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伊賀の残光



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【この小説が収録されている参考書籍】
伊賀の残光 (新潮文庫)

伊賀の残光の評価: 4.50/5点 レビュー 8件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(5pt)

主人公62歳の自分探しと、物寂しいが爽やかな結末

本作品の主人公は鉄砲百人組30俵二人扶持のサツキの栽培巧者で剣も達者な62歳でその友達三人も同様だ。友達未満の一人は前に死んでしまった。主人公とその友達もその周辺の人物も自分が何者なのかと呻吟する。その仕方が田沼時代の安永年間と言う時代背景を巧みに使い、しかお作者の自家薬籠中の様々な道具建によって細部の現実感がしっかりと裏打ちされる。物語を構成する一番大きな「事件」はわりとさらっと扱われ、その「事件」のついでに起こったような個々の生き死にのエピソードの方に比重が寄っているのは、作者らしい純文学風味で読んでいて気持ち良い。結末近く形見分けの帰り道に「よく頑張った。」と死者をねぎらう主人公の姿は映画の1シーンにして見たみたい。最後の最後で主人公は若い世代に「自分探し」の継承とその希望を見出しているが、安永の次は天明で言わずと知れた浅間山の噴火と大飢饉だ。若い世代の前途だって大波乱の接近が遠目にチラチラしだすところだ。そう考えると読後感はより複雑になり、そもそも作者がそう言うことを考えていないはずはないと思ってしまった。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.7:
(5pt)

なにかを為す者は、できぬことを声高に叫ぶ者ではなく、できることを人知れず積み重ねる者である

ここのところ堅い本を読んでいたので、心休めに前からキンドルにしまっていたこの著作を読んだ。いつものことながら、青山文平氏の心地よい文章を堪能した。

 伊賀という言葉が出てくるが、伊賀地方の話ではなく、幕府の伊賀同心の話である。伊賀同心とは、家康の天下統一に力を貸した服部半蔵の伊賀者達の部下の末裔の御家人達のことで、江戸城の門番を勤める武士達のことなのだという。

 この度の主人公は、その伊賀同心の初老の男の物語である。主人公は貧乏御家人の常として副業として「さつき」を栽培している。著者の物語の背景には玄人も顔負けの知識に裏付けされた趣味や職業が出てきて驚かされ、また新鮮な知識を吹き込んでくれる。例えば、釣りや魚に関する話もよく背景に使われていて、その取材範囲の広さには感嘆する。

 この度の主人公はかっこいいい、目立ったところはないが、役職を淡々とこなして、一方では剣の達人である。両国橋のたもとの地回りとの立ち回りには、著者の優れた文筆もあって、颯爽としていて読んでいて気持ちがいい。そのような人は地味にしていても知る人は知るという存在になる。伊賀者の往事の栄光を取り戻そうとする若者にとっては、輝く存在である。若者が主人公を語る言葉に重みがある。「私は十一になるまで山岡様には剣術とサツキの育て方を教えていただきました。中森の家に生まれ育ったわたくしにとっては唯一、心弾む時でございました。わたくしはただの子供になってその束の間を楽しみつつ、同時に思い知りました。なにかを為す者は、できぬことを声高に叫ぶ者ではなく、できることを人知れず積み重ねる者であることを。」しかし、主人公はそのような動きにも動じない。
 話は淡々と始まり、そして何事もなかったように淡々と終わるのだった。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.6:
(5pt)

面白い

青山文平の作品は2作目だが、やはり面白い。
根底に流れている人の在りようが好きだ。
表現もいい。読んだ後に清々しさを感じる。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.5:
(5pt)

青山文平

このところ青山文平の著書にはまっています。書店で見つけられない本が気軽に購入出来て嬉しい限り。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.4:
(3pt)

まあまあ

アマゾンで買った本のみレビューしています。物語・作り話が好きなので小説しか読みません。リアリテイー等は関係ありません。事実と違うなどと言ってる人がいますが、なぜ事実じゃないと知っているのでしょうか?学者が書いているから?不思議で仕方がありません。物語では信長は本能寺で死ななくてもいいのです。面白いか面白くないかのみが判断基準です。それではよろしくお願いします。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.3:
(4pt)

主人公と同年代の読者には共感を呼びそう

主人公は62歳の老武士。元をたどれば服部半蔵とともに家康に仕えた伊賀衆なのだが、江戸開府以来170年が経った現在は三十俵二人扶持の鉄砲百人組伊賀同心という身分。これは戦国期に同じく隠密を担った甲賀衆と同じであるが、甲賀衆が大手三門の警護を任務とした譜代場であるのに対し、伊賀衆は甲州街道入口の内藤新宿の門番で抱場という明らかな差があった。小説はそんな伊賀衆の屈折した心情を背景にしている(譜代場、抱場については小説中で詳説されています。駄洒落ではない)。物語は大金を持って失踪した友人の行方を探るという設定で、その謎解きと並行して主人公の老武士の生きざまを浮かび上がらせている。62歳の老武士が時代小説の主人公とは、これも日本が高齢化社会に突入したことの反映なのかもしれないが、主人公と同年代の読者には共感を覚える人も多いのではないかと思う。終盤直前までの緻密に計算された展開と比べ、結末がやや尻切れトンボのようなかたちで終わっており、推理小説のような劇的な幕切れを期待して読み進むと肩透かしを喰らうかもしれない。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.2:
(4pt)

人生を振り返ることができる一冊

ダイナミックなストーリーではないが、全編を通じて流れる空気感が素晴らしい。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912
No.1:
(5pt)

強くて優しい男の話し

青山氏の著作の主人公は剣の達人が多いのですが、その立ち廻りは多くありません。
なかでもこの作品は際立っていて、クライマックス近く剣をふるう描写はアッという間です。
しかも、おそらく真剣をふるう最後の相手が役不足の子悪党にすぎません。
秘めたる矜持を抱きながら平穏な時代に生きる老武士のありようが投影されています。
「流水浮木:最後の太刀」よりしっくりくるタイトルです。特に「残光」の醸す味わいが沁みます。
伊賀の残光 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:伊賀の残光 (新潮文庫)より
4101200912

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