偽りの銃弾
評判
偽りの銃弾の評価:
3.83/5点 レビュー 12件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全12件 1〜12 1/1ページ
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偽りの銃弾の評価:
3.83/5点 レビュー 12件。 B ランク
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邦題の「偽りの銃弾」も、原題の「Fool me once」も、いずれも良いタイトルだと思う。因みに、「Fool me once」は、「fool me once, shame on you」の省略かと思う。この後者の日本語訳は、本作品のNetfixドラマ(2024)の字幕では、「一度は騙した... 恥を知れ」との訳されている。ということで、原題の「Fool me once」を日本語訳にすると、「一度は騙されたけれど」が適切かと思うが、邦題の「偽の銃弾」も良い。
物語は、主人公のマヤ・スターンの視点で進行し、夫の葬儀の情景から始まる。マヤ・スターンは、軍用ヘリUT-60あるいは武装ヘリMH-6の女性パイロットの陸軍大尉であったが、バクダットの作戦中の無許可攻撃で名誉除隊を余儀なくされ、戦争後遺症のPTSDを背負っている。除隊後は、セスナ172のパイロットの育成に携わるとともに、資産家・名家の御曹司の妻となり、娘を授かり、幸福な生活を送っていた。しかし、再び悲劇が襲う。マヤ・スターンは夫と待ち合せていた、公園で銃撃事件に遭遇し夫を失った。しかし、ある日、主人公が自宅の居間の監視カメラの映像を再生すると、死んだはずの夫が、2歳の娘をだいている映像が再生される。Netfixドラマ(2024)では、娘と遊んでいる情景に変えられている。
展開部で、あれこれ、複雑なディテールが披露されるが、筋書きの主題は、終局に向かって進行し、太い幹に集積する、巧みな設定と構成だ。作者は、作品中に3度、「オッカムの剃刀《カミソリ》」の譬えを出して、読者にヒントを与えている。複雑なディテールは、関連する殺人の根拠を提示して、行為の動機を念入りに説明している。なお、「オッカムの剃刀」とは、Occam村(イギリスの地名)のWilliamという名の神学者かつ哲学者の発言を引用している。「必要以上の仮説を立ててはならない」というのが格言で、なるべく最小の仮説ですべての事象を説明できるものが真実に近いと言っている。
丁度、PTSDの文献を同時に渉猟していたこともあり、本作品には興味をもって読み進めた。因みに、PubMedで、「PSTD, war, veterans」のキーワードで検索すると、3,089件の論文がヒットし、実に多い。全文無料の論文は、951件に絞り込めた。PTSD の一般人口における推定有病率は1-9% で、重大なトラウマを経験した被害者では20-45%、退役軍人では 15-20%と報告されている(Khazaie H et al: J Inj Violence Res. 2016, 8: 99–107)。
米国に限定し、イラク戦争/アフガニスタン作戦に絞り込むと、退役軍人省(VA)に登録されている統計では、退役軍人の5分の1が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されている(Cohen BE et al: J Gen Intern Med. 2009, 25:18–24., Seal KH et al: Am J Public Health. 2009, 99:1651–1658)。やはり、多い。
PTSDの症状では、侵襲的想起(フラッシュバック)がある。このフラッシュバックには、①トラウマの記憶が繰り返し出てくる、②反復的な悪夢、③フラッシュバックによる再体験、④関連事項の強烈な苦痛、⑤関連事項の強い身体の反応で構成するとされる。戦争後遺症のPTSDを背負う。一方、除隊後、一般社会での夫の銃撃事件では、PTSDの症状は出現しないという、作者からのヒントが読者に与えられる。
フィナーレは、古典ミステリーを踏襲して、一同が集合しての謎解きがある。そうか、「オッカムの剃刀」なのかと気付く。物語の終わりは読後感がよく、且つ感動する。これは、作者の戦争後遺症をもつ兵士に対する敬意を表す姿勢かと思う。作者のハーラン・コーベン氏には軍歴はないが、United Service Organizations(USO)を通じて取材した結果で、本作品が生まれたようである。謝辞の項で、今なお精神的な傷を負っている、大勢の勇敢な兵役経験者と家族への謝辞がある。
第四章のP.067に誤訳。軽トラック=✕ 軽量トラック=○
作品の英文原稿は、「Light truck or light-duty truck」と推測するが、日本語Wikipediaでは、「その名称からしばしば軽トラックと誤解・誤訳される」との記述がある。米国の「軽量トラック」は、総重量が 3,860 kg以下、積載量が 1,814 kg 以下の車両を指す米国の分類である。因みに、翻訳に使用する下訳ソフトでは、①Deepl L 翻訳では、「第1候補:軽トラック、第2候補:軽量トラック」、②Google翻訳では、「軽量トラック」、③みらい翻訳では、「軽量トラック」と翻訳される。おそらく、本作品の翻訳の下訳ソフトはDeepl L 翻訳が用いられたのだろうか。ただし、私も下訳には、専ら、Deepl L 翻訳を重用するが。