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の評価: 3.75/5点 レビュー 143件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.75pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全143件 81~100 5/8ページ
No.63:
(4pt)

不毛と無駄の物語

『城』は、カフカの小説の中では最長の長編です。登場人物がけっこう多い小説なので、登場人物の名前と人間関係を整理しながら読むことをおすすめします。
『城』は未完の小説ですが、未完であることが物語の不毛さに拍車をかけています。『城』に限らず、未完であることが必ずしも完成度を下げる結果にはならないところが、カフカ作品の面白いところだと思います。

主人公のKは測量士で、城にたどり着くために努力するのですが、どんなに頑張っても城にたどり着くことができません。Kは城の領地である村の住人と会話しますが、しょっちゅう心がすれ違います。Kや城については謎が多く、城で働く役人の仕事の手続きはとても込み入っています。
一見すると奇妙な小説ですが、私たちが生きる現実の世界もこうした徒労に満ちていると思います。不毛な行動や無駄な作業に満ちており、当時の役所仕事の能率の悪さを窺い知れる小説でした。ちなみにフランス政府は、役所仕事の能率を測定するために、2006年に「カフカ指数」を導入したそうです。

巻末解説には、「第二次世界対戦の終了直後、フランスの哲学者サルトルや小説家カミュが『実存主義』を唱えた。カフカはまず、その実存主義者によって発見された。論じられたところはかなりちがっていたにせよ、正確な本能が見つけたといえるだろう」と書いてありました。実存主義者のカフカ論に論点のズレがあったということは、重要な指摘だと私は思っています。
城―カフカ・コレクション (白水uブックス)Amazon書評・レビュー:城―カフカ・コレクション (白水uブックス)より
4560071551
No.62:
(5pt)

感謝

iPadにKindleアプリを設置して、Amazonで調べると無料の本があり、さらに童話なのですぐダウンロードをし、子供に読ませています。ありがたいです。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.61:
(5pt)

風のように、一見意味もなく吹きつのっているようで、遠くの見知らぬところから送られてくる「城の力」

カフカの長編は「失踪者」「審判」「城」といずれも未完のまま、カフカの死後に出版されましたが「城」に関してはこの未完という形が完成型なのではないかと思います。
 どこまで行ってもたどり着くことはできない。
 村に及ぼす「城の力」について、オルガが語る場面が象徴的です。
 オルガの妹アマーリアが、彼女の美しさに心惹かれた城の役人からの呼び出しを拒否したことから始まったオルガ一家の不幸。
 城から告発があったわけでなく、何ら許してもらうこともないにもかかわらず、村は自分たち家族を許さないと受け取り、それがためによけいに村から拒否される。意味もなく人々は不安がり、誰もがそうするしかなかったと受け入れている。
 一見意味もなく吹きつのっているようで、遠くの見知らぬところから送られてくる。
 そんな風のようにすべてに「城の力」が働いているというオルガ。
 いったん方向が間違うと、組織は間違った道を突き進み、そちらに行ったまま時がたっていく。
 柔軟な対応ができない組織の象徴が「城」なのか。
 外部から村にやってきたKは、冗談とも役所の気まぐれともつかないことに、どうして従わねばならないのかとの態度で、村人からすれば異端児である。
 しかしながら、測量士と名乗っているK自身、本当に測量士なのかどうかも実は明らかではないことから、物語の行く先は混迷を極める。
 「城」は「失踪者」や「審判」と比べ、まさに一筋縄ではいかない物語である。
城―カフカ・コレクション (白水uブックス)Amazon書評・レビュー:城―カフカ・コレクション (白水uブックス)より
4560071551
No.60:
(4pt)

流刑地にて「が完成度。、、、しかし、

城の未完成性にはもっと面白い。
_1_到着、もすでに
池内紀は部分の斜線も買い替えさせた。もちろん
16_残されたKは、、 
21_とうとう起きてしまった、、
22_なにげなく辺りを、、
23_このときようやく、、
24_もしエアランガーが、、
25_目を覚ましたとき、、
城―カフカ・コレクション (白水uブックス)Amazon書評・レビュー:城―カフカ・コレクション (白水uブックス)より
4560071551
No.59:
(4pt)

なんといっても0円でこのコンテンツ

文庫本も持っているが、いかんせん字が小さいくて見づらい。キンドル版なので、読みやすい。ただ、訳は少し古い気もする。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.58:
(3pt)

"城"とは『城』のことだ

オーストリア=ハンガリー帝国領プラハ出身の、20世紀文学を代表するユダヤ系ドイツ語作家フランツ・カフカ(1883-1924)の未完の長編小説、1922年執筆。『失踪者』『審判』と並ぶいずれも未完の三つの長編小説のうち、最も執筆時期が遅いもの。

"城"から測量士として雇われたK.が、それにも拘らず延々とその"城"自体に辿り着けないまま、そもそも"城"からの呼び出しが一向にやってこない、という物語。『審判』に於ける"訴訟"と同様に、最後まで"城"の実体が明示的に語られることは無い。この物語でも、やはりその中心は空虚の一点である。内実無き不定点としての"城"、無限遠点としての"城"。その如何なる意味でも目的たり得ぬ不定点の周りを、方向も無く浮遊するばかり。物語が、"城"の実体に近づくようで手許を零れ決して到り着かず、或いは全く脱線していってしまう。物語のかなりの部分(とりわけ後半部分)がK.と他の登場人物との冗漫と云っていいほどの対話から成るのであるが、K.が外部から"城‐村"を訪れたという一事から繰り出される言葉の横溢に、K.自身にとっても読者にとっても"城"は益々その果てが彼方へ茫漠となるばかりだ。カフカ自身の筆が"城"に向かう気配が殆ど見えないのだから、読者はその無軌道に翻弄されるしかない。

そのうちに、K.も読者も不定点としての"城"の、その非自明性・不可視性に対する異和の感覚が知らず麻痺していってしまうのではないか、馴致されていってしまうのではないか。そして、不定点を紛い物の(無)内実・自明性という虚偽意識で埋め込まれることで、欺瞞でしか在り得ないところの日常性が成り立つ。不条理性から頽落した惰性態としての卑俗な日常性。そこには必ず、頽落した言葉、則ち駄弁のガラクタが堆積している。現実のどの瞬間を輪切りにしてみても、この物語の任意のページをめくってみるのと同じように、不定点を凝視する「覚悟」を失った冷笑面の方向無き言葉の乱反射が層を為しているだけだ。この瞬間を時間軸で積分して間延びさせた代物が、キェルケゴールが「批判」した「現代」の生の在りようだ。美的瞬間の対極としての日常性。つまり、不定点は無限遠点としての"城"ばかりではない、あらゆる瞬間が不定点で充溢しているのだ、"城"はその記号的な象徴でしかない。我々は既に、その充満した不定点という縁無しの空虚へ失墜しているのだ。そうした無間地獄として以外に在り得ない人間存在の自由性――則ち実存としての生――を自覚し不条理な世界に対して歓喜しながら豪奢な敗北に墜ちていくか、安いハリボテ同然の虚構を次々と不定点へ投げ込んでみては自己欺瞞で騙された振りをし通して安逸な日常を卑しく寿ぐか。あれかこれか、二つに一つだ。"城"は、このいづれを選択するか、その試金石だ。それは読者に対する小説作品としての『城』にも云えることだ。

それ故に、"城"とは『城』のことだ。

(新潮文庫版)
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.57:
(3pt)

”城”と『城』

オーストリア=ハンガリー帝国領プラハ出身の、20世紀文学を代表するユダヤ系ドイツ語作家フランツ・カフカ(1883-1924)の未完の長編小説、1922年執筆。『失踪者』『審判』と並ぶいずれも未完の三つの長編小説のうち、最も執筆時期が遅いもの。

"城"から測量士として雇われたK.が、それにも拘らず延々とその"城"自体に辿り着けないまま、そもそも"城"からの呼び出しが一向にやってこない、という物語。『審判』に於ける"訴訟"と同様に、最後まで"城"の実体が明示的に語られることは無い。この物語でも、やはりその中心は空虚の一点である。内実無き不定点としての"城"、無限遠点としての"城"。その如何なる意味でも目的たり得ぬ不定点の周りを、方向も無く浮遊するばかり。物語が、"城"の実体に近づくようで手許を零れ決して到り着かず、或いは全く脱線していってしまう。物語のかなりの部分(とりわけ後半部分)がK.と他の登場人物との冗漫と云っていいほどの対話から成るのであるが、K.が外部から"城‐村"を訪れたという一事から繰り出される言葉の横溢に、K.自身にとっても読者にとっても"城"は益々その果てが彼方へ茫漠となるばかりだ。カフカ自身の筆が"城"に向かう気配が殆ど見えないのだから、読者はその無軌道に翻弄されるしかない。

そのうちに、K.も読者も不定点としての"城"の、その非自明性・不可視性に対する異和の感覚が知らず麻痺していってしまうのではないか、馴致されていってしまうのではないか。そして、不定点を紛い物の(無)内実・自明性という虚偽意識で埋め込まれることで、欺瞞でしか在り得ないところの日常性が成り立つ。不条理性から頽落した惰性態としての卑俗な日常性。そこには必ず、頽落した言葉、則ち駄弁のガラクタが堆積している。現実のどの瞬間を輪切りにしてみても、この物語の任意のページをめくってみるのと同じように、不定点を凝視する「覚悟」を失った冷笑面の方向無き言葉の乱反射が層を為しているだけだ。この瞬間を時間軸で積分して間延びさせた代物が、キェルケゴールが「批判」した「現代」の生の在りようだ。美的瞬間の対極としての日常性。つまり、不定点は無限遠点としての"城"ばかりではない、あらゆる瞬間が不定点で充溢しているのだ、"城"はその記号的な象徴でしかない。我々は既に、その充満した不定点という縁無しの空虚へ失墜しているのだ。そうした無間地獄として以外に在り得ない人間存在の自由性――則ち実存としての生――を自覚し不条理な世界に対して歓喜しながら豪奢な敗北に墜ちていくか、安いハリボテ同然の虚構を次々と不定点へ投げ込んでみては自己欺瞞で騙された振りをし通して安逸な日常を卑しく寿ぐか。あれかこれか、二つに一つだ。"城"は、このいづれを選択するか、その試金石だ。それは読者に対する小説作品としての『城』にも云えることだ。

それ故に、"城"とは『城』のことだ。
城―カフカ・コレクション (白水uブックス)Amazon書評・レビュー:城―カフカ・コレクション (白水uブックス)より
4560071551
No.56:
(1pt)

不快です

未完でよかった。
二度と読まない。
吐き気がするような人物たち。

とにかく不快です。
お金出して買ってないのに文句言うのもおかしいですが、
読んでてこんなに腹立たしかった本も珍しい。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.55:
(2pt)

最初にやった人

なんであれ、最初にやった人は偉いということか。今ではこの手の作品は全然めずらしくないので斬新さを感じなかったが、カフカが偉大なのは最初にやったからで、それ以上のものはないと思う。カフカの作品はまずアイデアありきで、アイデアがすべてといっていいと思うが、短篇であるならアイデアだけで押し切れるが、長篇となると難しくなり、そこに意味を持たせようとし始めたり、アイデアに尾鰭がつきすぎて水ぶくれしたような内容になってしまうと思う。「城」はそういう意味で失敗だと思う。最初のアイデアが結局、書けば書くほどに、収拾がつかなくなってしまった作品だと思う。そこに意味を見出したり、それこそが現代的だとか現代人の不安を表しているとか、いくらでも言えると思うが、簡単に言ってしまえば、カフカのアイデアや構想がまとまりきれていない、かき混ぜるだけかき混ぜてよくわからなくなってしまった、まさに未完成の作品だと言える。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.54:
(5pt)

どこにも属さない、孤独

現代社会への批判とか予見とか、何かの属性を通してしか自分を認識できない人間の悲哀とか、

いろんな読み方が出来ると思った。

あとがきにも書いてあるように、カフカ自身、ヨーロッパ化された西方ユダヤ人として生まれたが、

キリスト教世界には属さず、またチェコに生まれたが、ドイツ語を話す。つまり、どこにも完全には属さない、

生まれながらの「異邦人」であったようだ。

確かに、カフカの作品には、決して報われる事のない、のたうちまわる孤独さ、を感じる。

得体のしれない「城」は不気味で、村の人はなかなか打ち解けてくれない。

会話のやりとりで数十ページも費やす箇所がいくつもあることや、Kが中々理屈っぽいので、やきもき

させられるが、ストーリーには引き込まれた。余り深く考えず、カフカを感じられればいいと思う。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.53:
(5pt)

無料

無料なのでダウンロードしてみました。
まだ読んでませんが…
もっともっと無料でダウンロードできるものが増えればいいなと思います。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.52:
(5pt)

読み終えて、景色が変わる本。

簡単に、こうだと言えない類の小説だと思います。
決して読みやすくはないのですが、導入部の流れが素晴らしいですね。
連想したのはつげ義春さんの『ねじ式』のようなイメージでした。
そこを通過して、夢の海の中を彷徨っているうちに、この作品の重さで少しづつ圧迫されてゆきます。
カフカは労働者災害保険局の優秀な勤め人でした。
モチーフになっているのは、役所の仕事だろうと思います。
カチッとした強固な組織の中で行われている行為や会話は、見方が変われば実にシュールに映ります。
主人公のKは、最初は奇妙だと感じていたのに、時間が経つに連れ同化してゆきます。
本人はそれに気がつかないようです。
人が喋るたびに真実は入れ替わり、事実も変更されてしまいます。
こういう世界に我々は棲んでいたのか、と思わせられてしまいます。
読み終えて、見渡してみれば景色が少し違って見えます。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.51:
(5pt)

「城」深読みしない読み方

尊敬する作家保坂和志氏が、カフカは深読みしないで(なんの喩えなのかとか考えずに)素直に読むのがいい、と言っています。20代の頃の私は、カフカの長編に挑戦しても味気なくてすぐいやになりました。しかし60代の今、保坂氏の助言に従うと、なんとか読み終えることができました。突然思いがけない人物が登場したり、相手の話を聞いているはずの人が眠っていたり、意外な出来事が数多く起こり、またユーモアも所々に盛り込まれています。
 しかしなんと言っても最大の収穫はカフカの見方・考え方を知ったことです。その粘り強い思考には、「カフカは天才だ」と思わずにはいられませんでした(特に後半)。その思考法を私の言葉で述べてみます。たとえば、私は三つの理由でAだと思う。相手はAを否定し、Bだと言う。私は、それを大筋認める。しかし一部分反論する。相手はそれにまた反論する。私は今度その反論を一部認めるが大部分反論する。相手は私の反論にまた反論する。いつのまにか最初の問題が別の問題に変わっている。突然、私は疲労におそわれ、論争なんかどうでもよくなる。相手は私のそんな態度におかまいなく自説を述べ続ける。私はもう、相手が話をやめることだけを望んでいる。――ほとんどがこんな調子だと思いました。
 不条理とか現代の官僚機構批判とか、城にいつまでもたどりつけない絶望的状況とか、そんな小難しい内容ではないと思います。そもそも私は不条理という言葉がきらいです(大げさに聞こえます)。
 原田義人訳は原文に忠実で、前田敬作訳はこなれた日本語だと思いますが、両方参照しながら読みました。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.50:
(5pt)

見えてる

カフカの知性に感服しました。自分は太宰が嫌いです。なぜなら見えてないからです。知性がないからです。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.49:
(2pt)

いまいち

青年時に読んだが、年を取って気が短くなったのか展開に忍耐ができない。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.48:
(5pt)

大いなる混乱

このわけのわからなさはむしろ快感である。わたしはわたしの人生においてこれを二度読んだ。たぶん死ぬまでにもう一度読むであろう。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.47:
(5pt)

世界としての「城」

ある測量士が目指す、《決して辿り着くことのできない「城」》。

不毛とも思える行為が延々と繰り広げられるこの物語は、
ついに終焉を迎えることはなかった。

それは一体何を意味するのか。

カフカにとっての「城」、読者にとっての「城」、
そして《「世界」としての「城」》。
答えは無数に存在する。

永遠に続くとも思える不条理の連鎖をテーマとしながらも、
読者を惹きつけてやまない、カフカならではの渾身の世界描写。

cf)『審判』/『掟の前で』
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024
No.46:
(3pt)

よく

よくわからんぞ
なんだかスッキリしない終わりかただったと思う。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.45:
(3pt)

話は長いよ・・・

水も飲まずに絶対そんな長い間しゃべれない!と言いたい登場人物のセリフは終盤に向けてどんどん長くなり、”話半分”に読まなければ最後(話は未完ですが)までたどりつくのはなかなか大変です。
主人公は、測量技師としての仕事をする権利があるとか言いながら女のケツなんか追いかけてみたり、この人大丈夫なの?と思ってしまいますが(カフカがそんな人だったようですね・・・)、もちろん大丈夫でも無く、カフカ風理不尽な物語はどこまでも続き、最後は「えっ。ここで終わりですか!」ということに相成りました。
しかし、登場人物たちの欺瞞、保身、怠惰、何かをしているが結果が無い仕事、組織への反発と迎合など、不条理とか実存とかいう言葉で語られるカフカではあるものの、いやむしろ現実そのままではと思わせるものがあります。現実は死ぬまで終わることはなく、よって物語が未完であるのも然り、と感じた次第。
城 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:城 (角川文庫)より
4042083048
No.44:
(4pt)

底なしカフカ

だらだらと長い会話、なかなか進まぬストーリー、回収されぬままの伏線・・・未完の小説『城』。
もしちゃんと出版されるとわかっていたらカフカは推敲を重ね半分ほどの分量で出版したに違いない。
研ぎすまされた『変身』『審判』よりもはるかに感じる回りくどさ。
しかし、ページを進めるごとにどうもこの回りくどさが病みつきになってくるのである。
主人公Kが底なし沼にはまってゆくように、自分が読書の底なし沼にはまっていくような、不思議な読書体験であった。

遠い場所からある村にやってきた主人公Kは、その村を管理する行政組織「城」に翻弄されつづける。
そこに見えるのは城という大いなる官僚組織。
効率を追求したあまり非効率になっていく組織。
自分たちのために作ったルールによってかえって苦しめられる人間。
「城」を「国」や「会社」に置き換えるとまさに現代にも通用する内容である。
とはいえ、組織の非合理さも「仕方ないか」と折り合って生きていくのが組織的人間というもの。
堅苦しいルールの中に生きるサラリーマンでなくとも、日本人なら誰しもが矛盾も多々ある日本の法律というものに従って生きているのである。
しかし、自分が納得しないルールに対して徹底的に従わなかったのがKである。
信じる者は己一人。ある意味アナーキスト。非常に聡明なるパンクなのである。
こんな人はとても希有で、既存の法にのまれなかったイエスか、ブッダか。
システムと個人の問題、それを徹底的にやってのけようとしたが途中で頓挫してしまった、それがこの小説ではなかろうか。

この小説でとてもおもしろかったのは男と女の対比。
男(主人公以外)はシステムに従い合理的に行動する。しかし、システムが非合理的なので非合理的なのである。
女はシステムには従わない。しかし、感情的に動くために非合理的である。
非常に賢く何でも見通せるカフカは、わけのわからぬものがとても苦手だったんじゃなかろうか、つまり、組織と女性というものが。
城 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城 (新潮文庫)より
4102071024

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