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愛に乱暴
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愛に乱暴の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全41件 21~40 2/3ページ
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吉田修一は、物語を語るのがうまい作家だ。それは、うねるように物語が展開する長編を読めば、よく分かる。その一方で僕がいつも吉田修一に思うのは、「この人は不穏な空気を描くのが抜群にうまい」ということ。その才能は長編・中編・短編にかかわらず、いかんなく発揮される。そして、これら2つの特徴が恐ろしいまでに融合した大傑作が『悪人』であることは、論をまたないだろう。 そこで本書。これは、吉田修一描くところの「不穏な空気」が、ひとつのピークに達した長編小説ではないかと思う。「不穏な空気」の極北、といってもいい。物語自体も、だまし絵的な構図を持っていてなかなか読ませるが、それ以上に、ヤバい、ヤバい、ヤバい…という空気を醸成する手腕がただごとではない。サスペンス、という言葉ではどうも納まりが悪い。既存のカテゴリーに当てはめるなら、これはホラーだ。しかも、その辺のホラー小説以上にホラー性を感じさせる傑作である。 いたって日常的なシーンに潜む悪意、一見幸せそうな人間関係の裏にうごめく黒々としたもの。これらをじわーっと浮かび上がらせていくような作風は、デヴィッド・リンチの映画なんかにも通じるものがあるかもしれない。もちろん、リンチよりかなり「まとも」ではあるが…。それにしても『愛に乱暴』というタイトルはちょっと不思議。「この小説面白いから読んでみてよ」と勧めた僕の周りでは、「内容は面白かったけどタイトルは変ですよね」とあまり評判はよくなかったが、それはまあ常人の意見かもしれない。 | ||||
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バラの絵が描かれたハードカバーのカバーを外すと、オレンジ色の本の本体に銀色のチェーンソーの絵が描かれています(文庫になると再現されないでしょうが)。 このチェーンソー、本書の主人公桃子が、表面上平静を装っているものの無意識のうちに心の中がパニックに覆われていき、それがきっかけとなったのか、奥の部屋の床下が気になり出し、スーパーの日曜大工コーナーで見かけて以来どうしても欲しくて仕方がなくなり購入したものです。 そして一人きりの家で、ゴーグルをつけ、チェーンソーを構え、廊下を歩きながら、時々右に左にと空を斬りつけてみて、「とにかく今後夫とは会わないでもらわないと。お分かり?」とつぶやきながらチェーンソーを突き出す。 この場面で桃子とともにこちらも思わず吹き出してしまいましたが、と同時に、この場面がとてつもなく印象に残り、吉田修一ってやっぱり凄いな、と妙に感心してしまいました。 そしてさりげなく「家族」の形についても触れています。 吉田修一は、まだまだ進化し続けている感があり、新作が楽しみな作家の一人です。 2007年「悪人」、2008年「さよなら渓谷」、2009年「横道世之介」、2012年「路」、そして2013年の本作の後、2014年「怒り」、2015年「森は知っている」と傑作を連発しています。 まさにノリにのっている状態(毎年傑作を発表し続ける状態)がこれほど長く続く純文学作家というのも今珍しいのではないでしょうか。 これからも期待大です。 | ||||
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本には、人生を通して読むたびに味わいが変わる本もあるし、 これは絶対若い時に、独身の時に、読んでおくべき本ってのもある。と思う。 この本は、間違いなく結婚してから、読むべき本。 吉田ワールド全開とも言うべき、芸術的昼ドラ感満載の小説。 この人本当に男性作家なのかなってくらい、ドキッとするほど女の心理風景描くのがうまい。 ゴミ袋に付く魚の油とか、ほんと、読んでて嫌になるほどのリアリティ。 そしてトリックもあります。 私も見事にミスリードされました。 人間の、素敵な部分と嫌な部分とが実に丁寧に パイ生地のように練りこまれて練りこまれて、 最後には全ての登場人物に、読み始めとは違う後味を感じて終わります。 名作だと思う。 | ||||
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吉田修一ファンで、どの作品も好きですが これは、来た!!という感じでした。 主人公の桃子も夫も姑もどこか人間味がなく 空恐ろしい。 そんな中夫の若い不倫相手には 親しみを感じていたの…ですが… 衝撃の展開でした。まんまとやられました! 自分の価値観がいかにあやふやかということを 突きつけられたような。 でも単純におもしろかった。 ハラハラして、これは是非映画化してほしいなと思いました。 ラストシーンは、頭の中でくっきりと映像が浮かんでくるような そんな壮絶な描写でした。 これはすごい。最高です。 | ||||
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個人的に、これまで読んできた本の中で1位、2位を争う 素晴らしい作品 個人的には主人公の桃子の気持ちは痛いほどわかる。 ”感情移入ができない”、”ラストがいまいち”等おっしゃる方もいるようだが、 いやいや、とんでもない。 あまり書くとネタバレになってしまうので書けないが、 作者がインタービューで、本作は人の”居場所”について 書いた作品とのことです。 自分の居場所が突然奪われたら。 夫に不倫され、離婚して家を出ていけと言われたら、 はたして皆さんはどう対応するだろうか。ぜひ想像してみてほしい。 おとなしく、はいそうですかと慰謝料をもらって離婚できるだろうか。 まだ夫を愛しているのに? いや不倫されてなお、本当に夫を愛することができるだろうか。 どこにでも起こりうる話なはずなのに、これほど壮絶に これほど生々しく作品に昇華する作者の手腕に脱帽である。 愛に乱暴という題名だが、決して浮世離れした人のはなしなどではない。 身近に起こりうる狂気を感じることができれば この作品は必ず心に残る作品となるだろう。 | ||||
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個人的な話ですが、親の世話をすることが毎日にようにあります。笑顔でするように努めるけれど数日で我慢の限界に達して爆発する。言い過ぎ、両方とも傷つき、反省し、また世話をする。このサイクルを繰り返して数年が経つ。『やってられるか!!!』という精神状態になってしまう。 そんな時に読み、大変癒されました。 話は東京郊外に義理の両親と住居は異なるが同じ敷地に住む夫婦に関わる話である。ミステリーのような気分も味わえ、(主観の何者でもありませんが)村上春樹的な要素も味わえ、最後の章までいろいろな伏線を張り巡らしつつ、最後には『そうだよね』と思わせる。 話自体は夫婦間の愛をモチーフにしているが、先に書いたようにある種の自己啓発本である。読後に思う、数日の間なんて…。(笑) | ||||
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主人公は初瀬桃子。結婚8年目の専業主婦。 週に数度、カルチャースクールで石鹸の作り方を教えている。 不倫の末に結婚した。子供はいない。 桃子の夫が再び不倫をする。 しかも相手のお腹の中には赤ちゃんが居る。 そして、桃子の精神は徐々に病んでいくこととなる。 桃子の心の動きと行動は、共感は出来ないが理解は出来る。 日記については、正直騙された。 | ||||
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「不倫」と言ってしまえばそれまですが、女性の視点で、日常と自分を守るための妄想が交差しているような世界観。 一回読んで、思わず2日後に、もう一回読み始めました。 内容を知ってから、丁寧に読み返すと、それはそれで別世界が見えてきました。 | ||||
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途中、あれっ?と思い最初に戻って読み返しました。仕掛けが面白く、とても引き込まれます。 テーマは重いけれど、意外と軽いタッチの部分もあり、読みやすかったです。 | ||||
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アタシにはわかる。 よ〜くわかる。って、思いました。 タイトルの『愛に乱暴』がしっくりこなくって。 ラストに新聞小説で『愛の乱暴』を改題し、改稿したものです。 と、なっていて。 アタシには『愛の乱暴』の方がしっくりくるなぁ。 って、感じました。 やっぱり、新聞小説だったのね。 主人公の日記、葉月・・・。 やられましたぁ。 なるほどね。 吉田修一の新作ここんとこずっと読めているのだけど。 ジャンルがぁ、まったく違う。 テイスト、もの、すっごく変えている??? あっという間に読めるわ。 ある意味コワイけど。 | ||||
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吉田修一氏の著書は、いくつか読んだが、その中でも1位、2位を争うくらい面白かった。 ドロドロしたストーリー展開と、すばらしい構成力。 何よりも深い。人間の孤独が深く描かれている。そしてその孤独が人を狂わす。 狂気が、怖いほど。ただ、これは私たち、みんなの心にある狂気なのではと思う。 でも、ラストに少しだけ救いが見れたとき、生きていこう、と思える小説です。 「愛が乱暴」、でも、「愛の乱暴」でもなく、「愛に乱暴」というタイトルも秀逸です。 | ||||
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読み終わって 予期しなかったところからきた感動の波に 自分でも驚いていてそれを文章にしづらい。 吉田修一はさまざまな男女の愛のかたちを描いてすでに定評があるが 今回の作品は殺人者とかヤクザとか特殊な想定があったわけではない。 ごく一般的サラリーマンの夫の不倫、姑との確執、舅の介護。 巷で見聞きする極めて俗っぽい題材をもとに離婚劇が繰り広げられる。、 逃げたい夫、離したくない妻。 疲れ果て孤立した妻。 その足元にぽっかりと「穴」が開く。 そこから浮かび上がってくるその家の系図。 そこに居た 女。 穴は極めてとっぴな方法で開かれるが それを読者に不自然とかんじさせない伏線と前後の肉付けは 作者のみごとな手腕である。 物語は俗っぽさの澱をくぐり灰汁にまみれ 最後に思いもかけないかたちでひとつの愛を示す。 | ||||
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本当に不思議な小説でした。夫の不貞から始まる夫婦の不和。それ自体はよくあることですが読み進めていくうちに、「私、何か読み間違えてた?」と思わされてしまう。 妻である桃子に同情していたかと思えば、いつか夫真守の立場を思いやり、やがて初瀬家の過去にまで思いを巡らせて考えている自分がいます。 全体に流れる昭和の家の雰囲気も、ミステリー感を増長させ、ドキドキしながら一気に読みました。 | ||||
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かなり面白いです。 さて、この小説。原稿を無記名で100名くらいに読ませて誰の作品か当てさせた場合、 断言しましょう。 50%くらいの人が桐野夏生作品というでしょう。 魂萌えとかハピネスにも通じる、妻の葛藤。 本人も意識してるのじゃないかな。 最近の吉田作品は意図して文体や背景を広げようとしていることを感じますが、 桐野夏生の模倣とだけ言えないような味わいもあります。 最終章がちょっとすっきりしないので☆4つ | ||||
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『悪人』は好きだけど、他の作品はうーん…と感じていました。 (パレード、最後の息子、春バーニーズでなど)(破片とwaterは好きだけど、、) でもこれは楽しめました。日常描写がほんとにうまく、読んでる端から 映像が見えるような書き方ですよね。吉田修一って。 「これは私の、私たちの愛のはずだった。本当に騙したのは、妻か?夫か?やがて、読者も騙される・・・」 帯の文句も秀逸ですね。 | ||||
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不倫する女と不倫される妻の視点で語られていくが、そこには巧妙な作者の仕掛けがあって、 途中で読者が違和感を覚えるようになっている。 桃子と義母とのやり取りが妙に生々しく、徐々に壊れていく桃子が痛々しい。 不倫をしてるかどうかは別として、家庭内の捻じれや拗れはどこの家庭にでもある話で、自分に置き換えて読んだ(笑) 不倫を知った妻がどういう思考や行動を取るかは女性によって全然違うんだろうけど、 男性作家が女性視点で語った本作が女性が読んでどう思うのかは気になる。 しかし不倫夫のだめっぷりは読んでいて歯がゆくなってくるが、そうでないとストーリーが展開していかないしなぁ。 人は誰だってだれかに認めてもらいたいんだよね。 それが思うようにいかなくなったとき、攻撃するのか逃避するのか壊れていくのかは人それぞれだろうけど、 桃子の狂気していく姿は切ない。 登場人物の誰にも共感できないのに、なぜかページを繰る手が止まらないのは、作者の力量だろう。 | ||||
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吉田修一氏の作品は『パレード』もそうですが、読み進めていくと「えっ!?」となる感じが良いですね。 | ||||
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不倫して妊娠して妻の座に収まって8年。また、夫が不倫して相手の女に子供が出来て、家を出て行ってしまう。住んでいるのは、夫の実家の離れ。 主人公の桃子は、まともなのか、少し、気が狂っているのかわからないところがある。なんでも自己解釈し、聞きたくないことは耳を閉じ、見たくないものは目を閉じるところがる。夫の真守は、はっきりと物の言えない性格。既成事実で進めてしまおうという所がある。 描写は細かい。その場にいて、しかも、注意深く見てないと気が付かないような細かい描写。女ではないのに、主婦ではないのに、どうしてこんなに細かいところが描写できるんだろう、と吉田氏の筆力に下を巻く。 ストーリィは重苦しいままに進み、オムニバスの中、錯覚を起こすような仕掛けもあって、最初まんまと騙される。 ただ、最後の最後になって、桃子にも良いことがちょっとだけあって、救われる。「ありがとう」「助かっているよ」「君が良いよ」そんな小さな感謝の気持ちが乾いた桃子の心に沁みこんでいく。 | ||||
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一作ごとに新しい世界を見せてくれる吉田修一氏の今度の新作はタイトルからして思わせぶりです。 東京近郊、夫の実家の離れに住む結婚8年の専業主婦。美人でよく気がつき努力家でもある桃子は週一回カルチャーセンターで教えています。しかし、夫が愛人をつくって離婚を言い出すとたちまち結婚生活に暗雲がたれ込めます。義父の入院と義母との確執も加わって次第に追い詰められた桃子は意外な行動に走るのでした。 「騙したのは妻か?夫か?やがて読者も騙される」と帯にあるので身構えて読みました。すべて桃子の一人称で語られるのですが、これも吉田修一氏の新しい試みです。おまけに桃子の日記が頻繁に挿入されています。改行なしの思い詰めた言葉が並ぶ日記がこの作品では重要な役割を果たしています。夫の浮気、姑との確執、離婚話と並ぶと世俗にまみれた昼ドラの世界ですが、さすが世界各国で翻訳されている注目の作家は違います。巧みな桃子の心理描写で読者を惹き付け意外な結末を示して終わります。 小説において先の展開が読めないのは読む側にとって大切なことですが、吉田氏の作品のほとんどが結末を予想できないところに非凡さを感じます。加えて吉田氏の文章のうまさに改めて感心しました。次第に追い詰められて、昂まっていく桃子のリアリティあふれる心象表現。全編を覆う不調和感あるいは不安感は通奏低音のように響いてドラマを盛り上げています。彼の卓越した文章力があってこそ成立する作品でしょう。 私は注意深く読み進めたつもりでしたが途中で重要な勘違いに気がつきました。あやうく騙されるところでした。 | ||||
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あるひとの幸せを願ってるのに、知らず知らずのうち、実はそのひとの不幸を「身から出た錆なんだよ」なんてあざ笑っている自分がいたら、恐いですよね。 この小説では、読者にそんなことが起こってしまいます。 あれ、かなり引き込まれて読んでたのに、こんなとこ(頁)まで読み間違えてる。 えっ、間違ってないよ、どういうこと。 えーっ、待って待って。 エーーーッ!! と、自分はなりました。 ダマサレタ | ||||
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