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その罪のゆくえ
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その罪のゆくえの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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始まりから小説としての面白さに引き込まれて読むのをやめられなかった。 幼少期の弁護士ダニエルと実母の苦悩と葛藤、後に養母となるミニーらの人物造形や農場での暮らしの物語りは魅力的で、現在と過去が交互に描かれる語り口もたいへんスムーズだ。 それだけに法廷の方の物語りは違和感がある。 弁護士ダニエルの、被告の少年フランシスへの安易としか思えない少年時代の辛い思い出の投影。この国の法制度で幼くして監禁される事の無意味さや過去の事件への後悔等に囚われ過ぎて客観的に被告の少年を見ていないようにしか感じなかった。 どう弁護するかは別として、少年の無罪を疑わないのは不自然。 皮肉な事にこの知能の高い幼い被告人と裕福だが問題だらけの家庭は不愉快だが大変説得力がある。DV父親と弱い母親も。 少年に父親がセレブな弁護団を付けるといったのを少年が拒否してダニエルに固執して譲らない。それはダニエルの「ある種の甘さ(上記のような被告への感情転移)」を少年が高い知能と他人をコントロールする能力で見抜いて利用しようとしたのだと始めから感じた。 そして利用する。 「事実としては少年は殺害してるが良心の呵責はカケラも無い。ただ演技力と高い知能で周りの人間をコントロール出来る。さて、どうなるのか?」 その興味が無ければ読まないが、 法廷では双方とも、意外な展開も大波乱も起きない。真実は明るみに出ると思ったのに... 少年自らが証言することになった時、やっとここで墓穴を掘るのかなと期待した。 実際、この少年には他人の感情を押し測る能力に欠陥が(障害が)あるので残酷な事を平気で言ってしまったりもするのだ。 読んでいても気分が悪くなる。 なのに、無罪を勝ち取る少年。 「疑わしきは罰せず」としてもだ。 直後、少年はダニエルに真相を告げる。愕然とするダニエル。 ウンザリした。 「結局コレか⁉︎」と。 暫く前に読み返してイヤな思いになった「真実の行方」と瓜二つである。 どうせ後足が悪いなら、まだ「真実の行方」の方が作品としての出来が良い。あれは騙されるわと納得がいく。 途中まで魅力を感じつつ読んでいただけに、失望感というより呆れた感が半端ない。 作者はほんとうに「罪」について考えたのか。 ダニエルの、少年の、 実母や養母の、そう、誰にも「罪」はある。 エキセントリックな少年の安易な法廷劇とラストで深い課題と魅力的な人物達が全部うやむやになってしまった。 星⭐️一つでもいいところ、 ミニーの為にもう一つ⭐️を。 | ||||
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母親は泣く。にもかかわらず人生において母親であることは十分に報われるものだ、というのが作者のスタンスだと思われる。 セバスチャンは8歳の男児を殺害した容疑で被告となる。セバスチャンは11歳。頭の回転が速い無邪気な悪魔セバスチャンだが、本書の主人公は彼を担当する弁護士ダニエルだ。 過去と現在のシーンが交互に行き来するものの、視点を混乱させるなど小説として手の込んだ仕掛けは何もなく、その意味ではくつろいで読み進めることができるだろう。 ダニエルの「母」ミニーとのシーンは愛情あふれるものだが、一方でミニーに対する成人したダニエルの怒りが提示されるため、読者はそのギャップに気づき、不協和音の解決を求める自然な流れで作品に引き付けられるだろう。巧みな構成だと思う。 イギリスの裁判の仕組みは日本と異なるらしい。 イギリスでは10歳以上は成人と同じ刑事裁判を受けるという。 また、ダニエルは弁護士として被告少年やその両親に会って話を聞いたりするが、法廷で弁論を行なうのは別の弁護士だ。 有罪無罪は陪審員が決める。その陪審員を引き込むべく、被告側、検察側双方が弁論を闘わせるのだが、検察側も検察側の弁護士を立てて弁論を行なう。 検事vs弁護士ではなく、法廷で弁論を行なう専門職としての法廷弁護士同士の闘いが展開される。 映画では「潜水艦ものにハズレはない」そうだが、法廷ものの場合も結構それが言えて、とりわけ反対尋問をいかに切れ味鋭く見せるかが注目点。 法廷を仕切る裁判長がまた印象的で、老獪なのか天然なのか判じかねる。承認の意を表わすときの、手をひらひらさせる仕種がツボだ。 本書は作者の処女作とのことだが、「ダニエルの母」の対概念として登場する「セバスチャンの母」を主人公に据え、母親は報われると言えるのかを魅力的に描いた作品を期待したい。 | ||||
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