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錦繍
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錦繍の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.41pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全179件 141~160 8/9ページ
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本書は、離婚したあと10年ぶりに再会した元夫婦が手紙をやりとりするという、往復書簡体の小説です。 男は妻の父親の会社の後継者として仕事に励んでいましたが、ある日、旅館の一室で血だらけになって倒れているところを発見されました。同室にホステスのママが死んでおり、無理心中に巻き込まれたようです。 このようなスキャンダルを起したからには、妻の父親の事業を継ぐわけにはいきません。ホステスのママとの浮気の経緯も言い訳せずに男は去り、女は父の勧めるままに再婚します。 その2人が、偶然に旅先で再会し、女が手紙を送ったのをきっかけに2人の往復書簡がはじまります。一度は、「迷惑です」「これを最後にしたい思います」と、男が手紙のやりとりを拒もうとしましたが、女が近所の喫茶店の話を書いたことをきっかけに再開することになりました。 2300枚のレコードを買い溜めたマスターが定年後にやっと開店した「モーツァルト」という喫茶店が近所にあり、女はここではじめてモーツァルトの音楽をじっくり聞く時間を持つようになりました。マスターに感想を聞かれ、「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれない」と女は感想を語り、マスターは考え込んでしまいました。 この何気ない出来事を手紙に書いたことにより、小説は展開をはじめます。男は長年秘めていた事件の秘密を語る決心をしたのです。男が語る事件の核心、今いっしょに暮らしている女性との生活、女が語る障害を抱えた息子との現在。 2人が語る内容は、いつの間にか宇宙の不思議なからくり、生命の不思議なからくりに包まれている思いにつながっていきます。最後の手紙で2人の胸中に去来するものは……。 | ||||
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まずオープニングがすばらしい.二人の過去に起こった出来事がただならないことや,会ってなかった間の思いが伝わってくる.作者は相当のエネルギーをここに割いたであろう. 読者が見ていく情景は時間と空間を超え,二人の間に繰り広げられた過去が徐々に形作られていく.過去がだんだんにわかってくる展開はミステリー風味で強烈にひきつけられる.この時間と空間を飛ぶ感じは”市民ケーン”を思い出させた. 女は恨み・嫉妬から開放され,男は無気力から抜け出すきっかけをつかんでいく.マイナス感情にとらわれた過去から離別し,今を生きることに取り組んでいく姿が活き活きと,時に生々しく描かれている. 現在の生き方によって過去は変えられるんだよ,ということを教えてくれる傑作. | ||||
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この話はある二人の手紙のやり取りのみで構成されている。故にどこかドストエフスキーの「貧しきひとびと」を読みながら思い出した。 手紙のやり取りを通じて二人に劇的な変化が訪れるとか、素晴しい幸福がもたらされるとか、そんな奇蹟は起こらない。容易に何かが好転するわけではない。それでも手紙の交換を行う二人は互いの過去を清算し、現在を見つめ、未来を描き出す。 メールが飛び交う昨今、手紙なんて面倒で時間のかかるものは流行ってはいない。手紙でしか表現できない大切なもの...久しぶりにそれに触れた気がした。 | ||||
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20年前に読んで、その時はごく単純に恋愛小説として面白かった。でも主人公たちと同年代になったいま、改めて読み返して、恋愛小説の枠を越えて、実に含蓄のある小説と気がつき、感動した。そんなふうに時空を越えて、読み手に問いかけてくる小説だ……。 愛し合っていたのに、離婚せざるをえなかった若い夫婦が、その後10年ほどたってから偶然再会し、手紙のやりとりで別れてから現在に至るそれぞれの人生を語る。そして二人が離婚するキッカケになった「事件」の真相についても語られるという……いわばメロドラマであり、ミステリーであり、人生再生の物語。語られなかった過去を、見つめ直すことで、停滞している現在や未来への希望が出てくるという、含蓄のある小説だ。 もしいま生き詰まっていると感じる人がいたら、その理由はともかくこの小説をお薦めする。私たちは誰もがじぶんの過去にとらわれている。じぶんのことはじぶんにしかわからないと考えている。でも本当にそうなのか?・・・作者は主人公を通して私たちに語りかけてくる。 未来を考えたり、希望をもつには、まず過去をいままでとは違う視点で捉え直したほうがいいのだな、とこの小説は深いところから教えてくれる。 「じぶんの過去は変えられる」と教えてくれる。起きた出来事は変えられないけれど、それによる自分という人間のありかた・意識は実は変えられると教えてくれる。そしてじぶんを捉え直すには、誰か他者との出会いが大切なことも宮本輝は、さりげなく私たちに教えてくれる。素晴らしい小説だ。 | ||||
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まだ三十数年しか生きてきておりませんが、私が出会った中で最高の本です。 何回も読みました。折り目をつけたり、マーカーで印を付けた小説は生まれて初めてです。なので、2冊所蔵しています。 「なぜ?」「どうして?」「もっとあの時ああしてれば…」「今の不幸はあの時の、あのせいだ」誰しも一度は思ったことがあるのではないでしょうか? 自分の不幸を、離婚した夫のせいと八つ当たりなまでに理由付けてしまいたい主人公の気持ち、それでも最後には母として一人の人として、過去を昇華し、前向きに強く生きていこうとする力強さに涙がとまりませんでした。 同じ女性として強くありたいと憧れます。 | ||||
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よみおわったあとに 太宰治の「斜陽」と同じ感動の種類だなとおもいました。 なんていうか、幸せな前向きな余韻が残って広がる感覚。 書簡形式という形式が私の中で結構好きな小説形式ではあるので それも奏功して。 若干背景が古いかんじも読んでいてしますがいや、これは名作です。 | ||||
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二十歳のときに初めてこの小説を読み、愛し合っていても別れなければならない運命があることを知った。当初、本を読んで泣くことなどめったになかった自分が泣いてしまった本である。同じような感動を求めて、宮本輝の代表作といえる他の作品をいくつか読んでみたが、この「錦繍」ほど、素晴らしい感動には出会えなかった。 十四年後に読み返したときは、二十歳のときよりも更に涙が止まらなかった。このときは「生きていることと死んでいることは同じことかも知れない」というフレーズに惹きつけられた。 今では、自分は主人公と同程度の年齢に達している。二十歳のときよりは「死」というものが少しずつ確実に近づいている。しかし、まだ実感はない。もし十年後に読んだら、また違う感慨に更けるのであろうか。 「愛すること」と「別れること」、「生きること」と「死ぬこと」という永遠なる重厚なテーマに、男女の書簡のやり取りという斬新な形式で、人生の悲哀を美しく描いた、宮本輝の最高傑作。私にとっては、人生のうちで何度も読み返す価値のある、美しく深みのある物語である。 | ||||
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ずっと昔の話だが、「この愛に生きて」というドラマがあって、入院している鈴木保奈美の枕元で岸谷吾郎が手にしていた本がこれだった。 「生きていることと死んでいることは同じこと」。 なんてさびしい台詞だろう、と私は思った。いや、もしかしたらこれはさびしいということではないのだろうか。誰か教えてほしい。 | ||||
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宮本輝氏の美しい文体で綴られる、別れた夫妻の往復書簡。 主人公・亜紀の内なる声に、涙が止まらなかった。 あまりにも悲しい彼女のさだめに心が苦しくなってしまう一方で、突きつけられた現実から逃れることをせず、ただ精一杯今を生き抜こうとする二人がそこにはいて、私は勇気付けられた。 有馬の恋人・玲子が書簡を読み、「うち、あんたの奥さんやった人を好きや」と泣いた瞬間、私はさらに嗚咽していた。 人を愛すること、許すこと、そんなことをしみじみ考えさせられた本です。 | ||||
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まさに現代日本文学が直面している、ある種の薄さとでもいいましょうか…そういうものが凝縮された感があります。手紙文学と言う形式で恋愛を描いているのですが、かつての日本文学が持っていた力強さはない。今はこういうものが流行ってしまって、日本文学の衰退を目の当たりにして無念です。 | ||||
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深いです。 はじめの文体から、きらきらしていて、美しい言葉に引き入れられます、、 20代前半で、はじめて「おとなのおとこのひと」に薦められた本だったので、より印象も深いのですが、今でもくりかえし手に取り、そして、いつも裏切られない読後感が得られます。 ストーリーテラー宮本輝さんの最高作、と私の中では位置づけられています | ||||
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当たり前の現実を、この世の中を生きるということ。ある時は反発し、またある時は受け入れ、時に希望を持ち、時に諦めながらも、ただそこに在るということ。誰よりも近くにいる相手でも絶対的に他人でしかないという絶望的な孤独。 とても一言では言い表せないこの複雑な「人生」というもの、生きるという不可解なことを、1組の男女が半生を語りあう往復書簡を通して、とても自然に、かつ見事に表現している作品。 宮本作品には正直なところ当たりはずれがありますが、これは文句なしの大当たり。もう少し年を重ねた後に読んだらさらに評価が上がるように思い、今は星4つとしておきます。 | ||||
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宮本輝さんの作品は結構読んでおりますが、私の中では、かなりの上位にランクインしている作品です。宮本作品がお好きな方は、是非、ご一読を!(主観ですけど。) 宮本作品は、生・死、宿命、再生といったものを描いている物が多いですが、これもその中のひとつ。文体としてはさらっと書いてありますが(流転の海シリーズのように読み応えがあるタイプの本とは違います)、実は濃厚。暗い内容にも関わらず、読んだ後には、何か光がすっと見えるような、そういった心地良さ、爽快感?が漂います。 全編書簡体なので合わない人は合わないかな。合わない人にとっては、退屈な本と感じると思いますが、読書好きにとっては、一見、単調な文体に思えても、内容に引き込まれていくかと思います。 (余談ですが、六十代の父も、この本は面白かったと言っておりました。若すぎる人(二十代前半とか)は、面白さがわからないかも~。) | ||||
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この小説の主人公有馬靖明は37歳。偶然、訪れた蔵王のゴンドラリフトの中で、10年前に別れた妻勝沼亜紀と再会するところから物語は始まる。 2人の手紙のやりとりだけで綴られるこの物語は、最初は、お互いに離婚当時の事情を語るところから始まり、時には、相手を責め、時には詫び、悔いるということ繰り返す。 しかし、結局、今の自分の姿は過去の自分の行いの結果であり、今の自分の行動の積み重ねからしか、将来の自分の変化はあり得ないということに気がついていく。過去を受け入れ昇華させる中で、今まで否定していた自分を受け入れ、お互い、それぞれの道を前向きに生きるようになる。 結婚前の20代半ばで一度読み、感動して人にも薦めた。主人公の年齢を過ぎた40代で再読し、死と再生という深淵なテーマをどこまで理解できたのかと考えている。宮本輝ファンの私にとっての入門書であり、何度も読み返す座右の書でもある。 まだ、宮本輝を知らない人に、一度は読んでほしい本。 | ||||
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何度も読んでいますが、あの文頭を読み返すだけで 身震いがします(大げさですがそんな感じです) 「青が散る」系のさわやかさはないけど すてきな作品です。 | ||||
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愛する事と離れなければならない事、生きる事と死ぬこと、幸福と不幸、過去に礎を置く現在と現在を映す過去、往復書簡の始まりと、いつかは終わらねばならないという事実。 これらは相反すると見えても実は同一のものであると著者は訴えたいのではないだろうか。それゆえ人は運命に苦しみ、しかし求め合う。 第78回芥川賞作家が描いた、人間の感情の襞をあます事なく凝集した、最高傑作であるといえる。 | ||||
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宮本輝の初期の作品。男女の書簡の交換で展開されていくユニークな小説。ちょっと生きることに疲れたり、ちょっと後ろ向きになってる時に読むと、不思議に生きる勇気を与えてくれる一冊。 | ||||
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この作品の特筆すべき点は、ストーリーもさることながら元夫婦が書く美しい文体の手紙ではないだろうか? 離婚後の二人が過去を語り、そして現在を語る。じっくりと読んでいくとその手紙のやりとりの中には、お互いを優しく想い合う共鳴鐘が響いている。 過去を美化するのは人間誰しもが行うことなのかもしれないが、この手紙は決して二人が現実逃避するための手紙ではない。「あの時があったからこそ、今こうして生きている」という現実に、はっとしてしまう読者もいるのではないだろうか。 | ||||
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有馬靖明と大学生で一人暮らしをしていた時の自分と少し重なって見えてしまいました。そして、あの頃に戻りたいと思いました。 そして僕は令子に惚れました。 久しぶりに小説を読み、人生の深さを考えさせられました。 | ||||
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最初から最後まで手紙でのやり取りのみで書かれた書簡体の珍しい小説です。内容は別れた夫婦が蔵王で偶然であったことにより、それ以降近況を報告することから手紙のやり取りが始まるのですが、書簡体だからこそ手紙を書いた時点よりも過去に向かって物語が進むことで、なぜ夫婦が別れなくてはならなかったのか、別れた後に何があったのかを徐々に知ることが出来ますし、逆に現在の状況も書簡体により上手く過去と織り交ぜて表現することが出来ます。 私は元夫婦の二人の手紙を交互に読み進めていくうちに、最初は生きていることとは?死ぬこととは?などの疑問が浮かんでき、そして結局は生きていることも死ぬことも自分の人生も他人の人生も結局は大差ないのではないかということに気付かされました。禅問答的かもしれませんが、とてもスケールの大きな全宇宙的視点から人間という生き物を見る機会を得れたことに感謝します。 | ||||
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