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(短編集)

あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選



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【この小説が収録されている参考書籍】
あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)

あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選の評価: 3.86/5点 レビュー 14件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.86pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

単調な作品群

「日本ハードボイルド全集」という編纂で、結城昌治の作品が一巻編まれている。
その作品の質の高さに驚いた。全集そのものはあまり評価できないが、結城の作
品は質の高さで群を抜いている。中でも「幻の殺意」が秀逸だった。
 そこで結城の作品をまた読んでみようと思い立ち、本書を取り寄せた。  
 本書は第1部と第2部に分かれている。全13編の短編集。他のレビュアーの方
も記しているが、ここでも収載作品名を載せておく。
 惨事、 蝮の家、 孤独なカラス、 老後、 私に触らないで、
 みにくいアヒル、 女の檻、 あるフィルムの背景、 絶対反対、
 うまい話、 雪山讃歌、 葬式紳士、 温情判事、
ごく簡単に各作品のレビューをする。順不同となる。

 「あるフィルムの背景」。押収した春画、ブルーフィルムにある女性と似た女性
が出演していることに気がついた検事。あまりの疑いに、女性にその写真を見せ
てしまう。ここから悲劇は始まる。愛した人の過去の秘密が容赦なく主人公に襲
いかかる。弱みを握られた者が、さらに深みに入る。「限りない羞恥と屈辱」それ
が死を引き寄せる。スピーディな展開。そして暗すぎる結末。

 「絶対反対」。遺棄した場所の収用に反対する主人公。工事の折りに思いがけな
い事実が判明する。清張の「鴉」を思い出した。
 「うまい話」。まるで落語のようなテンポのいい話だが、最後は悪趣味な結末。
 「雪山讃歌」。山岳ミステリーとでも言うのだろうか。新田次郎でも書くような
背景となる雪山。ミステリーとブラックユーモアの中間的作品。
 「葬式紳士」。正体不明の人間に対する、大会社の重役の行動には違和感がある。
小品としてはこれでいいか。
 「温情判事」。現職の判事が大学で講義するのだろうか。その他細かな点でもリ
アリティが薄い。結局何をいいたいのか不明ままで結末を迎える。
 以上4作品は第二部に収載。推理ものというよりも、いささか現実味の薄い「オ
チ」となっている。小品とするにはこれでいいのだろうか、ふと疑問に思う。

 「惨事」。冒頭に収載。どうにも陰々滅々の事件で、当時(1963年 東京オリン
ピックの1年前)は、この種の事件では女性側がとにかく責められていたのだろう。
傷ついた女性がなおも傷つく。著者=結城が「悪達者」であることがよく分かる。
どうにも感心しない。衝撃しかない失敗作。
 「蝮の家」。まるでうまくいっていない家庭。夫婦の思いが交互に描かれる。実
験的でもある小説だろう。高慢な妻、下品な夫。双方の思いは自身にとっては「真
実」であったのだろう。互いの不貞行為。二匹の絡み合う蛇の物語か。結末は一転
するが、残念ながらいくつか瑕疵がある。片方のイヤリングだけ付けることはあ
りえない。アリバイ証明の女性と実行者の関係も、警察に知られないことなどあ
るはずがない。奇を衒ったあまりにストーリーが破綻している。失敗作。
 「孤独なカラス」。現在このストーリーで発表したら、まず間違いなく発刊され
ないことが設定されている。「下層」に住む人間が当たり前に犯罪など犯す訳がな
い。また精神疾患や発達障がいをこう利用するのは犯則。これは時代を経たから
言えるのではなく、当時としても好ましくないはず。これほど酷い結末を何故書
いたのか、それさえ不明な作品。何も感心できない失敗作。

 「老後」。こういう辛い生涯を送った人の話を、さらに酷く突き落とし、遂には
相手に対して「鬼」になる。こんな物語をよく描けるな、ふとそう思う。読者の「怖
い物見たさ」に迎合した作品。愚作。
 「私に触らないで」。主人公の白昼夢が、笑ってしまうほどありきたり。だが、
人生の半ばを越えて、ふとした冒険心が思いがけない結末を招く。結果として大
罪を犯した主人公。結局は愛する「花」にも裏切られる。
 「みにくいアヒル」。女性の容貌を揶揄的に描き、その醜さ故に犯罪を犯す。そ
んな小説は読みたくもない。「人無化十」とあまりにも惨い言葉。人間の嫌らしい
好奇心に阿る愚作。
 「女の檻」。よくある現在付き合っている人と別れ、新しい人と付き合おうとす
るが、それが拒否される。結城の描く女性はステレオタイプだ。ことさらに女性
心理を醜く描いているかと思う.。裕福な女性と生活苦のある女性、この二項対立
で話は進む。この作品も「ただ堕ちていく感覚」があるのみ。

 全体を通して。
 結城昌治はやはり筆を器用に扱える作家だ。だが作品のプロットとなると、変
化が少ない。哀しい背景を持つ人間が、結局はもっと哀しい結末を迎える。その
話を何度も繰り返している。手を変え品を変えても同じような読後感。
 本書収載の2~3編を読んだときには、息を呑むようなスピード感があった。
だが、最後は決まり切ったようなバッドエンド。
貧しい人、虐げられた人、精神的に変調を来した人、容貌にコンプレックスの
ある人、。その言わば「弱者」をさらに虐めてしまうプロットとなっている。これ
が少数ならばまだいいが、ほぼ全てがその形をとっている。どうにもやりきれな
い。 
 逆に「社会の上層にいる人」が道を踏み外す。そんな内容の作品は少なく、全体
として読んだときに、いやに単調な作品群という思いがある。つまりはワンパタ
ンな作品が多すぎる。どうにも辟易した。
 結城は情景描写も心理描写も上手で、どこか登場人物を突き放したような乾い
た「ハードボイルド」的作品を描けても、人間の複雑さは描けていない。

 よく出来ている作品群だが、もう一度読もうとは思わないだろう。
 よって☆は三つが限界だろう。
あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)より
4480434763
No.1:
(3pt)

あるフィルムの背景

裏表紙の紹介文に「読者の予想を裏切る驚愕の結末」とあるが、これは正直に言って誇大広告だと思う。

そこに注目するよりは、第一部では人間性を深く掘り下げた人間ドラマを、第二部ではいわゆる「奇妙な味」とでもいうべき不思議な世界観を味わうと楽しめると思う。

個人的には印象に残る作品はなかったが、文章がとても読みやすく、ストーリー作りが達者であることは疑問の余地がないと思う。
あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:あるフィルムの背景: ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)より
4480434763

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