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勝手にふるえてろ
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勝手にふるえてろの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.45pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 21~22 2/2ページ
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これは、イチとニという男性を巡る26歳処女OLの物語。断じて「キュート」な恋愛小説などではありません。 綿矢さんの作品をきちんと読んだのは今作が初めてです。それまでの作品は斜め読みする程度でしたが、文章に独特のリズムやセンスが感じられて、単純に「上手だなあ」と思っていました。 今作も冒頭から彼女の個性的な文章が爆発しており、書かれている内容はともかく(音姫に関する記述はちょっと冗長だしあれって実際使ってる人は少ないと思う)彼女なりの感性でのびのびと楽しく書いている様が伝わってきました。 ただ、その先の内容がどうにも面白くありません。 こういった作品にはリアリティがとても大切になってくると思うのですが、最初から最後まで主人公の思考や行動が「出来事」として外側から描かれているように感じられ、とうとう読み終えるまで感情移入できませんでした。会社に関する描写も会社勤めを経験したことのない筆者にしては当たり障りのないレベルでこなしていますが、そもそも何を扱っている会社なのかも書かれていないのでそこまで詰めていないのかな?と思いました。営業部、経理部、庶務、確かに汎用性はありますが、いまいち「会社」のニオイがしてきませんでした。 そもそも妊娠休暇って何? 水が飲めない程重度でもないつわりに対して医者がすぐに産休に入れとか言うわけないだろ、そもそも産休の意味わかってるの? とか、まあそのへんは主人公の幼稚さを表すエピソードだと思うのですが、働きながらつわりに苦しんだ経験をしたばかりの自分にとっては「フザケンナ」としか思えませんでした。紙のむこうの「オハナシ」でしかない。実際に主人公のヨシカのようなOLがどこかにいると感じさせて欲しかったです。 この小説は結局「主人公がどうしようもなく幼い」というところに着地させてしまえばどんな非難もかわせるようなニクイ作りになっていますが、私は綿矢さんがそんなあざとい人だとは思いたくないし、ただ幼稚な人を書きたかっただけだとも思いたくありません。主人公を幼稚にさせるには理由があるだろうし、その幼稚さを利用して小説を構築するのも作者の役割だからです。 同期に裏切られた部分、潜在的に精神的つながりを持っていたと信じていたはずの片思いの男の子(イチ)が自分の名前すら覚えていてくれなかったという、物語に大きな動きをもたらす役割の箇所を、主人公の心理描写は簡単な独白で済ませてしまっています。その部分こそ主人公を突き放して三人称的に丁寧に描写して欲しいと思うのは、個人的嗜好の問題でしょうか。 前者は同期と会話をしていたシーンが短く、ニのエピソードのおまけのように埋もれてしまっている為、主人公が本当に「信頼していた」というふうには感じられませんでした。だからニを振るシーンに説得力がない。主人公は明らかにニを嫌悪しているから、彼を退けるのに同期を利用しただけなのかしらと思ってしまいます。って、むしろそれが筆者の目的なのでしょうか? だとしたら騙されました。しかし当該部分の描き方やその後の展開からやはりそれはないと思います。 後者は、同級生の名前を覚えていないなどよくあることだし、名前を覚えていなくてもイチは主人公とのエピソードを覚えていてくれたり、部屋で一人になった主人公のところに話しに来てくれたりと、男性に対する免疫がない女性にとってはむしろ舞い上がってしまうような出来事だと思うのですが、主人公は「名前を覚えていてくれなかった」ということだけで大きなショックを受けます。それも個人的な思考の違いの問題と言うならば、何故それほどまでに傷ついたのかを示すエピソードが必要だと思います。 ラストシーンですが、崩壊か救済かどちらかを期待していた私は肩透かしをくらいました。 結局冒頭部分に戻っているのです。冒頭部で主人公がする結婚式の妄想、あれが現実になるだろうというところで小説はぶつりと終わります。結局ほとんど何も変わっていない主人公とニ、その二人の未来に大きな幸せが訪れるとは思えません。 「私の好きなやさしさ」とは何でしょうか。自分を正当化するためだけの思い込みなのではないでしょうか。冷めた振りをしながら素直になれず、他に対する憎しみとも羨望ともつかぬもやもやした気持ちを持て余しながらなんとなく処女を守っている、そんな主人公にやって来た「何か」たるイチとニ。イチはその本性もわからぬまま主人公の弱さ故に退場させられるし、ニはさんざんその醜さを露呈しておきながら最後ではヒーローの役目を担わされる。仮にも本当にニが主人公を愛していたのなら、振られてもすぐには未練を断ち切れないだろうし、妊娠したという話を聞けば怒りを感じるよりもまず詳しい事情を知りたがるんじゃないでしょうか。主人公の呼び出しにすぐに応じず酒を飲んでいたらしいという描写は彼の迷いを描いたのかもしれませんが、結局は主人公のことなど表面的にしか好きではなかった彼の軽薄さの表れのように感じられました。 だから、救いがないのです。 彼らがどうなろうがどうでもいい、と思ってしまうところに、この小説の欠点があると思います。 | ||||
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前作同様、もうひとつ、ストーリーに入り込めませんでした。次作に期待します。 | ||||
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