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(短編集)
あぶない叔父さん
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あぶない叔父さんの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.28pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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この本の物語は霧ヶ町という名の、一方が海に面していて残りの三方が山に囲まれた、常に薄く霧がかかっている小さな町が舞台である。 主人公は男子高校生の斯峨優斗で、語り部でもある。 優斗は同級生で幼馴染の美雲真紀と付き合っているのだが(すでに肉体関係がある)、途中で転入してくる辰野明美(小学校時代の彼女)とも関係を持つようになる――つまり三角関係。 優斗には武嶋陽介という同級生の親友がいて、家がスナックを経営しているので、町で何かあると噂話などを仕入れてくる。 優斗の家は寺で、優斗は次男坊である(寺は兄が継ぐことになっている)。 寺の住職である優斗の父親には弟がいて、敷地内の離れに住んでいる――これがタイトルにもなっている優斗の「叔父さん」である。 35歳の叔父さんは、町の外にある有名大学に進学し、20代の頃は全国を放浪していて、5年前に町に戻ってきた。 そして、離れを住居兼事務所にして「なんでも屋」を営んでいる。 商売柄とその書生のような格好のせいもあり、町の人からは訝しげに見られることも多いが、「なんでも屋」としての腕は確かなので、結構繁盛している。 この霧ヶ町で事件が起こり、その事件を「なんでも屋」の叔父さんが解決していく。 この本を実際に読む前の私は、そういうオーソドックスな内容だと思っていた。 だが、そこは麻耶雄嵩の本であり、合ってはいなかった。 以下、ネタバレ満載で感想などを述べていく。 この『あぶない叔父さん』は、六つの短編が連なった話になっていて、それぞれで事件(殺人)が起こる。 一つ目の話では、男性教師と元教え子の女性が駆け落ちし、心中してしまう事件が起こる。 二人を取り巻く状況(女性の方は町の有力者の娘)から当初は心中と言われていたが、遺体の状況から、すぐに殺人事件として捜査されるようになる。 私は「叔父さんが事件を推理して解決するのかなあ」と思いながら読んでいたのだが、そうはならなかった。 優斗と叔父さんが一緒になって事件を調査することもない――これは全ての話に共通している。 失くしたお守りを探していた優斗は、心当たりがあって離れを訪れる。 叔父さんは留守にしていて、叔父さんが帰ってくるのを待っていた優斗は、僅かに開いた押し入れの襖の隙間から、失くしたお守りの紐が出ているを見つける。 襖を開けると、優斗は無事にお守りを見つけることができたが、その奥に、どす黒い血の付いた地蔵と、男性教師のものと思われる旅行鞄があるのを見つけてしまう。 妙なことに、優斗には全く動揺がなく、しかも帰ってきた叔父さんに、普通に地蔵と鞄のことを尋ねたのだ。 叔父さんは、あっさりと白状する。 叔父さんは元教え子の女性に、駆け落ちを手伝うように依頼されていた。 二人のことを不憫に思っていた叔父さんは、彼女が屋敷から脱出するのを手助けし、男性教師との待ち合わせ場所まで軽トラックで送っていった。 時間は夜で霧もかかっていて見通しが悪かったので、叔父さんは、先に着いて待っていた男性教師に軽トラックをぶつけてしまった。 その拍子に倒れた男性教師は、後頭部を地蔵にぶつけて死亡。 それを見て発狂した元教え子の女性が、短刀を喉に刺して後追い自殺をしようとしたので、叔父さんは止めようとしたが、もみ合っている内に彼女の胸を短刀で刺してしまって死亡。 せめてもの償いにと、叔父さんは二人の思い出の場所に遺体を運び、心中に見えるように偽装工作までした。 結果、事件は迷宮入りになってしまうのだが、事の顛末を聞いた優斗は「災難だったね」と同情し、偽装工作についても「さすが叔父さん」と称賛する始末である。 いやいやいや。 おかしいでしょ。 叔父さんの言葉を信じるのなら事故ではあるが、人を二人も殺し、しかも偽装工作までしているのである。 平然としている叔父さんも異常だが、同じく平然と受け入れている優斗も異常である。 嫌な予感がしつつも、私は読み進めていった。 それで、『あぶない叔父さん』を全部読んだ結果。 叔父さんが人の死に直接関与していないのは、三つ目の話だけであった。 この話だけは、叔父さんはよくある探偵もののように推理を披露し、事件の解決に貢献している。 しかし他は、大体が叔父さんのせいであった。 もみ合いになって相手が頭をぶつけて死亡というパターンが多かった。 叔父さんは、人が死んだという結果を悔やみはするのだが、人を殺したという過程については、罪悪感も自責の念も一切ない。 タイミングが悪かった、うかつだった、運が悪かったで済ませている。 質が悪いのは、自分が疑われないようにするための偽装工作は冷静かつ着実に行っているということだ。 そして優斗以外には、自分が人を殺してしまった事件の真相を、決して話さない。 優斗も、叔父さんには同情するが、それだけであり、叔父さんのことを通報しようともしない。 むしろ、誰よりも叔父さんを尊敬している始末である――だからこそ、叔父さんも優斗には話すのだろうが。 読めば分かるのだが、叔父さんがやってしまた殺人はどれも、叔父さんは偶然だと語っているが、叔父さんが故意に犯すことも可能なのである。 口振りなどからして叔父さんがサイコパスであることに疑いはなく、実は状況を利用して積極的に殺人を行っていたとしても、一つも不思議はない。 そして、このサイコパスという気質は、優斗にも当てはまる。 優斗は、殺人のような凶悪な犯罪行為にこそ手を染めてはいないものの、人を死なせる叔父さんを咎めるどころか称賛して尊敬し、人が死んでも一切哀しんだりはしない――寺の住職の息子であるが故に、人の死に変に慣れて死生観が歪んでいるだけの可能性もあるが。 何より優斗が異常なのは、真紀と明美に二股をしていても、罪の意識を一つも感じていないことだ。 それどころか、被害者面して感情を爆発させて、一方を学校の屋上から突き落として殺そうとした――これは叔父さんが介入して止められたが、その衝動が湧いたのを幽霊の仕業としていた。 私が思うに、叔父さんは自分がサイコパスだということを自覚していて、その気質が優斗にもあることを見抜いているのだろう。 それゆえに、叔父さんは優斗と親しく付き合っているし、自分が人を殺した事件について平気で喋れるのだ。 そう考えると、本当に危ないのは、自覚のあるサイコパスの叔父さんではなくて、その叔父さんの影響を受けてサイコパスとして完成されつつあることに無自覚な優斗の方ではないだろうか。 二人がサイコパスであるかについては、私の勝手な解釈である。 この本を含めて、私は麻耶雄嵩の本を数冊読んでいるが、この『あぶない叔父さん』が一番面白くなかった。 いや、決してつまらないわけではないのだが、一つ目の話で叔父さんが人を殺して偽装工作をしていたというのが驚きのピークで、あとは同じパターンの繰り返しと言えるので、全体としての意外性は少ない。 麻耶雄嵩が好きなのなら読んでも損はないと思うが、最初に読む麻耶雄嵩の本としては確実に相応しくない。 わざわざ無理してまで読む本ではない。 これが私の率直な評価である。 | ||||
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内容が浅く期待が大きい過ぎました。 | ||||
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電車で読む本をと思い、駅の書店で購入。第1話の「失くした御守」を読んで唖然としました。これおかしくないですか?ネタバレするから詳しくは書かないけれど、結末ではいくつもの刑事犯罪がすんなり看過されているわけじゃありませんか。「ありがとう、恩に着るよ」じゃないです。いくら作り話とは言ったって、こともなげに犯罪行為を起こして恬として終わるなんて書きモノじゃない。作風が黒川博行じゃないんだから。第2話目から読む気も起きないけれど、この一篇を入れただけで新潮社の見識を疑います。 | ||||
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期待して読みはじめましたが,正直まったくの期待はずれ。。。というかお話になっていない。 短編が数本収録されていますが,最初の作品を読みおわって頭は『はてなマーク????』でした。 明かされた謎解きに,登場人物自身は納得しているようですが,読んでるこちらとしてはまったく納得できません。 感情移入もできず,まったくすっきりしない,後味の悪い作品だと思いました。 | ||||
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一話目のオチに、辻褄も何もかもふっとび、度肝を抜かれました。 ただ、このもって行き方は決してキライではないです。 これならこれで、二話目から先も、どんどん突っ走った、理屈抜きでのトンデモ話を読めるかと期待したぐらいです。 ただ、この先は、どうにもトーンダウン気味で、読後は「なんだかなあ」と、もやもやした感覚に包まれてしまいました。 「叔父さん」のキャラや、登場人物の高校生の人間関係も、突拍子もないぐらいの際立った設定だったほうが、むしろ「抱腹」できたかもしれません。 | ||||
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「あぶない叔父さん」が探偵役の短編集で、麻耶さんの本で、 ときたら『さよなら神様』のような「ダークな面白さ」を 期待しますよね。 で、本作。まず、第一話のオチで愕然とします。 ダークと言えばダークなんですが・・・まあとにかく 愕然とします。悪い意味で。 但し、「普通は丸々一冊のラストに来てもおかしく ないこのバカオチが第一話で来ちゃって、この先どんな展開に なっていくんだ?」という興味も湧いてきます。 で、ワクワクしながら最後まで読み終えた感想は「何も 終わってない。何も展開しない。もしかしてこれは上巻で、 下巻が後で出るの?」でした。 叔父さんの正体とか、いくつかの伏線とか、全く触れられない まま普通に終わります。 というわけで、大好きな麻耶さんの本ですが、星二つと させていただきます。 | ||||
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