一方で、見るべき点はいくつもありました。
『ドクトル・ジバゴ』の作者パステルナークの実在した愛人オリガの過酷な運命は読ませます。反体制作家の愛人であったがゆえに、彼女は自由を奪われていきます。それでもパステルナークに身を寄せ続けた彼女の悲恋が胸に迫ります。
 またCIA工作員として登場する二人の女性の、当時は許されなかった恋路が魅力的です。ソ連側の二人を時代と政治が許さなかったのと同じように、アメリカ側の二人もまた時代と政治に許されない存在でした。この対比が、1950年代の時代の空気を鋭く描いているように思います。

 邦題『あの本は読まれているか』はあまり好みません。『パリは燃えているか』を意識したのでしょうか。ですが、原題の『The Secrets We Kept』の《秘密》が小説『ドクトル・ジバゴ』だけではなく、それを書いた作家と愛人の道ならぬ恋、CIA工作員ふたりの許されない恋など、様々なものを包括しているように思えて、そのほうがこのフィクションの性格を言い当てていると感じます。ただし『私たちの秘密』では邦題として魅力に欠けるのもわかりますが。

 翻訳者・吉澤康子氏の見事な訳業にも触れておきたいと思います。
 私は以前、エリザベス・ウェイン『コードネーム・ヴェリティ』で吉澤氏の訳文に接したことがあります。この小説がYAものだったために私の好みには合いませんでしたが、氏の訳文に助けられて最後まで読むことができました。
 今回の『あの本は読まれているか』の訳文は実に読みやすく、バタ臭い翻訳調の和文は一切ありません。こんな日本語文が書けたらいいなと羨ましくなります。
 吉澤氏の名前を次回見つけたら、ぜひまたその訳文を味わってみたいものです。 

 最後に、この小説の言葉で印象深く感じたものを引き写しておきます。
「そもそも、男女を問わずだれもが秘かに大いなる悲劇を待ち望んでるのさ。それは生という経験を研ぎ澄まし、より深みのある人間にしてくれる。そうは思わないか?」(260-261頁)

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*300頁:イリーナが母を連れてある場所に行き、待合室で「椅子に座り、<タイムズ>をめくって一時間をすごした」とあります。ワシントンDCの<タイムズ>といえば統一教会が発刊する保守系の『ワシントン・タイムズ』紙がありますが、あれは1980年代のレーガン政権時代に創刊されたはず。イリーナが1950年代に待合室で『ワシントン・タイムズ』紙を手にするというのは奇妙です。
 英語の原文を確認したところ「... sat back down, and flipped through Time magazines for an hour.」となっていました。つまり「新聞の<タイムズ>」ではなく、「雑誌<タイム>を何冊か」です。
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 この小説から連想した以下の書を紹介しておきます。

◆モリー・グプティル・マニング『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』(東京創元社)
:第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは膨大な数の非ドイツ的書籍を焼却処分しました。その焚書行為に対抗するかのようにアメリカは国を挙げて、海外派兵した自国の兵士たちに大量のペーパーバック本を送ります。これは「兵隊文庫」と称された書物送付計画の誕生から終結までを追ったノンフィクションです。書物が持つ力を強く信じた人々の第二次世界大戦史ともいえる書です。

◆ジョージ・オーウェル『一九八四年』(ハヤカワepi文庫)
:このSF小説の主人公ウィンストン・スミスは、全体主義国家オセアニアの独裁政治に抵抗する活動家エマニュエル・ゴールドスタインが書いたとされる禁書を手に入れます。これもまた、全体主義とそれに対する禁書の話です。

◆フィリップ・K・ディック『高い城の男』(ハヤカワ文庫 SF)
:ナチス・ドイツと大日本帝国が第二次世界大戦の戦勝国となった時代、両国によって分割統治されたアメリカ合衆国で、『イナゴ身重く横たわる』という小説が巷に流布するようになります。その小説は世界大戦でアメリカが勝利していたらと仮定していたために発禁本とされています。

◆高木 徹『大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか』(文藝春秋)
:アフガニスタンのバーミアンにあった大仏二体が破壊されるまでの経緯を、アフガン国内の政治闘争や諸外国の外交努力などを丹念に取材してまとめた一冊。タリバン政権内部にも穏健派がおり、アメリカはそうした穏健派要人を自国に招待して文化財保護の実際を見聞させる戦略を取っていた時期があるという箇所を興味深く読みました。このようにアメリカの外交戦略は文化面で相手の心を巧みにつかみとろうとする側面があったのです。

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4488011020
No.11:
(4pt)

CIAタイピスト嬢たちが主役

さまざまな読み方、楽しみ方ができる本だ。一体誰が主役なのか。
冷戦時代、東側のソ連、西側のアメリカの物語が同時進行で展開する。

東側;パステルナークの愛人オリガ(「ドクトル・ジバゴ」ラーラのモデル)の視線で読み進めれば、そこではソ連時代の知識人弾圧、ソルジェニーツィン著「収容所列島」に繋がる物語が展開され、ひいては今日の中国共産党の人権弾圧(法輪功学習者、香港、チベット・ウイグル・南モンゴル人)や、獄死同然の死を遂げたノーベル平和賞受賞作家、人権活動家、劉暁波氏をも想起させる戦慄の物語となる。

西側;ロシア移民の娘イリーナ、そして受付嬢フォレスターそれぞれの視線でも語られる物語。
ここではタイピスト嬢たちのおしゃべりが秀逸に描かれ、一見他愛ない日常会話の中に潜むハッとするような観察眼と核心は巧みな狂言回しとなっている。
同性愛が違法だったかってのアメリカ、リリアン・ヘルマン著「子供の時間」(W.ワイラー監督、O.ヘプバーン・S.マクレーン共演・映画「噂の二人(1961)」)には当時の状況が痛烈に描かれている。優れた映画なので併せてお勧めしたい。

アメリカ史の汚点となったマッカーシズムについてほとんど触れられていないが、CIAが舞台となっているだけに複雑な要素をあえて盛り込まなかったのも読者に対する著者の配慮と考えたい。
ヘルマン氏やD.トランボ氏の非米活動委員会との闘い、ハリウッド・テン(「真実の瞬間」として映画化)などのレッド・パージは、語るに尽きないところだ。

グイグイと読み進ませるプレスコット氏の筆力には非凡なものがある。次作にも期待したい。
映画化されたらどんなキャスティングになるのか、楽しみなところだ。
映画「ドクトル・ジバゴ」でラーラを演じたJ・クリスティーが、オリガの回想シーンでナレーション(どこかでチラッと特別出演)などがあると、オールド・ファンとしては随喜の涙なのだが、、、。
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No.10:
(4pt)

苦難の時代

CIA女性諜報員二人の生涯。実在を消すような漂泊人生。二人のもと職場の同僚女性たちの若く華やいだ生活。その開放感と奔放さは作品の魅力である。「ドクトル・ジバコ」の作者ボリスと愛人オリガ。米ソの諜報活動に翻弄された二人の生涯は苦難の連続。それぞれがそれぞれの人生に真剣である。死と隣り合わせの生はごまかしがきかないだけに肉体だけでなく精神も死への距離が近いようだ。
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4488011020
No.9:
(1pt)

期待外れ

『ドクトル・ジバゴ』は武器になる。
それをロシア語版をソ連に持ち込むことで、ソ連内部からソ連国民の意識を変えることに繋がるというのは確かにネタとしては面白い。
ただ、結局のところ、ソ連に『ドクトル・ジバゴ』を持ち込むこと自体が目的化し、ソ連が変わったのかという本来の目的が軽視されている。
最終的に、CIAが『ドクトル・ジバゴ』をソ連に持ち込こんだ後に、ソ連にどのような影響があったのかも描かれず、ミステリとしてのオチもない。
ミステリとしてのエンターテインメント性も全くなく、基本的にはオリガとイリーナを軸として、2人の関係者とのやりとりが物語の中心として恋愛小説だし、期待外れも甚だしい。
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4488011020
No.8:
(5pt)

女性たちのしたたかさ!

"わたしたちはみなタイピストだったけれど、それ以上のことをする者もいた。毎日、仕事を終えてタイプライターにカバーをかけたあとにした仕事については、ひと事も口外しなかった。"2019年発刊の本書は冷戦中のドクトル・ジバコ作戦を下敷に描かれた著者のデビュー作にしてミステリ傑作。

個人的にはミステリに最近はまりつつある事から2020年の国内発売後に評価の軒並み高い本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は冷戦下、黎明期の米CIAのタイピスト』たち、実際にタイピストとして雇われつつも運び屋などの諜報活動も行う女性たち、そして一方ではソ連、スターリン粛清下、言論統制や強制収容所行きの危険がある中、文学活動を行うパステルナークの姿を愛人、オリガの視点で【平行線に描きながら進み】CIAがパステルナークの『ドクトル・ジバコ』の海外出版を目論む作戦を立案した事から『タイピストたち』パステルナークたちの【互いの人生が交差、収斂する】するわけですが。

『ドクトル・ジバコ』の原作もハリウッド映画版も残念ながら読んだことも観たこともないのですが、スパイものとしての手に汗握る騙し合いというよりは、米ソの1950年〜1960年における男性社会、女性への性差別が当然に行われる中で強く逞しく、したたかに【生きる女性たちの姿が鮮明に描かれていて】まず印象に残りました。

また、本の力による『世界平和の為の作戦』が実際に行われた事にも驚きつつ、各所に本好きならニヤリとさせられる【文学作品の名前やセリフが頻出する本書】海外文学好き、本好きな人なら堪らないんじゃないだろうか。とも思いました。(しかし『ドクトル・ジバコ』のヒロインと同じ本名、ラーラを持つ著者、出来過ぎな位に運命を感じさせられる)

女性たちが華麗に活躍する作品が好きな人や、スプートニク他、1950年〜1960時代の文化が好きな人にオススメ。
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4488011020
No.7:
(5pt)

このすばらしき偶然の一致に乾杯を!

朝日新聞の書評欄で見つけて、その日のうちにAmazonに注文。翌日には手にすることができた。いつものように毎晩少しづつ読むつもりでいたが、二日目には止まらなくなり、明け方まで読んでしまった。
 高二の時、友人に誘われて地方の映画館でなんの予備知識もなしに『ドクトル・ジバゴ』を見た。パステルナークの名も、ノーベル文学賞受賞作であることも、映画のロケ地がスペインであることも、いっさい知らなかった。ただ、世界史で習ったロシア革命とは別の、知識人の側から見たロシア革命というものを知ってショックをうけた。
 その後『ドクトル・ジバゴ』は原子林次郎さんの訳で何度も読み、江川卓さんの訳でも読んだ。おおよそのことはわかっている気でいたが、この本は知識の隙間を見事に埋めてくれた。
 巻末に「本書はフィクションであり(……)生死を問わず、実在の人物、出来事、場所に似ているとしても、すべて偶然の一致です」との断り書きがある。このすばらしき偶然の一致に乾杯を!
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4488011020
No.6:
(5pt)

スタイルが独特

1969年、会社からひと月の休暇を頂き、ヨーロッパ旅行をしました。 ドクトルジバゴの映画がヒットした後で、
ヨーロッパはどこへ行っても「ラーラ」のテーマ曲が流れていました。 私もラーラの曲が入ったオルゴールを
ソレントで求め、今も懐かしく聴いて居ります。 作家の名前が、ドクトルジバゴのファンだったお母様によるものであり、彼女もラーラのテーマをオルゴールで聴いて育ったとの事、親しみを感じます。 小説とは言え、CIA がこの本をプロパガンダに使ったスリルと、パステルナーク、愛人のオリが、かかわった男性たち、タイピストたちの丁寧な描写で性格までが生き生きと伝わる表現力に感銘を受けました。
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No.5:
(5pt)

歴史上の事実に基づいて描かれたスリリングでドラマティックで野心満ちた作品

大作映画『ドクトル・ジバゴ』は、まず映画雑誌『スクリーン』の広告で知り、実際には中高生自分にTVの日曜洋画劇場あたりで夢中になって観たことがある。ストーリーまでは如何せんほとんど覚えていないのだが、壮大なロマンだったという印象は強く残る。

 この映画の原作本は、冷戦下のソヴィエトで書かれたが、スターリニズムに批判的な思想書として国内で発禁となっていた。原作が国外に持ち出され、イタリアで出版され、ノーベル文学賞に選考されたが歴史上類を見ぬ作者による辞退に至った経緯は、ウィキペディアなどにもその背景の記述が見られる。

 本書は『ドクトル・ジバゴ』を冷戦下プロパガンダ政策の強力な武器としてスパイ活動に使ったCIAの記録と、当時の綿密な歴史資料を集めて黒字で伏せられた部分を創作として丹念に綴った一大力作であり、作者ラーラとしての力作である。ちなみにラーラは本名であり、両親が映画『ドクトル・ジバゴ』のヒロインの名前を下に命名したというから、本書もまた運命の一作として熱の入った傑作に仕上がっている。

 本書は、『ドクトル・ジバゴ』原作者のボリス・パステルナークと、愛人オリガ(小説のヒロイン≪ラーラ≫のモデルとなった人物)の圧政下でのスリリングな恋愛を軸とした<東>の物語と、鉄のカーテンの内側に『ドクトル・ジバゴ』の本を持ち込んだ女性スパイたちの動きを軸とする<西>の物語として交互に語られてゆく。

 <西>の物語を受け持つのは二人のヒロイン、ロシア生まれのイリーナと天性の女スパイ、サラ・ジョーンズである。二人は当時のハラスメント、息が詰まりそうな性差別に抗いつつ、『ドクトル・ジバゴ』オペレーションに強く関わる運命に身を投じる。独自のヒューマンでタフな一人称文体で語られる彼女らの人生がずしりとした読みごたえを与えてくれる。

 彼女らの所属するCIAタイピスト部屋の個性的な面々と、ここから世界を動かしに出かけてゆくイリーナらとのつかず離れずの関係もリアルに活写され何とも力強い。作家のペンは繊細かつタフで、時と場を移動しつつ、<東>と<西>の国家的非情さを横目に、個として生きる人間ドラマを紡ぎ出してゆく。

 歴史上の事実に基づいて描かれたスリリングでドラマティックで野心満ちた作品である。高額な翻訳権争いが生じたほどの魅力的な題材であり、映画化も予定されているというが、本書そのものが何とも映像的で美しい時代と季節を背景に、感性に満ちて濃密な美しさを纏う。

 『ザリガニの鳴くところ』の後に読んだ『あの本は読まれているか』、どちらも世界的ベストセラー、女流作家によるデビュー作、密度の濃い内容、とドラマ性。充実する作品群は何とも頼もしく有難い季節なのである。
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4488011020
No.4:
(5pt)

世を忍ぶ恋

ボリス・パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』は1989年の文庫出版(江川卓の名訳)以来のわたしの愛読書である。当時、作家の丸谷才一がこの小説を褒めちぎっているのを読んで、早速書店で文庫化されたばかりの本を買い求めたのだった。前に見ていたデヴィッド・リーンの映画にはさして心が動かなかったが、小説は滅多にない、スケールが大きく、きめ細やかなラブロマンスの傑作だった。『あの本は読まれているか』はこの『ドクトル・ジバゴ』という小説をめぐる人々の人生を描いた小説である。CIAの作戦にスパイたちが暗躍する部分はそれなりに面白く読ませる。パステルナークと愛人オリガの生活にも興味をひかれる。それらは作者が膨大な資料を読み込んだ上で書いていったものだろう。しかし、わたしが常にもっとも心を動かされるのは、よく書かれたフィクションを読んだときなのである。この小説でいえば、イリーナとサリーという女スパイ同士の世を忍ぶ恋を描いた部分だ。『ドクトル・ジバゴ』のジバゴとラーラの恋は結局成就することはなかった。ジバゴの遺体を前にして、抑えに抑えた慟哭にふるえたラーラが、滂沱の涙を流し、死者に連綿と語り続ける終幕を到底忘れることはできない。では、イリ-ナとサリーの恋はどうなるのか。それだけを念頭に読み進み、最後の一ページで明かされる真相に心震えた。二人の恋の細かい顛末はこの小説で描かれることはなく、世間に埋もれたまま終わるというラストにいつまでも余韻が残る。
あの本は読まれているかAmazon書評・レビュー:あの本は読まれているかより
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