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の評価: 3.75/5点 レビュー 143件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.75pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全143件 101~120 6/8ページ
No.43:
(5pt)

他人の夢を見ている、ような……

ピンチョン『重力の虹』に他人の夢を代わりに見ることのできる人物が登場しますが、
実際に他人の夢を見るのがどんな感じか体験してみたければ、この小説を読むといいでしょう。

『城』はカフカの作品の中でも最も「夢のような」作品です。
カフカの作品の明らかな特異性は、単純に不合理であったりファンタジックであるのではなく、
本当に「夢っぽい」、我々が実際に見る夢の性質を如実に再現していることです。
この点で、カフカの作品はラ米文学などに見られるマジックリアリズムとは明らかな一線を画しています。

例えば、相手がなにか言う、自分がそれに答えるが、それは実際に自分が言おうとしたことと違っている。
そしてそれを相手が異様な曲解のもとに聞き、さっき言ったことと矛盾することを言う。
こういうやりとりが終始続きます。

夢日記をつけたことのある人なら覚えがあるかもしれませんが、夢の内容を記述するのは容易なことではありません。
錯綜した夢の内容を、錯綜したまま描けるとしたら、すでにその人は精神を幾分か病んでいるのではないでしょうか。
カフカはそれを完璧にやってのけます。

村上春樹氏はカフカの影響を受けていると言われますが、カフカの小説と村上氏の小説はかなり雰囲気が違います。
村上氏の小説における非現実性はむしろマジックリアリズムのそれに近いもので、
カフカの神経症的な非現実性とは異なるものです。
村上春樹の源流を探ろうという気持ちでこの『城』を読むと、きっと失望してしまうでしょう。
それよりも「他人の夢を見るのはどんな感じか」という興味のもとに読んだほうが楽しめると思います。

読み終えた後に思うのは、こんな悪夢をもし自分がずっと見続けていたとするなら、
そしてこのように明晰に文章にできるほどはっきりとそれを認識して、「今晩もあの夢を見る」と分かっていたなら、
ほとんど間違いなく気が狂ってしまうだろうということです。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.42:
(2pt)

まどろっこしいww

「変身」って作品でカフカを知り、この「城」を読んでみた

一言 タイトル通りww

なのだが、今の現代社会もイコールに感じる

職、組織、肩書きという「枠」の中で人間の価値を判断しようとする人間の苦悩、そして、そこに強く「依存」しようとする人間達の矛盾

カフカの作品 問題提起としてはいいが、人間性には、危険なもの(あきらめの思考)を感じた

ま いつの時代も 人間の弱さの違いに大差はないもんなんだろうと

 だが、今のほうが遥かに、どんな立場であろうが安価に情報を手に入れられる時代に「感謝」しなければと感じた
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.41:
(1pt)

退屈だけど

小説そのものとしては、星は1つだと思う。話は退屈だし、やたら長いし、文章も読みやすいとは言えない。
カフカがこの小説をリリースせずに焼き捨ててくれと言ったのも頷ける。間違っても人にオススメできる小説ではない。
けれども、その一方でものすごくリアリティを感じ、心に残る内容であった。もう一度読んでみたいなとさえ思う。
僕はそれなりに大きな企業で働いているが、この小説の主人公が感じるわけのわからない社会の暗黙の了解や、理不尽な人間関係を同じように感じることが多々ある。そしてその社会でその理不尽さを受け入れて生活して行く人の気持ちが分かる。
そんな中で、この主人公はそれに屈服せず、それらに立ち向かって行く。そんな姿に勇気をもらうことができた。
現代の閉塞感に通ずるものを、この大作は表現していると思う。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.40:
(3pt)

組立困難な彫刻のよう

物語の構造が面白いですね。
内容は冗長で途中でイラつくほどです。

城という伏魔殿のような存在をその周りに取り囲む滑稽な人間達を描きながら浮かび上がらせる。
文章による3D画像のような作品。

木を彫刻刀で彫っていき輪郭や形を浮かび上がらせるような感覚とでもいったらいいのか。
しかもそれが同じ人物に対してすら人によって彫りあがった人物像が異なり、それが何人も重なるため人物描写によって幾重にも彫りあがった木が重なりイビツな何かが現れてくる。

また、同じものを同じようにみているにも関わらず人によって全く違う認識をするこの世の不条理を気持ち悪いくらい濃密に描いている。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.39:
(5pt)

まわりくどい、うざい、長い、おもしろい。

「変身」「審判」は一応オチ(主人公の死)がありますが、「城」にはオチがありません。

カフカの描く不条理は「=ゴールにたどり着けないほどのとてつもないまわりくどさ」だと思うのですが、「城」ではもうほんと、あたま狂いそうなくらい、全部が全部まわりくどいのです。

だから、「早く話をすすめろよ〜!」と思うのですが、なぜかそのまわりくどさにカタルシスを感じてしまうのは、やっぱり現代というまわりくどい世界に暮らしている私の心がそれに安心してしまうからでしょうか。

ということで、まわりくどいのは全然好きじゃないのに、オチがないのも好きじゃないのに、僕はカフカの長編作品の中ではもっともまわりくどいこの「城」が一番好きなのです。一番憎らしいのに、一番好きなのです。まわりくどい言い方ですみません。

故に、カフカ三部作は「変身」「審判」「城」の順番で読むと、よりそのまわりくどさによる文学的カタルシスが味わえると思います。いらいらしつつも。

・・・・・・・・・・

それから蛇足になりますが、この作品をレビューしてる方々はすごい的確でおもしろいので、他の作品レビューも見てみるといいと思います。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.38:
(3pt)

田舎の閉鎖性が…

よくでた作品です。田舎は一見秩序があるようで、実際は誰の意見もなく、村に入ってきた異物に意味もなく過敏に反応します。大して害もないのに、花粉に異様に反応する抗体のようです。欧州でも田舎はどこも同じなんだなあと感じます(実家の田舎もこんな感じです)。ユダヤ人である彼は常に、花粉さながらの反応をされて続けて来たんでしょうね。花粉が花粉であることの存続を証明するのは骨がおれます。

村上春樹をバカにするレビューがありましたが、文章の立体感や滑らかさ、娯楽としての度完成度では(娯楽と書くと嫌がる人がいるかもしれないけれど)彼の方が数倍上です。

会話文が長すぎて途中から誰が喋っている文章かわからなくなります。(作品の個性とは別に)恐らくまだ言葉をそぎ落としていない段階だからでしょう。だらだらと続く退屈な文章を、外国の文学だからといって有り難がっているのは、文学村のプライドでしょうか? モチーフはかなり面白いです。逆に村上春樹に書き直して欲しい作品です。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.37:
(5pt)

恵まれた人生の方には分かりずらい本

ズバリこの本は、文学の極みを描いていると私は思っています。よつて、アートと同じで、頭ではなく体感で理解するしかないと考えています。カフカは、おそらく色々な意味で苦難の人生を歩んでいかれた方だつたと思うからです。このような意味で、私にはこの、城の持つているメツセージがとても良く分かるのです。これは、未完ではあるが、戦争と平和、と並ぶメルヘンタツチの大傑作と思います。独創の世界を堪能できます。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.36:
(5pt)

知的であり、挑戦的であること

カフカの小説は、主人公が「知的」であり、「挑戦的」である。

それは近代小説とよばれる作品の中で、内省的であることで周りの行動会話を映し出す不在の中心のごとき「気弱げな」主人公たちの存在とは、質的に何かが違う。このヒロイックな感覚は、ただの一面である。ドストエフスキー以降、小説は「書かれている内容に対する解釈を行うもの」となってしまった。そのことはかの地で「形式主義」と呼ばれる批評家たちが最初に出現したことにあらわれている。もちろん、あれだけ巨大な「解釈の対象」を、ほとんど超絶的な魅力で描き出したドストエフスキーは桁が外れているが、バフチンにしろシクロフスキーにしろ、ドストエフスキー以上の形ではあの種の創作物は書かれえないと理解していたからこそ、その構造を書く偉大な「批評家」(ロシアフォルマリズム)になったのだろう。

「書かれているもの」と「その解釈」。この小説的な構図はおそろしいほどはっきりと現代にまで続いているし、およそ覆されそうにもない。ただ、カフカがしたことを除けば。

ドストエフスキー以降の世界でカフカだけが「違っている」のは、その「対象←→解釈」という構図から出ようとした点にある。
作家の誰もが「解釈されること」の内側で泳ぎ方を覚えようとする中で、カフカは「解釈」という意味そのものについて考えていた。これはたいしたことではなかっただろうか? 意識的にであれ無意識的にであれ、いまだに自分が書いた作品が「どういう意味で解釈されるのか」を考えつつ、ものを書くしかいない作家たちの世界から見れば。自分が巻き込まれている絶対的な尺度(「対象←→解釈」)の中で、うまく泳ごうとするのではなく、誰もがその中にいながら、誰も意識していない捕縛の構図そのものを取り出すこと。物事を理解することや問題を理解することの意味を、「批評」(解釈)ではなく「小説的形式」(対象)によって実践すること。ここにこそカフカの特別さがあるのではないだろうか。

物事に対して知的であり、挑戦的であるほど、問題の輪郭は永久に膨らんでいく(=k)。この事態は、産業資本主義による自己増幅、意味や解釈のみが永久に自律的増幅を見せる、現代社会の病巣そのものである。カフカの作品は、この抽象的な現実を鮮やかに暗示していた預言書であるともいえる。不惑に物事をとらえ、自身のパラダイムや内的構造を極限にまで反映した彼の作品は、現代に生きるひとびとこそ読むに値する。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.35:
(3pt)

着想は唯一無二だが・・・・。

カフカは税務官として多忙な日々を送りながら小説を書いていた。その繁忙な中で全集が出るほど作品を生み出した事は驚く。だが、職業作家でなかったカフカには本当に時間が無かったらしい。友人マックス・ブロートに残した遺言の中に外に出すべき価値のある作品として本作の名は入っていない。なるほど冒頭部分の不穏な世界は巧く滑り出しで引き込まれる。だが、城や城を中心とした官僚組織に近づけない過程が惰性で書いたような立体感の無い会話で構成され、正直に言って冗長すぎる。仄聞した事だがカフカの日記には「今日は一文字も小説を書けなかった」という苦悩が残されているらしい。『変身』と短編では間違いなく天才の着想と完成度を誇っていたカフカからすれば、本作は読ませるに値するレベルでは無かったのではないか?もっと言えば若干41歳で逝去する事がなければ、カフカは本作をリライトし超絶的な名作にしていたと思う。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.34:
(3pt)

読み始めはツライです

何とか読了しましたが、途中で何度か「読むの止めようかな……」と思いました。
でも、全編の3分の1くらい読んだ辺りからは物語に展開があったので、意外とスムースに読み進む事ができました。

さて、読後の感想ですが箇条書きにしてみます。

1.作品の時代背景や当時の欧州の習慣などを知らないと、正確にこの物語を判断できない気がします。
登場人物のちょっとした仕草や言葉の中に実は重大な意味が隠されている可能性もあるので。

2.しかしながら、そもそもこの小説には「意味」とか「主題」とか「教訓」などは全く無い気もします。
カフカ自身、この小説を多くの人々に読んでもらおうなどと言う野心や期待を持っていなかったのではないでしょうか?
「何となくこういう物語を書きたいから書いた。でも書いているのが自分でも面倒になったので途中で止めた」事実はそんな事なのではないでしょうか。

3.読書中は「つまらないロールプレイングゲーム」をしているような感じ。
例えばドラゴンクエストだったら、主人公がある村に到着したら、村の人たちから「ゲーム進行のヒント」を聞き出さなければならないので、その村をウロウロしますよね。
 まさにあの感じで主人公Kは村をうろつき、村人から様々な情報を聞き出すのですが、その台詞の長い事長い事……。

4.何時間もかけて、やっと数千ピースのパズルを完成させた!と、思ったら1ピースだけ足りなくて結局未完成になってしまった感じ。不完全燃焼。
(この小説に限って言えば、あのような尻切れトンボもあり、と言えばありなのでしょうが)

まあ、それでも登場人物たちの台詞の中にはドキッとさせられるような人間に対する鋭い洞察に満ちた言葉も多々あり、時代や文化に関わらず人類共通の世界が描かれているのも確かで、全くつまらない物語りとは言えません。

読書好きで時間に余裕のある人にはイイ小説かもしれません。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.33:
(2pt)

カフカとはこれでお別れ。

う〜ん、これで終わるのか?!という感じ。全くの尻切れトンボではないですか。もう少し、何とかして欲しかったというのが正直な感想です。

カフカの長編小説はいずれも未完だそうです。それでも読まれつづけているのは何か魅力があるからだと思いますが、今のところ理解できていません。かといってもう一度読む気にはなれないので、カフカとはこれでお別れとします。自分には向かないとわかっただけでも収穫でしょう。

なかなか自分の目的に近づくことができず、だんだん遠ざかってしまう矛盾が描かれています。夢の中の出来事のように非論理的な展開を敢えて楽しんでいるようにも見えます。

新潮文庫版の『シーシュポスの神話』では、「カフカの場合、作品の細部にわたってすべてを解釈しようとのぞむのは間違いであろう。」とカミュは言っています。読み方を間違えてしまったのか。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.32:
(4pt)

現代社会の核心を衝いたシュールレアリズム

600ページを超える未完の大作だが、シュールな物語の展開、登場人物の長いモノローグの応酬を基調とする独特の文体、やけに分析的な主人公Kの台詞等に引き込まれてしまい、あっと言う間に読破してしまった。村上春樹はカフカの影響を強く受けていることを自ら認めているが、この作品が無かったら村上春樹は存在しなかったのではないかと思えるほど、本書には村上春樹の小説のエッセンスが盛り込まれている。村上春樹のファンだったら本書は必ず気に入るはずである(実はこういう私は必ずしも村上春樹のファンではないが)。

前述のとおり本書は未完であり、ストーリーとしては完成されていないが、権威の象徴である「城」とその支配下にある「村」の住民たちによって紡がれる本書の主題は明確である。権威である組織のためにただ盲目的に従う人々をアイロニーを交えて書く一方で、権威に対して批判的で、自由な発想を持つKは結局異邦人でしかなく、世界から完全に阻害されてしまう。この主題が意味するところには半ば恐ろしさまで感じてしまった。特に、現代社会の象徴である高度な官僚制の描写に関してはユーモアと鋭利な視点が混じっており、秀逸。

半ば以降からは堂々巡りのようなストーリー展開になってしまうが、主題はあくまで明確である。カフカは本書の途中で主題を書ききった一方で、あまりにも話のスケールが大きくなりすぎたので、物語を完結することができなくなってしまったのではないか。シューベルトの交響曲8番のように。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.31:
(2pt)

いらいらする。

不条理小説。
ストーリー展開自体ももやもやするが、それよりも、キャラクターのセリフ回しや主人公の性格にイライラさせられる。
恐らくは「そういうもの」なのだとは思うが、それでこの長さは耐え難い。少し読んで肌に合わないと感じたら、即座に読むのを読める方が好いと思われる。逆に、少し読んでも嫌悪を感じなかったら、何も期待しない限りは読み進めるのに苦はないと思う。
どちらにしても、気楽に読める娯楽作品でないことは確か。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.30:
(5pt)

「城」への門は開かれたまま

なかなかのボリュームにもかかわらず、本書で展開される時間はせいぜい一週間足らずである。それというのも、本書のほとんどがダイアローグで構成されているからだ。しかもそれは村の諸々の人々とKとのやりとりなのだが、それぞれ一旦喋り出すといつ果てるともしれずに延々と続いていくため、ダイアローグでありながらある意味でモノローグと言えなくもない。

職業の有無だけでなく、その職業に従事することを公的に、そして世間的に認められることがアイデンティティとなるならば、「周り」の存在なしには「自己」の存在はない。つまり、社会という枠組みの中でしかもはや自分を証明する居場所がないのであり、そこから逸脱してしまった場合、Kやバルナバスのように社会から締め出される。

たいへん残念ながら本書は未完の書である。したがって「城」への門は開かれたままであり、様々な解釈が可能で、そこからどのような結論も導き出すことはできまい。しかしながら、知力に長けたKの当意即妙な反駁や機転の利いた弁明、そしてなによりも訳者の歯切れの良い訳のおかげで、それだけでもたいへん読み応えのある作品となっている。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.29:
(4pt)

迷宮の旅路

「ボルヘスは旅に値する」という言葉があるけど、この「城」も何とも奇妙な旅としての体験を読者に与えるのではないでしょうか。その旅は、奇妙な形をした未完成の迷宮を行くものです。それは冬のモノトーンです。行き止まりの袋小路、何本もの分かれ道、退屈なまっすぐ道、落とし穴、急カーブ、きつい上り坂、下り坂、意味のつかめない標識などでできている迷宮です。それは人生を生きることの謎というか不条理というかでこぼこ道というか、そんなものです。
 カフカは常に消滅にいたる文学と言われます。たぶん、積極的に肯定することはいつまでもできない文学です。しかし、人間が生きていく以上、それは無視できないものとして屹立しています。その点で歴史に残る文学なのでしょう。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.28:
(5pt)

鬱病者の悪夢は延々と続く

私は鬱病である。
 最悪の鬱状態の時、眠っては目的地は判っているのにたどり着けない、そう、私の見続ける夢は、この小説そのものであった。
 目覚めては倦怠感でなにも出来ない。つらくなって眠れば、そこにはカフカの描いた「城」の世界にはまりこんで行く。そして、後味の悪い悪夢から覚めても現実が悪夢のようにつらい。
 薄闇の中を延々と続く城へと続くはずの無い迷宮の中をさまよう。
 悪夢だと判っているのに抜け出すことが出来ない。
 カフカの描いた「城」は、まさに悪夢そのものである。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.27:
(5pt)

現代人に突きつけられた絶望的宣告

人間とは何か。
神が死が宣言され、人間が持つ主体性の確立が喫緊の課題となっていた20世紀前半、
この問いは計り知れない重みを持っていた。

カフカは本書で、「職業」という存在形式を剥ぎ取られた人間には何が残るのか、という観点から、
人間とは何か、という問いへの回答を試みる。

そして、「職業」による存在形式を失った人間は「まるっきりの無」であると喝破。
人間がアプリオリに持つ主体性の完全否定という絶望的な回答を提出する。

同時代の実存主義者サルトルが、人間とは本来なんであるか、という問いに
「人間の本性は存在しない」としつつも、「人間はみずからがつくったところのものになる」
と回答し、人間による自由な主体性創造の余地を残したのとは対照的だ。

職業を離れた状態で、一人の人間としての確固たる主体性を持ち得るか?
現代人にはカフカの絶望的な回答への反駁が求められている。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.26:
(5pt)

未完の大傑作

カフカというと真っ先に『変身』を思い出すかもしれませんが、僕は『城』が一番好きです。カフカの作品で、もっともカフカらしい文体で書かれているからです。

測量師として城から依頼を受けたKだが、なぜか仕事を与えられず、城からも敬遠される。Kは試行錯誤を繰り返す…ただそれだけの話で600ページ以上もあり、なおかつ未完。なんとも奇妙な作品ですが、文体がとても美しいです。『文学も芸術』と言うことを改めて思い知らされます。異常なほどの台詞の長さ、シュールな展開、時たま出てくるカフカ特有の複雑な比喩、登場人物の強烈な個性etc・・・仮にこの作品に結末があったとしても僕は知りたくないです。Kには一生彷徨っていて欲しい・・・そう思ってしまうほど本当に綺麗で鮮麗された文章です。

ちなみにこの作品、『掟』の超ロングバージョン…とまでは言い切れませんが、やはり『変身』『審判』『城』ともにテーマは似てますね。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.25:
(5pt)

普遍的な問題意識

測量士としての仕事の依頼で村に招かれたKであったが、どうしても目的地の「城」にはたどり着けない。
異邦人であるKは村の中では、測量士という「職業」のアイデンティティーしか持ち得ない。彼は「測量士だからこそ」助手をあてがわれ、
「測量士だからこそ」他人から奇異の視線を浴びる。フリーダはそんなKを唯一、彼だからこそ愛してくれた女であったが、そんな彼女も
実は、酒場の従僕たちの気を引くために、「測量士だからこそ」Kと付き合っていたということが発覚する悲劇。
異邦人である彼は、村人から阻害され、たらい回しにされていく・・・。

この作品は、合理性を追求するがゆえの縦割りにマニュアル化されたはずの城という名の「お役所」が、ささいな連絡の行き違いが発端となって
誤作動を起こし、一人の男の運命を次から次へと翻弄してしまう非合理を生む、というパラドックスも描いている。そしてその「お役所」
という官僚機構とKという一個人は、絶望的な距離によって隔てられている。それは物理的な距離であるのと同時に、Kがあらゆる手を尽
くしても、彼の訴えを訊いてくれるはずの役人「クラム」に会うことができないということでも示されている。村民の訴えを聞くために存
在する組織の末端に位置する役人にさえ、Kは会うことが困難なのである。
さらには、Kはもちろんのこと村民も「お役所」がいったいどのような仕組みで、内部で毎日何が行われているのか、漠然としか知り得ない。
それを知るための唯一の手段は、使者としてお役所に務めているバルナバスからの拙い伝聞だけである。この『城』の中で「お役所」は常に、
具体的な首長という人間の身体をもつことなく、Kや村人に対して不気味でとらえどころのない世界観となって去来する。

『変身』にしろ、この『城』にしろ、カフカ作品で書かれているのは家庭や村落という狭い領域を舞台にしたささいな出来事である。
だがしかし彼の小説の射程は、時空を超えて伏流する普遍的な問題をとらえている。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.24:
(4pt)

読み手が不条理な未完の問題巨編

池内訳をやっと読了。高橋義孝訳よりはこなれた訳文とは思うが、どちらが優れているかはわからない。最近の『カラマーゾフ』などは、明らかに亀山新訳がわかりやすいと思うが、とにかく『城』自体が読みにくい。特に後半は延々と続く対話的な進行がどこに向うのかままならず、正直言ってしんどい。その上、未完というのは、それこそが「不条理」?
保坂和志なら、これこそ小説というだろうが・・・・。
1883年、マルクスが死にカフカが生まれた。
マルクスは「朝には農耕民として、夜には批評家として」云々と一人の人間には本来様々な可能性があり何にでもなることができ、様々な活動を担うべきであるとし、職業人としてのみ規定される人間を開放しようとした。カフカは『城』において職業的な属性にのみ規定され、なおかつその職業からも疎外される人物を描いた。
以上は、これまでよく指摘されてきたことだが、『城』のKはとにかくよくしゃべる。少なくとも測量士であるだけでなく、おしゃべりな話者ではある。『変身』や『審判』といったイメージどおりの「疎外された人間」風の文体は、『城』では最初の4分の1くらいまでであって、それ以降は所謂カフカ的な登場人物とは全然違うことに気付く。対話的なやり取りは相互が大変饒舌だ。しかし、双方の理解ばかりはままならず、常に行き違っている。この点はカフカ的かとも思われるが、それにしても『城』はカフカ作品のなかでも特異なのではないか。
官僚機構の硬直性とか、僻村の閉鎖性とか、なるほどそうしたテーマも見えるかもしれないが、この饒舌性、対話への熱中、相互のディスコミュニケーション、話者自身が話していることと、やっていることの関連が把握できていないような不安定、不確定なあり方、むしろそちらのほうが大いに気になった。
城―カフカ・コレクション (白水uブックス)Amazon書評・レビュー:城―カフカ・コレクション (白水uブックス)より
4560071551

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