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(短編集)
日影丈吉傑作館
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日影丈吉傑作館の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.78pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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どの作品もふうん、と読んでいたら普通の光景から異物の謎が飛来し、一気に引きこまれました。 オチのある幕切れはスッキリしていながら、結論や真相を絞り切らず自由に捉えられ、曖昧な読後感で心に残り好きでした。 好きな漫画家さんが紹介されていたので初めて手に取った作家さんでしたが、人生の彩りを一つ増したような満足な読書体験が出来ました。 巻末の文庫解説も優れていました。右京探偵シリーズ14話が収録されていたので、これまでのエピソードも気になりました。 | ||||
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この作品集にある『吉備津の釜』は、知られざる傑作である。主人公の男性は、居酒屋で会った見ず知らずの男から借金を工面してくれる人を紹介される。男からの紹介状を持ってその人物の家を訪ねる途中、隅田川の船の中である疑念が湧いてくる。「そんないい話が本当にあるのか。」、「この紹介状には一体何が書かれてあるのか。」、「紹介状を開けて調べるべきか、それとも開けざるべきか。」ハムレットのように悩むのである。そして題名にある『吉備津の釜』は、物語の中でどのように関わってくるのか。上田秋成による同名の名作に挑戦した作者の心意気を感じる作品である。 | ||||
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かなり前にこの選集ではなく違う出版社のハードカバーで読んでその時にこの作者は実力の割に余りに評価されていないと思いました ミステリー作家の枠に留まらず多岐に渡る知識やシンプルだけど時にノスタルジックな情緒性を感じさせる文体 大好きです 以前この人の本もかなり集めていましたが全部処分してしまいました 河出文庫には他の作品もぜひ出版して頂きたいと思います | ||||
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この作家の本は初めて読みました。文章が長くなり気味で、集中して読まないと何がどうなっているのかわからなくなってしまいますが、集中して読むと、とてもよくできた文章のからくりにびっくりさせられます。話はSFものもあれば、幽霊?ミステリー?推理小説?幻想小説?なんと分類したらいいのかわかりませんが、この時代の人の幅広い想像力が凝縮されていて、時代性を感じました。同時に今の時代にも通じる懐かしさや不気味さや、ちょっとした思い込みなんかも見られて、人間の内部をよく観察しているからこそ書ける作品なのだろうなと思わされました。最後の作品に右京さんが出てきますが、いい味出しています。この人の探偵ものシリーズなんかがあったら、法水林太郎や明智小五郎みたいに、昭和の代表的なフィクション探偵になっていたんじゃないかと思いました。 | ||||
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バラエティ豊かな内容でとても楽しめました。 軽快なミステリーからSFや不思議な作品、切ない作品まで、様々なジャンルの作品が収録されています。 どれも読みやすくわかりやすい内容の短編ながらも、 各作品ごとの雰囲気や構成がしっかりと構築されており、 一つ一つがきちんと印象に残る良作ばかりです。 個人的には、「泥汽車」「ひこばえ」などが、不気味で淡々とした中にもノスタルジックで美しい雰囲気を感じられる作品でとても印象に残りました。 様々な作品をまとめて読んでみたい方にはぜひおすすめです。 | ||||
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学生時代に現代教養文庫の短編集で作者に出会い、その作品の数々は私にとって宝物となりました。 巻頭の『かむなぎうた』では、「少年」という存在の不可思議さ不気味さが、郷愁に満ちた美しい描写とともに語られます。 名作『吉備津の釜』の完璧とも言える巧緻さは、まさに絶品であり、何度読んでも唸らせられます。 中井英夫も絶賛したメビウスの輪の切断の描写から始まる『ねじれた輪』は、奇妙で割り切れない結末が印象的です。 『人形つかい』はラストの不気味さが強烈であり、同じ怪異談でも『ひこばえ』は、直接的な恐怖の描写はないものの、最後にじんわりと怖さを覚えます。 『泥汽車』は幻想作家としての作者の代表作の一つであり、作中の失われつつあるもの達と、作者の死との二重の喪失感が胸に強く迫ります。 この作品集が多くの方に読まれるとともに、続巻を期待したいと思います。 | ||||
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高校時代にであってから、この時代の奇妙な味の作家を何人か読んで見ましたが、文章の味わいが深く、特に「吉備津の釜」に惹かれました。 今におかれた自分と錯綜する記憶、そして吉備津の釜との重ね具合が絶妙です。 最後の一文まで一気に読ませる文章の吸引力の見事さ、 ぞくりとします。 「ひこばえ」の不気味さも押し付けがましさがないひたひたと押し寄せる得体のしれなさが上質です。 今回初めて読んだ作品も多く、「泥汽車」の自然と不自然なもの、人間が破壊したもの、作っていったもの、そのせめぎ合いの中で最後の場面には少し温まる思いを感じられました。 | ||||
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阿部日奈子氏の解説は、読みどころを押さえ、間然するところがない。 文庫解説かくあるべし、である。 待望久しい日影丈吉の普及版作品集。 収録作の選定には新味があり、バランスも良い。 年譜の表現も面白い。 昭和6年(23歳)の記述に、カッコ書きで「従来、この頃フランスに遊学と誤って流布されてきた」とある。 まあ、多言は控えよう。 一方、表紙のデザインセンスは、ごく常識的に言って、最低である。 なんでこんな葬式みたいな黒枠で囲むのか、訳が分からない。 写真は、白昼忍び寄る夢魔、みたいなイメージで、理解できなくもないが。 でも、滅多に刊行の機会がないのだから、もっとしっとりと美しい世界を表現してもよかった。 (ちくま文庫版の、風に散る蒲公英は良かった) 今からでもデザインを取り下げ、改めて公募してもらいたいぐらいである。 文庫一点といえども、この出版は祝祭であり、後世まで残る事件なのだ。 とはいえ、十蘭の選集に続き本書を出版してくれた河出書房新社は、とても偉い。 同社刊、種村季弘選の日影丈吉選集をまるごと文庫で出してくれないかなあ。 それだけでなく『応家の人々』『女の家』など、常時入手できる状態であってほしい。 日影丈吉は、日本文学に欠くことのできない存在なのだから。 ひかげ【日影】(1)日の光。日ざし。(2)太陽。(学研『全訳古語辞典(改訂第二版)』より) | ||||
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当方にとって、日影丈吉はミステリ作家などではなく、幻想作家でもなく、ただただ本書所収の「ひこばえ」ーーという作品の作者と言って過言ではない。 それほどまでに初めて、この作品を読んだ時は瞠目した。佐藤春夫の同系列の作品「化物屋敷」といっしょに読んだためかもしれないがーー後者は典型的な因縁と霊障の「幽霊屋敷」もの(いや、面白いんですけれどもね)。では前者は? 何の変哲もない家に住む家族が、順番に、比較的短期間に死んでゆく。それを主人公が、いわばおせっかいで介入し。なんとかしようと尽力するも、それが水泡に帰する過程が静かに、淡々とした筆致でつづられている。それだけの話だ。 幽霊など、どこにもいない。怪異の描写はおろか、凄惨なクライマックスもなにもーーない。表紙の裏には呪い云々とあるが、そもそもそんなものはかけらも、うかがえない。ただ主人公の主観で「(家に)やられたな」という感慨がのぞいているに過ぎない。 だがしかし。怪異も霊もショッキングシーンもないがゆえに、どこにでもある家であるがゆえに。かえってこのエピソードは傑出している。いわば無描写ゆえに・・・・・・おそろしい! 読者はいつのまにか主人公の「思い込み」に同調させられ、(そうだ。それこそが作者の意図といえよう)文字通り、「とりこまれて」しまう。 家が抱く悪意。邪な意志なるものを理性ではなく、肌で感じずにはいられない。その上で読者は、自らの家はどうか。近所の家はどうなのかと、かえりみずにはいられなくなるはず。この鳥肌がたつようなリアリティを導く筆致よ! ・・・・・・一度とりこんだ「餌」を、けっして逃そうとはしない! 住人の再就職による転居までをも妨害するかのように! 怪我や病気など、偶然といってしまえばそれまでの些細な瑕疵を、死にまでいたらしめる過程のコワさは、読んでいただかなければわからないでしょう。 確かにこの作品が読めるのはこの一冊きりではないがーー日影氏が初見の方は、この機会に本書を手にとってみてはいかがかと。 ちなみにタイトルの「ひこばえ」の意味は、読了してはじめてわかる仕組みになっています。 | ||||
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