世界推理短編傑作集4
評判
世界推理短編傑作集4の評価:
4.15/5点 レビュー 13件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全15件 1〜15 1/1ページ
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世界推理短編傑作集4の評価:
4.15/5点 レビュー 13件。 B ランク
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がというべき選集。一つ一つの収載作の質が高く、ゆっくりと味わうことができ
る。旧版の本作品集では2作品だけは読んだことがあったが、あとは初めて読ん
だ作品だった。
一作品ずつ簡単にレビューをする。
「殺人者」は複数の訳者がいるが、本書では評価の高い大久保康雄。別書では、
沼澤洽治(こうじ)訳が気に入っている。本書の訳はどうにもリズム感が私には合
わず、引っかかりがある。この名作短編のスピーディさが少しだけ失われている
ような気がする。まあこれは好みか。この作品は現行の選集にはない模様。
「スペードという男」。ハメットの代表的短編。アメリカではごく普通に私立探
偵という職業があるのだろう。コンチネンタルオプよりも小粋なスペード。ハー
ドボイルドらしく内面描写を抑えて描く。田中小実昌の訳で、最後はありきたり
だが、格好のいい台詞がきく。
「三死人」。謎めいたイギリス植民地での殺人。複数の事件が絡み合う。ストー
リーテリングの才か、読みやすく理解しにくい箇所もない。19c半ばから20c
半ばにかけて活躍した作家。謎解き自体はあっけない、ご都合主義的でもあるが、
これが現在から100年近く前に描かれたことには驚く。
「キ印~」。今となってはこの表題自体がアウトだろう。現行の選集では表題を
「いかれた~」としている。作者自身が作中に登場し、てんやわんやの騒ぎをする。
なるほど「不思議の国のアリス」へのリスペクトだろう。私には少し煩すぎる作品
だった。
「信・望・愛」。初めて知った作家。三人の悲劇、というよりも喜劇的な最期を
軽妙に描いた作品。描写が上手で随分とリアリティもありユーモアもある。最も
怖れた最期に行き着くのがお洒落。面白い。
「オッターモール氏の手」。乱歩の評価はもとよりクイーンやカーなどの評価も
高い。ロンドンにふさわしいような一種朦朧とした雰囲気のストーリーだが、恐
怖感がある。登場人物の言葉に説得力があり、今でもこの「オチ」はいい。
「いかさま賭博」。よく錬られているプロットで、最後も小気味よい。題名から
内容は想像がつくが、さすがと思われるひねり。ただ読み直してみると、「アラ」
が一つだけあった。これがおさまりが悪く少し残念。
「疑惑」。まさにイギリス社会そのもの。形式ばり感情を表出することを避け、
そして心の中では近しい人にも不信感がある。麗しい夫婦愛なのだが、そこに徐
々に違和感が生じる。このあたりの細やかな心の襞と、そこに投げかけられる無
気味な影がある。本作ではイギリスの文学に珍しく、食事のシーンと会話のシー
ンが多い。ラストは恐怖そのもの。
「銀の仮面」。この作品も一種の恐怖小説。誰かが不意に家の中に侵入し、やが
ては主人公の人生そのものを食い尽くす。このようなストーリーは昨今ではいく
らでもあるが、1930年代にこのプロットを考え出したのは素晴らしい。少しずつ
少しずつ蚕食され、財産・家・心そのものが失われる。短いページでよくきれい
にまとめられている。老人(とはいえないか)の混乱した、破滅へと向かう意識の
乱れは秀逸。
全体を通して。
再度書くが、1961年の版。それにしても質が異常に高い。これほどの短編を編
集できたのはやはり乱歩だからだろう。当時の版権はどうなっていたのか、いさ
さか気になる。それらを超えて自由に編纂した短編集。
推理もの好き、恐怖もの好き、双方に相応しい作品集。
おすすめもおすすめ。新版もすぐに注文した。