約定
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「士道」といっても、チャンバラや切腹の場面がやたらと出てくるわけではありません(その二つの場面は、ぞれぞれ一回ずつだけです)。 著者は、江戸期の侍が、太平の世にその矜持をどう保ち続けるかというむずかしい課題に真っ正面から取り組みました。友と剣を交えねばならぬ時、侍社会でいじめに遭ったとき、そして、流行らない道場を閉じるか否かの瀬戸際に立ったときー。 剣戟や殺しの場面に安易に流れない、そのプロットの組み立てかたは十分に理知的。過去に純文学の修行をしていたというだけあって、書きぶりも落ち着いていて風格さえ漂わせています。 それでいて、読者の想像を温かく裏切る作品もあって、細やかな人情を描く技量もたいしたもの。すでに堂々たる物語作家です。 評論家の縄田一男が「平成の藤沢周平」と表したのは最新作「鬼はもとより」。ぜひ読もうと思います。 | ||||
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青山文平氏は、第18回(2011年) 松本清張賞を受賞した長編時代小説「白樫の樹の下で」で作家デビューを果たしている。刃先のように削ぎ落としながらも、伝わり良く、奥行きのある独自の文章表現は、受賞時に選定者の多くから激賞されたものである。 以来、青山文平氏が発表してきた短編のうち6作品を網羅して刊行されたのが本作品「約定」である。短編集でありながら、そこには共通した作者の思いが感じられる。ひとつは、時代背景が江戸中期であること。戦乱の世は遠く、武士がもはや戦うことを忘れかけ、生きる様を模索する時代である。世の中の変化とともに価値観が変わり、武士としての純粋な心を持ち続けようとすればするほど、屈折した日々を送らざるを得ない。そしてもうひとつの共通点になるが、この屈折した感情や日々の営みは現代社会に相通じるものであり、時代小説でありながら現代を描いているという点である。しかし、現代と過去を相似形で描いているとは言っても、そこには自ずから似て非なる大きな違いがある。江戸の世の武士には「覚悟」という現代では稀有なる存在となった気概があった。あえて言えば、この「覚悟」が三つ目の各作品を結ぶ共通項と言えるかも知れない。 冒頭の「三筋界隈」は現在の台東区三筋近辺を舞台にした話である。たまたま介抱した痩せ侍が申し出た奇妙な申し出と驚くべき顛末が描かれる。本編も然りであるが、本短編集は全編にわたり不思議さと奇妙さが物語にちりばめられている。読者が、ぐいぐいと話に引き込まれる大きな要因のひとつである。 「半席」には出世と欲得が絡む人間というものの本質と、人生の真実が語られている。よくもまぁ、これだけの枚数で人生の断片を切り取れるものだと、作家の力量に感心してしまう。 表題になっている「約定」は、果たし合い場で相手を待つ侍の自問の言葉で物語が始まる。緊迫感あふれる展開とその結末は意外なものであった。 「夏の日」はとてもいい。ひとりの青年武士が地方の村で遭遇した事件を経て一人前の大人へと成長して行く物語である。「もしもあの夏がなかったら・・・」という感慨は誰もが思い当たるものだろう。 他にも、ほのぼのとした気分になれる「春山まいり」、新妻の疑心とその結末をミステリータッチで描く「乳房」など密度の濃い短編が収められている。 青山文平氏の作品には、江戸の当時の風俗や生活のあり様などが丁寧に描き込まれていて感嘆してしまう。本の帯に葉室麟氏推薦の言葉が書かれている。「清しい心が、響き合う。いつまでもこの世界に浸っていたい」。同感で、早くも次回作を読みたくなる。 | ||||
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