■スポンサードリンク
手紙
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
手紙の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.16pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全538件 241~260 13/27ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この本を読むにあたり、高校時代、ある社会科の教師が言っていたことが思い出される。 「犯罪者の家族も犯罪者扱いされる」・・・具体的な事例として、その頃世間を震撼させた、某宗教団体によるサリン事件、和歌山の毒入りカレー事件、筋弛緩剤点滴事件、大阪の小学校襲撃事件などの容疑者の家族についてであった。 彼らの親兄弟は職場や学校を追われてしまい、新たな所へ行ってもどこかからそういう情報が流れてしまうために、行き場を失っている、連続幼女誘拐殺害事件の宮崎某の父親など、自ら生命を絶った・・・という話だったと記憶している。 読み進めるうちに、何故そのようになるのかも考えさせられた。 「差別や偏見はよくない」と言っても、我々は普通に生活していれば、厄介な問題、とりわけ殺人事件など自分の身近にはないものと考えたい、なるべくなら関わりたくないと思うのが普通の感覚かもしれない。 「殺人は何故いけないのか」という理屈や理論はともかく、それに関連するものが身近にあると、避けようとするのも人間の本能に依るものなのだろうか? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
非常に興味深いテーマを作者は選んでいます。 殺人事件の加害者の家族を中心に話を進めるとどうしても加害者に甘くなりがちです。 しかし、この作品はそのようなことはありません。罰はいつまで経っても消えません。それが事件に関係ない獄中の兄弟に対しても。 主人公の勤務先の社長の言葉は正論だと思います。罪を犯したら、罰が軽くなることはそうそうありません。 作中の出来事や差別に対する事柄は「あるかも」と思わせます。ただ、終盤の子供の怪我はやりすぎだと思いました。なかった方がすっきりしたと思います。 でも、ひさしぶりにじっくり読まされる一冊でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
東野作品で久しぶりに秀作を読んだ。内容はどちらかと言うと思いが手紙のやり取り、周囲の反応を如実に描いてあり感動した。直貴の就職先の平野社長が作品に重要な役割をしている点が読者にも訴えかけている。一般文学347作品目の感想。2011/03/010 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
うっかり書く。 少数派を気取りたいからだと思われるだろうか? でもどうしても、この小説で号泣した、「差別は当然」という新しい考えに愕然としたと言う人に対して、え、今まで考えたことなかったの?と驚かざるを得ない。 自分の中の逆差別に気づいたこともなかったの?と言いたい。 殺人というほどの大事に出会わなくても、考える機会はあると思うのだが… 分かりやすい言葉でテンポは良いし、うまい小説。でもそれだけ。社会を考えさせるほどの内容になってないと思う。全く響くものがなかったと言うわけではないし、経営者としての差別は、確かにと思った。 それでも、浅い。大して深められない人物のリアリティない展開。重いテーマを扱っている割に踏み込んでいる気がしなかった。 やはり直木賞に躍起になったのかなー…と思わせる。 今更だが。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
差別というものは、ありふれたものだと思います。職業差別、部落差別、学歴差別、人を美醜で判断すること…程度の差はあれ、こんなにも人は無意識のうちに差別をしています。 もちろん、差別はいけないことだという意識はあります。そして、差別をしている人間を蔑視するのです。しかし、それが自分の身の上に起こった時、あるいは周囲に起こった時…私も、きっと遠ざけると思います。関わりたくないというのが普通の人間の感覚です。 それが、現実です。 この物語は、だからこそ、読んでいて物凄く辛い。自分自身が責められているように感じるからです。しかし、差別はなくならない。差別は、人間である限り、発生しうるものだと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
罰は加害者だけのものではないし、悲しみは被害者だけのものではない。 主人公を避ける人たちに対して差別だ、偏見だと言うのは簡単ですが、彼らにも守るべきものがあるわけです。 大事なのは色々な角度から物事を見ること、だがそれはとても難しい。 そんな時に手助けになるのが想像力=イマジンでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
『しのぶセンセシリーズ』みたいな軽い推理小説を書いてる一方で、こういうシリアスな社会派小説も書けちゃう引き出しの多さが、この作者のすごいところだと思います。世界は自己の観念や行動のみで完結していると思いたいけれど、他己の観念や行動によって、いとも簡単に世界がくずれることもありうるという、とてもコワイ擬似体験ができます。解説にもありましたが、作者が時々鏡をこちらに向けてきます。どきっとさせられますが、押しつけがましくなく、色々考えさせられる、味わい深いお話です。後味の悪い最後が嫌いな方も、この話は大丈夫だと思います。涙が流せるのでストレスがたまっている方におすすめします。とはいえ、実際に何らかの犯罪に遭ってまだ傷が完全に癒えていない方やその関係者にはあまりおすすめしません。人によっては読んでいてつらくなると思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この本はバスや電車の中で読んではいけません。不覚にも人に涙をみられてしまいます。東野圭吾氏はこの『手紙』にせよ、『白夜行』、『さまよう刃』、『容疑者Xの悲劇』にせよ、善悪では割り切れない心情を描きます。物語として読者をぐいぐい惹きつける面白さもさることながら、読みながら深く考えさせられるところがあります。読者に何が正しいのか、主人公はどうすべきなのかという疑問を突きつけてきます。お薦めの一冊です。この小説を原作とした映画も良い出来です。主演は山田孝之。主人公の兄役を玉山鉄二、主人公を慕う由美子役に沢尻エリカ。この映画の頃の沢尻エリカさんはかわいかったなー。(笑) 小説では主人公・直貴は一時期ミュージシャンを目指すのだが、映画ではお笑いタレントを目指すことになっているところが変わっています。小説で何度か出てくる John Lennon の "Imagine"。この小説が問うているのは犯罪者とその家族への世間の差別。その差別故に茨の道を歩むことを余儀なくされた直貴の想いがこの曲に象徴されている。偏見や差別がない世界。いつかそんな世界が現実になって欲しいという切ない想い…… | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
東野圭吾さんの作品というさとで期待して読みましたが、内容がとても浅く感じられ、私には残念な作品でした。差別と偏見に翻弄されているのは、主人公がそれと過剰に闘い、抵抗しているからのようにしか見えませんでした。せっかく社長さんが「憎むのではなく別の在り方を」と示唆するのに、社会に向けていた憎しみを、単に、初めからそうしたかったのにそう出来なかった兄に向けて絶縁し、社会的にクリーンになることを選択。兄と絶縁するかしないかよりも、どう生きるかを描いてほしかったです。これではなんの学びもないのではないかと???物語の要になる兄の贖罪も、兄が被害者家族に宛てて書いた手紙を弟が偶然読むことになってわかったりしてガッカリでした。どうして短くても兄の心情を兄の視点で書かなかったのでしょうか。物語の中で様々な登場人物がいるのに、誰一人境遇を受け入れ、ゆるすという視点を持っていなかったのも救いがありません。たとえ慰労コンサートという形でも、絶縁したからには二人がお互いを見ることはなく、それぞれの未来の、それぞれの生き方を描くことで、この小説で言いたいことを描いてほしかったです。作者はこれが現実だと言いたかったのでしょうか? そういう現実に対して、小説だからこそ語れる何かをここにしっかり書いてほしかったです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
東野圭吾さんの作品はこれが初めてです。この作品から大ファンになり今は読みまくっています 自分のために犯罪を犯してしまった兄を弟が捨てる苦悩が書かれています とても感動モノです | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
非常に多くの方が、レビューされているので、内容や感想は今更書きません。ただひとつ。2010年11月に裁判員制度で初の死刑判決を受けた被告がこの本が原作のDVDを見ていたそうです。それを知った上で読んでみてもよいのでは。知らずに読むよりも、視野の広い感想を持てるのではないかと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
筆力のある作家なのだということがわかる。恐ろしいほど乏しい想像力で、弟を大学にやろうと考えて、金を盗み、強盗殺人の罪を犯した兄、剛志。弟直貴は、なんとか高校を卒業するが、大学進学をあきらめ、アルバイト先や就職先でも兄の罪が知られるたびに苦労する。兄からの手紙は徐々に整ったものになってゆくが、相変わらずの能天気さである。ここでも上手なのは、周囲の人たちの描き方である。弟に罪がないことは知っている、境遇に同情はする、けなげな弟の頑張りを評価もする、できればなんとかしてやりたいとは思う、だが、自分は直接かかわり合いたくない・・・。個人として行動するときは差別をしないが、組織として行動するときは、リスクを避けようとする。ただ、差別は当然だという社長の発言には同意できない。組織としての論理としては理解できるし、世間の差別を分析する学者としての視線でならあり得るだろうが。主人公は、けなげで真面目な理想的人物だ。しかも学業にも音楽にも才能がある。物語として、ちょっと出来過ぎのような気がする。由実子も、苦労した人なのだが、少し理想的人物として描きすぎているように思う。中心に近づくほどリアリティがなくなるのはこのせいかもしれない。 由美子の行動も、結果的には良かったのかもしれないが、あのおせっかいは駄目だと思う。引っ越しと転職の後は妻子を守るために兄と縁をきるという選択は、最善とは思わないが理解できる。最後のほうは、少し泣きそうになった。だが、あまりにも都合のよい偶然が重なって慰問コンサートだなんて、ちょっとなあという気がする。それにしもてこの後はどうするつもりなのか。仮に兄が出所したら、身元を引き受けるのか。そのばあい妻や娘への差別はどうするのか。いろいろと考えさせられた。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
主人公(弟)の設定が現実味がなさすぎる等のレビューも見受けられますが、作家はあえてこういう設定にしたんだと思う。なぜなら、そうしないと犯罪者の家族がどれだけ大変かということが、分からないから、能力があってもこうなってしまう可能性があるということがよりわかりやすく伝わるからである。そしてあくまで小説であって、ノンフィクションではないということを考えると、設定自体は何ら批判を受けるべきものではないと思う。ただあくまでも個人の考え方次第なので、様々な意見があっていいと思う。小説としての評価ですが、素直に面白く、一気に最後まで読めた。弟の心の変遷も理解できるし、徐々に兄を疎んじるのも良く理解できた。弟の為を思って、犯罪を犯した兄、そんな兄に申し訳ないと思いながらも、何故そんなバカなことをしたのか・・・。弟は頼んでないと言いたかったでも言えなかった、兄の気持ちがわかったから。ただ、星一つ減点なのは、兄の動機部分をもっと掘り下げても良かったのではないか?これではただ単に兄はただのバカな犯罪者で、またお金に困ったら同じ事を繰り返しそうな気がする。(バカな犯罪者なのは確かだが・・・)最初は平仮名が多かった兄の手紙が、徐々に漢字が増えていったのは良かったのに、最初の犯罪の部分があまりにも簡単に書かれているので若干残念。あとは、弟に最後まで一緒にいてくれる女性が何故彼の事を好きになったのかがいまいち不明。どうも一目惚れっぽいのだが、重要な役割を占める人だけにもっとそういった部分を掘り下げても良かったと思う。実は、この作家の作品は全く読む気が起きなかったのだけど、ここ立て続けに読んでる。何の予備知識もなく読むのが一番いいかもしれない。実際、この話の内容すらも知らずに読んだ私。こんなに人気があるとも思ってなかった。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
罪を犯した者やその身内が受ける差別や偏見について、とても考えさせられる内容でした。昔から学校などでは「差別や偏見はいけない事で人は皆平等」と教わってきましたが、実際はどうなのかという問いについてこの本では極めて現実的に書かれていると思います。ぜひ教科書に載せるなどして本作のテーマについて考えてもらいたい。私自身も考えさせられました。重いテーマなので気軽に読めるタイプの作品ではありませんが、気づくとその世界にどっぷりはまり込んでしまう辺り作者の文章力を実感します。また剛志からの最後の手紙やラストシーンでの直貴の心理描写には思わず涙が出てしまいました。東野さんの作品のなかでも特にお勧めしたいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
個人的には、兄が金を切望し強盗に至るまでの心理描写がより欲しかったのと、終末が、で、どうなるのですか??という終わり方だったのでその2点が物足りなく感じました。ですが、物語り全般を通して犯罪者本人ではなく、その弟に焦点を当て、犯罪者の身内として世間の風当たりにさらされ生きてゆく様子が切々と描かれていく。どんなに兄の存在を隠し、真面目に誠実に生きてゆこうとしても、いつもどこからかその存在が明らかになり、自分の夢や希望を取り上げられてしまう。読んでいても救われない気持ちで一杯になりそうになるが、夢を一緒に追いかけた寺尾や、いつもどんな時の彼であっても一緒にいて励まし、最後には家族となった由実子、と少数ではあるが周りの境遇ではなく直貴自身を見てくれる存在があったことに感動します。社長の言葉については賛否あるようですが、私は何が言いたいのか、どうしてそういうことが言えるのか疑問であり、よくわかりませんでした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
映画を観ていたが、間違えて借りてしまい、そのまま読み進めた。 映画を観ていたせいで、読書は気楽に割りと早くできたが、はっきり言って、本書の方が映画よりもぜんぜん深かった。 東野さんってすごいですね。どんな人生経験をしてきたら、こんな小説が書けるんだろう。。 犯罪加害者家族の差別に関する内容だけど、差別というワードのつくあらゆることに通じる、根源的な内容を問いかけいたように感じた。 被差別者と感じる人間が陥りやすい思考にメスをいれ、かなり冷淡に「社会性」をキーワードに論じていっている。 私が特に感動したのは324ページの次の一節。 「自分の現在の苦境は、剛志が犯した罪に対する刑の一部なのだ。犯罪者は自分の家族の社会性をも殺す覚悟を持たねばならない。そのことを示すためにも差別は必要なのだ。未だかつて直貴は、そんな考えに触れたことさえなかった。自分が白い目で見られるのは、周りの人間が未熟なせいだと決めてかかっていた。これは理不尽なことなのだと運命を呪い続けていた。 それは甘えだったのかもしれない。差別はなくならない。問題はそこからなのだ。そこからの努力はしてきただろうかと考え、直貴は心の中で首を振った。いつも自分は諦めてきた。諦め、悲劇の主人公を気取っていただけだ」 以上、長い引用になったが、改めてみても私の心を打つ。差別という言葉を被差別者が発すること自体、僕は敗者の弁な気がする。直貴に社長が問いかけたように、社会性の絆を一つずつ自分の力でつむぎ直す作業せずして、「差別」という言葉は、被差別者にとっては、何も意味をなさない。単なる「諦め」「弱音」「敗北」の言葉でしかない。本書を読んでそう感じた。東野さんの本題とは違うが、こういう読み方もあったと感じてもらえればうれしいです。ただ。本書は、名著だと思う。東野さんの本を始めて読んだのので、ほかの本も読んでみたいと思った。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
DVDも見たけど、本の方が感じるものが多くて全然感じ方が違った。 手紙ってのはただ自分の気持ちを文字に書いた紙ではない。 人権や差別についてもこの本から感じることが多かった。 差別を避けて生きていくのではなく、差別は当たり前でそれを含めた罪を 受刑者は受けなければならない。残された受刑者の家族はそういうもの。 情景がこの本から切々と感じられ、食い入るように呼んでしまった。 寝る前に読んだら寝れなくなります。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
おもいっきり泣きたくて、選んだ本でした。 初めのうちは、興味をそそられる様な話の展開で次はどうなるのか、その次はどうなるのか・・・ とワクワクドキドキしながら読みました。 が、最後の結末だけが、なんだか物足りなく・・・「えーっ!もったいない!こんな感じで終わり?」と、がっかりしてしまいました。 期待しすぎると、私のような感想になってしまうのでは無いでしょうか。 期待しすぎないと、満足できると思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
涙もろいので、しょっちゅう何かを観たり 読んだりして泣きますが、体が震えてページを めくる前に勝手にその内容を想像して、 声を出して泣いてしまったのは この本が初めてでした。 この物語のキーはタイトル通り手紙ですが、 ラスト、確実にこの『手紙』に 心揺さぶられます。 正直、途中まではなんの罪も犯していないけれども、 犯罪者の弟ということで彼に降りかかる 切ない結末は仕方ないだろうと感じていました。 ここで描かれている社会が彼に対してしてしまう 過剰な接し方も仕方のないことで、それでも 認めてくれる友人はいるし、 彼は人に恵まれているじゃない、 と感じていました。 でも弟は腑に落ちていない。 自分だって正々堂々生きる権利はあると 思い、頑張っている。 そしてそんな彼に社長の言葉が彼に降りかかる……。 この社長の言葉は東野圭吾の心情だと思えてなりませんでした。 耳が痛いほどの現実でずっしりと心に響いてきました。 罪を犯すことは社会的な死を選ぶこと―。 犯罪が繰り返されているこの世の中で このお話しはある意味身近であり、 とても生々しかった。 最後の最後の一文は泣いてるのに さらにさらに追い討ちかけるように泣かされます。 さすが評判通り。 名作です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
殺人事件が起こった場合、専らマスコミにクローズアップされるのは、悲しみに打ちひしがれる被害者の家族の状況だ。加害者の家族が、夜逃げ同然に行方をくらますこともある悲惨な状況は、我々も、ときにマスコミの報道で知ることもあるのだが、この作品は、そんな加害者の家族が、事件後、どれほど過酷な運命と対峙していかなければならないのかを真正面から描いた、東野圭吾最盛期の不朽の名作である。 強盗殺人事件の加害者の弟である主人公の武島直貴は、その後の人生のあらゆる岐路で、理不尽としか思えない差別で、その人生を台無しにされていく。しかし、そうした差別を行っている人たちの大半が、実は、どこにでもいる平均的な一般市民であり、また、そうした差別の大半が、それなりに理解できるものであり、自分自身が当事者になった場合に、絶対に同じ対応はしないと自信を持って言い切れないものであるところが、一層、事態の難しさと、やるせなさを感じさせてしまうのだ。 作者は、不当な扱いを受けた直貴の勤務先の社長の意見として、おそらく、作者自身の持論と思われる、加害者の家族には過酷とも思える独特の理論を展開させている。こうした考え方には、当然、賛否両論があると思うのだが、この作品は、そうした考え方を通して、我々は犯罪加害者の家族とどう向き合うべきか、犯罪加害者の家族はどう生きるべきかを、読者に強烈に問い質してくる極めてメッセージ性の高い作品なのだ。ぐいぐいと読者を引き込んでいく作者の構成力と展開力の上手さ、「私は手紙を書くべきではなかったのです」という言葉の本当の意味が明らかになるラストの感動の深さも、圧巻だ。 最近の作者の作品は、ルーティン・ワーク化している面があり、深い感動を味わえる作品がなくなってきているので、作者の最も油の乗り切っていた時期の最高傑作といっても過言ではないこの作品を、ぜひ味わっていただきたい。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!