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バラカ
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バラカの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.71pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全51件 21~40 2/3ページ
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長編小説ではあるが、手に汗に握りハラハラドキドキの展開で一気に読ませた。お手軽なストーリーでは24Hみたいに、どんなに主人公に危機が迫っても都合よく助かって、白けてしまうんだけど、この物語はなんとか、バラカちゃん無事に居てと、感情移入してしまう。下らないハリウッド映画や見るに堪えない日本のTVドラマより、よほど面白いんだから、あれこれ粗探しせず、素直に楽しんだら良いと思う。前作よりどうだこうだと、すぐ言いたがる人がいるが、すべての作家が前作よりも面白い作品を書き続けることが出来れば、みんなノーベル文学賞取るんじゃないの?! | ||||
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小説や映画の褒め言葉の一つに「悪い人がひとりも出てこない小説」というのがあるが バラカを読めばそんな修辞の遊びがとても薄っぺらなものに感じてしまうではないか。 この本の登場人物はヒロインであるバラカと爺さん決死隊以外は、 悪人とかごくつぶししか出てこないという前述の小説的ぬるさとは極北にある存在です。 偽善、虚栄、無責任、無関心、総体的な異物排除の社会的圧力、建前優先、エゴイズム・・ 本書で登場する「聖霊の声教会」が教義的悪と唱える「負のサイクル」の因子そのものたちが 人の姿をカリカチュアライズされながら代わる代わる登場し、バラカに迫害を与えながら あっさりと死んで退場していきます(くたばるというのがもっとピッタリかも・・・・) バラカという言葉はアラビア語で「神の恩寵」を意味するそうです。 ドバイの幼児売買のマーケットに集められた子供たちは男児も女児も人種も関係なく みなバラカと呼ばれる。ブラックなネーミングセンス、どこまで真剣なのか?只の洒落なのか? この本の主人公もそのバラカの中の一人、アル中の日系ブラジル人の父と、新興宗教と浮気に 逃避する母の間に生まれた可愛らしい女の子。 1歳と半年で浮気の駆け落ちの途中で母親は死に、自分は幼児売買に売られてしまう・・というか 最初から幼女としての商品価値目当てに殺されたのかもしれない。 彼女を買いに来たのは日本からの40歳の意識高い系の独身OLの友人二人組、雑誌ライターの女が バラカを2万ドルで買いテレビ局の製作の女が特番の為に彼女の買付けのシーンを撮影する。 悪趣味な番組だ。案の定この企画は没になる。 ここまでの筋で読者は、この本はああ”屑だらけ小説”なのだな、と早々に予想する。 そしてその予想は読み進むにつれ裏切られることは無い。というかもっともっと屑が出てくる。 ライターの女は自称悪魔気取りの糞詐欺師と帰国直後にくっつき妊娠し入籍する、一方買われたバラカは 母親に懐かずに育児放棄にあう、いびつな一家が東北への転勤の前夜にバラカは厄介払いのように テレビディレクターの女に預けられるが、バラカを手放した女は宮城県に着いた翌日に夫の留守中に 311の大地震の津波に襲われ報いのように死ぬ。 そこから先は更にパラレルワールドのディストピア、現実世界ではギリギリで留められたフクシマの原子炉が この世界では4基ごと吹っ飛んで東北関東は放射能による立入制限区域となり首都も産業も西日本に 逃げ出して日本は国の半分が使い物にならない二流国の混沌と無秩序と、政府の抑圧の世界になった。 立入禁止区域の中で独り生き残っていたバラカは爺さんボランテイアの一人に保護され、やがて10歳になる。 自分の意志とは無関係にバラカは原発推進派、反対派の其々の恰好の広告塔として狙われ、拉致され、 逃亡し、生き延び続ける、屑ばかり、自分の目的の為にだけバラカを取合う下種な大人の中に僅かな救いのように 数人の善意の人達がバラカを助けるがその力はあまりにも弱い。 リアルでありながら寓意的でもあり神話的でもある膨大な物語は650頁、執筆期間は震災を挟んで4年に至ります。 途中で大幅に修正と物語の拡張がなされ、当初は父が子を探す話:が、滅びかけの世界で物のように売られた娘が 自分と世界を取り戻そうと遍歴する話:に変貌しました。 エピソードがバラバラで唐突すぎるという指摘があるようですが僕にはかえってリアルに映りました。 それもそのはずです、現在の僕たちの現実の世界、このニュースや事件の唐突さは如何でしょう? どうみても映画や小説のほうがよっぽどシナリオライズされていて調和がとれています。 更には地震や洪水といった天災の数々、ホームドラマのような日常をいきなりパニック映画に転換する理不尽さ、 それこそがリアルな現実世界。 辻褄も脈絡もない世界をしたたかに逞しく生きなければならない我らは時にはこのような本を読んで括目する必要が あるのだと、読み終えて深い溜息と共に思いました。 | ||||
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本書は、外国人労働者、新宗教、40代独身女性の悩み、幼児売買、東日本大震災、放射線汚染による健康被害、原発推進派と反対派の争い、と多くのいろいろなテーマが盛り込まれている。 他のレビュアーの方の御指摘の通り、いろいろなテーマを盛り込みすぎた感を免れない。 そのうえ個々のテーマの掘り下げは驚くほど浅い。例えば、外国人労働者の労働環境についての描写はないし、沙羅と優子の2人の独身女性の性格は実は驚くほど一致している。沙羅がなぜ子供を持とうとするのかについての心理描写も薄い。 本書は本来、幼児売買の対象にされた少女バラカの数奇な運命がメイン・テーマのはずなのに、いろいろなテーマを盛り込みすぎたため、今ひとつバラカに焦点が合わない感もある。 しかし本書は650頁の大作であり、評者はそれをほぼノンストップで読み切ることができた。次々に事件が起きストーリーが展開していき、登場人物のダークな側面が露呈していく過程がサスペンスフルだったからだ。 このことは本書がエンターテインメント小説としては第一級であることを示している。著者の桐野氏はそのような評価のされ方を好まないだろうが。 | ||||
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桐野さんが足かけ4年で書いた大作。 原発事故と放射能汚染をそのままテーマにした、渾身の一作。 既に名誉も作家としての地位も全て手に入れた桐野さんが、原発事故をテーマにしたということに、大きな意思と使命感を感じる。 作品は確かに設定の都合良さや粗い展開もあるが、そういうのものが一切気にならないレベルの勢いのある小説。 物語自体は、1ページ目からジェットコースターのように走るので、寝ずに一気に読めます。 プロットの展開や構成は、「Out」や「メタボラ」を彷彿とさせます。 桐野さんの代表作の一つになるのではないでしょうか。 | ||||
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「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」にはこんな記述がある。「官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである」。言うまでもなく、小説の中の話ではない。いま日本国民は既に忘れてオリンピックに浮かれているのかもしれないが、あの福島原発はすんでの処で四基とも爆発するところだったし、爆発の時にたまたま風向きが海に向かっていたので最悪の事態を免れたのである。 「バラカ」は福島原発事故の時に四基とも爆発して、首都が大阪に移転した日本の近未来を描いている。この小説はだから、空想物語ではない。(いま現在もいつ起きてもおかしくはない)原発事故の起こすさまざまなドラマの可能性を提示する小説である。 しかし、それだけではない。「OUT」や「東京島」の登場人物たちのダークサイドに堕ちてゆく描写が素晴らしかったように、桐野夏生らしく、震災前の東京在住の三人の都会派男女と、群馬に住んでいた南米系日本人三人の男女を描いて、バラカがいかにしてドバイの子供市場で売られてバラカとして日本の被災した子供として生まれ直したか、を丁寧に描く。そして人間の闇と可能性を浮き彫りにしようと努力している。 とんでもない状況で産まれたのにもかかわらず、甲状腺ガンで首の周りに手術跡がネックレスのようについているのにもかかわらず、震災8年後の10歳のバラカが、聡明で正義感溢れ、前向きな少女になったのは、ひとえに彼女を育てた人たちが素晴らしかったからだと思う。震災後の夏、警戒区域の放置犬を保護する目的で入った四人の「爺さん決死隊」の男たち。彼らの知恵と明るさと、良心がなければ、ネットや監視カメラや独裁政権の中で、密かに殺されて交通事故で処理されてしまう未来もあったかもしれない。「近未来」というSF的な表現でいいのか、という感想も持ちつつ、去年の北野慶「亡国記」に続いて、こういう「原発事故小説」が再び誕生したことを祝福したい。 | ||||
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海外で捨てられた子供と、震災による原発事故がシンクロしづらい部分ではあるが、 原発事故によってもたらされる世界観は、現実でも起こりうる事だと感じることができる。 他のレビューでもある通り、登場人物に統一感が無い感は否めないが、 今の世の中に問題提起をするということでは非常に意味のある作品だと思います。 | ||||
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こんな境遇の人が本当にいるのかもしれない。 東日本の大震災、そこで人生が狂ってしまった人は大勢いると思います。 必死に復興しようと頑張っている方もいれば、バラカのように利用されようとして、逃げ惑っている人もいるはずです。 世の中には価値観が違いますし、考え方の違う人もたくさんいます。 人々が協調していくにはなかなか時間と労力必要ですね。 640ページ余りの大作でしたが、ラストが意外な結末だったことを除けば、読み応えがあります。 | ||||
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桐野夏生の作品で、ここまで社会や時代に正面からモノを申した作品は過去にあっただろうか? この作品は、本来はバラカに係わる市井の人々(おそらくは優子、沙羅、川島が中心)の群像劇だったのではないだろうか。 それが、連載直前からの3.11そしてその後の日本社会の変容に強い思いを抱いた著者が、大きく作品を変えていった。 そのため、本作は、桐野節ともいうべきドライで殺伐とした展開を強く押し出しながら、同時に著者らしからぬ社会へのコミットも色濃く感じられる、読者に(よくもわるくも)消耗を強いるつくりとなっている。 神の恩恵を意味するバラカの名を持ちながら受難の人生を歩むしかないバラカ。 そして、神を意識することなく冗漫で凡庸な日々を無意識に過ごしながら、3.11を契機に同じく受難の人生を強いられる被災者たち。 この大きく2つのグループに読者は共感とその受難の日々を現在に重ねることで憤りを感じるつくりが一つある。 一方で、バブル世代にして、中流崩壊の中でなおも恵まれた層にいる優子、沙羅、川島は、作品内のみならず読者からもおそらくは嫌悪を受けるばかりで、無意味で分かり辛いラストを迎えている。この消化不良な点を、私は☆マイナス1にしている。 本作は、原発事故や被災者への安易な同情を排することに成功しているが、では、陰謀論的な構造をチラ見せするだけで、現在の日本社会の変容や漫然と生きることでそうした劣化を止めようとしない私たち自身への問いかけにまでなっているかというと、そこは先達レビューを読む限りでは中々難しいようだ。著者のチャレンジは認めつつも、その志が十二分に達せられたとは思わないと敢えて言いたい(優子や沙羅のパートを文庫版なりで全面改稿するくらいのチャレンジが必要か) ただ、著者の問いかけを私個人は強く感じられたし、批判を多く書いたが、ラストを含めとても良い作品だと思った。 | ||||
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東日本大震災の年の夏から4年にわたり連載された作品の単行本化です。650ページの長編で、震災前・震災・震災後の3部作となってます。本作の構想が、震災前からあったものなのかそうでないのかは分かりませんが、震災以外の読みどころも数多くある中で、物語の中心は震災であり大きなテーマである事は間違いないと思います。 前半は主に作者お得意の男女の愛憎劇に赤ん坊の売買問題が絡めて書かれ、特に薄気味悪く悪意の塊のような男のキャラが際立ってます。その後は、若干の想像も交えた震災後の日本において、ドバイから連れてこられたバラカの過酷な人生を中心に、震災により大きく人生を狂わされた人々の苦悩や葛藤、そして生き抜いていく姿や思いもよらない行動や社会問題が書かれています。 登場人物も多いですが、全編を通じて読めば全て繋がっていき、その点は少しミステリー風の爽快感は味わえます。但し、作品の題材上決して後味が良いとは言えず遣り切れなさが残ります。震災から約5年を経た今、風化させてはならない戒めとしての小説の代表作になると思います。 | ||||
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桐野さんの最高傑作に近い(?)作品。 いずれにせよ著者作品で読んだ中ではBest3に入ります。 (他は、柔らかな頬・ダーク) | ||||
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ドバイの赤ん坊市場で買われてきた少女「バラカ」の人生を東日本大震災と原発事故を背景に描きます。 前半の読むのがとめられないほどの面白さに比べると、 後半はやや急ぎ足で細部の描き方が散漫な気がしたのが小説としては残念です。 ですが、震災までの出来事は現実とリンクしているし、 震災後の世界は現実とはちょっと違うけど十分にありえたことでもあるので、まったくのフィクションとして読むことはできませんでした。 私たちが知らないだけで、もしかしたら現実はこれよりもっとひどいかもしれない・・・。そう思わずにいられない恐怖もあります。 「一人の子供がただ生きるということ」、たったそれだけのことも許されなかったバラカを思うと胸が痛い。 ミカちゃんには子供らしく、自分らしく、生きてほしい。そんな未来があってほしいです。 ほーんと、五輪どころじゃないよなぁ。 スポーツの力で被災地を元気にしたいとかそんなぬるいこと言ってる場合じゃない。 今の日本は五輪なんかより、もっともっとやらなきゃいけないことがいっぱいあります。 桐野さんはこの作品を通してそういうことも言いたかったのではないでしょうか? | ||||
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バラカをとりまく物語。 プライドの高い女たち、人身売買、外国人労働者、大震災・・ 社会性の高いテーマがたくさん盛り込まれ、そのなかにバラカがいた。 バラカが産まれるまえ、および、ことばを発しない幼少のころのストーリーが抜群におもしろかった。 残念なのは、後半、ぱたぱたと話がまとめられてしまったように見えること。とくに、ヒールの立ち位置にいたある人物の書かれ方が、もったいなかった。「いや、この人、もっと悪辣だろ、そんなおとなしくないだろ」、と思いながら読んだ。この小説がもともと連載小説だったことと関係あるのだろうか? 終わりの時期が決まっていて、無理矢理クローズした感じだ。単行本化にあたって、もっと書き加えてほしかったなと思う。 とはいえ、桐野氏の、読者を引きこむ力はよく発揮されていたと思う。☆4つで。 | ||||
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この数年桐野さんの小説にスリルや凄みが感じられなくなっていましたが、これは久しぶりにザ・桐野夏生といった作品だったと思います。早期のOUTとか柔らかな頬とかダークとか、犯罪に近い、もしくは罪を犯す人たちの内面への洞察力が桐野さんの筆力だと思っていましたが、今作も視点人物それぞれの内実に迫力があります。桐野さんおかえりなさいといった感じw | ||||
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福島原発が震災で爆発してたらという仮定において描かれる一人の少女の冒険譚であるが、現実にも、これに近い場面が垣間見られます、作者はやっぱりそ れに怒り覚えているのでしょうかね...例えば、福島県内の甲状腺癌罹患率が全国平均の数十倍にも及びながら、いまだに原発の影響とは考えにくいとする 福島県の健康調査検討委員会、いまだに制御されていない汚染水とその報道の少なさ、そして欺瞞に満ちたオリンピックの進行とか。 個人的には、主人公が最後に行った場所が、神奈川在住の私が現在、物件を探している避難候補地の一つに該当した事に妙に納得感がありました。私の場合は、温暖化進展に伴う関東からの避難場所確保ですが。 | ||||
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忘れてはいけない、風化させてはならない、と人は言うが、時間は残酷に前へ前へと流れ、過去はどんどん薄れていく。 過ぎ去った年月は、現在の時間の濃密さに勝ることはない。 忌まわしい記憶をいつまでも同じ濃度で抱えていると、人はおそらく狂ってしまう。 だから、忘れることも必要。と説明する人もいる。 そうこう考えると、小説とは、なかなか結構な記憶装置なのかもしれない。 小説『バラカ』は、福島原発事故以降のこの国の、ひとつのあり得た近未来を描いている。 「あり得た」というのは、原発事故を、現在われわれが把握している規模(本当のことは誰も分からないが)よりもじゃっかん大きめに設定して、関東から東北全体が広範囲に汚染されてしまったとされているから。 作者は、3・11以前から書き始めた長編小説を、途中から大幅に軌道修正して原発事故後の小説に、いわば強引に仕上げたようだ。 作者の小説を読みなれている人は、おそらく「あ、この強烈なキャラは、3・11以前からのだな」「これは3・11以降に創ったキャラだな」などと、登場人物を読み分けることも可能だろう。 桐野作品がほとんど初めての筆者でも、なんとなく分かった。 それは、小説としてはマイナスなはずで、作者も出来ればしたくないに違いない。 でも、今回は違った。 書いていた物語が、3・11、とくに原発事故によって、よりいっそう切実に書きたい物語になったのではないか。 あるいは、3・11、とくに福島原発事故を、小説家として「なにがなんでも書かねばならない」と、腹をくくったのではないか。 そんなふうに思えてくる。 読者としては、「忘れまい」とする意志や希望に反して、少しずつ忘れかけていたものが、沸々とよみがえってきた感じがする。 忌まわしい記憶というより、向き合わねばならない現実として。 原発の事故だったのだ。 地震や大津波とは違う。 時間が経つと、その違いが薄れてくる。 この小説は、ガツンとそれを思い起こさせる。 小説としての結構がどうだとか、キャラの設定がどうだとか、結末に不満だとか、そういうことをぜんぜん言いたくならない。 強烈なストレートパンチを喰らった印象がある。 福島原発事故。 忘れるものか。 | ||||
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タイトルはスペインの詩人、 ガルシア・ロルカの 移動劇団「バラッカ」からとった。 バラックと同意で居場所がない存在 という意味に、 アラビア語の『神の恩寵』という 語義も重ねたそう。 ドバイの赤ん坊市場でバラカを買って 日本に連れ帰った女、 その夫で女性憎悪あらわにした男など 登場人物は欲望をむき出しにした 人物が多い。 「震災後、差別や憎悪など嫌なものが 噴出したように思う。 そうしたものをすくい取り 提示していきたかった」 悪意と共に迫ってくるネット社会の 不気味さにも覆われその世界には 負のエネルギーが渦巻いている。 「人が震災を忘れるというのも 負のエネルギー。 明るくて未来に向かうものなんて 到底書けなかった」 単行本化の際に付けたエピローグには かすかな希望も見える。 「作者が絶望したからといって 投げ出さず、 可能性を書くことも読者のためには 必要なのかもしれない。 震災を忘れてはいけないと 胸のどこかで思っている人たちが 読んでくれれば」 桐野さんの心中の想い、 メッセージはしっかりと受け止めた。 | ||||
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このバラカという本を読んだ感想を申し上げますと、まさしく桐野文学の最高到達点であって、素晴らしいと感じた次第であります。 | ||||
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1才半の女の子が両親にドバイまで連れていかれ、拐われ、売られ、日本に戻り震災に逢い…。束の間の幸せの後、10才のバカラが周りの大人たちに翻弄されながらも強く生き抜いていくストーリー。 人間の悪意や弱さ、身勝手さを会わせ鏡のように突き付けられ、その矛先が子どもというのが辛く、読むのが結構しんどかったのですが、止められず一気に読んでしまいました。 個人的には、『OUT』『ダーク』『グロテスク』のような神がかり的な面白さまでは感じませんでしたが、初期の作品を別にして、桐野さんの作品は絶対外れがないという想いは裏切られませんでした。特に川島という悪意の塊のようなバラカの義父の不気味さと嫌らしさが、本当に上手く描かれていて、流石だなぁと感じました。 | ||||
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桐野さんの最新長編 650ページもある分厚い1冊です。 プロローグ 第一部 大震災前 第二部 大震災 第三部 大震災八年後 エピローグ で構成されています。 主人公は表紙の少女 バラカ 本当の名はミカ・サトウ そして川島光であり、薔薇香(バラカ)とも呼ばれます。 3月11日の大震災、福島での原発4基爆発事故を背景に、四十代独身で子供を持ちたい沙羅(さら)が 友人の優子と共にドバイへ行き赤ん坊市場で「バラカ」を人身売買する所から彼女の数奇な運命が繰り広げられて行きます。 沙羅、優子、そして同じ大学時代を過ごした鬼畜とも思える人格崩壊した川島 自己中な大人たちの中でバラカが翻弄されて行く姿は読んでいて切なくなりました。 バラカを自分たちのエゴの為に利用しようとする悪い大人たちがたくさん登場しますが バラカがおじいちゃんと慕う豊田吾郎と、健太の存在があった事は救いでした。 バラカに感情移入しながら読み進め、次々現れる登場人物が味方だと思いきや敵だったり 希望と落胆を繰り返し、苦しくなりながらもこの物語がどう着地するのか気になって一気読みでした。 そしてエピローグの1ページ目ではこみ上げる物がありました。 フィクションとノンフィクションが融合した感があり まるで数時間に渡るドキュメンタリー映画を観終った後の様な脱力感と満足感のある作品でした。 やはり桐野さんが描くダークな世界観は癖になります。 | ||||
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物語は大震災後、フクシマの原発がすべて爆発し 関東一円が放射能で汚染された世界が舞台です。 NHKスペシャル「原発メルトダウン 危機の88時間」などを見ると あり得た世界。。。 群馬で遺棄されたペットを救いに来た老人が幼児を発見するところから始まります。 その女児は「バラカ」としか言わないので、老人は彼女を「バラカ」と名付けて育てます。 震災前の、日系ブラジル人一家の物語。 独身で人生に倦んでる働く女性2人の物語。 それらの物語の糸が、少しずつよられて近づいていき・・・ 震災後、甲状腺がんの手術を受けたバラカを利用しようとする 大人たちの醜い物語となっていきます。 私なりに解釈すれば、「どんな状況になっても、あきらめるな!生きろ!」と いう作者からのメッセージだと思いました。 震災後5年たっても、いまだに日本の文学も映画も この「震災」を消化することなくすごしています。 そういえば、関東大震災についても代表作といえるような 小説はないような気がします。 天災に対しての日本人の気質なのでしょうか? やっとめぐりあえた「文学作品」! 堪能しました。 | ||||
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