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(短編集)
倒叙の四季 破られたトリック
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倒叙の四季 破られたトリックの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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非常に凝った体裁の倒叙ミステリ。「枕草子」よろしく<春は縊殺>、<夏は溺殺>、<秋は刺殺>、<冬は中毒殺>という四季に合わせた4つの殺人を、完全犯罪を目論む犯人の視点で描くという作者らしいチャレンジングな作品。全ての犯人がネットで見つけた<完全犯罪完全指南>と言うマニュアルに従って殺人を犯すという設定も捻りが利いている。犯人は身近な人物を殺す(即ち、必ず容疑者として疑われる)のだが、<完全犯罪完全指南>から示唆された犯人が「"心証"は真っ黒でも"物証"さえ無ければ大丈夫」と考える辺り、"物証"主義の警察・検察への大いなる皮肉となっている。私はラストで<完全犯罪完全指南>の意外な製作者が暴露されると予想していたが...。また、本作は名探偵が状況証拠だけで犯人を名指しすると、犯人が自白してしまうといったル-ティンな本格ミステリ(?)を揶揄している様だ。なお、本作には捜査一課の海埜警部補という各事件を解決する警察側のシリーズ刑事が登場する(海埜の推理はバリバリの本格ミステリ風で、この対比も諧謔味に富んでいる)。 <完全犯罪完全指南>の内容は手口・統計的数字・法医学的知識・成分分析などが"微に入り細に入り"に詰まっていて、作者の事前調査の深さが窺える。また、各事件において、"物証"の無さに自信を持っている犯人が、見逃した"物証"によって逮捕されるという点も皮肉が利いている(個人的には犯人の計画が完全犯罪とは程遠い杜撰さ(盲点)を併せ持っている例が散見される様な気もしたが、その盲点を突かれて窮地に陥って行く犯人の心理過程がサスペンス性豊かに描かれるのも一人称ならでは)。どの短編(?)も秀逸だが、特に動機こそ単純だが、被害者の戦争への思いが独特の雰囲気を醸し出している<秋>が印象に残った。 そして、エピローグで明かされる<完全犯罪完全指南>の製作者はやはり意外性があった(私は海埜その人だと予想していたので"当たらずと雖も遠からず"だったが)。多彩な皮肉・諧謔味を込めながら、「枕草子」をなぞっているという非常に凝った体裁の秀逸な倒叙ミステリだと思った。 | ||||
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初めて作者の作品を読んだ。それからいくつか長編を読んでみたが、蘊蓄部分が長すぎる(そこが良いと言う人もいるだろう)と感じているが、これは短編だけに、スッキリしていて良かった。 | ||||
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新潮でレビューされてたので読みました。 文章が圧倒的に読みやすい! なんだこれ! 疲れた脳でもサクサク読めて状況が理解できます。 犯罪トリックとミステリー部分には文句ないです。 完全犯罪って難しい!! ただ、ちょっぴり不満を言うと、 倒叙ミステリの醍醐味は、犯人への感情移入と、犯行時のアクシデント対応の緊張感、追い詰められる時の「どこでミスったっけ?」という焦りだと思うのですが、短編集故にそこが少しアッサリめかも。 やむを得ないとはいえ。 あと、トリックの破綻が、犯人に敗北感を与えるのに十分ですが、公判廷で有罪認定するには苦しい。 自白しなきゃ全員無罪感あるんですが。これもミステリーはみんなそうなのでしゃーないか。 でも十分楽しめたし続編期待で5点とします。 | ||||
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情報の厚みが物語に説得力を与えている。 勉強熱心な犯人の割に、おまぬけなところもあるけど、同じフォーマットで、ぜひもう何作か書いてほしい。 気に入りました。 | ||||
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本作品の著者は、2007年に「ウルチモ・トルッコ」(のちに「最後のトリック」と改題)で、メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。 この作品は、「読者が犯人」という究極の意外な犯人に挑んだ意欲作でした。 その後は、「芸術探偵」が登場する長編シリーズを発表し、「芸術」と「本格ミステリ」の融合という新趣向により、読者を楽しませてきました。 さらに、2016年には、「ミステリー・アリーナ」で、「多重解決もの」に挑戦、新機軸により、高い評価を得ています。 そんな著者が、本作品で挑戦したのは、「倒叙ミステリ」。 犯人が分かっている設定で、その人物がどのように、捜査陣に追いつめられていくのか、という趣向で成り立っているミステリの分野です。 本作品では、次の4編が収録されています。 1. 春は縊殺 やうやう白くなりゆく顔いろ 2. 夏は溺殺 月の頃はさらなり 3. 秋は刺殺 夕日のさして血の端いと近こうなりたるに 4. 冬は氷密室で中毒殺 雪の降りたるは言ふべきにもあらず 四つの季節に起きた四つの殺人事件。 犯人たちは、完全犯罪をもくろみ、用意周到に犯行に及ぶが、思いがけない、見落としがあって…という展開です。 いずれの作品にも、その致命的なミスに工夫が凝らされていて楽しむことができました。 4作品とも、優れた作品ですが、敢えて言えば、4.が最も印象深いと言えます。 一般的な倒叙ものの面白さに加え、密室トリックについては、最後まで手法が伏せられているので、不可能犯罪好きには、たまらない面白さがあります。 また、物語全体にもある趣向が凝らされていて、特に著者の諸作を読んでいる方は、思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか。 そして、この4編の後に加えられた「エピローグ」にも注目です。 4作品は、それぞれ独立した短編として楽しむことができるのですが、ある共通した謎があり、それが、どのように展開するのかが、ここで明らかになります。 全体として、優秀な本格ミステリと評価できる作品と感じました。 この次は、どんな趣向で、読者を楽しませてくれるのか、今から楽しみにしています。 | ||||
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それなりに味はある、面白い、音楽評論家についての話は結構参考になった、本の帯も同様かな、何の話か気になったら読んでみることだね。 | ||||
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倒叙物を書かせても、さすがは深水 黎一郎です。練った文章、緻密な構成、深い知識があいまって、殺人方法の異なる短編集を一気に読ませます。キーとなる犯人のミスもよく考えられています。さらに、冬の第4作からエピソードに至る仕掛けの驚きは、ファンだけでなく初めての読者も愉しませてくれることでしょう。ちょっとレベルが下がり気味の講談社ノベルスを盛り上げる快作と評価します。 | ||||
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ミステリーアリーナで本格ミステリベストワンを獲得した深水氏による久しぶりの講談社ノベルスからの作品。メフィスト賞受賞作のデビュー作やその後の芸術探偵シリーズ以来となる待望の作品だ。 今回は4編の短編で著者初の倒叙形式となっている。 この形式はある程度パターンが決まってきて展開も地味になりがちだが、4編とも専門的な知識がよく書き込まれており、倒叙形式の短編としてはかなりの出来の良さである。 本格ミステリー好きで倒叙形式が好きな人にはたまらない作品集である。 更に、講談社ノベルスからということで、以前の芸術探偵シリーズともリンクしており、初期からの著者のファンには嬉しい趣向と言えるだろう。 | ||||
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