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比ぶ者なき
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比ぶ者なきの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.15pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全41件 41~41 3/3ページ
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私は天皇制度(摂関制度)を考案した鎌足及びそれを僅か一代で実現した不比等を、日本史上最高の天才父子政治家コンビと考えている(旧華族を見れば両者が描いた設計図は約1300年後の現代まで続いている)ので、ハードボイルド作家の作者が不比等をどう描くのか読む前からワクワクしていた。また、不比等については、黒岩重吾氏が「天風の彩王」で描いているので、それとの比較も楽しみだった。 まず、<天孫降臨神話>が、<天(祖母)=持統>から<孫=文武>への(不自然な)皇位継承を正当化するための手段だった(作者は<持統>を初代天皇と考えているらしい)事を筆頭に、当時の不比等の基本的フレームワークが懇切丁寧に優しく綴られてる点には少々驚いた。誌的かつ平明な筆致で、不比等の智略・深謀遠慮を巧みに浮き彫りにした秀作である。"らしくない"筆致ではあるが、作者のハードボイルド魂は不比等及び<持統>の胸中に込められている様に映った。協力者同士でありながら、最大のライバルでもあったこの二人の(心理)闘争は凄まじく、充分堪能出来た。また、柿本人麻呂を再三登場させたり、<聖徳太子>虚構説を上手く物語に織り込んだりする等、サービス精神も旺盛である。 以下は気になった点を。私は天智と天武には血の繋がりはなく、古代には<天智朝>と<天武朝>(一代で終わったが)が存在したと考えている(<天武>は簒奪者)。<持統>が<文武>の皇位継承に拘ったのは、<孫>可愛さもあったろうが、天皇の血筋を<天智系>へと戻す強固な意志によるためだったと想像するに難くない。その意味において、不比等を主人公にしている以上やむを得ない面もあるが、「<天智系>vs<天武系>」の"血の闘い"(これこそハードボイルド向けだったのでは?)が前面に出ず、<天武>及び鎌足が粗略に扱われている点には少々不満を覚えた。しかし、作者が初めて挑んだ歴史小説としては、題材の良さも相まって、中々の出来だと思った。長屋王との対決を含め、これからも"血の闘い"は続くので、ハードボイルド味を活かした続編を期待したい。 | ||||
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