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順列都市
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順列都市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全55件 21~40 2/3ページ
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前々から読もう読もうと思っていたので安くなった機会で購入 グレッグ・イーガン作品で読んだことがあるのはは万物理論とスティーブフィーバーくらい 万物理論もそうだが、前半の世界観の作り込み、後半の論理の飛躍が用意されていて 読み応えは抜群 さすがにSF好きから傑作と多数の評価を得る作品だけはある。 だが、科学用語はやたら難解で迂遠な説明が施される、 もしくは先刻承知がまかり通るのに対し、 どうでもいいような詳細な注釈がちょくちょく入ってきて ちぐはぐな印象を覚えた。 用語が飛び交っていて理解困難なのもあるが あまりに突飛な発想で展開するためネットの感想を読んでも 解釈が多種多様、ああじゃないかこうじゃないか考察がいっぱいある グレッグ・イーガン作品は細部の描写が結末に直結するので そこの描写を無視するわけにも行かない 考えないでぼんやり読める作品ではないことは確か、読むなら覚悟を | ||||
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過去のSFや文学の流れとは明らかに異なる世界を確立している一連のイーガン著作は、読後、まるで数式なしに難しい宇宙物理理論を理解できたかのような錯覚を与えてくれるため、病みつきになる読者も多いと聞く。 『ディアスポラ』で完膚なきまでに叩きのめされた後に手を出した本書にそれなりの覚悟をもってとりかかったのだが、部分的には意味不明な箇所も散見されたにせよ、かといってまったく歯が立たないわけでもない嬉しい誤算にまずはびっくり。 荒れ狂う気候を制御するため地球のコンピューターリソースが回収される。ソフトウェア化された富豪たちの将来も先行不透明、高騰したリソースに手が出ない一般ピープルは生きる(ソフトを走らせる)ことすらままならない未来というのは、それだけでお腹がいっぱいになりそうだが、イーガンの主眼は無論そこにはない。 そんな富豪たちに不死が可能なTVC宇宙への入植をセールスする主人公ポール。ポールから起源となる宇宙そのものの設計を頼まれるマリアは、オートヴァースと呼ばれる人工生命作成アプリのジャンキー。過去に犯した罪のトラウマに苦悩する銀行屋や、恋人生命の密航者もまた、いつもながらに素直な感情移入を妨げるキャラクターたちだ。 そんな濃いめのキャラクターたちが居住する空間として設計された、チューリング、フォン・ノイマン、(テッド・?)チャンから名付けた(笑えないオージー・ジョークのような)TVC宇宙というぶっ飛びの世界観こそがまさに本書の読みどころであり、イーガンの場合ストーリー性などを追いかけてもほとんど意味がないのである。 逆に、自己増殖するTVCの理論的基盤となるセル・オートマン理論、シュレディンガー方程式を(言葉で)証明したかのような架空の塵理論、そしてレゴ・ブロックのように原子を組み立てて遊ぶオートヴァース等に萌えることさえできれば、本書を7割ぐらい攻略できたも同然だ。 さらに神のごとく宇宙を創造したポールが辿る結末に、ヒステリーチャンネル的視点で我々地球人を重ねたり、真性無神論者イーガンの素顔をそれとなく感じたりすることができれば、(翻訳ではおそらく読み取り不可能な、塵理論をメタファーしたという各種アナグラムを見逃したとしても)私の中ではほぼ合格点に近い“理解”と考えてもよいと思うのだが。 | ||||
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過去のSFや文学の流れとは明らかに異なる世界を確立している一連のイーガン著作は、読後、まるで数式なしに難しい宇宙物理理論を理解できたかのような錯覚に陥るため、病みつきになる読者も多いと聞く。 『ディアスポラ』で完膚なきまでに叩きのめされた後に手を出した本書にそれなりの覚悟をもってとりかかったのだが、部分的には意味不明な箇所も散見されたにせよ、かといってまったく歯が立たないわけでもない嬉しい誤算にまずはびっくり。 荒れ狂う気候を制御するため地球のコンピューターリソースが回収。ソフトウェア化された富豪たちの将来も先行不透明、高騰したリソースに手が出ない一般ピープルは生きる(ソフトを走らせる)ことすらままならない未来というのは、それだけでお腹がいっぱいになりそうだが、イーガンの主眼は無論そこにはない。 そんな富豪たちに不死が可能なTVC宇宙への入植をセールスする主人公ポール。ポールから起源となる宇宙そのものの設計を頼まれるマリアは、オートヴァースと呼ばれる人工生命作成アプリのジャンキー。過去に犯した罪のトラウマに苦悩する銀行屋や、恋人生命の密航者もまた、いつもながらに素直な感情移入を妨げるキャラクターたちだ。 そんな濃いめのキャラクターたちが居住する空間として設計された、チューリング、フォン・ノイマン、(テッド・?)チャンから名付けた(笑えないオージー・ジョークのような)TVC宇宙というぶっ飛びの世界観こそがまさに本書の読みどころであり、イーガンの場合ストーリー性などを追いかけてもほとんど意味がないのである。 逆に、自己増殖するTVCの理論的基盤となるセル・オートマン理論、シュレディンガー方程式を(言葉で)証明したかのような架空の塵理論、そしてレゴ・ブロックのように原子を組み立てて遊ぶオートヴァース等に萌えることさえできれば、本書を7割ぐらい攻略できたも同然だ。 さらに神のごとき視点で宇宙を創造したポールが辿る結末に、ヒストリーチャンネル的視点で我々地球人を重ねたり、真性無神論者イーガンの素顔をそれとなく感じたりすることができれば、(翻訳ではおそらく読み取り不可能な、塵理論をメタファーしたという各種アナグラムを見逃したとしても)私の中ではほぼ合格点に近い“理解”と考えてもよいと思うのだが。 | ||||
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終盤一気に引き込まれてしまった 不死身が文字通りの意味で実現した世界での終盤のピンチはもっとも納得出来るものだし、リーマンのハッピーエンドともただのエラーともとれる最期はとっても好みだ ただ、正直この作品はアイデアが大量に出てくる上に群像劇でもあるのでまとまりが無いような気がする、いくつかの短編をストーリーもアイデアも一つにまとめたものとして視ると自分は理解しやすかった | ||||
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原始有機体の進化した姿が、グロテスクで、好みではなかった・・ 原始有機体が代々進化していくのと同様、当然コピーたちにも子孫ができて、人類は億単位で増えているのですが、 どうやって増えたのか、という一番大事な部分が、「ツールがある」「パッケージに含まれている」的な台詞があるきりだったような・・? どこかで読み落としたのかもしれませんが。 スキャンされずに発生した「人格」「意識」について、もっと言及されてしかるべきなのに、という不満が★を下げました。 前編(リアル社会)に比べて、肝心の後編(順列都市内)の比重が少ない気がします。 | ||||
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設定は好きだし、描かれている世界観は凄いとしか言いようがないです。 でも、理論的な面に比重がありすぎて、誰かと誰かが議論を戦わせる場面、一人の誰かが何かを考えている場面に埋め尽くされており、物語自体はあまり動いていない・・うーん、これは、と思っていたのですが。 上巻ラストの1行に、ビックリ。 それにしても、ポールが出資者たちをどうやって説得したのか、彼らが詐欺ではないと判断した理由は何か、いまいちよくわからなかったです。読み込みが足りないっていうことでしょうか。 | ||||
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モヤモヤが残ったので星4ですが、内容は文句なしに面白かった!pcの中で仮想pcを走らせるのは、近年サンドボックスゲーム内で全く別のゲームを走らせたりする身近な実例もあって想像しやすいと思われますが、塵理論のパラレル世界という発想、すごいですよね(^o^;データの並べ替えで世界が無限に同時に存在してるってまた話がでかいw タイトルから想像してた内容と、実際読んでみての内容はかなり違いましたが、面白いので読んで損はないです。ボリュームのある短編と言った感じなので、気張らずに読めるのもグッドだと思います! | ||||
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区切りどころが天才すぎる!次を読まずにいられないでしょ、このラストは〜!!ww実際見て欲しい、あなたもそう思うはず。 イーガン初めてでも、ネット内に精神を転送する話に興味あるんだって方には文句なしにオススメ。程よくハードでちゃんとミステリー。SFってミステリー要素が必要だと思うんですが、(宇宙の謎に挑むって部分で。そこに謎がある以上解き明かされていく過程は大事)イーガン作品はそこもとても上手い。 読むと認知する世界が広がって、疑似悟り体験ができるイーガン作品群ですが(言い過ぎでしょうか(^o^;)この本も例外ではなかったです! | ||||
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意匠を味わう類いの作品ですが、上巻にある「塵理論」の上に構築されているので、読みこなす素養のありながらも、そこに乗っかることのできない人にはすこし辛いかもしれません。 下巻は、マリアとダラムに焦点が収斂されていているので読みやすく、サクサク読めます。 「永遠」や「死」、自分の人としての輪郭について考えさせられました。 | ||||
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難しい..。 ずーっと、退屈なやりとりが続く。 しかし、上巻の後半あたりになって、書いてあることが、おぼろげながら理解できるようになってきた。 状況が少し掴めるようになって、何だか、物語の方も動き出してくるようだ。 そうすると、これはとてもスリリングで、すごく面白いと感じるようになってきた...! まだ、自分が全て理解しているとはいえないので、星4つにしたが、これは、星5つに違いないはず。 アイディアのボリュームが凄まじい。 | ||||
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電脳空間の「コピー」と、現実世界の「オリジナル」という形で分離した自我のせめぎ合いに、国家や大富豪といった組織や権力、65年前の殺人事件が絡んできて、舞台もシドニー、フランクフルト等に分散しており、これがどのように収斂していくのか、下巻に期待です。概念やヴィジョンを追うのが精一杯で、いまはとてもではないですがそれしか言えません。 | ||||
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学生の頃読んで胸躍らせた記憶が蘇り再度購入しました。 ここ2、3年前にでも書かれたようなストーリーで筆者の想像力には只々驚かされます。 | ||||
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百年の孤独があまりにも長いので、息抜きに読んでみたらすこぶる面白かった。 全600頁。数学や人工知能、生化学の知識がふんだんに盛り込まれていて、細部の理解は悲しいほどできなかったが、 筋を追うだけでも十分面白かった。これは再読決定である。 舞台設定は2045年以降の話であり、記憶や人格が仮想空間にダウンロードされ、朽ちない意識が肉体的基盤をもたないまま物語を紡いでいく。 架空の都市、散在する時間と空間の順列、創作された時間軸の進行…、中核的なプロットは驚くほど百年の孤独に似ている。 マルケスへのオマージュなのだろうか? 最新の科学技術を網羅したディストピア小説は、なんて斬新なのだろうかと驚いた後、これが20年前に書かれた小説だということを知って二度驚いた。 2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)でも、意識のデジタル化は可能だろうという見通しが示されていたと記憶しているが、 デジタル化された人間の人権や法的保護、経済力にも触れられていて、日常的な問題にまで落とし込んだ物語構成はお見事の一言である。 人口知能、人工生命を作り出す過程をつぶさに追っていくと、 ヒトの脳が映し出す現実世界とシミュレートされた仮想世界の境界は、ほとんど差がないことに愕然としてしまう。 小説では、人間が作った仮想世界で進化した人工生命体が、自己と世界への洞察を深め、仮想世界の万物理論に挑戦を仕掛ける流れになっている。 それは仮想世界と現実世界の融解を示唆する話へと展開していくが、そのまま現実世界と神の領域の融解をも示すようで、 脳で知覚する世界が、あるいは創造主のねつ造した共同幻想ではないかと訝りたくもなった。 本作については、理系の猛者たちが様々に解説を試みているので、それを参考にしながら読んでちょうどいいくらいだった。 著者のグレッグイーガンも、自身のブログで科学的に作品解説をしているようである。 | ||||
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知力の限りを尽くしあり得べき状況を予測、構成し、その狭間で生き、苦悩する人間の姿を活写する・・小説という形式における狭い意味でのSFを定義すればそんな感じになるのではないか。その意味でイーガンは本流としての伝統的SFの継承者なのだと思う。 イーガンの悪い癖でセックス直後の割腹自殺シーンなど不愉快極まりない描写もあるものの、死して、そして永遠の命を手に入れて尚、罪の意識に苛まれる姿など人の存在に関する深い示唆を含んだ内容も多く、突き放した様なラストも含めサイバー系の小説でありながら味わい深い読後感を残す。 20世紀中にSF小説が到達していた地点を知るメルクマール的作品。 | ||||
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すみません。私には難し過ぎました。だいたいの筋を追う事はできましたが、場面が飛びすぎというか、同時進行が多すぎて読むのが辛かった。 それでも、もう少しワクワクする展開があれば苦もなく読めるのですが、そんな感じもなく。 星を継ぐもの とか 幼年期の終わり とかは好きなんですが、夏への扉 でしたっけ、はイマイチな私には合わなかった模様です。 すみません。 | ||||
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一とおり読み終えましたが、正直下巻はイマイチかなと思いました。SFとして見た場合、別の宇宙という特性上、イーガンの『俺ルール』で何でもアリになってしまい、前半(上巻)ほどのリアリティがありません。 そのルールにしても、けっきょくすべての根本にあるのは上巻で語られる『塵理論』ですが、これが何度読んでも、どうしても個人的に納得できませんでした。上巻は塵理論の真偽はどうであれ物語としては問題なく読み進められるのですが、TVC宇宙が発進してしまう下巻は、まずこれを受け入れられないとダメです。 …で、私はダメでした。 端的には塵理論の洞察を得る実験(上巻)で、まるでシミュレーションにおいて途中を計算しなくても最終的な結果が得られるようなケースがありますが、それができたら逐次計算の意味がなくなってしまいます。すべての解は解析的に得られることになってしまいます。ええ?そうなの!?(そんなバカな)と。 仮に百歩譲ってそこは正しかったとしても、じゃあ、人間の精神活動はスナップショットで記述できるのかというとそれも変だと思います。もはや哲学的な議論になってしまいますが、それは愚直な(?)逐次計算の *過程* で生じると考えた方が自然かなぁ。精神のスナップショットとしてのどんな立派な文学作品よりも、生きて逐次計算を続けている一寸の虫の方がよほど魂は宿っていると思えてなりません。 ここでさらに譲って、人間の本質あるいは宇宙がスナップショットで記述できるとしちゃうと、そもそも TVC 宇宙を『発進』させる必要性すらないんじゃないか、『エデンの園配置』を作った時点で順列都市とやらは裏の宇宙で勝手に動いてるはずなんじゃないの(逐次計算に意味はないんでしょ)、と言う感じです。 以上、そんなわけで、ハードSFとして楽しく読めたのは上巻 順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) までで、下巻は疑問点がどうしても引っかかりっぱなしでストーリーに集中できなかったという次第です。逆に塵理論が素直に受け入れられれば面白いと思います。シミュレーションのマトリョーシカ宇宙が相互に織りなす世界、宇宙に対する read only 権限しか持たない人物のサイドストーリーなど、物語としての見どころはいっぱいです。 | ||||
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たいそう評判がよろしそうな作品なので読んでみました。結論から言うと大変面白かったです。上巻は。 舞台は2050年前後の地球で、テクノロジー的には情報系が主役です。 この時代、人間は全身をスキャンして人格を含めた身体を計算機内にシミュレートすることができ、彼らは〈コピー〉と呼ばれています。まだ〈コピー〉技術は新しく法整備等は追いついていないものの、社会通念としては〈コピー〉は尊重すべき人間(のようなもの)として認められつつある、そんな背景設定です。 そんな〈コピー〉たちの主たる感心事は自分に割り当てられる演算能力と存在自体の確実性(突然プロセスを停止させられたり、自分を実行中のクラスタが破壊されたりしないか、とか)で、それを巡って主人公の一人、ポール・ダラムが何やらすごいことを企ているのか…? というあたりが上巻のお話。物語としても上手でとても引きこまれます。 前職がソフトウェア系のエンジニアだったイーガンの作品だけに、〈コピー〉やその周辺の実装や実行環境に関する描写に不自然さやいい加減さがなくて、安心して読めます。その一方でひどくマニアックな記述は控えられているので、この分野に明るくない人でも読みやすいだろうと思います。 これから下巻順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)を読むのが楽しみです。 | ||||
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専門用語の意味や細部がよくわからなかった僕にも、この作品の壮大さは十分に伝わった。特に後半のランバート人との接触のところは一番盛り上がった。異星人に関しての想像力は大いに刺激された。でも結末はよくわからなかった。一体この作品はなんだったのだろう???? 永遠に生きることの空しさ、コピーとして生きることの空しさ……空しさばかりがぼくの中に残った。永遠に生きるとしても、人間の営みを続けるだけであるなら、とても耐えられないとぼくは思ってしまう。超人的な描写もあるが、時間の感覚も人間の感覚から超越されないことには、その膨大な時間の退屈さに押し潰されてしまいそうだ(どうやらそういう感覚もコントロールできることになっているみたいだが)。こうしてみると、この作品はあまりに突拍子がない、でもここまで突拍子がないとむしろ潔いと思える。 | ||||
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※以下、かなりネタバレがあります。 脳をスキャンし自らの「コピー」を仮想空間に走らせることで、肉体が滅びても生き伸びることが可能な電脳社会。 そういった「コピー」を研究することで、ポール・ダラムは永遠の生命へといたるプロセスを発見する。 永遠であるということについて。 まず、世界には無限の組み合わせがある。 蓋然性は低いにしろ、無尽蔵の猿にパソコンを叩かせれば、どれか一匹が必ずホメロスの叙事詩を書き上げる。 過去の自分、現在の自分、未来の自分についても同様、 ネットワーク上における「コピー」のように、それらが所詮ひとつの数列に過ぎないならば、あらゆる「自分」が理論上は存在することになる。 ただ問題は、自分が自分であることをどのように認識するか、という点である。 例えば「幼児・小学生・中学生」という時間的経過があれば、われわれが自分自身であるという意識を保つことはもちろん可能だが、 そのひとつひとつをランダムに抽出し、過去も未来もバラバラにしてしまえば、われわれは「自分自身」であることはできない。 つまり、自分という意識は因果関係に依拠している。 狂気の研究者ポール・ダラムは、そういった数列から自己を認識できる「パターン」を見つけ、 それをセル・オートマトンに組み込んで無限の仮想空間に走らせることにより、永遠のアイデンティティ=永遠の命が獲得できるという概念(塵理論)に到達する。 つまり、ランダムな数列の中にアイデンティティを見出せるのであれば、生から死へと続く不可逆な時間的制約の中でしか生きられないという因果関係からは解放され、そうであれば、塵のようにとりとめもなく分散した「自分」を、ひとつの主体として統合することが可能となる。 そういう著者の思考実験的な想像力、それを裏付ける知性はもちろんだが、個人的には登場人物や彼らの内面を描く筆力に特に驚かされた。 主人公は科学者ポール・ダラムだが、もうひとりの主人公、マリアという女性が登場する。 このキャラクターがすばらしい。 ダラムの世界に独立した宇宙を組み込むよう依頼されたプログラマーで、 ダラムが力説する現実離れした塵理論を軽蔑しながら、病気の母親の「コピー」を走らせる費用のため、またどこかでその理論の魅力に抗えない自分に苛立ちながらも、結局はその仕事をこなし報酬を受けとる。 タイポロジカルなネーミングさながら、マリアの宇宙から知的生命体が生まれて、数千年後のTVC宇宙内で人類との邂逅を果たすことになる。 下巻の後半部分(まさに圧巻)、そういう数千年を生き抜いた先に続く世界に住むマリアと、 そこから途方もない時空間をへだてた日常世界で、仕事の合間、死んだ両親とダラムに花を手向けるマリアというシーンがある。 ひとつの世界は無限で、もうひとつの世界はあまりにもはかない。 生活に追われながら生きているマリアが住む世界、われわれの世界は、とても刹那的であり、素朴である。 考えうる限りの孤独をちりばめた宇宙の果て、可能性の電脳宇宙から遠く離れて、自分が生きている世界をこれほど美しく感じられるとは思わなかった。 こんなに壮大で見事な物語があるだろうか。 最高。大傑作。 | ||||
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塵理論とTVCセルオートマトンという理論をSF上に展開し、さらにその理論の破綻とオーバーロードまで描いてしまう。 読み手の私は、著者の理論をおぼろげに理解したつもりになって特急列車に乗るのみ。 後は、車窓を流れる風景に見とれるしかない。 順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)からの流れでダラムの行動に着いて行くと、いつの間にか主役はプログラマのマリアに取って代わる。 現実のマリアが創造に加担した環境で目覚めたマリアのコピーを通して、無限の時間や宇宙の概念をベースにした小説を楽しむことになる。 理論に着いて行ければ、つまり理解するか、理解したつもりになることができれば、ものすごく楽しめる小説です。理系の大学生なんかにお薦めです。 | ||||
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