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密会



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【この小説が収録されている参考書籍】
密会 (新潮文庫)

密会の評価: 3.94/5点 レビュー 18件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.94pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全13件 1~13 1/1ページ
No.13:
(5pt)

エロスとバイオレンス

筒井康隆がこの小説を評して「西村寿行の100倍面白い」(『みだれうち瀆書ノート』)と絶賛していましたが、賛成です。現代社会におけるエロスとバイオレンスを見事にデフォルメして描いて成功しています。
密会 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:密会 (新潮文庫)より
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No.12:
(4pt)

おぞましい世界の果て

身体が綿になる母親、骨が溶ける少女。展示している綿になった母親を抱きしめて泣く少女。骨が溶けて、身体がグニャグニャになった少女を抱きしめる主人公。奇怪な夢の様な描写。
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No.11:
(5pt)

複雑な展開を巧みな構成で描く、超知的な作品

安部文学特有の精神医学的な考察が作品の随所に表れていて、難解でありながら読み手を惹きつける魅力を持っている。この小説の主人公『僕』は、ある朝突然救急車の到来によって、自分の妻を知らない病院へ運ばれていく。その病院は半分地下に埋もれた、ハチの巣のような構造で、迷路のような通路を必死の思いで抜けたところが、実は袋小路だったという、土壇場の閉塞感も彼の小説の常套手段だ。病院のいたるところに取り付けられた盗聴器、と言うかその町の地区自体が一種の精神病院であるとも考えられる。『僕』は妻が病院内のオルガスム・コンクール優勝候補者になっていることを目撃するが、最後まで彼女が自分の妻であるか確信が持てない。もしかしたら総てが夢の中の出来事なのかもしれない。

安部氏は自分の見た夢を事細かに記録し、分析する習慣があった。そうした夢の巧妙なつなぎ合わせにも見える作品だ。病院の院長は一回も姿を現さず、副院長のドールと化した娘は、全身が綿になって死んだ母を慕いながらも、自身は全身がゼリーのように溶けていく不治の病にかかっている。始めは自分だけが正常な感覚を持っていると信じていたが、殆ど粘土になった状態の娘を抱きながら『僕』は患者であることを告白せざるを得ない。性は人間の活動の根本をなすという考えは、決して否定できるものではないだろう。それを認めたがらない部分と、なし崩し的に没入する境界線で、主人公の苦悩がある。

この小説は決して時系列的に書かれていない。読者はかなり後になってから、前の部分に戻るか、記憶を辿ることを強制される。そうした迂回はあらかじめ安部氏が想定して構成した作品なのだが、このあたりにも巧妙な精神医学的手法が使われている。
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No.10:
(4pt)

色々思いましたが

寄せ付けずにいきるか、受け入れながら生きるか??多分後者の方がずっと人にも沢山の事にも優しくなれる気がします。何度か読んだらまた新しい考えが浮かぶかもしれません。面白かったです。
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No.9:
(5pt)

希望のなさに希望を見るよりない

安部公房は常に、社会からはみ出してしまった者や弱者にフォーカスし、そういった者達の「他者との通路の探検と、その通路の回復はありえるのか」を一貫したテーマとしてきた。その材料となっているのは、例えばホームレスであったり、生徒と関係し自殺した中学教師であったりする。

「弱者への愛には、いつも殺意が込められている」

こんなエピグラフから始まるこの作品は、安部の集大成といってもいい程に、欠陥のある者や弱者で溢れている。
溶骨症の少女は明確にそれと分かるが、一見強者に見える女秘書は「人間関係神経症」であり、内部に他者を喪失した、愛に飢えた弱者である。副医院長でさえも、ことセックスに於いては弱者となってしまう。弱者同士が織り成す地獄のパレードといったところか。
「燃えつきた地図」のラストシーンでは、安部は「敢えて希望も絶望も語らなかった」としているが、この作品のラストシーンはあまりに絶望的で、悲愴感に満ちている。
常に弱者にフォーカスし、そこに一筋の光を模索してきた安部がこの作品と共に出した答えの一つは
「今の社会で弱者に希望はないが、その希望のなさに希望をみるよりない」ということだった。
因みに安部は、後にこの作品を自分で読み返してみて「ぞっとした」と語っている。

この作品の発表から40年ほど経った今はどうだろうか。
私は、エピグラフの「弱者への愛には、いつも殺意が込められている」のページを開く度に、どうしても「相模原やまゆり園」の事件を思い出してしまう。
社会の中に弱者をどこまで包含していくかが進歩に繋がり、これを短絡してしまうと全体主義になる可能性があると安部は指摘していたが、この事件に対する世間の反応の一部には、まさに安部が言った通り、全体主義の種が隠れていたように思う。
安部文学の持つ普遍性は、現在、そして未来に於いてもその輝きを失うことはないだろう。

最後に、この作品をもっと深く読み解きたいという人には、彼のエッセイ「都市への回路」を一緒に読む事をおすすめします。「密会」についての補足的な記述があります。
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No.8:
(5pt)

おもしろい

きれいな状態の本を入手できてよかったです。
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No.7:
(5pt)

明日の傑作

安部公房の作品の中で、あまり注目されることなく、評価も高くない作品だと思われる。しかし、『砂の女』『他人の顔』など国際的にも評価の高かった作品からは、確かに今なお傑作ではあるものの、当時の社会状況や思想的流行の制約がしばしば透けて見えてしまうのに対し、この『密会』は、その抽象性と乾いた笑いの感覚によって、未だに純粋な現代性あるいは未来性を保ち続ける稀有な作品となっているように見える。
この頃のインタビューの中で安部は、ヌーヴォー・ロマンやアメリカのポストモダニズム文学の一部に共鳴しつつも、同時にこれらの潮流が、読者にあまりに不毛な体験を強いるのではないかと懸念しているように見える。あくまで前衛であり続け、かつ日本文学ではなく「世界文学」を志向した作家が同時代の最先端の文学への共感と違和感を込めて書いた一つの答えがこの作品なのではないか。
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No.6:
(4pt)

買いです。

ラテンアメリカ文学の気鋭の翻訳家、寺尾隆吉氏の著作で激賞されていたので、実家の書庫から引っ張り出してきました。いつ読んだのか記憶が曖昧ではあるのですが、それもまたこの作品の読み方に相応しいように思いました。
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4101121176
No.5:
(4pt)

山口果林って こんな私生活があったんだと

今 TV画面から遠ざかっていますが また画面上で 会いたくなりました 正直に生きて来たんだと思います 奥様の立場で読むとまた 違う
感想になると思います
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No.4:
(4pt)

悲壮的な作品...

久々に読んだ安部公房であるが、正直非常に困惑した。
救急車で連れ去られた妻を捜しに病院へ行き、異常な病院関係者と入院中の体の不自由な少女との間で繰り広げられる物語である。
本書では、あがいても結局は同じところをぐるぐる回っている閉塞感を描いているような気がする。これは我々の生活でも同様であり、読者に対して現実を再認識させようとしているのではないだろうか。そういう意味では、非常に現実的で悲壮的な作品と思う。
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No.3:
(4pt)

数学的な面白さ

安部公房の小説は時間をかけて念入りに創られた模型のようだ。随所に仕掛けが組み込まれていて気がつくと夢中で頁を繰っている。数字的な理論的な幾何学的な面白さがあり、このような物語を書くことができる小説家は彼の他には存在しない。
私はこの小説も最後まで読んでからまた最初から読みたくなった。
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No.2:
(5pt)

晩年の安部氏の怪作、泣いてもいいじゃない

とうとう『密会』も三度読了。
安部氏を尊敬する読者のたわごとですが、許してください。
以下、ちょっとしたパラメーターとして。

一度目は、性的なうねりの強度に、鑑賞の力点。「娘」が愛しい。
二度目は、その構造、キャラの絡み合いに驚愕。この話、一切無駄がないじゃない。目頭があつくなる。
*しかし、上述の読み方は安部氏の世界を神格化してるだけだったりする。

三度目は、やっとそこから離れられる、こと多し。(個人差があると思いますが)

レビュー:あらためて、密度のある小説だとうなりました。三度目の読みは、もはやレビュー向きではないので、二度目の感想メインでいうと、この話で泣くひと、けっこういるはず。しかし「時間のモザイク」のなかに閉じ込められて、立ち上がれなくなってしまう人もいるかもしれません。晩年の作品ということもあり、よくも悪くも手だれた構成になってます。

この『密会』の小説空間では、もともと有限の空間であるはずの「病院」が「世界規模」にふくれあがって行く反面、主人公の精神世界は、どんどん「娘」とともに収縮していき、「ある地点」に限りなく、、、といった永遠に閉じようのない密度がある。これ以上盛り上がってしゃべっちゃうとネタばれの度が過ぎるので、うん、やめます。

*ネタばれされても読み尽くせる小説は、安部公房さんよりお求めください。
密会と併せて読むのは、『箱男』などおすすめです。メビウスの帯のような表裏一体のつながりがあるようなのです。
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No.1:
(5pt)

墜落のイメージ

これは、人間社会のシンボルである「病院」を舞台にした小説である。
神話的構造、バロック的表現が特徴的であり、そのディテールは、他の追随を許さない。 此処に描かれている肥大した性的描写も全て、人間社会に普遍的に潜む、人間関係の構造の問題を照射する光に他ならない。
これを読むと、人間とは本来からして、「健康」という概念を放棄した「患者的存在」であり、「医者」とはそこから派生した概念であることに気付く。
そして、これは、副院長のスローガンである「良き医者は良き患者である」から確信へと変わる。
また、それは、彼の哲学、「人間の歴史は逆進化の歴史」であり、「怪物というのは偉大な弱者の化身」という箇所からも窺える。
読了後は、もはや、我々人類には「退院」という救いはないのだという絶望に襲われることになるだろう。
良くて「快癒をねがうよき患者」といったところだ。
まさに地獄のユートピアであり、ユートピアの地獄でもある。
また、別な観点から論ずれば、病院の最高権威者であり、なおかつ最高責任者でもある、〈神〉の化身とも言うべき院長の不在…。
まるで、神が、人間が言語という禁断の果実を手に入れたことで性に目覚めたが故に、この世界を見放したかのような印象を受ける。
後はただ、人間の根源的な欲望であるピンク色の性欲がそのまま剥き出しの状態で開かれる祭典が、待つのみである。
此処には、明らかに人間の原罪が、あまりにも強烈に描かれているとも言える。
だが、あきらめてはいけない。
安部の言うように「絶望も認識である以上、希望の一形式」なのである。
故に、「絶望する能力に希望を託す」しかないだろう。
それにしても、やはりと驚嘆せざるを得ないのは、安部の作品は、私たちの刻一刻と変わる意識や認識によって、如何ようにも読めるということである。
私にとっては、バイブルといっても過言ではない一冊だ。
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