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橋を渡る



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【この小説が収録されている参考書籍】
橋を渡る

橋を渡るの評価: 3.00/5点 レビュー 34件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全16件 1~16 1/1ページ
No.16:
(4pt)

壮大なお話し

別々の3つの物語が、最終話の70年後の未来で一つにつながるという(著者にしては)珍しい展開の作品。

ちょっとだけ波乱ありの日常が描かれるのだが、一体どこへ連れていかれるか分からず最終話でテンション下がり気味。

しかしながら、終盤にかけて盛り返してくる。SF作家ではないので、そこは多めにみなければならない。

2014年の「東京都議会のセクハラやじ問題」が、さらりと触れているのだが、これは吉田修一流の抗議の表れ?それとも、2014年という時代の一コマを切り取って見せただけだろうか。確かにおっ!とはなるね。
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4163904255
No.15:
(4pt)

異物を飲み込むような感触が残る

4篇から成る群像劇だ。
前半は何気ない日常が描かれているようで、少しずつ違和感が募る。
後半は、21世紀末の未来だったりするが、やはり異物を飲み込むような感触が残る。
群像劇たるゆえんは、この4篇、ストーリーがどこかで交錯しているからだ。
そして、読後感は不気味というか・・・。
この作者には超絶に不気味な群像劇たる『パレード』という怪作もあった。
本作は、そこまでではないが、でもガッカリはさせない。
そういえば、群像劇というジャンルは吉田修一と奥田英朗が秀逸で他の追随を許さない境地にあるような気がする。
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No.14:
(4pt)

近未来の設定が現実的

非常に良い。未来への関心を指標された感、佐藤優氏の推薦があったから購入したのですが、その事には満足してます。この作家への評価を増す事になった。最近の推理は、いかにも気を衒う、其れも過剰過ぎるほどの小説やドラマが多いが、この作品は十分計算された設定と納得の結論で感心した次第。
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No.13:
(4pt)

本の状態

全てに於いて良好でした。
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No.12:
(5pt)

考えることをしなくなった大衆へのカウンターパンチ。

私たちが便利を求める根底には、「考えたくない」「働きたくない」「人に迷惑をかけたくない」「我慢したくない」「苦労したくない」という思いがある。ロボットであれAIであれクローン技術であれ、科学技術の発展はそれらの克服のためにあるといってもいいだろう。しかし、その結末は・・・本書を読むのが一番いい。

この小説は、大衆にわかりやすいように書かれた「デストピア小説」である。同じくデストピア小説の古典であり、名作のジョージオーウェル「1984年」、ハクスリー「すばらしき新世界」、小松左京「復活の日」などを読んでも、何のことだかさっぱり理解できない人たちに、どうすれば便利に飼いならされた近未来の大衆の姿をわかりやすく表現できるか、伝えることができるか、吉田修一が考えた末の作品であろう。

その意味でもこの作品のわかりやすいことといったらこれ以上のものはない。色んな人のレビューや巻末の阿部公彦氏の解説、裏書等を読まずに素直に物語に浸ってほしい。考えることをしなくなった大衆への吉田修一からのカウンターパンチ作品である。
だれもが似たようなことを考えている時は、だれも考えていない時なのだから・・・。
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No.11:
(4pt)

ジョージオーウェルの1984を連想させる怖さ

最初の三章は何という事もない平穏な日常の中に、ほんの少しあれ?という違和感、それが章を追う毎に少しずつ大きくなっていくがそのまま物語は現代の中で進行して行く。4章になって突然成長したその違和感に征服された70年後の世界が出現する。ジョージオーウェルの1984は集団主義に征服された恐ろしい世界であるがこちらはips細胞からとんでもない方に進行してしまった世界。人間とサインという人間から作られた被差別劣等人間が共存している未来。在りうる未来。怖い小説でした。
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No.10:
(4pt)

テーマは格差と恋愛。思わぬ形で加速する物語

吉田修一『橋を渡る』は形容しがたい不思議な小説だ。2014年の事件や風俗を固有名詞を変えずにそのまま取り込み、まずはその時代感をたっぷりと披露する。7割超が現在の生活に満足している一方、6割超が将来への不安を抱いているこの時代の、ぞわぞわした空気がよく伝わってくる。その後、小説は思わぬ形で加速し、その感触はまるで小松左京のデビュー作「地には平和を」、漫画にしたら萩尾望都。

最大のテーマは格差である。2014年に注目を集めたトマ・ピケティ『21世紀の資本』やそれに惹き起こされたイメージが全編を覆う。これだけ固有名詞だらけの小説にピケティも『21世紀の資本』もまったく登場しないが、吉田修一は見えにくく微妙な日本の格差、階層について繊細な描写を重ねていく。たとえば1章の主人公であるビール会社の営業マンは、画廊経営者である妻と都心の一等地に一戸建てを構えているが、彼自身は地方の母子家庭の出身で、母親から「体じゃなくて、頭を使って働く人になりなさい」といわれて育ったから、裕福な妻の一族に引け目を感じている。点景として、上流に属するらしい老婦人が中国人「研修生」の非礼ぶりを(雇用主のスーパー店長に向けて)猛烈になじる場面が出てくるが、この種の格差、階級意識はほぼすべてのエピソードで踏襲される。

以下、少々ネタバレなので注意願います。

小説の中に一点だけ図版が使われている。「現代の奴隷問題」というタイトル。2章めに登場する政治家夫人がワークショップに参加した際の教材、ということになっている。合法ではない現代の奴隷は、合法的で貴重な商品だった過去の奴隷に比べて、意外なことに「激安」で「使い捨て」であるという。奴隷はもちろん格差の最下層(ロボットを除く)だが、奴隷に相当する人物が物語に登場するのは4章め、70年後の世界に入ってから。クローンに近い技術で産みだされた「サイン」たちである。

従順な性格を持つサインは男女ともに「人間」の結婚相手として重宝され、わがままな人間は活発な婚外恋愛を楽しんでいる。実は『橋を渡る』のもう一つの大きなテーマは、結婚制度や恋愛のありかただ。全編を通して、結婚生活で主ではなく従の立場にある夫または妻が苦しむさまが描かれる。ひとつのスマートな解法のように見える70年後の結婚制度も、やはりサイン(=奴隷)にとっては負担であり苦行であることがわかってしまう。

武器輸出解禁などのトピックも出てくることから、2014年当時の政権批判である、と読みたがる人はいるだろう。しかしこの時代に生きる人たちの選択によってもたらされるはずの70年後の世界は、とある登場人物の言葉によれば、ユートピアでもなくディストピアでもない。「熱くもない、ぬるくもない、そんなお湯につかっているみたいな未来」。だから作者は「現在の政権を放っておいたら、とんでもないディストピアが来るぞ」というような幼稚なおとぎ話を語っているわけではない。

ぬるま湯につかったような閉塞感。これこそが、今の日本社会の特徴である。幸せともいえるが、不安ともいえる。「いまなら、未来は変えられる」と本書の帯はあおるが、劇的に変える手法はなく、劇的に変えればユートピアよりもディストピアのほうに近づくだろう。そんな現実をクールに見つめているのが作者吉田修一であり、だからこそ彼は信頼できる書き手なのだと改めて思う。

とはいえ、物語の最後に主人公たちが「変える」ところがある。それは理由のわからない目の前の出来事を「凶兆」ととらえず、「吉兆」ととらえるようになることだ。考え方次第で気持ちは上向き、運は開ける。それに気付かせてくれるのは、子供のない夫婦が自宅に下宿させている高校生の甥っ子だ。ここに一筋だけ、光が射している。
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No.9:
(5pt)

クロスカウンターを喰らった

吉田修一 著『橋を渡る』(文藝春秋刊) を読んだ。読み進めながら、これは、すごい純文学にぶち当たってしまったもんだな、と僕は驚嘆した。

 吉田修一さんの作品を読むのは久しぶりで、15年ほど前に2作品ほど読んだのを最後に、その後1作品も読むことなく今日に至っていた。その頃の吉田作品への僕の評価は、書き手としての確かなる才能を認めながらも、その一方で「なかなかパンチの効かない小説だなぁ」との思いもあった。しかし、それは純文学作品では往々にしてあることで、そこに過度のメリハリや面白味など、物語性を求めることには無理があるし、物語性を求めれば純文学の本質を逸脱する要因となりかねないことも僕には分かっていた。ある意味これは、むべなることかな、と考えた。
 だが、今回ひさかたぶりに手にした吉田修一作品は大きくその様相を異にしていた。全400ページ余りの最初の40ページを過ぎたあたりから、俄然面白くなってきたのだ。そのうち読み進めることが勿体無いと感じるほどに、超一級のエンタメ小説を読んでいるような錯覚に陥った。それでいて、この作品はまごう事なき純文学の一線を保っていることも確信した。最後には、この作品がパンチの効かない小説どころか、自分をKOしてしまうほどの破壊力を持つ作品であることを思い知らされることになる。読了後、僕はクロスカウンターを食らったままマットに沈んむボクサーのように、驚きと心地よさが交じった感覚の中で呆然としていた。
 僕は思った。まさに完璧に近い作品だったな、と。僕が吉田さんの作品から遠ざかっていた15年間は長い。その長い15年間を吉田さんは懸命に修練を積まれて来たのだろう。かつて、「なかなかパンチの効かない小説だなぁ」と自分の本意ではないにしろ、どこか嘲笑じみた表現で貴作品を語った僕を、その計算し尽くされたメガトン級のパンチで眠らせるために・・・。
 吉田修一さん、ありがとうございました。貴方には本気で驚かされました。素晴らしい純文学だった、と思います。今更ながらに文学の奥深さを痛感させられました。
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No.8:
(4pt)

ところどころほころびのある方が現実的なのか

芥川賞受賞のころの作風に戻った感じ。あの頃吉田は、どこか一筋縄ではいかない小説を書いていた。良識ある読者の求める「小説」から、一つだけへそ曲がりな仕掛けを仕込むところがあった。今回、その頃のことを思い出した。
 今どうしようもないとしてあきらめていることが、本当にどうしようもないことにつながっていく。もうそうにしかならない。
 この小説は希望につながる何かを描いたものか?私には、絶望を肯定した底意地悪い作品に思える。
 缶詰の伏線が、どうにもわからない。
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No.7:
(5pt)

著者の創造力に感服

春、夏、秋と描かれた一見関係のない話が、冬でどうつながっていくのか楽しみに読んだのだが、まさかの展開、まさかのつながり方で最後まで目が離せなかった。

生殖医療の研究という話から、ここまで話を広げる著者の創造力は素晴らしいと思った。

1つ1つの話の中でも主人公のモヤモヤした気持ちが伝わってきて、その後どうなったのだろうと思っていたが、エピローグまでしっかりと楽しめた。
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No.6:
(5pt)

最後の展開に驚きました

一見無関係な複数の話が、最後にどこかでまとまるのだろうとは思ってましたが、まさかこんな形でまとまるとは思ってもみませんでした。
一つ一つのエピソードも、日常の中にちょっとした違和感を挟みつつ、全体的には静かに進行していくのですが、それぞれちゃんと読ませてもらえるので、最後の驚きの展開が生きてくるのでしょう。
こんな話も書けるんですね。著者の作品としては横道世之介や産業スパイものが好きですが、それともまた違うテイストながら(ちょっと似てるかもですが)読ませる実力はさすがだと思いました。
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No.5:
(5pt)

まさかの感動と勇気をもらいました!

ある意味、吉田修一の作品の中で一番好きかもしれません。
元々、彼の作品の"何人か主人公を描き、読み進めていくうちに段々とそのつながりがわかってくる"という書き方が好きでファンになったので、原点回帰をこの作品でしてくれたのは嬉しい限りでした。みなさんにお願いしたいのは、とにかく最後まで読んで欲しいということです。そうすれば、私のタイトルの意味もわかると思います!
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No.4:
(5pt)

今なら間に合うのか?

ザワザワと足元からからみとられていくような、この先 生きていてもいいことがあるのだろうかといういいしれぬ不安に襲われるような、何とも恐い小説だった。そして我が身を振り返る、今なら間に合うのか…そのフレーズが核であろうか
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No.3:
(4pt)

帯にある通り、一気読みで、真夜中三時過ぎ読み終えた。吉田修一氏の力を感じた。

この題名はどんな意味を持つのだろうか。
この「橋」は、どの「橋」なんだろう。
渡るとは、どこからどこに渡るのだろう。

正義はすべてにまさるのか。
事実を事実ではなくすことは簡単だ。
黙っていること。
知らなかったふりをすること。
気づかないふりをすること。
科学の進歩は幸福に結びつくのか。

現代のニュースを織り込み綴られている春、夏、秋の項。
急展開の冬の項。とても考えさせられた。
そして、エピローグ。

とにかくひきこまれた。作家の力と思いを感じた。
一気読みで、真夜中読み切った。

この本を映画化とかドラマ化とかするのは、難しいだろうなあと思った。
もう一度、じっくり読みます。
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No.2:
(5pt)

それにしても、酒と米、カニ缶と白桃缶は一旦全体何処から来たのか・・・

本書については、何を述べてもネタバレになりそうなのでよしますが、昼過ぎから読み始めて、たった今読み終わりました。309頁から一気呵成に物語が動き始め、吉田修一流の見事な逃亡劇、そして「橋」を渡ることの含意に驚愕し吹っ飛びました。物語構成の秀逸さが、人それぞれに懸命にそして自由に生きることの賛歌を演出して見事。

登場人物が多いので、最終章では前の部分を読み返しながら、人物関係図を作りつつ味読しました。評者にとっては、間違いなく2016年前半の収穫作の一でした。
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No.1:
(5pt)

あの時に変えれば良かったと誰でも思う。でも今変えようとはしない・・・。

えええっ!というまさかの展開に間違いなく驚くことでしょう。
 本書は「春ー明良」「夏ー篤子」「秋ー謙一郎」「そして冬」の4部プラス「エピローグ」との構成となっており、第3部まではこれまでの吉田修一らしい物語なのですが、第4部で思わず「なんじゃこりゃあっ!」と叫ばずにはいられないような、吉田修一の新境地ともいうべき場面展開を見せます。
 吉田修一の過去の作品にも、個々の章で主役がかわり、それぞれが短編小説のように展開した後、最終章でそれらの物語がつながり一つの長編群像ドラマになるという作品(たとえば「パレード」)はありましたが、本書のようにぶっ飛んだ展開をみせる作品は珍しいのではないでしょうか。
 本書の帯には「新次元の群像ドラマ、ここに誕生」とありますが、なるほどそのとおりかもしれません。
 というわけで、この驚きを味わうためにはできるだけ前知識なしで読んでいただいた方がいいかと思いますので、詳しい内容については触れずにさわりだけを。

 「春ー明良」はビール会社の営業課長新宮明良が主人公。
 明良の妻歩美は美術ギャラリーを持っている。
 二人の家には学生で甥の孝太郎が居候している。
 そこに画家志望のしつこい青年が現れたり、玄関前に誰がおいたか分からない日本酒と米が見つかったりと、次第に不穏な雰囲気が・・・。
 歩美は言う。「人間ってさ、自分が間違っていると気づいたとき、すぐにそれを認めて謝るより、どうやったら自分が間違っていなかったことになるか、どうやったら自分が正しいことになるかって考えるところない?」

 「夏ー篤子」では都議会議員の妻赤岩篤子が主人公。
 東京都議会で女性議員に対し「早く結婚しろ」「子供を産めないのか」という現実にあったセクハラヤジ問題を物語にうまくとりこんだ内容です。
 篤子が独り言を言ったり週刊文春本社にクレーム電話をかける場面などは「愛に乱暴」の主人公を彷彿させ、思わず笑ってしまう章でもあります。
 そんな篤子が買い物をしたものの中に、なぜか買った覚えのないものが混ざっていて・・・。

 「秋ー謙一郎」は結婚間近のフィアンセがいるテレビ局のディレクター里見謙一郎が主人公。
 香港の雨傘革命を取材したり、ノーベル平和賞を受賞したマララさんの「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、そして一本のペンでも、世界は変えられる」との有名なスピーチを引用するなど、本章でも現実世界における時事問題がうまく生かされています。
 この章は前2章とは違った意外な展開をみせます。

 そして第4部の「そして冬」。
 凄いです・・・。
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