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スクラップ・アンド・ビルド
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スクラップ・アンド・ビルドの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.56pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全118件 101~118 6/6ページ
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純文学と言うのは、自分の内側でウジウジ悩んでいることを語って行くのがスタイルかと誤解してました。 主人公には行動力があり好感が持てました。 とても、面白かったです。 暗くなりがちな介護をテーマに、これまた暗くなりそうな就職活動中の若者の視点から描くと言うのは、とても新鮮でした。 そして、暗くならずに明るく読めてしまいました。 賛否あるかも知れませんが、私は、ラストが爽やかでスッキリしました。 作者の他の作品も読もうと思いました。 | ||||
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芥川賞作品は当編を含めダダイスム的な作品が多いと感じる。小生は高齢者であるためか割り勘でラブホテルを利用したセックスで憂さを晴らすとか、セックス描写で編を飾ることは好きでない。母親が認知症の祖父をいじめる描写も現代日本の世相かもしれないが、主人公の置かれた環境を表現するには格好の表現方法かもしれないが感心しない。編の終盤でそこそこ大手の会社に中途採用が決まったこと。国家試験のための受受験勉強が波に乗ってきた様子が主人公の中途採用決定に直接影響していないとしても、彼の未来に明るい兆しが見えてきたことと合わせて読者を安心させる。認知症の祖父を消極的にでも介護する姿勢は彼の置かれた状況を割り引けば技ありと評価できるのではないか。 | ||||
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読後感が良く、読んで良かったと感じられる作品でした。題材は暗いにも関わらず、“おじいちゃん”も“孫の健斗”も生きることについて貪欲で前向きだという共通点があると感じました。 私は健斗ほど若くはないけれど、だからこそ身体を鍛えたり、学んだりすることは必要なことだなと改めて感じさせられました。 芥川賞同時受賞の「火花」を先に読んだのですが、「スクラップ アンド ビルド」は流れる様なストーリーや登場人物の魅力もあり、流石にプロだなと感じました。比較すると「火花」は素人感が拭えませんでした。違いを感じたのは女性との別れの場面でした。本作ではさりげなく別れを連想させるのですが、「火花」ではこれでもかといったしつこさがありました。読後感も全く違い、読んでよかった本作と、読まなくてもよかった「火花」ぐらいの差がありました。(又吉さんごめんなさい。) | ||||
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「火花」が注目されてるがもう一つの芥川賞の本書は28歳の主人公 と87歳の祖父との微妙な愛憎を描いてるが介護という重いテーマを 笑いの要素を交えて表現しており全体的に読みやすい、特に死にたい を口癖のようにいう祖父、孫息子は死を叶えようとする、しかし一般的 に老人になると生にしがみつくというように、この祖父も同様であること を孫息子は気づく、この表現等は作者の技量が高く個人的には「火花」 より「スクラップ・アンド・ビルド」に軍配を上げたい。 | ||||
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小説は常に時代を反映したものだ。 そんな誰かの言葉を思い出しました。その言葉を尺度とするなら、これはまさに小説。完全に時代を反映しきっている。読者を惹きこむ設定のもと、淡々と描ききって、気づいたら読み終わっていました。 羽田さんの著作はデビュー作の「黒冷水」以来。受賞の報道で、羽田さんが芥川賞!?と正直驚きました。偏見かもなのですが、なにせ読みやすくて、文体に純文学らしい奥行きある表現は割と控えめな方だな、という印象で(純文学ってなんだ?よくわかんないけど)。 今回も、さっぱり読めました。介護、年金、戦争、若者の負担。ある程度政治や経済に関心を寄せる若者であれば共感できる内容がてんこもり。 ただ、そうした重々しく語られるテーマを、人を惹き付けるユニークな発想や設定で、わりかしさっぱりと書いていく。かといって、その文体に微塵も雑さを感じない、むしろ読者を引き込むように練られている、というのがとても好印象。 あれはどうなったんだろう?と終わりまで分からないこともあるのですが、逆に主人公の視点になりきるなら分からないままなはずで。リアルを書くならそれでいいわけですね。 正直、何でも分かりたい知りたい読者の人にとっては消化不良を起こすかもしれません。そういう方にとっては「どうなったの?」「結局この話どういう展開だった?」と感じてしまうかも。 ただ、それでも最後までページを進めてしまうっていうのは、もはや文体の技巧以外の何物でもない。そういう意味では、やっぱり羽田さんって巧いんですね。 すごく欲張ったことを望めば、登場人物をところによってはもっともっと人間臭くして奥行きを出すシーンが欲しかったです。さっぱりしすぎていて。終始ドライでいくので、黒冷水の時に見せた泥臭い雰囲気とか、羽田さんなら絶対に書ける生々しさっていうものが欲しかった。テーマがテーマだけに淡々としすぎず一つのシーンくらい汚すと広がり豊かになったのかなあと。もちろん欲をいえばですが。 ともかく、おもしろかったなあ。 芥川賞受賞、おめでとうございます! | ||||
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28歳の健斗が主人公です。 務めていた会社を辞めて、中途入社の応募と資格取得で日々を過ごしています。 そんな彼と毎日過ごすのが、87歳の祖父です。 祖父の介護に明け暮れる中で、「早う死にたか」と言う祖父の言葉に、介護の中で「安楽死」と言う言葉を胸に秘めます。 実際、「介護」の場面にあたるといろいろな問題に直面します。 この物語にある様に、自分の実の娘に介護される場合には、どうしても甘えようとする病人と、それに対しきつく当たる娘と言うのは、良くあることです。 それに対して、主人公が甘えさせて体力や精神力を萎えさせる方法を取ったりします。 この物語は、祖父の面倒を見る孫と言うスタイルをとっていますが、実は、孫にこそ「スクラップ・アンド・ビルド」が起こっています。 祖父の介護をする中で、主人公は自らの生活を再建してゆきます。 それまでの甘ったれの若者から、責任ある社会人への成長の物語と言えると思います。 | ||||
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東京・多摩ニュータウンに住む27歳の健斗は 母・祖父と3人で暮らしている。 健斗はカーディーラーを5年でやめて求職中で 認知症ではないけれでも、健康ではない祖父には それなりに手がかかっている。 祖父は口癖のように「早く死にたい」と言う。 そんな日々が描かれている。 私にとって、それほど興味を惹くテーマではなかった。 話題作でなかったら、手に取らなかったかもしれない。 しかし読み始めると、はまっていき 作者の力量をとても強く感じた。 自分の親が老いたら、 ひいては自分が老いたら、 特にやることのない日々を どう過ごすことになるのだろう。 薄々気になってはいたが目を背けていたことに 本書を読んで向き合うことができた。 | ||||
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芥川賞受賞作。 「火花」を読み終え、やはり、もう1作も読まねば、片手落ちかと購入。 読み始めて、買ってよかったと思った。 いい小説だと思う。 最初、題名がめんどくさいと思ったが、読後に納得した。 平易な文章ながら、静かに深く描かれていていいと思った。 「火花」はいいのだが、どこか、過剰な修飾がされている文章だなと思えたのだが、この小説は、「abさんご」の雰囲気に似ていて、できるだけ平易な文章で書くというような決心を感じさせた。 そして、この決心は、この主題を見事に浮き上がらせていると思った。 終盤の仕舞い方も無理がなく、過剰に書きすぎてもいないところがよかった。 とても読後感のいい作品だと思う。 | ||||
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芥川賞受賞作品ということで興味を持ち先ほど読み終えましたが、とにかく若いなという印象です。 決して崇高な文学作品じゃない、自分と同じ年頃(私は25です)の青年のリアルな感情そのものが読み物となったものです。 家族に甘え、日々「苦しい」「死にたい」と弱音を吐く祖父への主人公の苛立ち、憤り、恐怖、そして祖父の「本当の望み」への理解。 物語自体は泣かせにくるようなものでもなく、劇的な結末を迎えるでもなく、この世の中のどこかには居そうな主人公と、その祖父の日常があるだけです。 物語の内容如何ではなく、このリアリティこそがこの作品の凄みなのだと思います。 | ||||
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火花がわたし的にまあまあだったので、こちらも期待せずに読んだのですが現代らしい作品で近年読んだ本の中で1番よかったです。 | ||||
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2015年8月読了。 主人公たる健斗(20代後半)とその母親、そして、同居する健斗の祖父(80代後半)が主な登場人物。 タイトルがなぜ『スクラップ・アンド・ビルド』なのかは、読み始めの段階ではなんとなく分かる程度なのだが、読み終わる頃には、「いや、そう単純でもないぞ・・」と思えてきた。 「スクラップ(切り抜き・鉄くず)=老人」 と 「ビルド(組み立てる)=若者」ではない。 「スクラップ・アンド・ビルド」=「採算や効率の悪い部門を整理し、新たな部門を設けること」(三省堂・カタカナ新語辞典より)なのだ。 このあたりは、読んで感じていただきたい。 俺は本作を「崩れニート小説」としても読めた。 あえて“崩れ”としたのは悪気があってではなく、「何もしない若者(15~34歳)=ニート」対して、「就労」はしていないけれど就職活動は週二でやっている、「就学」はしていないけれど自宅で行政書士の資格取得の勉強はしている、「職業訓練」はしていないけれど、じいちゃんの介護はしている・・・・と、「ニート」とひとくくりにするには、健斗はかわいそうだと思うからだ(^_^;) 「立派なニート」というのも変だし、ネ。 ちなみに俺は、「35歳以上の何もしていない人(病気等やむを得ない理由の方を除く)」も「崩れニート」と勝手に名付けていた(というか、俺にもそういう時期があったので自虐自称していたのであって、他人に対して言ったことは無い)。 “崩れニート小説”としてまずニヤリとするのが「行政書士」というワード。 実際に取得したからといって(独立開業でもしない限り)何に役立つかわからない「行政書士」の資格を取ろうと思って勉強している人は多いのではないか(平成26年度の受験者数48,869名、合格者数4,043名。合格率8.27%)。 特に無職の人。 何の役に立つか分からないのに、この受験者数の多さと合格率の低さ! 難関であることは間違いないし、合格すれば、知っている人からは「頭いいね」と言われるかもしれないけれど、履歴書に記載したところでどれほどの効果があるかは疑問の資格だ・・・。 ・・・ハイ、俺も勉強しました。受験しました。不合格でした<(_ _)> 次に「筋トレ」。 無職は無収入なので、(金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんでもない限り)買い物にも行けず、娯楽施設で楽しむことなどもできない。 しかし、エネルギー(欲望)は有り余っている。 そこで筋トレだ。しかも、金がかからない「自重トレ」だ! 他に何も取り柄が無い場合、他人に見せつけられる分かやすい取り柄は、自らの肉体しかない。 なお、引きこもってばかりだと鬱になりがちだが、筋トレをすることでセロトニンやテストステロンの分泌がうながされて、鬱の改善や精力の増進が期待できる。 そのあたり(健斗の場合は肉体改造と精力増大が主目的)に触れてあるところにも、“崩れニート小説”としてリアリティがある(^^)/ そして、「定職に就いている彼女」。 健斗は、無職・無収入のくせに彼女がいる(生意気!)。 現状では家庭など持てる身分じゃないから、子どもでもデキようもんなら大変なので、彼は完璧な避妊をしている。 彼女に対しては、“情”はあるけれど“愛情”は無い。 かといって、性欲(ストレス)発散の相手(それは彼女の方も同じかもしれない)として失いたくないので、最終的には彼女に謝る(笑) 健斗が再就職を果たした事と、彼女のふるまいの変化で、この二人の関係が近いうちに終るであろうことを、我々に予感させる。 俺は、高齢のばぁちゃんが衰えて在宅介護から病院での寝たきりになったころ、“崩れニート”をしていた時期がある。 しかし、健斗ほどの「孝行孫」ではなかった。 健斗のじいちゃんは、どこか“したたか”なところを予想させる。 健斗も無事にそこそこの会社に就職し、しかも若者らしい肉体を備えて再出発をするところで物語は終る。 しかし、ばぁちゃんと俺の場合は、そういう事は起こらなかった。。。 本作は「芥川賞」を受賞した。 「純文学」というくくりで読めば、例えば、安易に「自分」という一人称を用いず「己」と使い分けるなど、テクニカルな部分も見受けられる。 また、「芥川賞」「介護」と聞いて、第131回(2004年上半期)受賞作の『介護入門』(著者:モブ・ノリオ)を思い出す方もいるだろう。 さらに介護といえば、「排泄」「入浴」「認知症」「老老介護」「家庭崩壊」などの言葉が浮かぶが、本作にはそういった“汗脂感”は薄い。 さかのぼれば、1970年代前半の『恍惚の人』(著者:有吉佐和子)があり、当時以上に深刻な現在においては、高齢者の介護に関する物語は、小説に限らず、そこに携わる人の数だけ存在する。 小説の役割のひとつが、人々へ希望を与えることならば、本作のように介護問題や引きこもりで悩みを抱えている無数の人々の心を少しでも軽くしたり共感できたりする(俺はそのようにも読んだ)作品の誕生は、受賞ともども喜ばしい。 読後に浮かんだこの著者への期待は、介護される側視点(本作では祖父)の作品を読んでみたい、だった♪ 長くなってごめんなさい<(_ _)> | ||||
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大変楽しく読ませて頂きました 今回、実は同じ芥川賞受賞作である「火花」の方から読ませて頂いたのですが、どうやら私には合いませんでした 同じ描写、同じセリフ回しからダラダラ続く内容で、作者の文章の拙さもあり途中で飽きてしまったのです ですので今回同じ受賞作であるこの作品も正直期待していませんでした しかし実際に読んでみるとこの作品は表現の深みと共にユーモア方法も多彩でハッキリと作者の地力といいますか、力量が感じられました 物語もとても感じられる所がありました スクラップ・アンド・ビルドは間違いなく「本物」です 今回の受賞作で何故内容としてここまでかけ離れてしまったものになったのか謎です しかし穿った見方をしたとしてもこの作品が「純文学」であることは間違いないと思いました | ||||
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いつになるのかわからないけれど、私もいつか介護問題にぶち当たるでしょう。 同じ世話でも子育ては子供の成長を見られる喜びがあるからいい。 だけど、死にゆく者への介護は相手が近い存在であればあるほど切なさを伴います。 決して良くなることのない死にゆく者への介護問題・・・ この本読んで、『本人と家族の同意があるのであれば尊厳死を認めてもいいのでは?』と 私は思いました。 リアルな介護問題、そして自分の懈怠について考えさせられる本です。 使わない能力は衰える、そして過保護は人をダメにする。 勉強や筋トレがしたくなりました。 [・・・] | ||||
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介護や尊厳死を題材にした小説という前触れで読んだが、 戦争体験をした老人の生についても考えさせられる作品だった。 (おそらく、この時期に読んだからだと思うが、、、) 周囲から聞いた戦時中の祖父の様子と、本人が語る戦争体験との違い。 本当のところは当人にしか分からないが、考えることに意義があると思えた。 健斗と祖父との関係は、傍から見るとコミカルに映る暗くない介護。 「死にたい」「死んでほしい」という言葉の裏側に 互いの愛情を感じる作品だった。 | ||||
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物語の筋も表現もしっかりしていて素晴らしいです。 又吉氏のあの?で終わるようないやーな感じもない。 | ||||
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長崎弁で「じいちゃんなんか早う死んだらよか」が口癖の87歳祖父と、就活中で筋トレに励む30歳前の健斗の物語。小説の構成力と軽快な テンポは実績を積んでいる羽田作品ならではある。老人問題を巧みに取り込んだコミカルでブラックユーモア的なストーリーである。 再読に耐える内容でもある。5人の子供たちからタライ回しにされ、現在、娘である健斗の母親に引き取られている。家族の同情を得ようと狡猾に振舞う祖父。「死んだらよか」と云いながら衣替えを考えたり自分好みの衣服にこだわる。普段、杖を突いて弱弱しく歩行しているが、家族が留守中に冷凍ピザを食べたり、ひ孫をあやす体力を見せつける等隠れた一面を発揮する。老人のしたたかさを健斗の視線が捉えている。 かたや、健斗は祖父の尊厳死を願い、プラス介護をしながら将来のために、ひたすら筋トレに励み祖父と奇妙な対抗心すら感じさせる。亜美(恋人)とのセックスも筋トレの一環でもある。逆に亜美は「太ったおばさん体型まっしぐら」である。 老人問題は、「福祉で稼ぐ街」「後期高齢者の社会問題」「足し算介護」「薬漬け医療」「延命医療」「高齢者運転」「性欲」「食欲」等を上手く健斗の視線で作品に織り込まれている。 健斗に甘えるがシビアな観察者な眼を持つ祖父、「死にたい」が「生きたい」の欲望の裏返しであることを感じてやる健斗・・・・ 再就職先は、祖父介護という「生産的生活で培った能力のおかげ」で医療機器メーカーの子会社というオチがつく。 | ||||
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芥川賞を受賞した作品ということで拝読したわけですが、凄くはないけれど売り物にならないものではなく、それなりに読める読み物でプロの最低線はクリアしていると思いました。 老人と若者の少なからず本音といえる部分を扱ってソフトに仕立てた物語。 祖父の言動も主人公の言動も、こういう人もいるだろうなと思わせるもので、それだけに抵抗なく話の世界に入っていけました。 始めから終盤にかけてはスイスイ読めたものの、終盤からフィニッシュがちょっと…、せっかくここまで来たのに着地が…というところですが。 しかし、まあ、面白く普通に読めるということだけでも大したものでしょう。 | ||||
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結局祖父はボケ老人なのか、それとも全てを見透かしている演技者だったのか・・・?考え直してもよくわかりません。 ・以下祖父の不思議な点(ネタバレ) ①自分で野菜をトッピングしたピザを食べる ②テレビを見た形跡があり、テレビを理解する能力がある ③俊敏な移動 ④来シーズンの服を整理するミクロな力 ⑤5~6kgの曾孫を抱き幸せそうな笑顔 ⑥女性スタッフの体を触る性欲の存在 ⑦循環器系に作用する最低限度の薬さえ飲めば至って健康体という医師の診察結果 ⑦何十回も不調を訴え車で搬送してもらうが、悪いところはなかった ⑧耳が聞こえないというが、悪いところはない これらのことから、「祖父は健康体であり、ボケ老人ではない」 ということが見えてきます。 また、「健斗はじいちゃんが死んだらどげんするとね?」と聞くシーンからは、無職の孫に「介護をする孝行孫」というポジションを祖父がわざと与え、何もする仕事がないという地獄から無職の孫を開放してあげていたのではないかと思えてきます。今、お前にはじいちゃんを介護する役目があるが、じいちゃんが死んだら介護する役は終わっちゃうんだよ、どうすんの?ということです。 以上のことから、①急性心不全による急性肺水腫での入院 ②風呂場での溺れ の2つのイベントははわざと祖父が孫に役を与え、振り回すためにやったことではないかと考えます。健康と言われているのに、入院や風呂場で溺れるのはおかしいです。退院したあとも補聴器屋で聴力に問題は無い(仮病?)と言われたり、デイケアでセクハラしています。 また、 ①その後就職が決まり、出立する主人公を祖父は「帰ってこなくていい、自分のことは自分でする」などと言い、互の顔が見えなくなるまで手を振って見送るシーン ②同世代の自分より優れた成功者を見て、弱った祖父の隣にいることで自尊心を維持できていた事に気づく主人公 この2点からも、祖父は無職の孫のプライドを守るためにボケ老人を演じていたのではないかと思えてきます。 演じていないというなら、孫を振り回し、何十回も虚偽の病院搬送事件を起こしていた祖父が、「帰ってこなくていい」とは言わないでしょう。 そして、就職の決まった孫を心から喜んで送り出す・・・ 私は孫と祖父が手を振り別れるシーンで、身を呈してまで健斗の幸せを願う祖父の深い愛に、読んでいて感極まりました。 これらのような見方をすると、主人公の画策していた尊厳死の実現は滑稽な計画です。 祖父の掌の上でジタバタする主人公という話になってしまいます。 私の曲解かもしれませんが、この話は他の方のレビューに書いてあるような単純な話には思えません。 若さと老いの対比とか、介護問題についての問題提起とか、そういうことですか?羽田氏はそういうことを書きたかったのでしょうか。 少なくとも帯にある「要介護老人と無職の孫との息詰まる攻防戦」は、祖父の勝ちと言えるでしょう。 みなさんはどう思いますか。 老いていく祖父と、成長していく孫・・・スクラップ・アンド・ビルド。面白かったです。 ※文学とは多くを語らず、読み手の想像に任せる部分が多い、答えのないものです。祖父は本当にボケていて、体が悪く、周囲を振り回し、孫への愛情なんて無く、私の感動は的外れかもしれません。羽田氏が私の感想を読めば、「何言ってんだこいつ?」と思われるかもしれません。 ただ、「こんな読み方をしている奴もいるんだ」と思っていただけたら幸いです。 | ||||
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