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(短編集)
皇帝と拳銃と
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皇帝と拳銃との評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.54pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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倒叙ミステリの短編集で、同じ東京創元社から出版されてドラマ化もされた大倉崇裕氏の福浦警部補シリーズの二匹目のドジョウ狙いな感じがする一冊です。 この作家さんの作品を読むのは初めてですが、かなり器用な作家さんなのでしょうか。 二匹目のドジョウ狙いと思われることは想定できたと思いますが、冒頭の犯行から、追求から逃れようとする警察とのやり取り、それを受けて一喜一憂する様子などそつなくまとめています。またトリックやそれが破綻するトリガーなども、多少の無理やりな点があっても、それなりの説得感と意外性を持たせていて、どれもそれなりに楽しく読める作品でした。 4作中、3作は定番の二番煎じのフォーマットでつまらなくないけど、”すごく”面白いとはいえないという感じでしたが、最後の作品はそこを逆手に取って、定番から外した意外性を見せてくれました。他の方のレビューを見ると、動機など今一つという印象を持たれた方もいたようですが、私は同期に納得できるかどうかよりも、物語としての見せ方のうまさに好印象を持ちました。 定石に則った(則りすぎた)作品を3つ続けて読んだ後に、あえて定石を外した作品を持ってくることによって、単独の作品以上の意外性を提示するという物語つくりのうまさを見せてくれたような気がします。 他の作品も読みたくなりました。 | ||||
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短編ミステリの名手(だと勝手に思っている)倉知淳の連作短編集である。いろいろあって半年ほど積読になってたのをようやく読了。 倉知の短編というとユーモアに振った感じの「猫丸先輩」ものが頭に浮かぶが、本作はもう少し生真面目?に倒叙ミステリを短編で書いてみましたという趣向か。 メインの登場人物である探偵役は、あたかも死神のような異様な風貌が特徴の警視庁警部。短編なので当たり前と言えば当たり前なのだが、この人物を一目見て死神のような風貌だという描写が、各話のほかの登場人物によって何度も繰り返される。読者としてはいったいどんな死神顔なんだと想像が変に膨らんでしまう。 これに加え、倉知のユーモアの発露なのかコンビを組んでいる若手刑事が超イケメンという対比。この若手刑事の活躍が微妙なのが少々心残りなのだが、それにしても多少強引な論理帰納であっても死神警部は犯人役に対してこれでもかの畳みかけをしてくる。この描写が、見かけが死神であるというのとあいまって、ある意味で空恐ろしい感じがするのだ。 ちょっとマニアックなミステリ作品かもしれませんが、好きな人には楽しめるでしょう。 | ||||
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連作4篇の1作めは、いかにも「ありがち」な展開。警部が犯人に疑念を抱くキッカケも、よく似た発想の話がテレビドラマ『相棒』にあったように記憶する。 言わば「顔見せ」である。 2作目の表題作で、いかにもオーソドックスな、よく出来た倒叙推理ものが示された後、3作目で「ありがち」な定型からの逸脱が始まる。 刑事コンビ二人の外見に関する描写は毎回同じような繰り返しなのに、ストーリー展開は普通の倒叙推理とは違う方向へ進むのだ。 読者の誰もが「犯人がミスをした」と気付くようなことをするが、それだけでは状況証拠にしかならない。 ではどうするのかと思ったら、そうなるのかよ、話が違うんじゃないのか。 人物描写の定型的な繰り返しに対して、ストーリー展開では定型から逸脱していく、そのズレ加減を「奇妙な味」として狙った作品だと思う。 作者の意図を汲むか汲まないかで評価が分かれる。 個人的には、そうくるのかと笑いながら読んだ。 なお、4作目の犯人の性格付けの掘り下げが浅いとは感じなかった。 同じような人物は、たとえば漫画なら楳図かずおの短編「ダリの男」に描かれている。 あれは何と1969年の作品で、何度もコミックに収録されてきたし、近年でも税込500円のコンビニコミックに収録されていた。 非常に有名な作品と言って良いだろう。 そして国産推理小説を読み慣れている読者なら、すぐに”あれ”を思い出すはずだ。 ”あれ”の主要登場人物のひとりも、自分のことをデブで醜いと思い込んでいたではないか。 推理小説なのでタイトルは伏せるが、”あれ”は1999年の作品。 現在まで版を重ね、映画化もなされた、有名な作品である。 先行する有名な作品があるからこそ、特にそこを掘り下げる必要はないと作者は判断したのであろうし、実際、必要ないと思う。 | ||||
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ガチガチのコロンボ・スタイルで始まるが、第1話のフォーマットのうち、第2話では「被害者はほとんど落ち度なし」を、第3話では「犯人はいけ好かないセレブ」を、という風に1個ずつ放棄していく面白い構成になっている。第3話の鮮やかな論理パズルが白眉で、番外編めいてしまった第4話も鈴木刑事の描写が伏線になるユニークさで楽しめた。 | ||||
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福家警部補シリーズが好きだったので、倒叙ものということで期待して読みました。 1作目、2作目は犯人と探偵のやり取りがスリリングで、2作目はトリックも見事で、すごくよかったです。 ネタバレになりそうなので詳しく書けませんが、3作目は、●●●●を離れた場所から使っている限り、アリバイづくりが成立していないような気がしました。 4作目は作者さんらしいツイストで、トリックもシンプルながら納得できました。 探偵役は「死神」という造形描写ほど変人というわけでもなく、非常に理知的で、そこがキャラクターとしての弱さにつながりそうな気もしましたが、ミステリー小説は推理を楽しむものだと思うので、このくらい抑え気味のほうがストーリーを邪魔していなくて、好感が持てました。 (あらすじとは関係ない、キャラクターのどうでもいい言動だけでページが増えているものもあるので…) 次作も読みたくなりました。シリーズ化に期待しています。 | ||||
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ユーモアミステリーのイメージが強くなっている倉知氏だが、本来は直球の本格推理にその力量が最も出る作家であるが、その氏の初の倒叙ものミステリー短編集である。 4編収録で、いずれも読みやすい分かり易い文章で、王道の倒叙スタイルを展開しており、標準以上の出来で、かなり小説としては楽しめる。 | ||||
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ミステリーズ!に連載された60頁から120頁程度の全4編の作品集。物語は主に犯人視点で語られ、刑事が事件を追及していくという倒叙がメインテーマのミステリーです。 その分野のミステリーの醍醐味の一つといえば、犯人と探偵とのヒリヒリする心理戦ですが、その意味では探偵役の“死神”こと乙姫警部は犯人を追い詰めていくキャラにピッタリだと思います。一方、対戦相手としては、表題作の「皇帝と拳銃と」の皇帝や「恋人たちの汀」の演出家の犯人像は傲慢で自信家で良く出来ています。 「吊られた男と語らぬ女」は他作とは少しテイストが違いますが、いずれの作品も真相解明へのロジックも丁寧に構築されていて、筆者らしく緊迫感は弱めながらも、倒叙ミステリーを楽しめる作品です。 | ||||
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