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銃・病原菌・鉄
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【この小説が収録されている参考書籍】
銃・病原菌・鉄の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.05pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全465件 401~420 21/24ページ
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600ページ強ありますが,面白くてあっという間に読み終えてしまいました。 この本で扱っているテーマは,”歴史上,旧大陸(ヨーロッパ)の人間が,新大陸(アメリカ・オーストラリア)を支配するに至ったのはなぜなのか”という問いです。 その答えは,タイトルの通り,「銃・病原菌・鉄」であることが冒頭で考察されています。 しかし,本書の考察はそこにとどまりません。 銃・病原菌・鉄が鍵であったとしても, 新大陸も資源が豊富なのに,なぜ銃のような発明品が生まれなかったのか, なぜヨーロッパ人たちは新大陸の病原菌の犠牲にならなかったのか,など, と次々と新しい謎が生まれてきます。 本書はそれらの謎についても,科学的に裏付けのある証拠と共に,明快な答えを提供してくれます。 そして,本書の特徴は,その答えを,新大陸・旧大陸の人種の違いではなく,大陸の地理的特徴に求めるところにあります。 各々の大陸データを比較した客観的証拠と共に提供される考察には,本当に納得させられます。 謎の答えが気になり,気づけばどんどん読み進めてしまいました。読み終わったあとは,人に薦めたくなります。 | ||||
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「朝日新聞のゼロ年代の50冊」でNo.1となった本です。 かなり読み応えがある本です。上下巻あわせて650ページもあります。 しかし、この本を読んで、人類史感・歴史観が大きく変わりました。 それにしてもこの本、歴史学者どころか医学部教授が書いているんですね。 どおりで理系的な文章だと思いました。文章構成も、どこか論文チックな感じがありますね。 ■現在の人種間の境遇の差は、遺伝子的な優劣によるものではなく、与えられた環境条件に大きく依存する 人種、民族により現在の境遇はかなり異なっています。かたや先進国であったり、かたや飢餓や政治不安に苦しむ未開国であったり・・・。 「これらの違いはもしかしたら、遺伝子的に決定的に優劣が定まっているのでは?」と多かれ少なかれ思っている人は多いと思います。 しかし、それは環境要件によるものだと著者は説明しています。 ■シンプルで説得力のある説明 征服する側・征服される側を分けたのは、以下の非常にシンプルな原則であるとしています。 '@東西に長い大陸(ユーラシア)の方が南北に長い大陸(アメリカ・アフリカ)より優位 'A栽培化しやすい作物、家畜化しやすい動物が近くにいた方が優位 非常にシンプルで、かつ具体的な説明による裏付けもあり、説得力のある説明となっています。このシンプルな原則は、環境要件のみであり、特定の人種・民族の繁栄と遺伝子的な優位性という図式は全く登場しません。 まるでライフゲームが進行するかのように、人類史が進行してきた、そんな風に思えてきます。今までいだいてきた歴史についてのイメージがまるっきり変わる感じがありました。 確かに、一読すべき良著です。 | ||||
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新聞により、この10年間で最も良書評価により購入。 一気に読めた充実した時間であった。 生物学的、歴史的、気候的な要素による記述は非常に興味深かった。 人類生育地域の拡散、病原菌による減少結果等、非常に面白かった。 読後はうなったが、10年間では良書でも、やや深みに欠けるように感じる。 アメリカ的世界制覇の現状の限界を見ているような、 生物学的(遺伝子的?)世界制覇気性についての疑問については答えを与えてくれなかった。 アメリカ中心の世界観の原因は、DNAか何かにあるように思える。 私にとっては、まだ疑問が残っている。 次のまた疑問が、読書をやめさせてくれない。 今後もアマゾンにお世話になる。 | ||||
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朝日新聞社の「0年代の50冊」という、識者が選ぶブックリストで堂々一位であったことを知り、再び読んでみました。 なぜ同じ人間という種族に生まれながら、各地域で文明の形成過程に現在のような格差が存在するのか。この疑問に対し著者は明快に解答を示してくれます。その合理性にいちいちうなずいてしまい、あっという間に読み終えてしまいました。 ここまで納得させてくれる本も珍しいのではないでしょうか。 なぜ、アパワルタ王が南米からヨーロッパに攻め入り、白人たちを奴隷としたのではなく、白人たちが先住民族をほぼ全滅に近いほど搾取し尽くすことになったのか?この疑問への答えは深いです。あわせて「文明崩壊」も読みたくなりました。 | ||||
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中学校の歴史で 「戦国時代に種子島に火縄銃が伝来して、瞬く間に量産化され合戦の常識を一変した。」 という事を学び、 「なんでアフリカやアステカの人々はあれを自分達の技術に取り込めなかったのだろう」 と素朴な疑問を持ち続けて10年以上経っていました。 また一方で、テレビでのアマゾンで暮らす人々の特集番組などを見て、 「こういう方たちも、人類史としてその地にたどり着いたのが西洋などよりもちょっと遅かっただけで、 あと数百年もしていれば独自にテクノロジーを進化させていたのかな(でも何故かそういう気がしないような、、、)」 とも思ったりしていました。 本書をたまたま手に取って読み「あぁ何となくそういう事なのかな」と、いくぶん腑に落ちた次第です。 同じような疑問をお持ちの方にお勧めの一冊です。 | ||||
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日本で2000年からの10年間に出版された書籍の中から朝日新聞がベスト1に選んだ(2010年4月発表)というだけあり、本書は抜群の面白さを持つ一冊でした。 ユーラシア大陸の住民たちが南北アメリカ大陸やオーストラリア大陸を征服することができたのはなぜなのか。そしてその逆にアメリカ先住民がヨーロッパを植民地化することがなかったのはなぜなのか。人類数万年に渡る歴史のこの謎を、単なる民族や人種といった生物学的優劣論で片づけるのではなく、それぞれの地域の環境の差異によるものだということを、ひとつひとつ丁寧に解き明かしていきます。 農耕と畜産に適したユーラシア大陸の環境と生物種の多様性。 ユーラシアが同緯度に東西に広がる大陸であったための農業と技術の伝播の容易性。 余剰農産物が支えた食糧生産に携わらない特殊層の誕生。 集権的な政治体制の確立。 文字の発達が進めた情報伝達性。 人口増加による技術発明の可能性の増大。 畜産が生んだ伝染病にさらされながらも抵抗力をもつ人々の増加。 学際的な研究成果をもとに著者が描きだす謎解きはいちいち納得できるものばかり。壮大なミステリーを読むかのような知的興奮に心が幾度も震えました。 訳者の紡ぐ日本語も大変分かりやすく、翻訳臭さを感じさせないものです。数理言語学博士でもあるという訳者だけに、言語学に触れた箇所は驚くほど精緻です。 読了後に振り返って思ったのは、日本に生まれ落ちたわが身のこと。 極東に暮らす自分が、本書の描きだすユーラシア大陸の環境的優位性の数万年の積み重ねの上にいるということの気の遠くなるような事実。そこに不思議なロマンを感じる一冊でもありました。 *「それらの細菌にまったくさらされたことのない人々の命を奪ってくれる」(上巻235頁)という訳文がありますが、前後関係から推すに、「奪って」ではなく「守って」くれるの誤りではないでしょうか。 | ||||
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要点 優位に立って支配した文化・部族(民族)と支配された文化・部族がある。 住んでいた場所の地理気候条件、利用できる生物資源の多寡、文化の伝播の難易等の環境要因によって、農耕、定住社会にいち早く移行できた部族は、食糧の豊富さにより、武人、官僚、文字を使える書記、技術専門家を養うことができた。このことがその部族を有利にし勢力を得た。 ある部族が新たな文化との遭遇した時、進取か保守かという違いはあっても、部族の知能の高さなどによって征服・被征服が生じた訳ではなく、環境要因が最大の要素であるというのが著者の分析結論。 興味の持てた点 ○南北アメリカやアフリカは大陸が南北に延びていて緯度に沿って気温や気象が変わり同じ農作物が育たない上に、山、地峡、砂漠があって行き来もしづらい。さらにこれらの大陸には大型家畜になるような動物種もたんぱく質に富んだ植物種もユーラシアに比べれば少なかった。ユーラシアは東西に延びている。 ○南北アメリカにも洪積世後期まで象、ライオン、チータ、ラクダ、馬、オオナマケモノ、高山ヤギがいたが11000年前に絶滅した。インディアンの馬もヨーロッパ人がユーラシアから持ち込んだもので原産種ではない。アメリカ大陸原産の大型化家畜はラマ・アルパカだけで使役に使えない。 ○北米の先住民はヨーロッパからの入植により、殺戮、病原菌などにより5%までに減少した。 ○南米の文化では金、銀、青銅を製造する技術はあったが、鉄、車輪はなかった。 ○中国は文化は進んでいたが、国家の統一度が高く、15世紀ころの国の意向で文化技術の発展にブレーキをかけ、これに人民が従ったためそれ以降ヨーロッパに後れをとった。 | ||||
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朝日新聞が選ぶ、「ゼロ年代(2000〜2009年)の50冊」で第一位をとった本。私も、この記事を読んで、購入してみた。 なぜヨーロッパ人がアメリカ大陸を植民地化でき、その逆のこと(インカ帝国がヨーロッパを植民地化)が起こらなかったのか、なぜ、オーストラリアのアボリジニが、ヨーロッパを支配できなかったのか、といったことを明らかにしてくれる本。 栽培に向く植物や、家畜に向く野生動物の種類についてなど、広範囲かつ圧倒的な例証を用いて、著者の結論に導かれていく。 著者はカリフォルニア大学ロサンゼルス校の地理学教授とのことだが、日本を含む全世界の考古学・地理学・歴史学・言語学・文化人類学等に非常に詳しく、挙げられる例がどれもおもしろい。インカ帝国から、ニューギニア、中国、肥沃な三日月地帯、アフリカ大陸にいたるまで、初めて知るような知識の数々が披露される。そして、どの事実にも、知的好奇心が刺激される。 これから読む人がいるので、結論は記さないが、世界の地域ごとの発展の差は、どういう理由で起こったのか、ということについての著者の結論はシンプルであり、説得力がある。 世界史を高校で選択した人や、社会科学系のノンフィクションが好きな人などに広く進めたい、良書である。 | ||||
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自分は根っからの理系人間で、歴史と言うものが苦手でした。 結果だけを羅列し、覚えていくという作業が苦痛でした。 ただ、この本は違います。 現在における国家間、大陸間の格差の原因を言語学、生物学などの知見と事実を用いて明かしていきます。 複雑な相互関係を一つ一つ整理し、論理的に解き明かすその様は正に圧巻で非常に壮観でした。 | ||||
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こういう著者を頭がいいと言うのだろう。 知識が特定の分野に偏っていないので, その知識を縦横に駆使して考えることができる。 その結果人類の歴史は何によって動かされてきた、と、 結論づけたのか。 もちろん「人」というのも正解だが、 その「人」がコントロールするることで 歴史を形作ってきたもの。 それが「銃・病原菌・鉄」だというのだ。 その論証が,わかり易い文章でなされている。 感嘆。 | ||||
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某新聞に,投票で選んだ2000年からのベスト50という企画が載っていたんですが,ベスト1が「銃・病原菌・鉄」(Guns, Germs, and Steel)だというんで,批判的な印象を持っていた私はびっくりしました。 この本,「西洋文明の勝利で人類の歴史はゆるぎない」ということが前提となって立論されおり,そこからそもそも強引である。人間のこれまでの歴史を振り返れば,現状の西洋の圧倒的優位性は数百年後にはひっくりかえている可能性は当然あるではないか。 さてこの前提のもと著者は西洋文明の優位性を,各文明を担うヒトの生物学的な優位性ではなく,文明発祥地の食料の豊かさといった地域的特性等に求める。で,この考え方の確からしさを示すために,人間の歴史を確認していくわけだが,この理論に背反する不都合な真実,欧州文明を征服せんとしたモンゴル帝国の後継国に関しては,説明がない。欧州を危機的状況に追い詰めた国と文明に対する検討すら行わない態度に嫌気がさして,読むのをやめてしまった。 著者の洞察力と知的パワーは圧倒的であり,この本に感激するのはわかりますが,私には著者が,西洋文明の優越性が絶対的真実である,ことを客観的に説明するために,社会的に許容されなくなった人種的な相違という論理を使うのではなく,あらたな道具を作り出そうとしているように見えました。 | ||||
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本書は、ニューギニア人の友人からの問いかけを受けて、「地域による人類の発展の格差がなぜ起きたのか」という根本的な疑問に答えることがテーマとなっている。1万3千年前からたどって、人間の環境適合の進化過程にその理由があることを膨大な情報を下に解き明かしていく。 最も根本的な発展の格差もたらした大きなパラダイム・シフトを農耕の始まりにおいている。ユーラシア大陸におけるその開始の早さがヨーロッパ人に「銃、病原菌、鉄」という世界征服の手段をもたらした。なぜ、ユーラシア大陸では農耕の開始やその後の伝播が早かったのか、それは気候、地勢や東西方向の大陸の広がりが起因しているといった論旨が展開されていく。 その視点は面白く、ある種ミステリー小説を読んでいるかのように読み進めていくことができるが、下巻は上巻の論点を繰り返す内容になっており、少々退屈する。 あくまで、著者はアメリカの学者であり、取り上げている素材が欧米の視点に偏っているいることを我々日本人含めアジアの方は感じるだろう。また、少々うがった見方をすれば、欧米人の残虐な世界侵略を、「進化論」を用いて無意識のうちに正当化しているようにも読み取れる。 この著作のエピローグの一節のタイトルにもなっている「なぜ中国ではなく、ヨーロッパが主導権を握ったのか」という、おそらく多くのアジア人が持つ疑問にはこの書は十分に答えてはいない。「儒教哲学が浸透している中国・アジアと改宗を強制する宗教を推進力とするヨーロッパ」という対比にそのヒントはありそうだが、なぜ、そのような文化や社会価値観の違いが発生したのか、欧米人の他者に対する差別意識の強さや残虐さがどこから根本的にきているのかはこの書のテーマからははずれる。 とはいえ、新聞のゼロ年代の50冊のTOPに選ばれただけの事はあり、新しい人類史の見方を教えてくれる良書。 | ||||
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歴史書というと、カエサルやチンギス・ハーンなど現在にまで名を残す 英雄を中心に語られがちで、人類の歴史はこうした少数の英雄達によって 作られたように感じていました。 しかし、欧米諸国はこうした英雄がいたから現在の繁栄があるのでしょうか? アフリカなど貧しい国々は英雄がいなかったから発展しなかったのでしょうか? この本はそうした人間中心の歴史観をくつがえし、動植物の生息分布や伝染病と いった環境要因が人類の発展に大きな差をもたらしたことを科学的根拠に基づき 説明しています。 学者が自分の狭い専門分野にとじこもりがちな中、こうした学際的で、 一般読者の知的好奇心を刺激する本は非常に貴重だと思います。 | ||||
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15〜16世紀の大航海時代幕開けと共にヨーロッパ人は世界中に出かけていくようになりました。 ある国が大航海とそれに伴う植民地獲得により莫大な富を得られるのを目の当りにすると、 我も我もとヨーロッパの多くの国が世界中に植民地を作っていきました。 そして数百年の間に世界はがらっと様子を変えていました。 ヨーロッパ人→征服→北米の原住民 ヨーロッパ人→征服→南米帝国 ヨーロッパ人→征服→アフリカ大陸 ヨーロッパ人→征服→オーストラリア大陸 そして、15〜16世紀に塗り替えられた世界の様子は21世紀の今も概ねそのままです。 富・権力・力といったものは世界中の約200カ国、あるいは数百の民族の間で随分と偏って分配されています。 どうしてこうも世の中は偏っているのだろう? と、多くの方は疑問に感じた事があると思います。 そこからもう一歩踏み込んで、 どうして矢印の向きは←にならなかったのだろう? と、疑問に感じた事がある方はいらっしゃいますか? 私は、著者が上巻の冒頭に投げかけたこの質問、 どうして←にならなかったのか? を読んだ時目から鱗がポロッと転がり落ちた様でした。 そこからはぐいぐい引き込まれてあっという間に上巻を読了し、下巻は少しペースを落としながらも読了しました。 矢印が→向きとなった究極の要因を著者は4つ挙げています。 「え?なになに?」 と、気になるような好奇心を持ち合わせてらっしゃる方は読んでみる事をお勧めします! この本が提供してくれる知的冒険は、多くの方にとって最高にエキサイティングなものになると思います。 | ||||
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上下合わせて600ページを超える大作! 「なぜヨーロッパ人がアメリカ原住民を支配することが出来たのか?その逆はなぜ起こり得なかったのか?」 「人類の歴史」を1万3千年から遡り、定住、農耕、家畜、言語、文字、国家、戦争、地理地形、気候変動、病原菌、などの様々な視点から読みとこうとする総合知的解説書。 著者は分子生理学、進化生物学、分子生物学、遺伝子学、生物地理学、環境地理学、考古学、人類学、言語学など多くの分野に精通しているが、「人類の歴史」という因果関係が超複雑に絡みあった対象には一般法則を導き出すことが出来ないという。 「歴史科学」が成立しないのは、あまりにも歴史という対象が難しすぎるためであるが、著者は「人間科学としての歴史研究が恐竜研究と同じくらい科学的におこなわれるだろうと楽観視している。」(エピローグ)と語る。 本作はその筆者の楽観に現実感を与える力がある。 | ||||
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著者は本書で、人類が大陸によって異なる発展を遂げた理由を、人種の遺伝子的な優劣によるものではないことを証明した。 一言で言えば、人類はその大陸の生態、天候、地形などの環境によって異なる発展を遂げたのだ。 本書ではそれらを順に、解りやすく解説してくれる。 中でも面白かったのが、第2部「食料生産にまつわる謎」である。 なぜ今我々が食べているイネ(米)があるのか、なぜシマウマは家畜化されなかったのか。 これらの謎を、気が遠くなるような時間をかけて人類が試行錯誤してきた過程を通じ、解き明かしてくれる。 生きていて、なんとなく知っていたようで、実は知らなかったことがある。 そして本当に知った瞬間はまさにエキサイティングである。 「なるほど!」と何度つぶやいたかわからない。 本書は人類が辿ってきた歴史を「駆け足」で解説したものと著者は言う。 深く掘り下げたい人には物足りないかもしれないが、私のような歴史・考古学素人にはちょうどよく、充分にポイントは掴める。 読んでよかった。そしてもっと早く読みたかった。 | ||||
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繁栄しなかった国、もしくは人種とそうではない所に至る謎を1万3000年前から遡って まとめあげられてます。 そのキーワードが「銃・病原菌・鉄」なわけです。 しかし、訳文がまわりくどいのか なかなか文章がすんなりと頭に入って来ませんでした。 やはり1万3000年に渡る歴史を紐解くわけです。 ですので、どうしても本人の育った所と思い入れのある地域についてのバイアスがかかっているようにも見受けられます。 決して面白くないとは言えませんが、これだけ長い書籍なので合点がいかない所があるのも確か。 | ||||
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なぜ、白人はアメリカ大陸を制覇できたのかという理由を、銃・病原菌・鉄というキーワードで読み解く人類史への壮大なミステリーを解き明かそうとするのが本書です。 結局、農業生産により食料の増大が、白人に政治システム・軍隊・武器の技術を与え、結果として、アメリカ大陸を制覇したといいます。 なぜ、食料生産がユーラシア大陸でできたかということを説明していくのですが・・・。 しかし、本書を読んでいて、まさに唯物論的であり、どこか抜け落ちているような気がしてなりません。 食料生産の高度化により、食料生産に携わらない人間が、良い政治システムを持つまではわかるのですが、なぜ、武器に向かうのか。 どうも、本書の理論は片手落ちであり、個人的には、白人の暴力主義、征服主義という精神論を説き明かさなければ、本当の意味での白人の五大陸制覇を説明できないように思います。 その点で力作を望むところです。 ただ、本書は訳も読みやすく、論証も明快なので、ぜひ、一読してほしい一冊です。 | ||||
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非常に遅ればせながら。 山田風太郎の『魔界転生』の石川賢による漫画化で、病原菌の固まりとして転生してくる駿河大納言 の描写があったじゃないですか。新大陸に乗り込んでくるヨーロッパのイメージとして、あの描写が脳にすり 込まれてしまいましたよ。 大陸間の文明格差と、その結果としての今日の情勢を、栽培化・家畜化可能な野生種の有無と 大陸の形状(伝播の環境的制約)から一気に説明してみせた壮大な人類史。 植生などの気候風土と地理的要因といった環境条件に人類の文化が決定的に制約されている様は 圧巻ですね。非常に大きな説得力を持っていると思います。 ヨーロッパの南北アメリカへの進出(侵略)だけではなく、その人類史上最大の不幸な遭遇を、オースト ロネシア語族の太平洋への拡散やバンツー諸族のアフリカ南方への拡散などと同じ現象の一事例とし て位置づけるなど、刮目する理路多数。 しかし、同じユーラシアでもヨーロッパが世界を席巻して中国はそうでなかった理由を、政治的統一の 有無に求め、その政治的統一の有無を、水系や半島などの地理的制約に求めるあたりは、それまで 説得力があっただけに、かなり厳しいのでは? これは著者自身が正しく総括しているように、今後、探求が進められるべき領域なんでしょう。 私は、どうしても「なぜヨーロッパが?」と来ると、M.ウェーバーを連想しないではいられないのだけれど。 天文、地質、生態、進化など、実験が不可能だったり倫理的に許されなかったりする分野を歴史科学 と位置づけ、それらと一貫した方法を模索して、人類史の今後に期待する態度には大賛成だけど。 しかし、参照文献をまるごと無しで済ませるって翻訳の方針には大疑問。 読者のさらなる探求を阻害するという意味で、原著者の意図にも、文明の相克という本書の趣旨にも 悖るのではないか。 | ||||
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歴史はなぜ動くのか?その動因を求めて、人は様々な史観を考案してきた。 英雄豪傑が歴史を動かしてきたとする大衆的な史観、人種間の優劣に原因を求める優生学的史観、 経済構造がすべてと語るマルクス主義的唯物史観、社会構造や精神にその原因を探るアナール派史観、等等。 生物学者が書いた本書は、これらに対し、動植物の分布環境がすべてを決定してきた、とする画期的な 歴史の仮説を提唱してくれる。 本書の考察は旧大陸と新大陸の関係への疑問からはじまる。なぜスペインはアステカ帝国やインカ帝国を 征服できたのか?なぜその逆のことがおきなかったのか?この疑問に対し、以前は白人文明の優位性、 はては白人種の優位性による説明がされていた。これに本書は真っ向から反対する。いわくヨーロッパ人が 優れていたわけではない、ただ旧大陸は新大陸より横長であるため、動植物の交流が多く、多くの動物を 家畜化した結果ヨーロッパ人は伝染病に対する耐性を獲得していたにすぎない、と。反対に新大陸は 東西の移動範囲が限られ、動植物の分布も貧弱であったため、先住民は伝染病に対する耐性を獲得できない ままでいた。このため、スペイン人が上陸した後、あっという間に伝染病が広がり、文明が滅んでしまった、 というのが本書の説く歴史である。それは人種間や文明間の優劣があったからではない、文明が育った 自然環境という些細なことが全ての要因だったわけだ。 その他にも、世界の数多くの地域に取材しながら、なぜヨーロッパ人が世界の中で優位に立っていったのか、 が、いかにも生物学者が書いた本らしく、極めて客観的・論理的に解説されていく。その論理構成たるや、 見事の一言。世界の歴史を舞台にした壮大なフィールドワークとでもいうべき、きわめて実証主義的な視点が、 本書の論理構成に鉄壁の信頼性を付与している。ヨーロッパ人は優れていたのではない、ただ動植物の 自然環境に恵まれていただけなのである。従来の史観に対するこの強烈な鉄槌、痛快である。まさに 唯物史観ならぬ、唯動植物史観の堂々たる登場、というところか。本書の読書にとって、これまでの 自分の歴史観ががらりと変わること間違いなしの体験であろう。 小さい現実の観察から論理を飛躍させ、壮大な歴史を構築するというこの壮大な仮説構成力は、感動的で すらある。歴史に興味のある人はもちろんのこと、優れたロジック展開や思考法を学びたいすべての人に すすめたい本と言えよう。 ピュリッツァー賞を受賞し世界的にも名高い本書は、間違いなく、自分の読書史上10冊の内にも入る 名著である。このような本に出合えたことに感謝して5点満点献上。本書で感動を覚えた方には、同じ 著者による続編「文明崩壊」もあわせておすすめしたい。 | ||||
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