本売る日々
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. 江戸時代後期、書肆「松月堂」を営む平助は三十半ば。本を売るだけではなく、いつの日か、自らの力で書を出版することを夢見ています。彼が一人称で語る連作中編3作を集めた一冊です。 ◇『本売る日々』 :文政の御代、藩校がひとつもないような鄙の地で、書肆「松月堂」の平助は名主の家を回っては本の行商もしている。最近、上得意の名主・惣兵衛がわずか十七という孫娘のような年齢のサクを後添えに迎えたと聞く。サクは女郎上がりだとか。惣兵衛は若い新造が求めるものを見境なく買ってやっているとの噂を耳にして、「松月堂」は惣兵衛が今後は本など買わなくなるのではないかと不安を抱きはじめるのだが……。 「松月堂」は惣兵衛との商売が立ち行かなくなるのではないかと、大いに不安神経症気味です。心配の底なしスパイラルに陥っていくその胸のうちが、滑稽に、そして延々と描写されていくので、この物語は書を読む喜びを謳い上げる重厚な時代小説だと思いこんでいた私の当初の期待は大きく裏切られ、これは単なる軽妙な喜劇小説なのかと、まさに私自身が不安になっていきました。 ところが物語の後段になって、惣兵衛とサクの間に横たわる祖父と孫ほどもある年齢差と、素封家と女郎上がりという経済格差を抱えた夫婦関係の実相が立ち現れてくるようになると、俄然物語が重みを増し始めます。不安を前にして人並み以上に神経を擦り減らしていたはずの「松月堂」が、経済力も経験知も自分より上回っている上顧客の惣兵衛相手に、人生の真実を立て板に水の如く説いて聞かせる場面が圧巻です。 「松月堂」の諭しの後に、惣兵衛とサクの人生が悟りを得たかのように大きく動きだす結末が、実に爽快な物語です。 ◇『鬼に喰われた女』 :文政五年の師走、書肆「松月堂」は東隣の国に八百比丘尼の伝説が残ると聞かされる。事情通と思われる杉瀬村の名主・藤助に噂の真相を尋ねると、神妙な顔をして藤助は50年にも渡る、ある話を聞かせてくれる……。 この『鬼に喰われた女』は第一編『本売る日々』に比して、幻想の度合いがぐっと増します。なにしろ八百比丘尼伝説ですから。私はこのあやかしの伝説に『 火の鳥 異形編 』で触れたことがあります。 和歌の流派に保守伝統の堂上派とそれを超克せんと始まった小沢蘆庵の新風派があるという日本文学論を織りまぜながら、身分違いゆえに実ることのなかった恋と、長年月の用意周到な準備のもとに恨みを晴らしていく復讐譚です。 「『さからしら』を排し、嘘偽りのない『まこと』の心を失わず、『すなお』に生きる」―――このことばのとおりに生きた女の物語が妖しい光を放ちます。 そういえば、『火の鳥』も復讐譚でした。 ◇『初めての開板』 :書肆「松月堂」の平助の弟夫婦には喘病もちの11歳の娘・矢恵がいる。最近、かかりつけ医を変えたのだが、その医師・西島晴順の評判を平助が周囲に聞いてみると奇妙な噂があることを知る。何年か前、西島は診立てを始終変えていたのだが、ここ最近は名医との評判が立ち、まるでどこかの時点で人が入れ替わったかのようだという……。 西島晴順という医師の素性をめぐるちょっとしたミステリーが展開すると同時に、医学をめぐる複数の学派間の対立問題、そしてやがては、医療を発展させて次世代に引き継いでいくための手立ての話へと、物語は徐々に深みを増していきます。 健康と読書――この二つがあれば、人は豊かに幸せに生きられるのではないか。そんな気にさせてくれる佳作です。 . | ||||
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●本を愛し知識を愛した名主や医者たち。主人公は彼らの心の奥を洗いざらい掬い取るように聴き 出す。涙する大仰な感動言葉ではなく、ジワッとしみてくる温かいものが伝わって来る。富も名声 も得た男も好きな女性にはとことん奥手のよう。そんな男が心の奥に隠し続けたものは、不器用な までの恋心か。古書を引用して己を語る様子は胸に迫るものがあった。 医を志す者たちの高潔な心に触れたが、今の時代も実際にそうあって欲しいと願うばかり。 ★一つ減じたのは、核心に触れずわざと焦らしてみたり、古本関連の蘊蓄に衒学的な匂いが感じら れ少々鼻についた為です。 | ||||
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江戸時代の出版状況がよくわかりとても興味深く読みました。 歴史ものといえば大体大名間の紛争が取りざたされることが多く政治面から みることが多いと思いますが。この本は出版状況がよくわかり又裕福な農民の知識や 当時の医学の状況がよくわかりとても面白く勉強に鳴りました。 | ||||
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近頃の世相につられてしまい、チャカチャカと日々を過ごしていましたが、久しぶりにゆったりした気持ちになれました。 やっぱり本はいいなぁ、と再認識。 登場人物たちと一緒に、本の世界に浸れます。 | ||||
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最初の出だしの貝原益軒の楽訓の所に惹きつけられたのですが、あとはそれ程面白い内容ではありませんでした。文章の流れは時々、途切れた感じを受けました。時代の中に現代っぽいところを感じます。これは私の捉え方が幼いのかもしれません。他の方は、また違う捉え方をするでしょう。しかし、「鬼に食われた女」の途中から面白くなってきます。初めての開版では,医書に興味がありましたので一気に読みました。 | ||||
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