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知りすぎた男 ホーン・フィッシャーの事件簿



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知りすぎた男 ホーン・フィッシャーの事件簿の評価: 3.00/5点 レビュー 8件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(4pt)

「つかまえたら、もどしてやらなきゃいけません。ことに大きい魚はね」

20世紀初頭の英国を舞台にホーン・フィッシャーを探偵役とする約270ページの連作短編推理小説集。

年の割に禿げ上がったフィッシャーは温和でありながらもつかみどころのない人物である。高級官僚のフィッシャーは庶民ではなく、首相や大臣をはじめとした多数の政府関係者を親類や知人にもつ。第一篇「標的の顔」で語り手として登場する新進気鋭のジャーナリスト、ハロルド・マーチがワトスン役かと思いきやそうでもない。事件そのものには関わらず過去の出来事の聞き手を務めたり、作品によっては出番もなく、フィッシャーの行動に立ち会う傍観者に近い。

推理小説を含め一般的なエンタメ作品であれば権力者の不正を暴いて読者の溜飲をさげるといった結末は常套だ。しかし本作のフィッシャーは事件の真相を解明しながらも、その後の振る舞いは普通の名探偵と違う。第一篇「標的の顔」の登場シーンでフィッシャーが口にする比喩が体制の側にいる彼のスタンスを端的に表している。「つかまえたら、もどしてやらなきゃいけません。ことに大きい魚はね」

連作短編だが第七話ではフィッシャーの意外な過去が明かされ、後年の若さとはうらはらに老成したフィッシャーとは異なった一面がみられる。最終の第八話ではシリーズものとしての終局となるエピソードが描かれている。そのため、少なくとも第七・八話は順番通り最後に読むことをおすすめする。

各篇が濃密なミステリ小説で、サクサクというより、一篇ずつ噛みしめるように楽しんだ。ミステリの傾向としては複雑なトリックを利用するというより心理的な盲点を突くケースがほとんどである。「底なしの井戸」など、フィッシャーが真相を導き出す根拠をシンプルでありながら鮮やかで、作品のいくつかは推理小説に限らない物事の見方として参考になる気すらする。そして、ミステリでありながらフィッシャーのセリフの端々に印象的な警句や教訓が含まれていることも大きな魅力である。

「新しく来た者には一番多くのものが見えるし、その場にいる人間は多くを知りすぎて何もわからないという、あいつの考えには一理あるよ」
「人間は商売でずるをしても、趣味ではしません」
「物事は異常すぎると記憶されない場合があるものだ」
「あれが初端から引っかかっていたんだ。この事件に関係があったからじゃない。何も関係がなかったからなんだ」
「人間四十歳を過ぎると、それまで生きてきたようにして死にたいという潜在意識的な願望があるのかもしれない」
「狂気には、ほとんどつねに秩序があるんだ。秩序を持つということが人を狂わせるのさ」
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.7:
(4pt)

解説に疑問

訳に問題がある、というレビューが二つほどあるが、自分はまったくそうは感じなかった。
論創海外ミステリで出た訳とくらべると、こちらのほうがはるかに解像度があがっていて、文学的にも豊かだと感じる。訳者の南條竹則氏はひきつづき創元推理文庫でチェスタトンを出すらしい。非常に楽しみだ。願わくばちくま文庫で2冊出たままでストップしているブラウン神父のほうも進めてほしいと思う。

この短編集は他の作品よりチェスタトンの政治思想があらわに出ていて、そこが一番興味深かった。もちろんトリック・メーカーとしてのチェスタトンも健在で、「あのトリックの源流はここにあったのか!」という驚きもある。

ただ解説にはやや疑問がある。この解説者は隅の老人最後の事件を知らないのだろうか。
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.6:
(3pt)

風刺強めで、トリック控え目

ブラウン神父シリーズくらいの長さの短編こそ、チェスタトンの本領だと思う。本作は短編とはいえやや長めでシチュエーションを理解するのが面倒な印象を受けた。
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.5:
(1pt)

訳がひどい。日本語になってない。

原文で読めない我々には訳がとても大事。本書の訳は絶望的に理解困難。読めたものではない。残念。
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.4:
(1pt)

訳者は、読者第一に

作者に惹かれて購入したが、語られる舞台が20世紀初頭の英国の上流社会且つ主人公以下の登場人物の振る舞いもそれなりで、なかなか直ぐに腑に落ちない事が多い。その上、訳者がその辺の事情に精通しているのか、余り親切とは言えないようで、余り読んでいて楽しくありませんでした。
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.3:
(3pt)

フィッシャーのキャラが素敵

タイトルと表紙に惹かれて購入しました。

お世辞にも読みやすいとは言えず、ページをめくる手が止まらない、という類のミステリではありません。
というか、実は読了できてません。なので星は3つです。

開高健はシャーロックホームズには何度も読み返したく何かがあるが、アガサクリスティにはそれがない、と書いてましたが、本書は明らかに前者の類です。

フィッシャーのキャラもなんとも掴み切れない奥行きのあるかっこよさがあります。

なにより読書の楽しみである、はっとする表現に出会えます。
・誰でも暗闇でなければ何も見えないのです。
・彼は熱すぎて、冷たくしかなれなかったのである。
などなど。

この表紙に惹かれる人は買って損はないと思います。
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.2:
(4pt)

逆説に拘りながらも、大所・高所からイギリス社会の危機に関する自身の思惟を高踏的に披露した秀逸な連作短編集

「標的の顔」、「消えたプリンス」、「少年の心」、「底なしの井戸」、「塀の穴」、「釣師のこだわり」、「一家の馬鹿息子」及び「彫像の復讐」の8つの短編から構成される「知り過ぎているが故に何も知らない」男フィッシャーを主人公としたチェスタトン流の逆説に満ちた連作短編集。(国際)政治を扱っている点も本作の特徴で、チェスタトンにこの様な作品があるとは知らなかった。なお、記者のマーチが(一部だが)ワトソン役を務めている。

チェスタトンの諸作品を読んでいる方(チェスタトンの逆説に慣れている方)にとっては斬新なトリックこそないものの、散文・詩・聖書・歴史(インド統治を含む)・考古学などからのさりげない引用や言葉遊び等を多用して全体的に風刺・揶揄の雰囲気が漂っている。それでも、各編に逆説を織り込んでいる辺りはチェスタトンらしいし、何より事件を解明(解決ではない(!))したフィッシャーの態度が大人である。即ち、「フィッシャーの大人の態度=チェスタトンの老成した態度」、であって、案出した逆説をひけらかすよりも、大所・高所からイギリス社会の危機に関する自身の思惟を高踏的に披露したという印象が強い。

イギリス社会・政治への警鐘の書でありながら、伝説の場所や精霊を使ったりして、どこか牧歌的・秘蹟的である点もチェスタトンらしい。また、名門貴族たるフィッシャーの係累が次々と登場し、懊悩するフィッシャーの姿が鮮明となって行くラスト二編の構成は上手い。フィッシャーが唯の皮肉な逆説屋ではなく陰鬱な大人である理由をキチンと説明する筆力は流石の感がある。チェスタトンのファンの方には見逃せない秀逸な連作短編集だと思った。
知りすぎた男 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男 (創元推理文庫)より
4488110207
No.1:
(4pt)

少し地味ですがいぶし銀のような渋い魅力を持つ巨匠の秀作短編集です。

名探偵ブラウン神父の産みの親でイギリス文学の巨匠チェスタトンの知られざる探偵ホーン・フィッシャー物の全8編に単発作品2編を加えた秀作短編集です。本書で初のお目見えの探偵役ホーン・フィッシャーは名家の出で身内には大物政治家もいて理知的で才気溢れる人物なのですが、何故かぼんやりと冴えない風貌で得意の台詞が「私は、知りすぎているがゆえに何も知らないのだ」という諦観とも取れる苦悩を抱えて生きる、如何にも著者が好んで描きそうな風変わりな人物です。ワトスン役には新進新聞記者にして社会批評家であるハロルド・マーチを配して、概して政治に関連する事件に巻き込まれる数々の冒険談が描かれています。推理に関しては著者お得意の逆説を取り入れた懐かしいブラウン神父物でお馴染みのトリックのヴァリエーションが味わえます。唯少し残念なのは推理自体は薄味であっさりとしており、仰天するような意外性を期待して読むと肩すかしを食うかも知れません。恐らくこれは著者がミステリーの形式を借りて自らの政治に対する思想や考え方を述べる事を主眼に置いて書かれた物語であるのが影響しているでしょう。こう紹介すると堅苦しい小説を予想して気が引けそうですが、読み始めるとその心配は全くの杞憂に過ぎず、難解ではなく非常にわかりやすい内容になっています。テーマがシリアスな事柄ですので、全体的にゆとりやユーモアに欠けて真剣に過ぎる部分は止むを得ないと思いますが、その代わりに結末では必ず著者一流のピリリと辛口の批判精神が味わえます。私のお奨めの3編は、鮮やかなトリックに感心させられる『塀の穴』『釣り人のこだわり』大胆などんでん返しと圧倒的迫力に息を呑むシリーズ最終作『像の復讐』です。本書は少し地味ですがいぶし銀のような渋い魅力を持つ巨匠の貫禄の秀作ですので、ぜひ一読してお確かめ頂きたいと思います。
知りすぎた男―ホーン・フィッシャーの事件簿 (論創海外ミステリ)Amazon書評・レビュー:知りすぎた男―ホーン・フィッシャーの事件簿 (論創海外ミステリ)より
4846007898

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