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歪んだ複写
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【この小説が収録されている参考書籍】
歪んだ複写の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.37pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全16件 1~16 1/1ページ
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権力は腐敗する。 エリート意識にまみれた人間は、カイダンを踏み外せば転落する。重税にあえぐ弱者は見捨てられ、大口納税者だけが優遇されてしまう・・・など複数のいまだに解決できない問題を提起した作品である。 | ||||
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携帯電話もパソコンもない時代の推理小説は、こんなに、面白い、読み手を、推理さしながら、読み進めさす、旨さは、何年たっても色あせない。 | ||||
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歪んだ複写は、税務署を舞台にした連続殺人事件。例によって税務署のハチャメチャな勤務が赤裸々に描写されており、その堕落ぶりが描かれている。綱紀粛正で今の税務署はこんなことはやってませんので国民の皆さん、ご安心を。吉報が一つ。いつも清張先生には大どんでん返しで騙されてばかりだったが、本作の犯人は一発直観で分かりました。ネタバレになるので言いませんが、一番怪しくない人が犯人です。 不安な演奏は、選挙違反事件をめぐる連続殺人事件で、これは途中で犯人は分かります。それより、探偵役として中途参加した主人公の相棒の正体の方が驚きです。 ただ、両作とも面白いですが意外性の面では、ゼロの焦点やDの複合に劣りますので一つ減らして星4としました。でも読みだすと止まらなくなるので清張節は健在です。 | ||||
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税務署のひどい内情です。犯人自身その犠牲者かもしれません。でも、直観的に10分読んで、犯人分かりました。面白いのですがそれで星一つ減らして4です。今回はどんでん返しも分かりました.。税務署のひどい実態ですが、綱紀粛正で今の税務署ではこういうことはないはずです。 家族ぐるみで犯行を隠蔽するところがみそですが、分かっていても最後まで読ませるのは清張先生ならではの筆力です。 私としてはいい気持ちです。久々に、嫌、初めて作者との知恵比べに勝てました。いつもどんでん返しで惨敗していたのですが、今回はそれも乗り切れました。私でも正解出来たのだから、皆さんも作者との犯人あてシーソーゲームを楽しんで下さい。意外な人物ですが、冷静に考えると分かるはずです。共犯者の存在も重大なヒントです。 拙い文章、ご拝読頂きありがとうございました。 | ||||
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1961年刊行の本書は、当時の腐敗しきった税務署の実態を克明に暴露している話だと思います。今から半世紀も前の話で現代の人が読むと違和感があり、作り物と感じるかもしれません。ですが、その当時の事を知っている私には、同感する処が有りました。既に時効なので良いと思いますが、私の父は事業をしており、取引先の脱税調査により、父の会社にも資料を集めに来ました。ところが父の提出した資料にも瑕疵が有ったと税務署の職員から指摘されました。が、その職員は上手に収めてやると言いました。どうしたのかは解りませんが、後に小金を渡したそうです。その後、現職職員の身でありながら、税務指導の名目で我が家を訪れる様になり、飲食をせびり(そういう時間帯に来るのです)、帰りには小金を(暗黙の指示で)持って帰って行きました。彼は、さらに税務署を定年退職し、年勤数により税理士の資格を持ちました。それからは決算の度に訪れ大して利益の出ていない父の会社から、法外な顧問料を持ち帰り、小遣いが無くなると我が家を訪れるのです。税金が幾ら得になっていたかは解りません。決算書なんか何の資料も無く手書きだったのですから。もう亡くなりましたが、その時はホッとしました。ですから本書を読んだ時そんな事も有ったんだろうなぁと漠然と感じました。勿論、現在では公務員の倫理規定は厳しく多くの税務署の職員は真面目に働いていると思います。 本編は東京・武蔵野の雑木林が広がる畑の中に身元不明の男の腐乱死体が発見される事から始まります。身元を証明する物は何も無く、土の中からバーの名前が入ったマッチ箱が見つかります。この、たった一つの小さなマッチ箱が、税務署内で行われていた大疑獄事件の解明へと繋がるのです。マッチ箱と言う些細な物証から税務署内の不正供応の実態へと話を展開していってしまうあたりに、改めて清張氏の筆力の凄さを感じました。 遺体の彼は、税務署内の悪習が発覚しそうになった時にスケープゴートとして署を退職させられた男で、その恨みで嘗ての上司、課長や係長の不正を暴くため、一人で証拠を掴もうとして、逆に大きな権力によって封じ込められてしまったのです。 この事件を追うのは、新聞社の社会部記者田原典太で、「点と線」や「時間の習俗」の様な例外は有りますが、名刑事、名探偵を使わない処は清張氏の十八番です。田原は税務署内部の事情に詳しい、無頼で酒飲みの横井貞章に協力を求めます。ところがダイイングメッセージを残して殺されてしまうのです。この後、次々と連続殺人が起こり、読む者にとっては次へ次へと読み急がされる展開になり、ページを捲る手が止まりませんでした。 税務署内部は、出世が約束されているキャリア職員と、そうでも無いノンキャリア組に分かれていますが、発覚を恐れながらも供応と言う甘い汁を吸って、それを繰り返し(複写)、懐を肥やすノンキャリア組と、打算と利己的な考えしか持たない保身だけを考えている幹部候補生までを取り囲んだ歪みの中で起こった大疑獄事件の解明へと向かうのです。いやはや面白い。是非、読んで頂きたい本だと思います。 本書発行年の頃は、清張氏も爆発的な人気であり、高額納税者の筆頭だったと思います。そういう清張氏が不正を繰り返す税務署体質を許せなかった事に、端を発して執筆に至ったのではないかと言うのは、容易に想像出来ます。納税と言う意識について清張氏は「黒革の手帳」などで脱税を常習している一部の業種を挙げて辛辣に批判していますが、本書もラストに至っては、税を不法に操り供応を繰り返す税務署職員達を奈落の底に落としている処は清張氏の憤りが十分伝わってきます。刊行後五十年、現在では必ずしも同じ状況では無いとおもいますが、発行された時代にはとてもインパクトが強く、清張氏が不正に挑みかかってゆく様な力強さを感じる一冊です。社会派小説の傑作だと思います。 | ||||
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1961年刊行の本書は、当時の腐敗しきった税務署の実態を克明に暴露している話だと思います。今から半世紀も前の話で現代の人が読むと違和感があり、作り物と感じるかもしれません。ですが、その当時の事を知っている私には、同感する処が有りました。 既に時効なので良いと思いますが、私の父は事業をしており、取引先の脱税調査により、父の会社にも資料を集めに来ました。ところが父の提出した資料にも瑕疵が有ったと税務署の職員から指摘されました。が、その職員は上手に収めてやると言いました。どうしたのかは解りませんが、後に小金を渡したそうです。その後、現職職員の身でありながら、税務指導の名目で我が家を訪れる様になり、飲食をせびり(そういう時間帯に来るのです)、帰りには小金を(暗黙の指示で)持って帰って行きました。 彼は、さらに税務署を定年退職し、年勤数により税理士の資格を持ちました。それからは決算の度に訪れ大して利益の出ていない父の会社から、法外な顧問料を持ち帰り、小遣いが無くなると我が家を訪れるのです。税金が幾ら得になっていたかは解りません。決算書なんか何の資料も無く手書きだったのですから。もう亡くなりましたが、その時はホッとしました。ですから本書を読んだ時そんな事も有ったんだろうなぁと漠然と感じました。勿論、現在では公務員の倫理規定は厳しく多くの税務署の職員は真面目に働いていると思います。 本編は東京・武蔵野の雑木林が広がる畑の中に身元不明の男の腐乱死体が発見される事から始まります。身元を証明する物は何も無く、土の中からバーの名前が入ったマッチ箱が見つかります。この、たった一つの小さなマッチ箱が、税務署内で行われていた大疑獄事件の解明へと繋がるのです。マッチ箱と言う些細な物証から税務署内の不正供応の実態へと話を展開していってしまうあたりに、改めて清張氏の筆力の凄さを感じました。 遺体の彼は、税務署内の悪習が発覚しそうになった時にスケープゴートとして署を退職させられた男で、その恨みで嘗ての上司、課長や係長の不正を暴くため、一人で証拠を掴もうとして、逆に大きな権力によって封じ込められてしまったのです。 この事件を追うのは、新聞社の社会部記者田原典太で、「点と線」や「時間の習俗」の様な例外は有りますが、名刑事、名探偵を使わない処は清張氏の十八番です。田原は税務署内部の事情に詳しい、無頼で酒飲みの横井貞章に協力を求めます。ところがダイイングメッセージを残して殺されてしまうのです。この後、次々と連続殺人が起こり、読む者にとっては次へ次へと読み急がされる展開になり、ページを捲る手が止まりませんでした。 税務署内部は、出世が約束されているキャリア職員と、そうでも無いノンキャリア組に分かれていますが、発覚を恐れながらも供応と言う甘い汁を吸って、それを繰り返し(複写)、懐を肥やすノンキャリア組と、打算と利己的な考えしか持たない保身だけを考えている幹部候補生までを取り囲んだ歪みの中で起こった大疑獄事件の解明へと向かうのです。いやはや面白い。是非、読んで頂きたい本だと思います。 本書発行年の頃は、清張氏も爆発的な人気であり、高額納税者の筆頭だったと思います。そういう清張氏が不正を繰り返す税務署体質を許せなかった事に、端を発して執筆に至ったのではないかと言うのは、容易に想像出来ます。納税と言う意識について清張氏は「黒革の手帳」などで脱税を常習している一部の業種を挙げて辛辣に批判していますが、本書もラストに至っては、税を不法に操り供応を繰り返す税務署職員達を奈落の底に落としている処は清張氏の憤りが十分伝わってきます。 刊行後五十年、現在では必ずしも同じ状況では無いとおもいますが、発行された時代にはとてもインパクトが強く、清張氏が不正に挑みかかってゆく様な力強さを感じる一冊です。社会派小説の傑作だと思います。 | ||||
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1961年刊行の本書は、当時の腐敗しきった税務署の実態を克明に暴露している話だと思います。今から半世紀も前の話で現代の人が読むと違和感があり、作り物と感じるかもしれません。ですが、その当時の事を知っている私には、同感する処が有りました。既に時効なので良いと思いますが、私の父は事業をしており、取引先の脱税調査により、父の会社にも資料を集めに来ました。ところが父の提出した資料にも瑕疵が有ったと税務署の職員から指摘されました。が、その職員は上手に収めてやると言いました。どうしたのかは解りませんが、後に小金を渡したそうです。その後、現職職員の身でありながら、税務指導の名目で我が家を訪れる様になり、飲食をせびり(そういう時間帯に来るのです)、帰りには小金を(暗黙の指示で)持って帰って行きました。彼は、さらに税務署を定年退職し、年勤数により税理士の資格を持ちました。それからは決算の度に訪れ大して利益の出ていない父の会社から、法外な顧問料を持ち帰り、小遣いが無くなると我が家を訪れるのです。税金が幾ら得になっていたかは解りません。決算書なんか何の資料も無く手書きだったのですから。もう亡くなりましたが、その時はホッとしました。ですから本書を読んだ時そんな事も有ったんだろうなぁと漠然と感じました。勿論、現在では公務員の倫理規定は厳しく多くの税務署の職員は真面目に働いていると思います。 本編は東京・武蔵野の雑木林が広がる畑の中に身元不明の男の腐乱死体が発見される事から始まります。身元を証明する物は何も無く、土の中からバーの名前が入ったマッチ箱が見つかります。この、たった一つの小さなマッチ箱が、税務署内で行われていた大疑獄事件の解明へと繋がるのです。マッチ箱と言う些細な物証から税務署内の不正供応の実態へと話を展開していってしまうあたりに、改めて清張氏の筆力の凄さを感じました。 遺体の彼は、税務署内の悪習が発覚しそうになった時にスケープゴートとして署を退職させられた男で、その恨みで嘗ての上司、課長や係長の不正を暴くため、一人で証拠を掴もうとして、逆に大きな権力によって封じ込められてしまったのです。 この事件を追うのは、新聞社の社会部記者田原典太で、「点と線」や「時間の習俗」の様な例外は有りますが、名刑事、名探偵を使わない処は清張氏の十八番です。田原は税務署内部の事情に詳しい、無頼で酒飲みの横井貞章に協力を求めます。ところがダイイングメッセージを残して殺されてしまうのです。この後、次々と連続殺人が起こり、読む者にとっては次へ次へと読み急がされる展開になり、ページを捲る手が止まりませんでした。 税務署内部は、出世が約束されているキャリア職員と、そうでも無いノンキャリア組に分かれていますが、発覚を恐れながらも供応と言う甘い汁を吸って、それを繰り返し(複写)、懐を肥やすノンキャリア組と、打算と利己的な考えしか持たない保身だけを考えている幹部候補生までを取り囲んだ歪みの中で起こった大疑獄事件の解明へと向かうのです。いやはや面白い。是非、読んで頂きたい本だと思います。 本書発行年の頃は、清張氏も爆発的な人気であり、高額納税者の筆頭だったと思います。そういう清張氏が不正を繰り返す税務署体質を許せなかった事に、端を発して執筆に至ったのではないかと言うのは、容易に想像出来ます。納税と言う意識について清張氏は「黒革の手帳」などで脱税を常習している一部の業種を挙げて辛辣に批判していますが、本書もラストに至っては、税を不法に操り供応を繰り返す税務署職員達を奈落の底に落としている処は清張氏の憤りが十分伝わってきます。刊行後五十年、現在では必ずしも同じ状況では無いとおもいますが、発行された時代にはとてもインパクトが強く、清張氏が不正に挑みかかってゆく様な力強さを感じる一冊です。社会派小説の傑作だと思います。 | ||||
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1961年刊行の本書は、当時の腐敗しきった税務署の実態を克明に暴露している話だと思います。今から半世紀も前の話で現代の人が読むと違和感があり、作り物と感じるかもしれません。ですが、その当時の事を知っている私には、同感する処が有りました。既に時効なので良いと思いますが、私の父は事業をしており、取引先の脱税調査により、父の会社にも資料を集めに来ました。ところが父の提出した資料にも瑕疵が有ったと税務署の職員から指摘されました。が、その職員は上手に収めてやると言いました。どうしたのかは解りませんが、後に小金を渡したそうです。その後、現職職員の身でありながら、税務指導の名目で我が家を訪れる様になり、飲食をせびり(そういう時間帯に来るのです)、帰りには小金を(暗黙の指示で)持って帰って行きました。彼は、さらに税務署を定年退職し、年勤数により税理士の資格を持ちました。それからは決算の度に訪れ大して利益の出ていない父の会社から、法外な顧問料を持ち帰り、小遣いが無くなると我が家を訪れるのです。税金が幾ら得になっていたかは解りません。決算書なんか何の資料も無く手書きだったのですから。もう亡くなりましたが、その時はホッとしました。ですから本書を読んだ時そんな事も有ったんだろうなぁと漠然と感じました。勿論、現在では公務員の倫理規定は厳しく多くの税務署の職員は真面目に働いていると思います。 本編は東京・武蔵野の雑木林が広がる畑の中に身元不明の男の腐乱死体が発見される事から始まります。身元を証明する物は何も無く、土の中からバーの名前が入ったマッチ箱が見つかります。この、たった一つの小さなマッチ箱が、税務署内で行われていた大疑獄事件の解明へと繋がるのです。マッチ箱と言う些細な物証から税務署内の不正供応の実態へと話を展開していってしまうあたりに、改めて清張氏の筆力の凄さを感じました。 遺体の彼は、税務署内の悪習が発覚しそうになった時にスケープゴートとして署を退職させられた男で、その恨みで嘗ての上司、課長や係長の不正を暴くため、一人で証拠を掴もうとして、逆に大きな権力によって封じ込められてしまったのです。 この事件を追うのは、新聞社の社会部記者田原典太で、「点と線」や「時間の習俗」の様な例外は有りますが、名刑事、名探偵を使わない処は清張氏の十八番です。田原は税務署内部の事情に詳しい、無頼で酒飲みの横井貞章に協力を求めます。ところがダイイングメッセージを残して殺されてしまうのです。この後、次々と連続殺人が起こり、読む者にとっては次へ次へと読み急がされる展開になり、ページを捲る手が止まりませんでした。 税務署内部は、出世が約束されているキャリア職員と、そうでも無いノンキャリア組に分かれていますが、発覚を恐れながらも供応と言う甘い汁を吸って、それを繰り返し(複写)、懐を肥やすノンキャリア組と、打算と利己的な考えしか持たない保身だけを考えている幹部候補生までを取り囲んだ歪みの中で起こった大疑獄事件の解明へと向かうのです。いやはや面白い。是非、読んで頂きたい本だと思います。 本書発行年の頃は、清張氏も爆発的な人気であり、高額納税者の筆頭だったと思います。そういう清張氏が不正を繰り返す税務署体質を許せなかった事に、端を発して執筆に至ったのではないかと言うのは、容易に想像出来ます。納税と言う意識について清張氏は「黒革の手帳」などで脱税を常習している一部の業種を挙げて辛辣に批判していますが、本書もラストに至っては、税を不法に操り供応を繰り返す税務署職員達を奈落の底に落としている処は清張氏の憤りが十分伝わってきます。刊行後五十年、現在では必ずしも同じ状況では無いとおもいますが、発行された時代にはとてもインパクトが強く、清張氏が不正に挑みかかってゆく様な力強さを感じる一冊です。社会派小説の傑作だと思います。 | ||||
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1961年刊行の本書は、当時の腐敗しきった税務署の実態を克明に暴露している話だと思います。今から半世紀も前の話で現代の人が読むと違和感があり、作り物と感じるかもしれません。ですが、その当時の事を知っている私には、同感する処が有りました。 既に時効なので良いと思いますが、私の父は事業をしており、取引先の脱税調査により、父の会社にも資料を集めに来ました。ところが父の提出した資料にも瑕疵が有ったと税務署の職員から指摘されました。が、その職員は上手に収めてやると言いました。どうしたのかは解りませんが、後に小金を渡したそうです。その後、現職職員の身でありながら、税務指導の名目で我が家を訪れる様になり、飲食をせびり(そういう時間帯に来るのです)、帰りには小金を(暗黙の指示で)持って帰って行きました。 彼は、さらに税務署を定年退職し、年勤数により税理士の資格を持ちました。それからは決算の度に訪れ、大して利益の出ていない父の会社から、法外な顧問料を持ち帰り、小遣いが無くなると我が家を訪れるのです。税金が幾ら得になっていたかは解りません。決算書なんか何の資料も無く手書きだったのですから。もう亡くなりましたが、その時はホッとしました。ですから本書を読んだ時そんな事も有ったんだろうなぁと漠然と感じました。勿論、現在では公務員の倫理規定は厳しく多くの税務署の職員は真面目に働いていると思います。 本編は東京・武蔵野の雑木林が広がる畑の中に身元不明の男の腐乱死体が発見される事から始まります。身元を証明する物は何も無く、土の中からバーの名前が入ったマッチ箱が見つかります。この、たった一つの小さなマッチ箱が、税務署内で行われていた大疑獄事件の解明へと繋がるのです。マッチ箱と言う些細な物証から税務署内の不正供応の実態へと話を展開していってしまうあたりに、改めて清張氏の筆力の凄さを感じました。 遺体の彼は、税務署内の悪習が発覚しそうになった時にスケープゴートとして署を退職させられた男で、その恨みで嘗ての上司、課長や係長の不正を暴くため、一人で証拠を掴もうとして、逆に大きな権力によって封じ込められてしまったのです。 この事件を追うのは、新聞社の社会部記者田原典太で、「点と線」や「時間の習俗」の様な例外は有りますが、名刑事、名探偵を使わない処は清張氏の十八番です。田原は税務署内部の事情に詳しい、無頼で酒飲みの横井貞章に協力を求めます。ところがダイイングメッセージを残して殺されてしまうのです。この後、次々と連続殺人が起こり、読む者にとっては次へ次へと読み急がされる展開になり、ページを捲る手が止まりませんでした。 税務署内部は、出世が約束されているキャリア職員と、そうでも無いノンキャリア組に分かれていますが、発覚を恐れながらも供応と言う甘い汁を吸って、それを繰り返し(複写)、懐を肥やすノンキャリア組と、打算と利己的な考えしか持たない保身だけを考えている幹部候補生までを取り囲んだ歪みの中で起こった大疑獄事件の解明へと向かうのです。いやはや面白い。是非、読んで頂きたい本だと思います。 本書発行年の頃は、清張氏も爆発的な人気であり、高額納税者の筆頭だったと思います。そういう清張氏が不正を繰り返す税務署体質を許せなかった事に、端を発して執筆に至ったのではないかと言うのは、容易に想像出来ます。納税と言う意識について清張氏は「黒革の手帳」などで脱税を常習している一部の業種を挙げて辛辣に批判していますが、本書もラストに至っては、税を不法に操り供応を繰り返す税務署職員達を奈落の底に落としている処は清張氏の憤りが十分伝わってきます。 刊行後五十年、現在では必ずしも同じ状況では無いと思いますが、発行された時代にはとてもインパクトが強く、清張氏が不正に挑みかかってゆく様な力強さを感じる一冊です。社会派小説の傑作だと思います。 | ||||
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大変面白かった。個人読書履歴。 一般文学通算23作品目の読書完。通算23冊目の作品。1973/03/10 | ||||
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現代社会の病巣ー税務署機構の腐敗を燻りだした、正義感漲る社会派ミステリー。この物語は、武蔵野で他殺死体が発掘されたところから、進んでいきます。読み易い作品で、古さを少しも感じさせなく、想だ、そうだ、と、頷きながら読める作品でかなりお勧めです。 | ||||
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女性なら山崎豊子、それなら男性は松本清張。と、最近思うようになった。 それはさておき、この作品も映像化しやすい、とつくづくおもったが ドラマないし映画にはすでになったのか調べてみたい。 たしかに、尾山署長のえがき方などははなはだステレオタイプ化しているものの、 読み進んでいくうちに、自分なりの画像というか人物像がたちあがってくる そんなすごい描写力が清張さんの持ち味である。 書かれたのが昭和30年代なかばであるので、現代とは事情が異なってほしい というのが希望的観測ではある。当時は事情通から散々に取材をしたうえで 完成させたのであろう。 主人公が社に連絡を入れるにあたり、公衆電話探しをしたり 情報源からの電話待ちで、外出ができなかったりと、 当時の通信事情がふんだんにもりこまれている。 懐古趣味で読んだわけではないが、再読なのに一気読みをしてしまった。 | ||||
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女性なら山崎豊子、それなら男性は松本清張。と、最近思うようになった。 それはさておき、この作品も映像化しやすい、とつくづくおもったが ドラマないし映画にはすでになったのか調べてみたい。 たしかに、尾山署長のえがき方などははなはだステレオタイプ化しているものの、 読み進んでいくうちに、自分なりの画像というか人物像がたちあがってくる そんなすごい描写力が清張さんの持ち味である。 書かれたのが昭和30年代なかばであるので、現代とは事情が異なってほしい というのが希望的観測ではある。当時は事情通から散々に取材をしたうえで 完成させたのであろう。 主人公が社に連絡を入れるにあたり、公衆電話探しをしたり 情報源からの電話待ちで、外出ができなかったりと、 当時の通信事情がふんだんにもりこまれている。 懐古趣味で読んだわけではないが、再読なのに一気読みをしてしまった。 | ||||
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清張作品の中ではあまり有名ではないですけど、 とても面白かったです。 全編が不正役人への義憤と、被支配者層の僻みで満ちています。 タイトルが意味する’何らかの重要書類’は結局最後まで出てきませんでした。 今回は印刷業界とも関係ありませんでしたし。 | ||||
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清張作品の中ではあまり有名ではないですけど、 とても面白かったです。 全編が不正役人への義憤と、被支配者層の僻みで満ちています。 タイトルが意味する’何らかの重要書類’は結局最後まで出てきませんでした。 今回は印刷業界とも関係ありませんでしたし。 | ||||
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本作品は、税務署の元署員が死体で発見されるという殺人事件を内容とする推理小説である。私としては、法医学を根拠として、あるトリックが暴かれるところが印象的であった。 もっとも、話の多くは当時の税務署や官僚体制の実態を描くことに割かれている。いささか登場人物が戯画的に描かれている傾向はあるが、税務署という組織の内部事情を痛烈に批判したドキュメンタリーとも言える作品となっている。 ただ、清張の作品としては人間心理をそれほど深くは描けていないように思った。上に登場人物が戯画的に描かれている傾向があると書いたのはこの意味である。 こうした点を考えて、推理小説としての面白さは高いものの、星4つとしてみた。 | ||||
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